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第三章 防衛都市

食物ダンジョン十階を目指そう 1

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 転移陣で地上に戻り、荷物待ちの背負い籠から、トレントからドロップした肉、ギルドに依頼があるオレンジ、林檎、それとロイヤルゼリーの瓶を退けて、周りの商人に売る。

「アレク、欲しい物は退けておけよ!」

 ポポとバナナと林檎とオレンジ、そしてメープルシロップは少し欲しい。
 袋に入れて、ロイヤルゼリーと中級薬草と一緒にルシウスに渡す。

「ギルドに納める品と一緒に預かって貰うぞ」
 半券を貰って、やっと食事だ。

「あれっ? 売った代金は?」
 屋台でエールでパンを齧りながら、気がついた。
「あれだけの食品をすぐに勘定は出来ないさ。後で貰う」

 ふうん? いつも金勘定はシビアなルシウスなのに、変なの?

 疑問が顔に現れていたみたい。ジャスに笑われた。

「食物ダンジョンの引取値段は、あそこに書いてあるだろう! ギルドの依頼品以外は、あの表のまんまなのさ」

 なるほどね! それにしても、ルシウスとジャスの食べる速度、速すぎるよ! 
 荷物待ちの四人は、各自持ってきたパンを食べたり、屋台の焼き串を食べている。大人だし、面倒をみなくて良いのは楽だ。


「よし! 十階まで頑張るぞ!」
 昼休憩を終えて、五階の転移陣に行く。

「六階から花とキノコが出る。キノコは、胞子に毒があったり、眠らされるから注意しろ!」
 
 ふうん、ルシウスの注意を聞き流していたけど、花って私のイメージと違いすぎるよ!

「あれって化け物じゃん!」
 全く花とは違うよ! ラフレシアみたいだけど、根が脚みたいで、枝で攻撃してくる。

「トゲに気をつけろ! 毒があるぞ!」

 バラっぽい花だけど、バラだとは認めたくない。

「メシベを攻撃したら良いのさ!」
 矢でメシベを貫くと、消えた。

「矢と相性が良いかもな!」
 周りにバラの化け物がいっぱいだ。ジャスにおだてられたから、矢でメシベを攻撃していく。

 二人は斧で叩きつけているけどね。ワイルドさは負けるけど、討伐数は勝ったかも。

 ドロップ品は、香料とローズヒップの袋、バラの花弁のジャム、そして何故か紅茶の袋も。神様ガウデアムスは、絶対に遊びながら設定を考えたと思う。

「花のドロップ品は、高価買取りが多い!」
 相変わらずルシウスは金の亡者だよ。でも、クランが作れたら良いのは、ちょっと分かってきた。

 中級者用のダンジョン、十階までなら日帰りでも行けるけど、ここから十五階とかなると泊まりが必要になる。

 セーフゾーンがあると、これもジル達から聞いたけど、他の冒険者達と一緒だと見張りも必要になるからね。相変わらず、魔物より冒険者の方が注意が必要だ!
 つまり、人数が多くないと、十五階には達せられないのだ。

 それに、その間、宿屋を借りておくとか、戻った時に宿が満室だとか、クランがあれば心配しなくて良い。

 それに……初心者の冒険者を育成できるんじゃないのかな? ジャスに甘い! って笑われそうだけどね。

 先ずは、銀級になる事! そしてお金だ! だって、家を買うか借りる資金、そして維持する為に人を雇わないといけないからね。

 そんな事を考えながら、六階を進む。林から森っぽくなった。

「嫌な感じだなぁ」
 ジャスじゃなくても、ヴリシャーカピが好きそうな環境だと眉を顰めたくなるよ。

 ヴリシャーカピだけなら楽勝だけど、トレントや花も攻撃してくるから、厄介だ。

 脳内地図マッパエムンディで確認したら、大きな群れがいる。

「あちらからヴリシャーカピの群がくるぞ! その上、トレントもやってくる」

 ルシウスは、リーダーとして指示をするのも上手い。荷物持ちを集めて、私にバリアを張らせる。

「そこを動かなければ、攻撃は受けない! アレクは、ヴリシャーカピ! ジャスは私とトレント、その後でヴリシャーカピだ!」
 
 二十頭以上のヴリシャーカピ! こんな時は、ボスからやるに限る。

遮断ディスコンティ!」で一撃する。後は「バリア!」で十分だよね。

「おお、アレク! やるじゃないか!」
 ジャスに背中をバン! と叩かれたよ。油断しちゃった。

「俺に触ると手を無くすぞ!」と警告しておくけどね。

 林檎が山になっているから、ルシウスはホクホクだ。ギルドの依頼は、これで十分だろう。

 ヴリシャーカピは、肉が多いけど、バナナとかポポはまだ理解できるが、何故、砂糖? 

「ボスは偶に変わった物をドロップする。しかし、砂糖は初めてだ。まぁ、高く売れるからラッキーだな!」

 深く考えたら負けだ! 神様ガウデアムスの気紛れだからね。



 七階も六階と同じ感じだったけど、ファイヤーウルフの群れが加わった。

「名前が嫌なんだよな!」

 馬鹿な奴らを思い出して、ナタでぶった斬る。やはり一人よりも三人だから、討伐は楽だ。ファイヤーウルフのドロップ品、肉だけど?

「ウルフの肉って食べられるの?」
 肉食獣の肉って不味そうなんだけど?
「普通に食べるけど、食物ダンジョンだからな!」
 鑑定したら、アルミラージやビッグエルクの肉もある。不思議設定だよ!

 段々、食物ダンジョンにも慣れてきた。矢は、花の時に使う! 魔法はボス戦に残しておく作戦だ。
 トレントは、ルシウスとジャスに任せる。私は、その間に魔物討伐!

「あっ、キノコだ!」
 これも私のイメージするキノコとは大違い。子どもぐらいの大きさで、ぶっふん、ぶっふん、飛びながら攻撃してくる。

「アレク、傘と軸の間が急所だ!」

 キノコの胞子には毒や眠りの効果があるので、近接戦のルシウスとジャスより、矢か魔法の攻撃の方が良い。つまり、私がキノコ係だ。

 矢で射ると、消える。でも、どんどん仲間を呼んで増えてくる。

「早く倒さないと囲まれるぞ!」
 ジャスに言われなくてもわかっている。それに、トレントとヴリシャーカピもやってきた。

「バリア!」を横に放って、キノコを全滅させる。

 トレントは、二人に任せて、ヴリシャーカピのボスをやっつける。他のは、一緒に討伐したよ。

「やれ、やれ、もっと弓矢の練習が必要だな。スピードアップしなきゃ! キノコに囲まれるところだった」

 むぅう! 確かに連射速度は課題だけど、ジャスに言われると腹が立つ。

 キノコのドロップ品、トリュフにルシウスが小躍りしている。きっと凄く高いのだろう。それと、松茸、マッシュルーム、舞茸! シチューにしたら美味しそう。



 八階からは、ビッグベアも出てきた。ドロップ品が肉とハチミツ! 

 ここで少し休憩! 水を飲んで、林檎を齧る。

「ジューシーで美味しい!」
 ジャスとルシウスは、林檎は食べない。肉と酒だけで、栄養は偏らないのか?

「アレク、魔力の減りはどうだ?」

「まだまだ大丈夫!」
 一人だと大変だったけど、三人だとやはり楽だ。

「それなら、十階まで飛ばすぞ!」
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