俺の高校生活に平和な日常を

第6章「ようこそ愛ヶ咲島」

第23話「海って最高だな」

　---「お兄ちゃーん、早く早くー！！」

　「分かった分かった。今行くよー！」

　俺が着替え終わって帰ってくると、すでに梓達は浅瀬の方で戯れていた。梓は俺が帰って来るところを見ると、手を振りながら呼んできた。

　俺は急いでみんなの元へ駆け寄って行った。みんな、わざわざ俺を待っててくれたの…

　「んぶすっ！？」

　そう思いながら駆け寄ったその時だった。水に入る手前で足場が崩れ落ちた。俺は体制を立て直すことが出来ず、海にダイブする形で勢いよくつまずいた。

　「ふふふっ♡　お兄ちゃん、引っかかったー！」

　俺がつまずくと梓は嬉しそうに笑い出した。

　「ふふふっ♡　上手いこといきましたね！」

　梓の笑いにつられてみのりも笑い出し、「いえい♡」と言って梓とハイタッチを交わす音が聞こえた。どうやらみんなグルになって俺を落とし穴にはめる算段を立てていたようだ。まあ見事にはめられたがな。

　「ぶはあっ！　くそー、はめられたー！」

　俺は水中から顔を上げると、梓やみのりだけでなく、有紗やイーリスちゃんも声に出さず笑っていた。なんだろう。恥ずかしい思いをしたけれど、みんなが笑ってくれたのがちょっと嬉しく思ってしまい、全く怒りは湧き上がらなかった。

　「ふふふっ♡　和彦君もまだまだ甘いですね！　あんなに綺麗に引っかかるとは思いませんでしたよ」

　みのりは嬉しそうな笑みを浮かべながら俺に近寄って来た。おそらく落とし穴を考えたのはみのりなのだろう。俺が綺麗にはまったものだから、あんなに嬉しそうな笑みを浮かべているのだろう。

　しかし俺も一方的に笑われるだけで終わるつもりはなかった。ちょうどみのりが近づいてきてるし、ここで一矢報いてやろうと悪知恵を働かせていた。

　「…ははっ、甘いのはみのりの方、だっ！！」

　「きゃっ！？」

　悪知恵を働かせた結果、俺はみのりに向かって思いっきり水をぶっかけてやった。両腕いっぱいにすくい上げた水の量が俺が想像するより多く、みのりもあまりの量に驚き、思わず後退りしていた。

　すると、足がもつれたのかみのりは水中で尻もちをついた。その際に水飛沫が激しく飛び散り、俺だけでなく、梓達にも水飛沫がかかり、軽い二次災害が起こった。

　「はははっ！　派手に転んだな！」

　「うーっ、してやられました」

　「ふふふっ♡　みのりさん、大丈夫ですか？」

　「たしかに派手に転んだわね」

　「アンタもまだまだ甘かったみたいね」

　尻もちをついたみのりを見て思わず俺も笑ってしまった。それにつられて梓達も笑い出し、みのりは恥ずかしそうに顔を赤らめた。

　「よくもやりましたね！　えいっ！」

　「うおっ！　まだやる気か！　なら…」

　「きゃっ！　もー、お兄ちゃんってはー！　えいっ♡」

　「…仕方ないわね。えいっ」

　「ッ！？　やったわね！　なら私も負けない、わよ！」

　みのりが負けじと俺に向かって水をかけてきた。俺も負けじとやり返す、と見せかけて梓にもかけてやった。

　それが連鎖を生み、気がつくとみんなを巻き込んでの水かけ合戦に発展していった。俺も含めみんな、楽しそうに水をかけまくり、笑いまくった。

　水も滴るいい美少女達を眺めながら俺は思った。海って最高だなって。