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第二章 リータ魔王国復興編

第26話 「フィナーンの逆襲」

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 私とレイアは部屋に戻り、食卓に座りくつろいでいる。今までとは違い、身の回りの世話はメイド達がおこなってくれている。

「レイア、ちょっと席を外すね」

「ああ」

 私は尿意を感じ、トイレへ行くべく部屋を出る。魔族がトイレを利用するのか? である。

 魔物はどこにやり散らかしても気にしないが、魔族は違う。人間とは頻度ひんどが異なるだけで、トイレを利用している。そういうわけで、私も彼らの恩恵にあずかれるのだ。

 少し私室からは離れているが、城の修繕しゅうぜんをしたこともあり、綺麗きれいなトイレがそなえ付けられている。レイアには感謝の言葉しかない。

 洗面所で手を洗い、私はトイレから出る。やはり少し遠いかなあと思っていたその時、突然私の身体は横に引っ張られる感覚を覚える。

 何が起こったかわからず、対処できないまま、私は横の部屋に引き込まれてしまう。

「何だあ!!」

 私は大声で叫んだが、遅かった。部屋の扉が先に閉じてしまったのである。あかりもなく、暗い部屋でパニックになるが、私が落ち着きを取り戻すのにそう時間はかからなかった。

「おい! 人間」

 暗闇の中、女性の声がした。聞いた事のある声。というか、さっきまで聞いてたではないか。

 私は部屋の奥側を向き、確認する。そう、声のぬしは、フィナーンである。

「君は…… 何でこんな事を?」

「わからぬか!?」

 私は聖魔法ライトを無詠唱えいしょうで発動する。目の前に、人間サイズに縮んだフィナーンが、涙を流して立っている。

「貴様は魔王様をたぶらかし、私のプライドをズタズタにした」

 私は何も言い返せなかった。

「私に二度の敗北と、屈辱くつじょくを与えたんだ」

 私には、言葉とは裏腹なフィナーンの表情が気にかかっている。どう返していいか、固まっていた。

「貴様、この屈辱くつじょくを、どう責任取ってくれるのだ!?」

 言っている意味が分からない。支離滅裂しりめつれつな内容に困惑こんわくしてしまう。

 直後、胸のプレートアーマーを取り去り、肌があらわとなる。彼女の立派な両乳がたわわに弾けてみせる。

ブっ!!

 私の鼻から鮮血が飛び散る。突然の予期せぬ展開に、久々にやらかしてしまう。

 フィナーンはそんな私の変化を無視し、尻尾で私の身体をつかむと、私をベッドに放り投げる。身動きが取れない状態の私を、フィナーンの上半身がおおいかぶさってくる。

「あんたにれたんだ。落とし前、つけてくれるよな?」

 紅潮こうちょうし、涙をこぼしながら、声を振り絞って私に迫る。

「お前、私が魔王の夫になったと……」

だまれ!!」

 フィナーンが涙をボロボロ落として叫ぶ。

「どうなんだ!」

 私はフィナーンの問いに、いや、彼女の涙と瞳に、ある想いがき上がってくるのを感じた。というか、思い出していた。

「そうか……」

 私は辛うじて言葉にする。が、それより、勝手に涙がこみ上げ、流れている。

 屈強の四天王の一人として、魔王を支えてきたこの女性。彼女の流す涙が、私の心にさる。

「わかったよ……」

 私はフィナーンの頭に手を伸ばしていた。フィナーンの瞳が一瞬戸惑とまどいに変わる。

「言葉じゃ足りないだろ。だから……」

 フィナーンのまぶたが閉じられる。そして、互いの唇が重なった。

 深く、意識深く口づけを交わしていくと、フィナーンの尻尾のめ付けが解かれていった。私は自由になった両腕をフィナーンの背中に回し、何度も口づけした。

 肌と肌を重ね、フィナーンの感触を確かめながら、私は自分の過去の傷と、フィナーンの受けた心の痛みを想像する。

 フィナーンの表情から、肌を通して伝わる感覚に快楽を覚え、愉悦ゆえつひたっていることを感じ取る。私はそのまま、彼女の上半身を丁寧ていねい愛撫あいぶし、心の傷までえる覚悟で身体を動かした。

 途中、私は衣服を脱ぎ去る時間を与えてもらい、まぐわいを再開する。その際、私の勃起ぼっきするものを確認したフィナーンは、私に恥部ちぶの位置を教える。私はあっけにとられるが、彼女の指示通りに愛撫あいぶを始めた。

 まぐわいを始めて三十分後には、私とフィナーンは一つになっていた。彼女の表情を見ると、心の傷はある程度えたのだろうと感じ取ることができた。こうして、二人の時は過ぎていく。


◆◆◆


 私は脱ぎ去っていた衣服を着ているところだ。フィナーンはすでに胸のプレートアーマーを身に着け、まだ少し疲れもあるのか、ベッドで横になっている。

「なあ、タクト」

「ん?」

「なぜ、私を抱いたのだ?」

 フィナーンがストレートにたずねてくる。私は少し間をおいて答える。

「それは…… 私にれたと言ってくれたから」

「え!?」

「君の気持ち、断れないよ」

 私の言葉にフィナーンはプッとき出す。

「何だそれ、別に断ればいいじゃないか」

「断れないんだよ!!」

 私の言葉にフィナーンがビクッとなる。少し沈黙ちんもくが流れる。

「怒鳴ってごめん。私には、断れなかった。それに、君の流した涙。そしてうったえかける瞳。そこに嘘はないと信じられた」

「あんた……」

「正直、レイアには悪い事をしたと思う。でもあの時の君の顔を見たら、断れなくなったんだ。君を受け入れて、力になりたいと思った」

 私はフィナーンの顔を直視する。

「愛の形としては間違ってるかもしれない。でも、勇気を振り絞って告白してくれた君の気持ちに、むくいたかったんだよ」

 フィナーンの瞳から、また涙がこぼれ落ちる。今度はしっかりと腕でぬぐっている。

「バカだな、お前は。でもそういうところ、私は好きだよ。魔王様を裏切らせて、悪かったな」

「そう思ってるのなら、これから一緒にあやまりに行ってくれる?」

「それは断る」

 フィナーンの反応に、二人して笑いあう。

 その後、レイアの事が話題になり、二人して熱く語り合った後、フィナーンは部屋から出て行った。

「さて、この後の事だが……」

 私はこの出来事について、レイアにあやまらなければならない。前の世界にいた時、テレビのバラエティー番組の特集で、『女性は男の言動や嘘に敏感びんかんで、すぐ見抜く』と見た事を思い出していた。

 やってしまった事はどうすることもできない。ここは正直にあやまるべきだ。いや、あやまらなければいけない。どんなに怒られようが、仕方ない。
やった事は最低なのだからな。

 私はそう心にちかい、意を決して立ち上がり部屋を出た。

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ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回もまた、よろしくお願いいたします。
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