上 下
128 / 445
第4章「実は私」

第36話「家(島)の主人は」

しおりを挟む
 「家?」

 この子は可笑しなことを言うな。別荘ならまだ分からなくもないが確かに彼女はこの島が自分の家だと言い放った。

 「イヤイヤイヤ、嘘でしょ!? だってここ離島だよ!? ここからどうやって学校とか通うワケさ!?」

 この場所から中学校まで具体的な位置までは把握出来ないが数千キロは間違いなくある。もし船があっても一番近い港まで行くのに何時間掛かることやら。それを往復するとなると移動時間だけで1日の3分の1ぐらいは消費してしまうだろうに。

 「愚問ね。魔法が使えるんだから1秒あれば十分だわ」

 「あっ、そっか」

 だがその疑問はアッサリと解決した。この子は魔女の娘。魔法さえ使えれば世界中のどこにいたって学校なんて一瞬で行けるハズだ。俺はその事をスッカリと頭の中から抜けていた。

 「ん? 魔法?」

 その時、ひと筋の希望の光が見えた気がした。これ、ひょっとしたら帰れるかもしれない。

 「イーリスちゃん! 頼みが、あばばっ!?」

 だが彼女に頼みを聞いてもらおうと無意識に彼女の両肩を掴もうとすると身体中に再び電流が走る。

 「な、何すんだよ!?」

 流石に今のは俺怒っていいよね!? こっちは真剣な話をしようとしたのに何だよその対応!

 「どうせ転移魔法で帰してくれって言いたいんでしょ? それよりもまずやらなければいけないことがあるんじゃないかしら?」

 「? やんなきゃいけないこと?」

 しかし彼女は真剣な眼差しで俺にそう言ってきた。帰るよりも先にやらなきゃいけないこと…あっ、そうか。

 「その超能力っていうもんを止めなきゃいけねーんだろう?」

 「んっ? 今の声…」

 俺が言おうとしたことを後ろから誰かが代弁してくれた。その声は聞き覚えのある声だった。

 「まさかこんな所で会うとはなー」

 「バードさん!」

 後ろを振り向くと羽を羽ばたかせ滞空しながらこっちを見ている青い小鳥が居た。

 「あっ、お兄ちゃん。気がついたんだ!? よかったー」

 そしてバードさんの後ろから梓が心配そうに声をかけてきた。とうやら2人(うち一羽)はちょうど話のいいタイミングで部屋に入ってきたようだ。

 「話は(部屋の)外で聞かせてもらったぜー。中々厄介な状況みたいだな?」

 バードさんは部屋に入ってくるなり早速話にずけずけと割って入ってくる。中々に図々しい奴だ。

 「お兄ちゃん、大丈夫? ごめんね。まさかお兄ちゃんが来てるなんて知らなかったから」

 それに比べ我が自慢の妹は真っ先に俺の心配をしてくれる。さっきの事をよほど気にしてくれているようだ。

 「いや、俺の方こそ驚いたよ。2人が居るなんて思ってなかったしその上、ここが他人ひとん家だとは想定外だよ」

 「私はあなたみたいなマヌケがここに侵入したことが今でも信じ難いぐらい想定外よ」

 俺が気を遣って弁明しようとしている傍ら側で皮肉を言い出すイーリスちゃん。マヌケは否定し難いが他人に言われるとなんか腹がたつ。

 「それよりもとりあえずその超能力が使えるって人の所まで案内しなさい」

 「そりゃあいいけど、なぜ命令口調!?」

 その上彼女は明らかに俺を下に見ている。まるで俺は彼女の使い魔のようじゃないか!? 友達の兄貴をそこまで下に見れるものかね? しかも俺の反論に対し彼女はふんと鼻を鳴らしてそっぽを向く。塩対応もいいとこだ。

 「っていうか、どうにか出来んのかよ?」

 「どうにかしなきゃいけないのよ。このまま他人の家に居座られてあちこち壊されたらたまったもんじゃないわよ」

 しかし俺が疑問を投げかけるとあっさりと答えてくれた。今一番困っているのは俺ではなくこの島(家)の住人であるイーリスちゃんだ。自分に被害がこうむるなら放ってはおけない。

 とにかく俺は、イーリスちゃん達を同行させ2人のいる所へと戻って行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

ハーレムに憧れてたけど僕が欲しいのはヤンデレハーレムじゃない!

いーじーしっくす
青春
 赤坂拓真は漫画やアニメのハーレムという不健全なことに憧れる健全な普通の男子高校生。  しかし、ある日突然目の前に現れたクラスメイトから相談を受けた瞬間から、拓真の学園生活は予想もできない騒動に巻き込まれることになる。  その相談の理由は、【彼氏を女帝にNTRされたからその復讐を手伝って欲しい】とのこと。断ろうとしても断りきれない拓真は渋々手伝うことになったが、実はその女帝〘渡瀬彩音〙は拓真の想い人であった。そして拓真は「そんな訳が無い!」と手伝うふりをしながら彩音の潔白を証明しようとするが……。  証明しようとすればするほど増えていくNTR被害者の女の子達。  そしてなぜかその子達に付きまとわれる拓真の学園生活。 深まる彼女達の共通の【彼氏】の謎。  拓真の想いは届くのか? それとも……。 「ねぇ、拓真。好きって言って?」 「嫌だよ」 「お墓っていくらかしら?」 「なんで!?」  純粋で不純なほっこりラブコメ! ここに開幕!

処理中です...