BLOOD HERO'S

慶名 安

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episode6「針鼠の巣窟」

episode6 #19「殺せない理由」

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 「ぐはっ!!」

 涼子の渾身の一撃を受けた指道は100メートル先まで飛ばされた。指道は100メートル先にあった木に背中を打ち付け項垂れるように倒れた。

 「ハア…ハア…」

 一撃を食らわした涼子は肩で呼吸をし指道の方に視線を向けていた。

 「涼子ちゃん、大丈夫か?」

 一方の炎美は涼子の所へ駆け寄って行った。

 「うん、大丈夫だよ。それより…」

 炎美が心配そうに声をかけると涼子は爽やかな笑顔で返し炎美に手を差し出してきた。

 「やったね、炎美君♪」

 「…ああ」

 涼子がハイタッチを求めているのが理解出来たようで炎美は炎美も笑顔でハイタッチを交わした。

 「…ぅぅ…」

 2人がハイタッチを交わす中、指道は意識を取り戻したかのように小さく呻き声をあげた。

 「!? 大丈夫ですか?」

 涼子はそれにいち早く気づき指道に駆け寄って行く。炎美も後を追うように駆けて行った。

 「…ぅっ…」

 指道は腹部を抑えずっと呻き続けていた。涼子の一撃で肋骨がいくつか折れたうえに木に衝突した衝撃が折れた骨にまで響いて強烈な痛みが襲ってきていた。

 「……さい」

 「えっ?」

 そんな中、指道は振り絞るように何かを言いかけ2人は思わず足を止めた。

 「早く私を殺しなさい。死にかけの老いぼれとて情けなど不要。彼等が来る前に早く私にトドメを…ごほっ!?」

 先程まで敬語で話していた指道も素に戻ったかのようにタメ口に変わっていた。そんな指道はトドメを促すように言うが最後まで言いきる前に吐血し始めた。

 「マズい。早く病院に連れて行こう」

 「!?」

 指道の様子を見て炎美は急いで肩を貸した。その行動に指道は驚愕した。さっきまで敵対していた相手が自分を助けようとしている姿があまりにも不可思議に思えたのだ。

 「なぜ…? 君達は自分が何をしているのか分かっているのか?」

 指道は炎美達の行動に疑問に思い問いかけてきた。すると炎美が指道に視線を向けながらゆっくりと口を開いた。

 「別に俺達は貴方を殺しに来た訳じゃない。止めに来たんだ。それに…」

 炎美はそう言いかけて視線を正面に向けた。指道は炎美に吊られるように視線を移した。

 「指道執事長!」 「指道さん!」 「執事長!」

 「……!?」

 視線の先にはボロボロになった執事達が心配そうに声をかけながら駆けつけて来た。その光景を見て指道は言葉を失った。

 執事達はボロボロの姿になりながらも指道の身を案じていたのだ。

 「貴方の事を心配してくれてる人達がいるんだ。そんだけ慕われてる人を殺すなんて俺には出来ない」

 「ッ!?」

 そして炎美の言葉に指道の眼から自然と涙が零れ落ちていた。
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