3 / 60
けやき商編 第1章 出会い
第1話 けやき祭
しおりを挟む
「遅れてすまない。準備はどうなっている!?」
「おう。もうすぐ終わるぞ」
「そうか…。何とか間に合いそうだな…」
ここは、都立けやき商業高等学校第2OA教室。
年に1度の文化祭「けやき祭」の準備で、いつもは静かなOA教室はてんやわんやになっていた。
俺は、沢継煉。都立けやき商業高等学校パソコン部の副部長を任されている。 けやき商パソコン部は、年に3回、春、秋、冬にWeb上で開催される、日文新聞社主催「日文パソコン入力スピード大会」での上位入賞、そして、夏に行われる全国大会での団体優勝を目指した部活動を行っている。この大会は、日文新聞社の新聞記事を10分間で入力し、正確に入力できた文字数によって競われる大会で、商業高校を始めとした日本の多くの高校生が参加している大会だ。
けやき商パソコン部は、俺が入学する1年前に全国大会で団体初優勝を果たし、今まで連覇を成し遂げていた。
俺も、今年の夏の全国大会で選手として参加。団体優勝、個人準優勝の栄冠を勝ち取った。
そんな、けやき商パソコン部では、今年のけやき祭で「全国優勝者にチャレンジ!けやき商入力スピード大会」と銘打って、俺や個人優勝をした部長に、パソコンの入力スピードに挑戦する大会を企画した。
ところが、クラスの出し物の準備に追われていた俺は、立案者であるにも関わらず、部活の準備に全く手が回っていなかった。だが、現部長の的確な指示で、俺がOA教室に到着するころには、すっかり準備が終わっていた。
「煉。遅いじゃないか!」
「部長。すいません。クラスの準備が終わらなくて…」
「煉のクラスは、確かステンドグラスを使った出し物だったよな」
「ええ。俺の分はとっくの昔に終わっているんですけど…」
「まあいい。お前の企画案がしっかりしていたお陰で、準備はほとんど終わっている。あとは、開始時刻を待つだけだ」
「そうみたいですね。本当にすいませんでした」
部長に平謝りをしていると、後ろから聞き覚えのある声に呼ばれた。
「煉先輩!」
彼女は、嶋尻真琴。けやき商の1年で、パソコン部の部員だ。今年の大会では、新入部員であるにも関わらず個人で3位に入賞し、早くも再来年度の部長とまで囁かれている。
「真琴。準備に参加できなくてすまない」
「いいえ。クラスの準備が終わっているみんなで終わらせましたから、大丈夫ですよ!」
「ありがとう」
「それよりも、今日こそ部長さんをギャフンと言わせるんですよね」
「真琴!それは…」
「何だって!?煉、お前がこの私に勝てると思っているのか?」
「部長…。いや、全国大会では苦汁を飲みましたが、今日は負けませんよ!」
「よし、いいだろう。次期部長のお前の実力、しっかり見させてもらおうか…」
「部長さん、私だっているんですからね。敵は煉先輩だけじゃないんですよ!」
「そうだったな。煉には負けたとしても、新入部員の真琴に負ける訳にはいかないな!」
「部長!準備が全て整いました!」
「煉先輩と真琴ちゃんも、自分の席に座って!」
部員達の声に促され、俺達は普段自分たちが座っている席に着いた。
それと同時に、OA教室に備え付けられたスピーカーから校内放送が響き渡った。
“本日は「けやき祭」にお越し頂き、まことにありがとうございます!只今から、パソコン部による「けやき商入力スピード大会」を開催致します。パソコンの入力スピードの大会で、全国優勝から3位に輝いたつわものが、皆様の挑戦をお待ちしております。ぜひ、A館3階第2OA教室まで足をお運び下さい!!”
放送が入るや否や、OA教室の外が騒がしくなった。
「私たち3人は、けやき商はおろか、全国的にも有名になったからなぁ。校内の挑戦者は少ないかも知れないが、来場者からの挑戦は多いかもな」
「そうですね。日文新聞にも取材受けましたし、大会の直後はテレビの取材も受けましたしね。そうだ!煉先輩。私の妹が、この大会に参加するって言ってましたよ!」
「えっ、真琴の妹って、中学3年の?」
「はいっ!今年、けやき商を受験するって言ってました!」
「そうなんだ。こりゃ、ライバルが増えそうだな…」
“ガラガラガラ”
OA教室の扉が開き、外の受付で手続きを済ませた挑戦者たちがOA教室内に入ってきた。
「挑戦者の皆様は、受付で渡されたカードに記載された端末の席にお座り下さい」
「全員が着席しましたら、開会式を始めさせて頂きます!」
案内係の部員に促され、挑戦者たちが所定の場所に着席していく。
そんな中、煉達が座っている席に近づく人影があった。
「お姉!約束通り参加しに来たよ!!」
「おう。もうすぐ終わるぞ」
「そうか…。何とか間に合いそうだな…」
ここは、都立けやき商業高等学校第2OA教室。
年に1度の文化祭「けやき祭」の準備で、いつもは静かなOA教室はてんやわんやになっていた。
俺は、沢継煉。都立けやき商業高等学校パソコン部の副部長を任されている。 けやき商パソコン部は、年に3回、春、秋、冬にWeb上で開催される、日文新聞社主催「日文パソコン入力スピード大会」での上位入賞、そして、夏に行われる全国大会での団体優勝を目指した部活動を行っている。この大会は、日文新聞社の新聞記事を10分間で入力し、正確に入力できた文字数によって競われる大会で、商業高校を始めとした日本の多くの高校生が参加している大会だ。
けやき商パソコン部は、俺が入学する1年前に全国大会で団体初優勝を果たし、今まで連覇を成し遂げていた。
俺も、今年の夏の全国大会で選手として参加。団体優勝、個人準優勝の栄冠を勝ち取った。
そんな、けやき商パソコン部では、今年のけやき祭で「全国優勝者にチャレンジ!けやき商入力スピード大会」と銘打って、俺や個人優勝をした部長に、パソコンの入力スピードに挑戦する大会を企画した。
ところが、クラスの出し物の準備に追われていた俺は、立案者であるにも関わらず、部活の準備に全く手が回っていなかった。だが、現部長の的確な指示で、俺がOA教室に到着するころには、すっかり準備が終わっていた。
「煉。遅いじゃないか!」
「部長。すいません。クラスの準備が終わらなくて…」
「煉のクラスは、確かステンドグラスを使った出し物だったよな」
「ええ。俺の分はとっくの昔に終わっているんですけど…」
「まあいい。お前の企画案がしっかりしていたお陰で、準備はほとんど終わっている。あとは、開始時刻を待つだけだ」
「そうみたいですね。本当にすいませんでした」
部長に平謝りをしていると、後ろから聞き覚えのある声に呼ばれた。
「煉先輩!」
彼女は、嶋尻真琴。けやき商の1年で、パソコン部の部員だ。今年の大会では、新入部員であるにも関わらず個人で3位に入賞し、早くも再来年度の部長とまで囁かれている。
「真琴。準備に参加できなくてすまない」
「いいえ。クラスの準備が終わっているみんなで終わらせましたから、大丈夫ですよ!」
「ありがとう」
「それよりも、今日こそ部長さんをギャフンと言わせるんですよね」
「真琴!それは…」
「何だって!?煉、お前がこの私に勝てると思っているのか?」
「部長…。いや、全国大会では苦汁を飲みましたが、今日は負けませんよ!」
「よし、いいだろう。次期部長のお前の実力、しっかり見させてもらおうか…」
「部長さん、私だっているんですからね。敵は煉先輩だけじゃないんですよ!」
「そうだったな。煉には負けたとしても、新入部員の真琴に負ける訳にはいかないな!」
「部長!準備が全て整いました!」
「煉先輩と真琴ちゃんも、自分の席に座って!」
部員達の声に促され、俺達は普段自分たちが座っている席に着いた。
それと同時に、OA教室に備え付けられたスピーカーから校内放送が響き渡った。
“本日は「けやき祭」にお越し頂き、まことにありがとうございます!只今から、パソコン部による「けやき商入力スピード大会」を開催致します。パソコンの入力スピードの大会で、全国優勝から3位に輝いたつわものが、皆様の挑戦をお待ちしております。ぜひ、A館3階第2OA教室まで足をお運び下さい!!”
放送が入るや否や、OA教室の外が騒がしくなった。
「私たち3人は、けやき商はおろか、全国的にも有名になったからなぁ。校内の挑戦者は少ないかも知れないが、来場者からの挑戦は多いかもな」
「そうですね。日文新聞にも取材受けましたし、大会の直後はテレビの取材も受けましたしね。そうだ!煉先輩。私の妹が、この大会に参加するって言ってましたよ!」
「えっ、真琴の妹って、中学3年の?」
「はいっ!今年、けやき商を受験するって言ってました!」
「そうなんだ。こりゃ、ライバルが増えそうだな…」
“ガラガラガラ”
OA教室の扉が開き、外の受付で手続きを済ませた挑戦者たちがOA教室内に入ってきた。
「挑戦者の皆様は、受付で渡されたカードに記載された端末の席にお座り下さい」
「全員が着席しましたら、開会式を始めさせて頂きます!」
案内係の部員に促され、挑戦者たちが所定の場所に着席していく。
そんな中、煉達が座っている席に近づく人影があった。
「お姉!約束通り参加しに来たよ!!」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ズボラ上司の甘い罠
松丹子
恋愛
小松春菜の上司、小野田は、無精髭に瓶底眼鏡、乱れた髪にゆるいネクタイ。
仕事はできる人なのに、あまりにももったいない!
かと思えば、イメチェンして来た課長はタイプど真ん中。
やばい。見惚れる。一体これで仕事になるのか?
上司の魅力から逃れようとしながら逃れきれず溺愛される、自分に自信のないフツーの女子の話。になる予定。
My Doctor
west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生
病気系ですので、苦手な方は引き返してください。
初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです!
主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな)
妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ)
医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる