BLOOD HERO'S

慶名 安

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episode3 「風神の豪鬼」

episode3 #4「悪夢の光景」

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 部屋に戻った炎美はベッドに横になりながら昨日の事を思い返した。

 (柑菜と闘った時、確かに俺は能力を使っていた。最初は信じられなかったけど、あの時俺の右腕に黒くてデカイ剣を付けていた)

 炎美は自分の右腕を掲げながら見る。今はごく普通の右腕。だが黒い剣を付けていた時何とも言えない感覚があった。まるで自分の体の一部になっていた様だった。

 「俺も異能力者だって事かよ!」

 『まあ、人間というのは欲深いものだ! 力を使えるものはそれを己の為に使う。そればっかりは仕方の無い事なんだよ』

 ふと志村が言っていた言葉を思い出した。

 (俺も前は私欲の為に使っていたのだろうか?)

 そんな事を考えているうちに歯がゆくなってきた。今の自分は私利私欲の為に使おうとは思っていない。だが記憶を取り戻した時、自分はどんな行動をとるだろうか?

 今みたいな気持ちを持ち続けられるだろうか? それとも自分の欲望のままに動くのだろうか?

 やがて炎美の頭の中は疑問だらけになっていた。

 「本当…の俺…は一体…、どう…したい…ん…だ?」

 ベッドに横になっていたせいかいっきに睡魔が襲ってきた。無論、睡魔には勝てずそのまま眠りに落ちた。

 ---燃え盛る炎。何処かで見た事ある景色だった。大きな建物が崩れ落ちていく。黒い煙が立ち込めている。

 「何だよ、コレ!!」

 周りを見渡して見ると沢山の人が倒れていた。

 「オイ! 大丈夫か?」

 目の前に倒れている人に駆け寄り介抱しようとする炎美。

 「!!」

 しかし抱き抱えた時に手にヌメッとした感触を感じた。手を見ると炎美の手には真っ赤な血で染まっていた。

 「ハア、ハア、ハア!!」

 血で染まった手を見て息が荒くなる炎美。

 「---! ---!」

 炎美は必死に誰かの名前を大声で連呼していた。誰なのか覚えていない筈だが、炎美はひたすら呼び続けていた。

 すると後ろに誰か立っている気配がした。恐る恐る後ろを振り返る炎美。

 グシャッ!

 だが後ろを振り返ろうとした瞬間、肉を削ぐような音がした。その人物は炎美の背中に刃物を突き刺したのだ。

 「ゴフッ!!」

 その瞬間に大量に吐血した炎美。自分の腹部を見ると刀の様な物が腹から飛び出していた。腹部は一瞬で自分の血で赤く染まった。

 次の瞬間に一気に刀を背中から引き抜かれそれと同時に炎美は倒れてしまった。

 『滑稽だな炎美。そんなお前には無様な最後がお似合いだ』

 後ろから声が聞こえてくる。その人物は炎美のことを知っているような口ぶりをしていた。だがモザイク声がかかっていて男か女かも識別出来ない。

 「だ…誰…だ?!」

 腹部を抑えながら後ろを見る炎美だったが痛みで目が霞んできた。薄っすらと声の持ち主を見たがぼんやりとした人影が見えただけだった。

 『ククク。もう俺の、ことを、忘れた、か?』

 痛みが徐々に増していき相手の声が徐々に聞こえなくなっていた。

 「くっ…そ…」

 吐き捨てるように発した言葉を最後に炎美の視界は真っ暗に染まっていった。
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