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第11章「異世界編、始まる」
第68話「有紗の二つ名」
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---「あっ、皆さん! お帰りな…」
ギルドに帰ると、受付カウンターにいたサキさんが声をかけようとしていた。
「……」
が、違和感を感じ言葉が詰まった。その違和感は他の人達も気づいており、そのせいかいつのまにかギルド内は静寂な空気に包まれていた。
「ゴブリンの討伐依頼、完了したわよ。ゴブリンロードもいたけど、なんとか倒しといたわよ」
「……」
有紗がクエストの完了報告するが、サキさんは一向に声が出ない。笑顔もどことなく引き攣っていて、顔色も青くなっている。完全に引いていることを言われずともわかるほどに。
それもそのはず。なにせ有紗の全身にゴブリンロードの返り血が付着して、全身赤くなっていたのだ。
---ゴブリンロードに腹パン1発で勝ってしまった有紗だが、風穴が開いた腹からは濁ったような赤色の血がほぼ塊と化した状態で勢いよく飛散した。
それをモロに浴びた有紗は一瞬にして全身赤く染まってしまった。
近くにいたみのりと女性、そこから少し離れた場所にいる俺にも付着しているが、拭けばすぐに取れる程度なのでなにも問題はないのだが、有紗はもうシャワーを浴びないと落ちないレベルまで被ってしまっている。匂いまで落ちるかはわからんが。
いちおうゴブリンの討伐依頼をクリアし、あの女性の娘さんもなんとか村に送って一件落着したからギルドに帰る前にどっかで水浴びでもしといた方がいいんじゃないかと提案したが、「依頼の報告の方が先よ」と、なんかプロっぽいことを言って断られ、現在に至る。
あと余談だが、依頼者のいる村の門の方にはゴブリン・ロードの首が晒されている、はず。有紗が「コイツの首を外のモンスター達に見せつければ近寄ろうだなんて考えないばすよ」と、本当のところどうなのかわからないようなことを言って依頼主にその首を渡した。無論、首をもらった依頼主はすげー困惑してたけどな。
---「えっ、えっーと、そうですね。あっ、クエストの報酬でしたね!? ただ今お持ちしますので少々…」
「他のは?」
「はい?」
数秒硬直していたサキさんは有紗の姿を気にしながらも仕事に戻ろうとつくり笑顔を浮かべながら報酬を取りに奥に行こうとしたとき、不意に有紗に問いかけられ、足を止めた。
「他のゴブリン依頼は私達がやるから、あったらこっちに回して。アイツらは、私が1匹残らず駆逐してやる!」
「ひっ!? は、はいぃぃぃ…」
サキさんに問いかける有紗の目は巨人に復讐心を抱くエ◯ン・イ◯ーガーのような怒りに満ち溢れていて、その目を向けられたサキさんは完全に有紗にビビっていた。こんなサキさん見たの初めてだ。
「…今日のところはいいわ。報酬は和彦達に渡して。明日、依頼があったらこっちに回しといて。それじゃ」
「……」
有紗はビビるサキさんなど気に留めず、一方的に話を進め、ボーッと様子を見ていた俺達のことも気にせずにそそくさとギルドを後にした。
---それからしばらくは有紗が受けたゴブリンの討伐クエストを受けることになり、いつしか有紗は『小鬼狩り(ゴブリン・スレイヤー)』という二つ名が付き、その仲間である俺達は『ゴブリン・スレイヤーズ』と呼ばれるようになったとかならなかったとか。
ギルドに帰ると、受付カウンターにいたサキさんが声をかけようとしていた。
「……」
が、違和感を感じ言葉が詰まった。その違和感は他の人達も気づいており、そのせいかいつのまにかギルド内は静寂な空気に包まれていた。
「ゴブリンの討伐依頼、完了したわよ。ゴブリンロードもいたけど、なんとか倒しといたわよ」
「……」
有紗がクエストの完了報告するが、サキさんは一向に声が出ない。笑顔もどことなく引き攣っていて、顔色も青くなっている。完全に引いていることを言われずともわかるほどに。
それもそのはず。なにせ有紗の全身にゴブリンロードの返り血が付着して、全身赤くなっていたのだ。
---ゴブリンロードに腹パン1発で勝ってしまった有紗だが、風穴が開いた腹からは濁ったような赤色の血がほぼ塊と化した状態で勢いよく飛散した。
それをモロに浴びた有紗は一瞬にして全身赤く染まってしまった。
近くにいたみのりと女性、そこから少し離れた場所にいる俺にも付着しているが、拭けばすぐに取れる程度なのでなにも問題はないのだが、有紗はもうシャワーを浴びないと落ちないレベルまで被ってしまっている。匂いまで落ちるかはわからんが。
いちおうゴブリンの討伐依頼をクリアし、あの女性の娘さんもなんとか村に送って一件落着したからギルドに帰る前にどっかで水浴びでもしといた方がいいんじゃないかと提案したが、「依頼の報告の方が先よ」と、なんかプロっぽいことを言って断られ、現在に至る。
あと余談だが、依頼者のいる村の門の方にはゴブリン・ロードの首が晒されている、はず。有紗が「コイツの首を外のモンスター達に見せつければ近寄ろうだなんて考えないばすよ」と、本当のところどうなのかわからないようなことを言って依頼主にその首を渡した。無論、首をもらった依頼主はすげー困惑してたけどな。
---「えっ、えっーと、そうですね。あっ、クエストの報酬でしたね!? ただ今お持ちしますので少々…」
「他のは?」
「はい?」
数秒硬直していたサキさんは有紗の姿を気にしながらも仕事に戻ろうとつくり笑顔を浮かべながら報酬を取りに奥に行こうとしたとき、不意に有紗に問いかけられ、足を止めた。
「他のゴブリン依頼は私達がやるから、あったらこっちに回して。アイツらは、私が1匹残らず駆逐してやる!」
「ひっ!? は、はいぃぃぃ…」
サキさんに問いかける有紗の目は巨人に復讐心を抱くエ◯ン・イ◯ーガーのような怒りに満ち溢れていて、その目を向けられたサキさんは完全に有紗にビビっていた。こんなサキさん見たの初めてだ。
「…今日のところはいいわ。報酬は和彦達に渡して。明日、依頼があったらこっちに回しといて。それじゃ」
「……」
有紗はビビるサキさんなど気に留めず、一方的に話を進め、ボーッと様子を見ていた俺達のことも気にせずにそそくさとギルドを後にした。
---それからしばらくは有紗が受けたゴブリンの討伐クエストを受けることになり、いつしか有紗は『小鬼狩り(ゴブリン・スレイヤー)』という二つ名が付き、その仲間である俺達は『ゴブリン・スレイヤーズ』と呼ばれるようになったとかならなかったとか。
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