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第三章 防衛都市

初心者用ダンジョン 2

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 二階もずんずん進んで、三階に下りる。

「ここも人が多いな」

 つまり、討伐する魔物も少ない感じ。

「薬草だけ採って、四階に行くぞ」

 ジルに生えている下級薬草を教えながら、四階に行く。

 やっと人が少なくなった。脳内地図マッパエムンディで探索したら、アルミラージや火食い鳥カセウェアリーがあちこちにいる。

「五階に転移陣があるから、四階は人が少ないんだ」

 なるほどね! では、ぼちぼちいきますか!

 矢の練習をかねて、次々とアルミラージ、火食い鳥カセウェアリーを討伐する。

 ドロップした品をジルが集めてくれるから、楽だ!

「お兄ちゃん、結構、強いんだね」

「まぁ、このくらいはね!」

 五階は、また人が多かった。

 転移陣で五階に転移して、そのまま活動しているのかな?
 
 私は、冒険者が苦手だ。特に、鉄級や銅級は……なるべく遠くを迂回しながら、六階を目指そう!

「おぃ、お前!」
 やはり厄介事が沸く。何人かの冒険者が私に近づいてくる。

「お兄ちゃん、呼んでいるよ」
 無視して、階段の方に向かう私に、ジルが声を掛ける。

「ああ、良いんだよ! 馬鹿に付き合う義務はない」

 早足で、階段に向かったけど、そこにも馬鹿が三人もいた。その上、荷物持ちの子ども二人にも邪魔された。

「そこを退け!」
 子どもに暴力を加える気はないけど、冒険者に命じられているのか階段の前から退かない。

「新入り、ダンジョンの指南をしてやる」

 そんなの頼んでいない。無視しても、子どもを退かさないから、相手するしかないのか?

「いや、結構だ! 今日は十階まで行くつもりだから、邪魔をしないでくれ」

 こちらは、ちゃんと断っているのに、こういう輩って耳がついていない。

「俺たちのチームに入れてやるぞ。一人では、魔物討伐も難しいだろう」

 親切そうな振りをして、ジルの背負っている籠の中に手を突っ込む。

「おお、何だか大漁だな!」
 
 図々しく、突っ込んだ手をバリアで切ってやりたいが、交易都市エンボリウムでの失敗を繰り返したくないので我慢した。目立ちたくないんだよ。

「バリア!」で三人の周りに壁を作る。この時、図々しく手を突っ込んでいた奴の手を切らないように用心したよ。
 前より、細かな調整ができるようになったのは嬉しい。

「さぁ、ジル! 行くぞ!」
 ジルを促して、階段の方に行くと、荷物持ちの子どもが二人「どうしよう?」と困っていた。

「アイツらは、今日は動けないから、転移陣でダンジョンの外に行けば?」

 私が宿に着くまで、バリアの中に入っていて貰おう。空気は上を開けてあるから、死んだりはしないんじゃないかな?

「でも、日当が貰えないと困るんだ。食べ物が買えない!」
 
 そうか、それもそうかもね?

「それなら、ここに生えている下級薬草を採ったら良い。ほら、そこに群生しているぞ」

 五階には、下級薬草が何ヶ所か群生していた。荷物持ちの子ども達は、背負い籠の中のドロップ品を冒険者の前に置く。

「おぃ! 出せよ!」とか「荷物を置いて行くな!」とか騒いでいるけど、手で持てる程度しかドロップ品はない。

「これでは、宿屋代にならないんじゃないかな? 荷物持ち代金を払えるの?」

 私が疑惑の目をジルに向けていると、他の荷物持ちの子どもに駆け寄っている。

「私も採りたい!」
 ジルは、もう良いんじゃない? と思ったけど、他の子も雇われた冒険者が動けないと魔物が怖いと言うので、少し待っていた。

 バリアの中の冒険者達は騒ぐし、無視して置いてきた冒険者達も集まってきた。

「おぃ、お前! 何をやっているんだ!」

 どうやら、ウザ絡みしてきた奴らと知り合いみたいだ。

「私の荷物持ちの籠に汚い手を突っ込むから、少し反省してもらっているだけだ。あっ、お前たちもいちゃもんをつけるなら反省させるぞ」

 私も穏やかになったよね。交易都市エンボリウムでは、花嫁行列から逃げてきたばかりだから気が立っていたんだ。元々は、穏やかな性格だと思う。

 人が親切に忠告しているのに、馬鹿なんじゃないかな?

「お前、見かけない顔だな! 新入りのくせに生意気だぞ!」
 
 ふぅ、馬鹿しか冒険者にならないのか? いや、クレージーホースや草原の風のメンバー、酒が入らなければ、ちゃんと道理がわかっていた。酒が入ると、ちょっと無法地帯になるけど。

「なぁ、仲間に入れてやるよ」

 馴れ馴れしく私の肩に手を出した奴! 回し蹴りでノシておく。

 他の冒険者達が得物に手を掛けた。

「私に武器を抜いたら、敵対行為だと判断する」

 全員をバリアで囲んでおく。

「荷物持ち、荷物を置いて、上に上がれば良い。文句があるなら、ギルドマスターに言うんだな」

 あの強そうなギルドマスターに苦情を言えるとは思わないけどね。

 日当が貰えないと困るのか、後から来た荷物持ちの子ども達が「どうしよう?」と話し合っている。

「下級薬草、ギルドで売れば、日当分にはなるぞ」

「じゃぁ、俺たちも下級薬草を採ろう!」

 冒険者達は、バリアの筒の中で騒いでいるけど、ここまでしても能力差がわからないなら、仕方ないよね。

 近くの下級薬草の群生を、荷物持ち達が摘むのを待ってから、五階から六階への階段を下りる。

「ああ、ここが転移陣なんだ!」

 初めて見るから、しげしげと眺めていたら、荷物持ちの子どもは、さっさと地上に戻る。躊躇いもしないで、転移魔法陣に乗るよね? 私なら、ちょっとビビっちゃうけどさ。
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