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第一章 クズ聖王家から逃げるぞ!

女神様の前任者

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 パンサー村から交易都市エンボリウムまで歩いたら、凄く時間がかかる。
 くたくただから、オーク肉を山と積み上げた馬車の御者席に乗せて貰う。

「アレクの顔が良くて、助かるなぁ!」
「ジャス、もう一度回し蹴りをうけたいのか?」
 呑気な会話だけど、オークの被害を考えると気分が落ち込む。

「もっと強くなって、ダンジョンを制覇するぞ!」
 北の大陸のダンジョンは、かつて聖王や聖皇が制覇したのだ。それと女神様クレマンティアの加護によって、オークとかはいない。

 私の決意を、ルシウスとジャスが冷やかす。
「ダンジョンを制覇する前に、矢の練習をしなくてはな!」
 ルシウス、痛いところを突いてくるね。
「それと、髪の毛を伸ばすのをやめないと、ダンジョン内で襲われるぞ! ダンジョンに潜る女性冒険者は、強者ぞろいだから、怖くて手はださないが、お前の見た目に男はコロっと騙されそうだ」
 ジャスは、一度、シメてやりたい。

「実際の話、ダンジョンから魔物が湧いてくるのは問題だ。だが最下層まで達するにはマジックバッグが無いと無理だな」

 うっ、アイテムボックスのことを二人に打ち明けるべきなのか?

「今度のオークションで、金級の『ファルシォン』が落札してくれたら、良いのだが!」
 そう言えば、武器屋でもそんな話題だったね。

「マジックバッグって、ダンジョンで出てくるのか? 魔物が、そんな物を落とすのか?」

 肉や皮や魔石なら理解できるけど、マジックバッグ? 理解不能だよ。

「そういうものなんだよ! ダンジョンはな!」
「ジャス、少しは考えようよ。すげぇ、違和感があるんだけど?」

 話を聞いていた兵士達も、ダンジョンだからと不思議に思わないみたい。

 こんな時は、女神様クレマンティアの知識で調べる。ダンジョン、ダンジョン! 何も出てこない! 女神様クレマンティアって、ポンコツなんじゃないの?

『本当に失礼な子ね! ダンジョンは、前の担当の神様ガウデアムスが作った物なのよ。本当に彼奴、馬鹿なんじゃないの! 魔物もいっぱい作るし、人間が全滅しそうになって、私に代わったの! ダンジョンの知識ね……貴女の脳が低性能だから、かなり制限していただけよ! 更新しておくわ』

「痛ったぁ!」
 相変わらず、酷い女神様クレマンティアだよ。頭を抱えて転げまくりたい程の頭痛だ。
 御者席から転げ落ちないように、何とか踏ん張ったけどね。
 女神様クレマンティアの前任者っていたんだ? 変な気分だ。神様もクビになるとかあるんだね!

 それにしても、北の大陸にダンジョンが無いから、入れてなかったって、ちょっと手落ちじゃないの? まぁ、前任者の神様ガウデアムスよりはマシだよね。

 気を取り直して、ダンジョンを調べる。ここからは神様ガウデアムス情報みたいで、ゲームの攻略本みたいにややこしい。
 
 細かい情報が分厚い本にいっぱい書いてある感じ! 苦手だぁ! でも、そら見た事かと女神様クレマンティアに低性能の脳呼ばわりされるのも癪だから、頑張って調べよう。

 前任者の神様ガウデアムスは、剣と魔法のファンタジー世界を目指していたのかな? 途中から魔物モンスターを強くするのに集中しすぎて、人類滅亡の危機! 本当に馬鹿じゃない! 神様なのにさぁ!

 ダンジョンは、女神様クレマンティアと交代する前に、人類を強化する為に作った? はぁ? そこから魔物が湧いているんだけど?
 
 成程、だから魔剣とか、魔法の盾とか、マジックバッグとか、強化アイテムが落ちるようにしたのか? 
 一応は、人類全滅を避けようとはしたんだね。その前に魔物を強化しすぎだとは思うけど。

「えっ、マジックバッグ?」
 思わず、細かい補足説明に気づいて、声を出しちゃったよ。
 神様ガウデアムス情報によると、ダンジョン内の魔物が落とすアイテムで、マジックバッグが作れる隠しルートがあるみたい。
 本当に、攻略サイトの裏技特集を検索している気分になった。

「今回のオーク討伐のご褒美はいくらになるかな?」
 ジャスの精神は鋼だね! でも、犠牲になった女の人を殺して焼いた時、泣いていたのを知っているから、揶揄わない。 
 冒険者って、こういうのを何回も乗り越えていくんだと、少しだけわかった気がする。

 私は、サーシャの愛し子の能力と、女神様クレマンティアの加護があるから、甘ちゃんだったとつくづく思ったからね。

 これからの目標! ダンジョンを制覇して、魔物の発生を抑える!
 でも、その前に、マジックバッグを作ろう! これが流通したら、金級のパーティとかが頑張ってダンジョンを制覇してくれるんじゃないかな?

 さっきの決意はどうなったのか? 努力はするけど、基本的に戦いは苦手! 弓の練習も出来ていないレベルだからさぁ。

 ナタはかなり使える! オークを十頭はやっつけた。つまり、ほとんどはギルド長とルシウスとジャスが討伐したとも言えるね。

 魔法を全開にしたら、もっと討伐できたのかもしれないけど、ギルド長に当たりそうで、ちょっと使えなかったんだ。ギルド長の戦闘スピード半端なかったからさぁ! 見えたの、残像レベルだもん。
 これも練習しなくちゃね。

 これまで一人で討伐していた弊害だよ。ルシウスの言う通り、護衛依頼を受ける前に、連携の練習をしなくては!

 なんて真面目に考えていたけど、うとうと寝ていたみたい。隣の御者をしている兵士に思いっきり寄りかかっていた。神経図太いね!

「悪い! 寝ていたみたいだ」
 交易都市エンボリウムの門に着いて、目が覚めた。

「アレク、お前、自分の見た目をもっと考えた方が良いぞ!」
 ジャスは、相変わらず口が悪い!
「アレクが迷惑かけたな! だが、惚れたら去勢されるから止めとけ!」
 ルシウスも酷い!

 馬車から飛び降りて、腹が減ったので何か食べようと話していたけど、私の仕事は終わらなかった。

「おお、アレク! 怪我人が多いのだ。下級回復薬では駄目な奴もいる。緊急、治療依頼だ!」
 ギルド長に捕まったよ!
 
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