上 下
60 / 71
第三章 防衛都市

色々と作ってみよう

しおりを挟む
 今日はダンジョンはお休みだ。昨日、馬鹿に絡まれて疲れたからね。

「よし! 下級回復薬を作ろう!」
 少しゆっくり寝たから、ルシウスとジャスはいなかった。もう仕事をしているのかもね。

「おや、遅いねぇ。今日はお休みかい?」
 金熊亭の女将さんにも慣れてきた。あちらも私の食べる量が分かっている。

「明日は、肉を詰めたパンを五個作って欲しい」
 料金は先払いしておく。ジル達がそこで全部食べなくても、夕食に回すだろう。

「あああ……もしかして一階からなのか?」
 しまった! 余計な事を言った自分を殴りたい。
 がっかりしながら、朝食を取り、部屋から錬金釜や下級薬草や空瓶を待って、中庭に出る。

「薪を持ってきてくれ!」
 女中にチップを渡して、薪を持って来てもらう。

 今日は、二回、下級回復薬を作った。つまり三十本! 前のは、ルシウスがカインズ商会に売ってくれた。これは、多分、ギルド行きかな? ルシウスに任せよう!

 荷物を部屋に置いて、防衛都市カストラを探索しよう! まだ、カインズ商会と武器屋とギルドしか知らないからね。

 服は交易都市エンボリウムで買っている。欲しいのは、食料の備蓄だね。城から持ち出したオレンジやパンも残り僅かになったからさ。

 それと、何か野菜とかスイーツが食べたい。ルシウスやジャスと一緒だと、肉、エール、肉だからさぁ。

 あっ、エールは飲んでも良いかもね! 下級回復薬を二回分作ったんだし!

「うん? もう少し大きな鍋があれば便利かも? あああ、ロイヤルゼリーで何か作りたかったんだ!」

 アイテムボックスの中にロイヤルゼリーの瓶が二つある。これ、高価買取りされるけど、何かに使えそうなんだよね。

 屋台でエールと焼き串を買って、横のベンチで食べながら、神様ガウデアムスの知識と女神様クレマンティアの知識を調べる。

 ダンジョンでドロップしたロイヤルゼリーだから、神様ガウデアムスの知識かな? と思ったけど……相変わらず細かい文字の注意書きが多くて読みずらい。

 回復薬関係は、女神様クレマンティアの知識で知ったから、こちらを探索する。
 うん、ロイヤルゼリーの使い方を見つけた。

「なるほどねぇ! 花街のお姉様方が欲しがるから、高価なんだね!」

 飲むとお肌がピチピチになるそうだ! まぁ、これを探しているわけじゃないんだよ!

「えええっ! 準竜の肝がなくても、ロイヤルゼリーで中級回復薬ができるの?」

 これは、試してみたい! 木のジョッキを屋台の親父に返して、錬金術の鍋を探しに行く。ついでにギルドで中級薬草を買いたいけど、ギルドは鬼門なんだよなぁ。

「そうだ! カインズ商会なら色々取り揃えていそう!」
 やはり知らない店よりも、知っている店だよね。

「アレクさん!」
 えっ、ハモンドさんの熱烈歓迎を受けた。回り右して出ていきたい気分。

 でも、素早く奥の部屋へと案内された。グレアムさんも出てきちゃったよ。

「アレクさん、この前の下級回復薬、凄く好評なのです。それで、次の納入時期について話し合いたいと考えていたのですが……」

 今朝、三十本作ったけど、あれはギルドに納入する予定なんだよね。

「ギルドマスターが防衛都市カストラの北に沸いたダンジョンの制覇を目指した探索隊を派遣するそうです。だから、下級回復薬を納入して欲しいと言われています」

 冒険者ギルドの言いなりになる気は無いけど、オークが沸くダンジョンは潰して欲しいからね。

「それは、勿論ですが……探索隊以外にも優れた下級回復薬が必要なのです」

 ハモンドさん、粘り強い。あっ、良い事考えた。

「あのう、薬師が作る中級回復薬とダンジョンからドロップした中級回復薬を見せて頂けませんか? これから中級回復薬を作ろうと考えているのです」

 グレアムさんとハモンドさんが、パッと笑顔になる。

「いや、作ってみようと思っているだけですから……」と慌てて言い訳をするけど、ハモンドさんが従業員に中級回復薬を二つ持って来させる。

『鑑定!』と心の中で唱えて、二つの瓶を調べる。
 ふむ、ふむ、片方は薬師が作った中級回復薬(劣)。色も黄色く濁っている。
 片方は、ダンジョンからドロップした中級回復薬(並)。少しだけ濁っているな。

「それで、中級回復薬を作ったら、グレアム商会に売って頂けるのでしょうか?」
 
 うっ、ハモンドさんの圧が強い。ルシウスを連れてくるべきだった。

「出来たら、持ってくる」全部とは限らないけどさ。

「それと、もう少し大きな鍋と中級薬草と空瓶が欲しい。お金はちゃんと支払うから」

 ただ程高い物はないからね。

「まぁ、まぁ、そんな事言わずに……」

 大きな鍋と中級薬草、そして空瓶の入った箱を笑顔で渡されちゃったよ。

 果物やスイーツを探すつもりだったけど、荷物が多くなったから宿に戻る。

 それと、私って小心者だから、中級回復薬を作って納入しなきゃいけない気になった。

 部屋から道具を持って中庭で、中級回復薬を作ってみる。オーソドックスな中級回復薬は、中級薬草を刻んで、浄水で煮出し、準竜の肝を干したのを砕いて混ぜるんだ。
 ロイヤルゼリーは、最後の竜の肝の代わり。

 綺麗な黄色の中級回復薬(優)が二十本、出来た。秀じゃないのは、準竜の肝じゃないからだろう。

 ついでに、残っている下級薬草で下級回復薬を十本ほど作っておく。これで、薬草の在庫は全て使い切った。

 道具と作った回復薬を部屋に置く。下級回復薬が四十本、それと中級回復薬が二十本。

「今日は、これでおしまいにしよう!」

 お昼は、肉の串焼きとエールで済ませたので、夜は野菜が食べたい。それと、アイテムボックスの中の食料品を補充しなくては!

 金熊亭の近くは、繁華街になっている。食べ物屋は多いけど、果物は売っていないのかな?

 こんな時は女将さんに聞いてみるに限る。

「果物は、朝に買う方が良いんだよ。それと、スイーツなら『アンジェラ』が評判良いよ。近いしね!」

 オレンジなど食べやすい果物を女将さんに一金貨ゴルディ分買ってもらう事にした。これは、明日の朝ごはんで渡してもらう。

 スイーツ店、ちょっと冒険者の格好では入り難いけど、革の胸当てを外した普通の格好だと、スリに狙われちゃう。

「いらっしゃいませ」
 可愛いヘッドピースの従業員が笑顔で出迎えだ。

 前世のケーキ屋を想像していたけど、こちらには冷蔵庫がないみたい。つまり、焼き菓子オンリー! でも、スイーツは買うよ。

 でも、どれにするか悩む。見た目は、どれも同じに見えるからね。

「あちらで食べられます」
 うっ、レースのカーテンに白いテーブルに椅子。
 従業員さんが愛想良いのは、サーシャの見た目が綺麗だからか?

「それでは、一つずつお願いしよう。それとお茶を」

 スイーツ、高価だけど、自分へのご褒美だよ。今日は、冒険者はお休みしたけど、薬師としては働いたからね。

「ううん、美味しい!」
 ぱぁって笑顔になると、何故か従業員さん達が「きゃあ!」と嬌声をあげている。

 四種類食べて、一番気に入ったのは、バナナの焼き菓子だ。二番目は、オレンジが薄く切って上に置いてあるの。それに、皮を刻んで生地に練り込んである。
 この二つは沢山買おう! 

『アンジェラ』で金貨五枚も使っちゃった。でも、アイテムボックスの中に入れておけば、悪くならないし、疲れた時にはスイーツだよね!

 夜は、流石にお腹いっぱいで、お風呂に入って寝たよ。焼き菓子、四個は多かったな。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

俺たちの結婚を認めてくれ!~魔法使いに嵌められて幼馴染に婚約破棄を言い渡された勇者が婚約したのはラスボスでした~

鏡読み
ファンタジー
魔法使いの策略でパーティから外れ一人ラストダンジョンに挑む勇者、勇者太郎。 仲間を失った彼はラスボスを一人倒すことでリア充になると野心を抱いていた。 しかしラストダンジョンの最深部で待ち受けていたラスボスは美少女!? これはもう結婚するしかない! これは勇者と見た目美少女ラスボスのラブコメ婚姻譚。 「俺たちの結婚を認めてくれ!」 ※ 他の小説サイト様にも投稿している作品になります 表紙の絵の漫画はなかしなこさんに描いていただきました。 ありがとうございます!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

百花繚乱 〜国の姫から極秘任務を受けた俺のスキルの行くところ〜

幻月日
ファンタジー
ーー時は魔物時代。 魔王を頂点とする闇の群勢が世界中に蔓延る中、勇者という職業は人々にとって希望の光だった。 そんな勇者の一人であるシンは、逃れ行き着いた村で村人たちに魔物を差し向けた勇者だと勘違いされてしまい、滞在中の兵団によってシーラ王国へ送られてしまった。 「勇者、シン。あなたには魔王の城に眠る秘宝、それを盗み出して来て欲しいのです」 唐突にアリス王女に突きつけられたのは、自分のようなランクの勇者に与えられる任務ではなかった。レベル50台の魔物をようやく倒せる勇者にとって、レベル100台がいる魔王の城は未知の領域。 「ーー王女が頼む、その任務。俺が引き受ける」 シンの持つスキルが頼りだと言うアリス王女。快く引き受けたわけではなかったが、シンはアリス王女の頼みを引き受けることになり、魔王の城へ旅立つ。 これは魔物が世界に溢れる時代、シーラ王国の姫に頼まれたのをきっかけに魔王の城を目指す勇者の物語。

異世界坊主の成り上がり

峯松めだか(旧かぐつち)
ファンタジー
山歩き中の似非坊主が気が付いたら異世界に居た、放っておいても生き残る程度の生存能力の山男、どうやら坊主扱いで布教せよということらしい、そんなこと言うと坊主は皆死んだら異世界か?名前だけで和尚(おしょう)にされた山男の明日はどっちだ? 矢鱈と生物学的に細かいゴブリンの生態がウリです? 本編の方は無事完結したので、後はひたすら番外で肉付けしています。 タイトル変えてみました、 旧題異世界坊主のハーレム話 旧旧題ようこそ異世界 迷い混んだのは坊主でした 「坊主が死んだら異世界でした 仏の威光は異世界でも通用しますか? それはそうとして、ゴブリンの生態が色々エグいのですが…」 迷子な坊主のサバイバル生活 異世界で念仏は使えますか?「旧題・異世界坊主」 ヒロイン其の2のエリスのイメージが有る程度固まったので画像にしてみました、灯に関しては未だしっくり来ていないので・・未公開 因みに、新作も一応準備済みです、良かったら見てやって下さい。 少女は石と旅に出る https://kakuyomu.jp/works/1177354054893967766 SF風味なファンタジー、一応この異世界坊主とパラレル的にリンクします 少女は其れでも生き足掻く https://kakuyomu.jp/works/1177354054893670055 中世ヨーロッパファンタジー、独立してます

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

僕だけが違う能力を持ってる現実に気付き始める世界

夏目きょん
ファンタジー
僕には特殊な能力がある。しかしまだ誰もその能力に気づいていない。そう僕ですら…この能力を知った時世界は!? ◇◆◇ 昔々、この世界には魔族と人間と獣族がいました。 魔族と獣族と人間はいつも戦っていました。 しかし、魔族・獣族と人間の間には天と地程の力の差がありました。 だが、人間には彼らにはない『考える力』がありました。 人間は考えた末、【浮遊島】へ移住し、魔族と獣族の争いに巻き込まれないようにしました。 しかし、人間はあと一歩のところで食料の確保をし忘れるという大きな失態を犯してしまう。 これを『食料難時代』と呼ぶ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 人類は食料確保の為、定期的に下界、つまり魔族と獣族のいる場所に降りる様になる。 彼らを人は『フードテイカー』と呼ぶ。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

処理中です...