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第7章「夏休みが終わらない」

第25話「和彦の魔術」

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 「ファイヤー!」

 俺は叫ぶように詠唱した。俺には魔法は使えなかった。だが魔術なら俺にも使えるかもしれない。話を聞く限りだと魔術なら素質とかも必要ないみたいだしな。

 「……」

 しかし枝の先から火の玉どころか煙1つ出てこなかった。

 「…ぷっ」

 するとルイスさんがあの時のバードさんのように笑いを堪えきれなくなっていた。

 「はっははは、いや失礼。なにかいい策でも思いついていたのかと思っていたのですが、まさか一か八かで魔術を使おうなどとは」

 ルイスさんは軽く謝罪の言葉を述べながらも腹を抱え若干涙目になってしまうほどに笑っていた。まさかそこまで笑われてしまうとは。

 たしかに俺の作戦は作戦と呼べるものではなかった。単純な賭けだからな。

 「いいですか? たしかに魔術ならあなたのような微弱な魔力の持ち主にも扱えるかもしれません。ですがそれは鍛錬と知識があってこそです。体内の魔力をどうやってものに移すのか? そのものはどれくらいの容量(キャパ)があるのか? 他にも考えなければいけないことはたくさんありますし、それを理屈でわかったとしても魔力の流れをコントロールできなければ、不発するか誤爆するだけです」

 ルイスさんの解説に俺は納得せざるを得なかった。たしかにそういうことも考えなければいけないはずだが、俺はただ枝の先を見つめ念じて叫んでいただけだ。

 「ついさっき魔法と魔術の違いを知ったあなたがいきなり魔術を使えるわけが…」

 キュイーーーン 

 「ん?」

 「えっ?」

 チュドーーーン

 「うおおっ!?」

 「ッ!?」

 しかしルイスさんが解説する最中、俺が手に持っている枝から赤い玉が出てきた。そしてその赤い玉は勢いよく放たれルイスさんの方に飛んでいった。

 あまりの時間差攻撃に俺は思わず枝を手放してしまった。ライターの火を点けようとして何回かやってたらいきなり火が点いた時ぐらいに驚いたな。

 「ぐわあっ!?」

 時間差攻撃に驚いていたのは俺だけではなくルイスさんも驚きのあまり身体が硬直して動けなくなっているようだ。頭の整理も追いついていなかったんだろう。

 そんなルイスさんは火の玉をモロに喰らった。火の玉はルイスさんに当たると同時に爆発を起こした。

 「そ…そんな…バカ…な…」

 そして、爆発に巻き込まれたルイスさんは最後の一言を言い残し力尽きるのだった。
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