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Episode7 三日月同盟

第15話 偉大なる先祖

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“ギィーーーーン!!”

 ヴァジュラから振り下ろされた一撃は、ライトエスパーダの魔法がかかったアルモの剣により防がれた。

「俺の渾身の一撃を防いだ、だと!?」

「…どうやら、あなたの言った『使い手の力量』が、魔法の能力と相乗効果を生んでいるようね!!」

“フシュゥゥゥゥゥゥ…”

 アルモがそう言い放った次の瞬間、ヴァジュラの身体を黒い霧が包み込んだ。

 そして…

“ズゥン!”

“ザザザザザザザザ…”

 月明りの剣の倍はあるであろうクレイモアを操るヴァジュラを、アルモはいとも簡単に押しのけ、クレイモアと共に数十歩後ろまで後退させた。

「!!アルモ!一体その力をどこから…」

「何言っているの!?君の放った魔法のお陰だよ!?」

「俺の!?」

「そうよ!ライトエスパーダは、かけた武器や防具の性能を格段に向上させるのと同時に、接触してきた武器や、その武器を操る相手の能力をその時だけ著しく下げる効果があるわ」

「なるほど。だから、ヴァジュラをあんな後方まで押しのけることができた、という訳か」

「ただ、悔しいけれどヴァジュラの言っていることも事実で、この魔法は武器の使い手の力量で効果が高くもなれば低くもなる。今の私は万全の状態だけど、このまま奴の攻撃を受け続けて体力が消耗していけば…」

「魔法の力は、失われてしまう…」

「そういうことよ」

「…であれば、アルモ。連携で早期決着を狙うしかないな!」

「ええ!」

 刹那、俺とアルモはハの字を描くように移動し、ヴァジュラを挟み撃ちにした。

 事前に示し合わせた訳ではない。 不思議とアルモの考えが俺に流れ込んで来るのを感じ、アルモと異なる方向に向かって地面を蹴った結果、自然とそうなったのだ。

「挟み撃ちとは、小癪な真似を」

「「ハァァァァァァ!!」」

“ザザッ”

 ヴァジュラの呟きには歯牙にも掛けず、俺たちは突撃した。

“ギィーーーーン!!”

 先陣を切ってヴァジュラに切りつけたのは、アルモだった。

“フシュゥゥゥゥゥゥ…”

 アルモの操る月明りの剣と、ヴァジュラの操るクレイモアが接触した瞬間、ヴァジュラの身体を黒い霧が包み込む。

「(…ライトエスパーダの魔法をヴァジュラは知っていた…知っていて、しかもどの程度の威力かも分かった上で、アルモの攻撃を受け止めた…)」

 俺の脳裏に、いつくかの疑念が浮かぶ。

「(…それとも、高位魔法だということだけ知っていて、その効果は知らない!?いや…俺じゃあるまいし、教団の将軍ともあろう者が、そんなことあり得ない…)」

 刹那…

「アコード!!避けて!!!」

 俺は、ヴァジュラへの攻撃に集中していなかったことを後悔した。

“ブウォォォォォォォ”

 右手のクレイモアでアルモの攻撃を防いでいるヴァジュラが、俺の方向に向かって手を伸ばし、手を広げていた。

 そして、その手の平の先には、大きな火球が浮かんでいたのだ。

「もう遅いわ!!!」

“ファイアスパイラ!!”

 ヴァジュラの思惑にまんまとはまってしまった俺は、奴の放った大きな火球に飲み込まれた………かに思えた。

“シュン……バサッ……シュン………”

「!?」

 気づくと俺は、飲み込まれたはずの火球が横から見える位置に居た。

 そしてその隣には…

「!!アルモが、助けてくれたのか!?」

 アルモの身体を見ると、全身を不思議な金色のオーラで纏い、その瞳にはいつもと違う輝きが宿っているように見える。

「えっ!?……わ、私が君を、今、助けた………わよね?」

 瞳の輝きがすっかりいつも通りに戻ったアルモは、俺の問いかけと自身がしたことに困惑しているようだった。

 ヴァジュラが放った火球は、結局何も飲み込むことなく俺が元いた場所の方向へと飛んでいった。

「!!!その能力は………クレスが使用したという『瞬間移動』。アルモ!貴様、いつの間にそんな能力を!?」

 想定外の能力を発揮したアルモに困惑するヴァジュラ。

「…ありがとう、アルモ」

「…声がしたの。『我が盟友の子孫を助けよ』って…で、行動に移そうと思ったら、身体が勝手に動いて…」

 そして、俺とアルモは確信した。

 確実に、自分たちは先祖に守られ、助けられている。

 そして、その期待に応えるためには… 

「アルモ!」

「ええ!」

“ザザッ”

 俺とアルモは横並びでヴァジュラに突撃した。

「そんな、芸のないただの突撃で、我を倒そうと…………なっ、何だと!!!?」

“シュン…”

 ヴァジュラが驚くのも無理はない。

 俺とアルモに罵声の言葉を言い放っている途中で、その対象となっていたアルモが忽然と姿を消したのだから。

 アルモは、先ほど俺を助けるために使用した『瞬間移動』の能力を、今度はヴァジュラを攻撃するために使用したのだ。

”シュン!”

「ヴァジュラ!こっちよ!!」

“ザシュッ!!”

“フシュゥゥゥゥゥゥ…”

 予想だにしない方向から現れたアルモの攻撃に対し、クレイモアを持つ右手で反応することができず、ヴァジュラは左腕でガードすることしかできなかった。

 そしてその結果、魔法のかかった月明りの剣はヴァジュラの左腕に深々と突き刺さると同時に、ヴァジュラの身体を、再び黒い霧が覆っていたのだった。
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