夏空模様

慶名 安

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第10話

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 ---「うぐぅっ!?」

 夏休みの初日、突然、胸に痛みが走り、俺は目を覚ました。

 「…おい」

 目を覚ますと、なぜかなつが俺の上に両手をクロスさせた状態で寝ていた。まさかと思うが俺、クロスチョップされたのか? なぜに?

 「…ん、んん…」

 俺が目を覚まして少し経つと、クロスチョップをかましてきたなつがようやく目を覚ました。

 「んん…、おはよー、なっちゃん」

 「おはよう。今日から布団で寝ろよ」

 「…ええ?」

 ---なつにベットで寝る権利を剥奪した俺は顔を洗いリビングに向かった。なつはブーブー言うが、毎朝寝起きクロスチョップは流石に心臓に堪えそうだからな。なんであの体勢で寝てたのかは未だにわからんが。

 「あら? 2人ともおはよう! ちょうどいいタイミングで来たわね。朝ごはん、作っておいたから」

 「おはようおばちゃん。わあー、みそ汁のいい匂いがするー」

 「夏海ちゃん、匂いを嗅ぐのはいいけど、まずは顔洗ってきた方がいいわよ。休みだからってだらけてばっかじゃダメよ! 学校が始まったら夏休みボケが中々抜けなくなっちゃうからね」

 「はーい!」

 「ほら、夏樹も顔洗ってきなさい」

 「うん」

 母さんに促され俺達は顔を洗いに洗面所に向かって行った。

 ---「ハアー、おばちゃんのみそ汁、サイコー」

 「大げさだろ」

 「なっちゃんはおばちゃんのみそ汁毎日飲んでるからそんなこと言えるんだよ! 私のお母さんなんてめんどくさいからって、具なしのみそ汁なんて出したりするんだよ! 『みそ汁なんてみそさえ入ってれば、それはみそ汁になるのよ!』なんて言い訳するんだよ!!」

 「…流石にそれはヒデーな」

 洗面所で顔を洗い終えた俺達はリビングに戻り母さんが作った朝めしを食べていた。ちなみに母さんは朝めしを作り終えると仕事に行った。うちは共働きだから、基本昼はだれも居ない。今は夏休みだから、俺達が居るんだけどな。

 麩とわかめ入りのみそ汁を飲みながら、俺はなつの愚痴を聞かされていた。おばさんとは小さい頃に何回か会ったことしかないからどんな人なのか思い出せないが、なつの話を聞く限りの情報だと、いい加減な性格をしてるらしい。

 「えへへー、おばちゃんのみそ汁、美味しいからおかわりしよー」

 「みそ汁ばっか飲んで、目の前のめし残すなよ?」

 「わかってるよ。みそ汁は別腹だから」

 「なんだよ、その説得力のない理論は」

 そんなやりとりをしながらも朝めしを食べ終えた俺達だった。結局なつのやつ、みそ汁飲みすぎたせいでちょっと残してたな。予想通りといえば予想通りなのだがな。
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