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第三章 防衛都市

水掛け婆になった気分

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 五階の転移陣から六階を攻略していく。

「ああ、そういえば六階から建物があったんだな」
 ジャスは、暗闇ダンジョンは一度ぐらいしか潜っていないみたい。私も遠慮したいから分かるよ。

 建物と言っても小屋程度だし、そこを迂回しても良いんじゃない? そう思ったけど、脳内地図マッパエムンディで見たら、四角い点がある。

「宝箱がたまにあるから、小屋を探さなきゃいけないのさ。ただ、前の冒険者が開けた後だと、あまり期待は出来ないけどな」
 
 ジャスと私は気乗り薄だけど、ルシウスに宝箱の位置を教える。

 小屋の中には、スケルトンとグールが待ち構えていた。

「えぃ!」と浄水を柄杓で掛ける。

 これは楽だね! 浄水を掛ければ、討伐完了。

「アレク……」とルシウスが少し残念そうだけど、宝箱を見つけてご機嫌だ。

「ああ、下級回復薬かぁ」
「まぁ、そんな物だろうな!」
 
 私とジャスは、サッサと十階まで踏破して、暗闇ダンジョンからおさらばしたい気分。



 それなのに、ジャスに裏切られた! 七階は良かったんだけど、八階にはお屋敷が建っていたんだ。

「九階への階段は、何故か二階にある。だから、この屋敷は攻略しないといけないのさ」

 下への階段が二階にあるのって、変だよね! 脳内地図マッパエムンディで確認すると、確かに二階にあった。

「あれ? 地下室があるんだけど……これって隠し部屋かも?」

 言わなきゃ良かったよ! モンスター部屋は、私の浄水掛けとルシウスの無双でクリアしたんだ。
 ボスは、スケルトン騎士だった。まぁ、ルシウスがピカピカの剣でやっつけたけどね。

「おおお! ピカピカの斧だ!」
 そう、これが見つかってから、ジャスが調子に乗ったんだよ。

 ルシウスのピカピカの剣とジャスのピカピカの斧! 二人で楽しそうに無双している。

 九階からゴースト系も出てきたけど、ピカピカ無双は止まらない。
 スケルトンは、剣や武具をドロップする事が多い。グールは、魔石や下級回復薬。そして、ゴーストは魔石と下級と中級回復薬をドロップする。たまに聖水もだけど、これは私には不要だね。



 十階は、また墓場だ。それに、古びた教会が建っている。ホラーな雰囲気を盛り上げるように鐘が寂しそうに鳴る。

 脳内地図マッパエムンディで調べると、ここも教会の中に階段がある。

「ううん? 井戸があるけど……」

 教会の裏に井戸があり、隠し部屋になっている。

「これって、この釣瓶で下りるの? 下でスケルトンとグールが待ち構えているんだけど……諦めよう!」

 でも、二人はやる気満々だ。

「ここは、皆も知らないと思う。つまり、お宝が期待できるんだ。アレク、ピカピカのナタか弓かもしれないぞ!」

「いや、浄水をつけたら同じ効果があるから、必要ないよ」と遠慮しておく。

 でも、二人は諦めない。脆そうな釣瓶の縄に手を掛けている。

「縄なら持っているから、そっちにしなよ! それと、待ち伏せされているから、浄水を掛けておく」

 桶いっぱいの浄水を掛けたら、ほとんどの魔物は消えた。

「おっ、ボスは司祭だ!」
 司祭のゴーストってあるんだね。二人は、これは期待できると喜んでいるけど、井戸の底に降りなきゃいけないんだよ。

「縄を括って、下へ……」なんて言っている隙に、二人は飛び降りた。

「グァァァァ!」と怒りの声を上げている司祭のゴーストに、ピカピカ剣とピカピカ斧で攻撃する。

「なかなかしぶといな!」
 これまでの暗闇ダンジョンの魔物は、一撃だったけど、司祭ゴーストの周りには黒い闇が取り巻いている。

「上から浄水を掛けるよ!」
 バシャン! と浄水を掛けたら、一瞬だけ黒い闇が消える。そこを見逃すルシウスとジャスではない。

「グァァァァ……!」と司祭のゴーストは消えた。神様ガウデアムス、ちょっと趣味が悪いよ!

「おっ、宝箱をドロップしたぞ!」
 ルシウスは嬉しそうだけど、先ずは上がって来い。
 
 縄を落として、荷物持ち達に二人を引っ張り上げて貰う。それから、荷物持ち二人を下ろして、ドロップ品を拾わせる。

「何かな?」ルシウスが期待に満ちた目で宝箱を見ている。

「鑑定!」を掛けてから開けると、宝石がついた金鎖がジャラジャラ! やはり司祭って金持ちだな。清貧とか縁がないのが、女神様クレマンティアにクソと呼ばれる原因だ!

 十階の転移陣前のボスは、神官だった。司祭に比べたら、しょぼいね。ドロップ品は、回復薬と聖水!

「さぁ、帰ろう!」もう二度と御免だよって気分なのに、二人は「また潜ろう!」と笑っている。

 ピカピカの剣をルシウスにあげたのが間違いだったよ! それに、ジャスにピカピカの斧を見つけたのも大失敗!

 地上に戻って、浄化ピュリフィケーションを全員に掛ける。ほのかに漂う腐った汁の匂いなんて嫌だからね!

「これらを精算してくれ!」
 ピカピカの斧と宝箱以外は、全部売る!

 精算の間にエールだよ!
「なぁ、明日も暗闇ダンジョンに潜ろうぜ!」
 ジャスは、まだピカピカの斧を使い足りないみたいだ。
「アレクがいるなら、十五階まで行けそうだ!」
 グィッとエールを飲み干して、ドンとジョッキをテーブルに置く。

「俺は、暗闇ダンジョンはもう御免だ!」
 精神耐性があっても、苦手な物は苦手! それに、ドロップ品にも興味が惹かれないからね。聖水とか回復薬は、自分が作った方が高性能なんだもん。

「アレク、下の階では上級回復薬もドロップするんだぞ」
 ルシウスが誘惑してくるけど……当分は御免だよ!

「そのくらいなら、食物ダンジョンの十五階を目指したい」
 あっ、ルシウスがやさぐれている。ゴールデンベアに遭遇したのに、食物ダンジョンだからハチミツがドロップしたんだ。しまったなぁ!

「黄金の毛皮……」
 虚な目になっているルシウスの背中を、ジャスがバシンと叩く。

「宝箱を見つけたじゃないか!」
 本当にルシウスってお金大好きだね。一瞬で浮上したよ。

「明日は休んで、明後日は迷宮ダンジョンに潜ろう!」

 初心者用は、迷路ダンジョンだったけど、中級者用は迷宮ダンジョンになるの?

「ハハハ、大きな宮殿の遺跡がダンジョンになっているのさ! ここは、下から上に登るパターンだ」

 それって、一階が一番大変そうだけど? 上は面積が狭くなるんじゃないの? 色々と疑問で頭がグルグルになったけど、潜ってみればわかるよね!
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