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20 二学期が始まった
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長い夏休みが終わり、日焼けした子ども達が月見が丘小学校に帰って来た。ぽんぽこ狸の田畑校長は、校門に立って皆と挨拶している。高学年の子どもとかは、誘惑の多い地区なので、夜更かしをして徘徊をしたりする事もある。こうして、校門で、一人一人の顔を見ながら、挨拶していると、問題を抱えている子どもを発見しやすい。
「今年の夏休みは、大きな問題が無くて良かった」
全員が無事に2学期を迎えられたことを田畑校長は嬉しく思い、ぽんぽこ腹鼓を打っていると、1年1組の方から大きな声があがった。
「何事だろう!」と駆けつける。
「わぁ! 教室に入らへんわ!」
1年1組の廊下には、一畳分もの大きな大阪城の模型が置いてあった。だいだらぼっちの大介くんと、塗り壁の孫の堅固くんが共同で作った工作だ。
「これは、教室に入れるのは無理ですね。作品展をする講堂に運んでおきましょう」
堅固くんも大介くん程では無いが、小学生の高学年程の背がある。二人で大きな模型を持つと、田畑校長と一緒に講堂へ置きに行く。
「工作って、あんなのを作らなきゃいけなかったんか?」
8月31日にお父ちゃんに作ってもらった木の貯金箱に、絵具で色を塗っただけの自分の工作が手抜きに思えて、忠吉くんは恥ずかしくなった。他の生徒も、自分の工作がお粗末に感じて、ざわざわする。
「さぁ、始業式が始まりますよ。廊下に並んで下さいね」
背の低い順に並ぶと、小雪ちゃんと豆花ちゃんが先頭になる。夏休みにプール通いした豆花ちゃんの小麦色の手と、雪女なので野外プール通いなどできなかった真っ白な小雪ちゃんの手を繋ぐ。
「スイミングスクールで、ばた足できるようになったんや」
こそっと自慢する小雪ちゃんに、水系の妖怪である小豆洗いの豆花ちゃんは、良かったなぁと励ました。
鈴子先生は、1年1組の全員が揃って2学期を向かえられたので、ホッとしていた。妖怪の保護者達が新米の自分に不安を抱いて、他に転校させたりするのではと心配していたのだ。
講堂での始業式、田畑校長の2学期の訓示を聞きながら、1組の生徒がガヤガヤしているのを注意する。
「運動会? 社会見学? なんやろう?」
人間の親に育てられた子ども達には、ごく普通のことでも、妖怪の親に育てられた子ども達には耳慣れない行事が多い。鈴子先生は、2学期も大変そうだと気を引き締めた。
教室に帰ると、提出物を集める。1年生は夏休みの宿題を忘れる子は少ないと、2組と3組のベテラン先生が言っていた通り、宿題忘れはいなかったが、あゆみや雑巾を忘れて来た子が数人いた。
「明日、あゆみと雑巾を持って来て下さいね」
忘れた子どもに注意する。あとは、自由研究や、工作などの発表会の準備だ。絵日記は、鈴子先生がコメントを赤ペンで書き込んでから、教室の後ろに貼る。
「皆さん、自分の工作を持って、講堂へ行きましょう。1年1組と書いてある机の上に、自分の名前を書いた紙を敷いて、その上に工作を置くのですよ」
夏休みの工作を講堂へ展示して、全学年で見学するのだ。1年生のは、貯金箱やお菓子の空き箱にセロハンを貼った水族館、女の子達は手芸のキットで小箱とかを作っていた。
その中で、大介くんと堅固くんが作った大阪城の模型は人目を引いていた。
「これ、ほんまに1年生が作ったんかな?」
上の学年の生徒も疑問を持っていたが、二人が名前を書いた紙を模型の下に敷こうと、軽々と持ち上げるのを見て納得する。
塗り壁の孫の堅固くんは、将来はお父ちゃんと同じ左官屋さんになろうと思っている。だいだらぼっちの大介くんは、力仕事ならなんでもばっちりだ。仲が良い二人は、夏休みの工作を二人で仕上げたのだ。
「ほんまに良くできてるなぁ」クラスメイトに褒められて、いつも無口な堅固くんは嬉しそうに笑った。
「これ、家から持って来たん?」
いくら大介くんが力持ちだとはいえ、畳一畳分の模型を運ぶのは大変だろうと、忠吉くんは首を傾げる。
「いや、堅固くんのお父ちゃんが学校までトラックで運んでくれたんや。俺と堅固くんは門からここまで運んだだけだぁ」
クラスメイトが褒めていると、どうしても反対の事を口にしたくなるのが天の邪鬼の孫の良くんだ。
「こんなん大きいだけで、何も面白くもないわ」
日頃、温厚な堅固くんだが、カチンときた。しかし、ワッハッハッハと大介くんが大笑いする。
「ほんまや! 来年は、中に入られる大阪城を作ろうなぁ~」
がっしりと肩を組まれた堅固くんは「そやなぁ」と、どのくらいの大きさにしようかと大介くんと熱心に話し合う。
「あのぅ、あんまり大きい模型を作ったら、トラックでも運ばれへんようになるよ」
座敷わらしの孫の詫助くんは、問題になりそうな芽を摘んでいく。1年1組の級長は猫娘の珠子ちゃんだが、裏の級長は詫助くんかもしれない。
「今年の夏休みは、大きな問題が無くて良かった」
全員が無事に2学期を迎えられたことを田畑校長は嬉しく思い、ぽんぽこ腹鼓を打っていると、1年1組の方から大きな声があがった。
「何事だろう!」と駆けつける。
「わぁ! 教室に入らへんわ!」
1年1組の廊下には、一畳分もの大きな大阪城の模型が置いてあった。だいだらぼっちの大介くんと、塗り壁の孫の堅固くんが共同で作った工作だ。
「これは、教室に入れるのは無理ですね。作品展をする講堂に運んでおきましょう」
堅固くんも大介くん程では無いが、小学生の高学年程の背がある。二人で大きな模型を持つと、田畑校長と一緒に講堂へ置きに行く。
「工作って、あんなのを作らなきゃいけなかったんか?」
8月31日にお父ちゃんに作ってもらった木の貯金箱に、絵具で色を塗っただけの自分の工作が手抜きに思えて、忠吉くんは恥ずかしくなった。他の生徒も、自分の工作がお粗末に感じて、ざわざわする。
「さぁ、始業式が始まりますよ。廊下に並んで下さいね」
背の低い順に並ぶと、小雪ちゃんと豆花ちゃんが先頭になる。夏休みにプール通いした豆花ちゃんの小麦色の手と、雪女なので野外プール通いなどできなかった真っ白な小雪ちゃんの手を繋ぐ。
「スイミングスクールで、ばた足できるようになったんや」
こそっと自慢する小雪ちゃんに、水系の妖怪である小豆洗いの豆花ちゃんは、良かったなぁと励ました。
鈴子先生は、1年1組の全員が揃って2学期を向かえられたので、ホッとしていた。妖怪の保護者達が新米の自分に不安を抱いて、他に転校させたりするのではと心配していたのだ。
講堂での始業式、田畑校長の2学期の訓示を聞きながら、1組の生徒がガヤガヤしているのを注意する。
「運動会? 社会見学? なんやろう?」
人間の親に育てられた子ども達には、ごく普通のことでも、妖怪の親に育てられた子ども達には耳慣れない行事が多い。鈴子先生は、2学期も大変そうだと気を引き締めた。
教室に帰ると、提出物を集める。1年生は夏休みの宿題を忘れる子は少ないと、2組と3組のベテラン先生が言っていた通り、宿題忘れはいなかったが、あゆみや雑巾を忘れて来た子が数人いた。
「明日、あゆみと雑巾を持って来て下さいね」
忘れた子どもに注意する。あとは、自由研究や、工作などの発表会の準備だ。絵日記は、鈴子先生がコメントを赤ペンで書き込んでから、教室の後ろに貼る。
「皆さん、自分の工作を持って、講堂へ行きましょう。1年1組と書いてある机の上に、自分の名前を書いた紙を敷いて、その上に工作を置くのですよ」
夏休みの工作を講堂へ展示して、全学年で見学するのだ。1年生のは、貯金箱やお菓子の空き箱にセロハンを貼った水族館、女の子達は手芸のキットで小箱とかを作っていた。
その中で、大介くんと堅固くんが作った大阪城の模型は人目を引いていた。
「これ、ほんまに1年生が作ったんかな?」
上の学年の生徒も疑問を持っていたが、二人が名前を書いた紙を模型の下に敷こうと、軽々と持ち上げるのを見て納得する。
塗り壁の孫の堅固くんは、将来はお父ちゃんと同じ左官屋さんになろうと思っている。だいだらぼっちの大介くんは、力仕事ならなんでもばっちりだ。仲が良い二人は、夏休みの工作を二人で仕上げたのだ。
「ほんまに良くできてるなぁ」クラスメイトに褒められて、いつも無口な堅固くんは嬉しそうに笑った。
「これ、家から持って来たん?」
いくら大介くんが力持ちだとはいえ、畳一畳分の模型を運ぶのは大変だろうと、忠吉くんは首を傾げる。
「いや、堅固くんのお父ちゃんが学校までトラックで運んでくれたんや。俺と堅固くんは門からここまで運んだだけだぁ」
クラスメイトが褒めていると、どうしても反対の事を口にしたくなるのが天の邪鬼の孫の良くんだ。
「こんなん大きいだけで、何も面白くもないわ」
日頃、温厚な堅固くんだが、カチンときた。しかし、ワッハッハッハと大介くんが大笑いする。
「ほんまや! 来年は、中に入られる大阪城を作ろうなぁ~」
がっしりと肩を組まれた堅固くんは「そやなぁ」と、どのくらいの大きさにしようかと大介くんと熱心に話し合う。
「あのぅ、あんまり大きい模型を作ったら、トラックでも運ばれへんようになるよ」
座敷わらしの孫の詫助くんは、問題になりそうな芽を摘んでいく。1年1組の級長は猫娘の珠子ちゃんだが、裏の級長は詫助くんかもしれない。
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