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第15章 次代の王
21 未来の女王!
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新婚旅行からサリザンに帰って数日経つと、ショウは二ヶ月近くも留守にしたのでレイテに帰った。誰も居なくなった新しい後宮で、ゼリアは大きな溜め息をついた。
「ショウ様は、もうレイテに着かれたころね。沢山の綺麗な妻達に囲まれていらっしゃるでしょう」
しかし、落ち込んでいても仕方ないとゼリアは、久しぶりにヘビ神様に挨拶をしにいこうとロスを肩にかけた。
『ショウが居なくて寂しいなら、他の男を後宮に囲えば良いのに』
自分と話せるショウは好きだが、ヘビが苦手なのが玉に傷だ。ロスは、ハネムーンの間、ショウには近づかないように気を使った。
『まぁ、ロスったら! ショウ様以外の男の人なんて、いらないわ! ヘビ神様に挨拶を済ませたら、バリバリ働くわよ。お母様のお手伝いをしなくてはいけないもの』
この一月は、本当にのんびりとハネムーンを過ごさせて貰ったと、ゼリアは微笑んだ。しかし、ヘビ神様はバリバリ働くのを禁止した。
『貴女のお腹の中には次の次の女王がいるのですよ。少しアルジェの手伝いをするぐらいはかまわないけど、バリバリ働いたりしたら疲れてしまうわ』
『ショウ様の赤ちゃんがお腹にいるのね!』と喜ぶゼリアが、早く知らせなくてはと後宮に帰るのを満足そうに見送ったが、ヘビ神様はサバナ王国のルードに第二王女を渡したりはしないとシューシューと赤い舌を出した。
『いっそのこと、ショウが豹王の娘と子どもを作れば話は簡単なのに、そうすればゼリアの赤ちゃんをルードが狙ったりしないのに……でも、そうなったらゼリアは悲しむわ。もう本当にどうしたら良いのかしら、困ったわねぇ』
ヘビ神様は、悩ましそうにのたうった。
「えっ、ゼリアが妊娠したんだ!」
良い花の香りがする書簡を読んで、ショウは喜んだ。体調に気をつけるようにと返事を書くと、それをピップスに至急届けて貰うように手配する。
「夏に産まれるんだよなぁ、会いに行きたいなぁ」
ミミとミーシャが出産をした後になら、少しレイテを留守にしても良いかな? と、スケジュール表とにらめっこしてにまにましていたが、ヘビ神様がサバナ王国の情勢を気にしていた件を思い出し、バッカス外務大臣に何か新しい情報は無いか聞きに行く。
「ああ、丁度良いところにお越し下さいました。此方から参ろうと思っていたのです」
にこやかに出迎えられて、うんざりする。
「ついにギルバート公子がジャリース公を蟄居させましたよ」
第二公子だったルパートを殺したジャリース公が第三公子を飛ばして後取りにしたギルバート公子に蟄居させられようが、殺されようが、ショウは興味を持てなかった。
「ギルバート公子が親よりはまともなことを祈るしかないな。そろそろ、マルタ公国にも落ちついて欲しいから、ダイナム大使にそう伝えといてくれ。それより、サバナ王国のユング王子の件だけど……」
にやっと笑うバッカス外務大臣の前から逃げ出したくなる。
「サバナ王国のユング王子は、マウイ王子の祖父を殺しただけでは気が済まなかったみたいですよ。マウイ王子を支持していた農耕民族の族長をまた殺してしまったみたい。流石にアンガス王が怒って、それ以上殺したら、お前を殺すと言ったそうですわ。もう、血の気が多い野蛮な王子なんて、最低だわ!」
最低だわ! なんて言ってるくせに、可笑しくて仕方がないと、笑いを堪えている。
「サバナ王国は我が国の貿易相手国だ。後継者が愚かだと、のちのち困るじゃないか」
……まぁ! 怒った顔がどんどんアスラン王に似てくるわ!……
ゾクゾクッと背中に悪寒が走ったショウは、怒って席を立とうとした。
「あっ、サラム王国のピョートル王は、クーデターを起こしたマークス・フォン・バーミンガム将軍に幽閉され、退位させられましたよ。でも、バーミンガム将軍は王位に就く気はないみたいですね。ピョートル王の従兄弟であるランス公子を王に就けて、執政官として支配するみたいです」
ランス王もさほど賢くは無いみたいだと肩を竦めるバッカス外務大臣に、ショウも溜め息しか出ない。
「バーミンガム将軍の手腕に期待するしかないな」
今度こそ席を立ったショウ王太子に、バッカス外務大臣は「スーラ王国の次の次の女王が無事にお産まれになりますように」と声を掛けた。何故知っているのか? とショウは驚きながら、後宮へと帰った。
「父上! いつになったら竜に乗せて下さるの?」
後宮に着いた途端、アイーシャとレイラがショウを見つけて抱き付いてくる。ショウは、暗いサバナ王国やサラム王国の状況を暫し忘れて、サンズに二人を乗せてやる。
「怖くないか?」
低空を飛ばしているが、幼い娘達が怖がったらすぐに降りられるようにサンズも気をつけている。
「全然! もっと早く飛ばして!」
無邪気な娘達とサンズで空を飛んでいると、ショウはお腹の底から笑える。
……エスメラルダが産んだリュウにも会いに行きたいな!……
同じ時期に産まれたユウトとユリアは、もうヨチヨチ歩き始めている。少し小さなバイオレットも、つかまり立ちしては、ストンと尻餅したり、可愛い盛りだ。
「父上がイズマル島に行かれるから、留守番ばかりだ。ええい! 産まれて一年も自分の息子に会わないだなんて、父上みたいじゃないか!」
本当にこのところのショウは忙しい。アスラン王が留守をしているから、王としての執務をほぼ全て遣らなくてはいけないし、去年の秋にはエリカの社交界デビューや、ウィリアム王子との婚約披露パーティなどもあった。
ミヤは、アスラン王が親として出席するべきだと説得を重ねたが、仕方なくショウにエリカの後見役を頼んだのだ。ゼリア王女との結婚式を控えていたショウは、その前に一ヶ月もユングフラウに滞在しなくてはいけなくなり、本当に仕事が溜まって忙しく、イズマル島に行く余裕が無かったのだ。
しかし、このままではリュウに会えない! と、ショウは強硬手段を取ることを決めた。
「ねぇ、リリィ! リュウに会ってきたいんだ」
それでも、アスランとは違って、ショウは第一夫人のリリィにだけは許可を取る。
「まぁ! でも、アスラン王がお留守なのに、ショウ王太子まで留守にされて良いのですか?」
前ならフラナガン相談役が、三人の大臣を監督してくれていたが、このところは王宮に出仕することも稀になっている。
「緊急の用件は無いから、今なら三人の大臣で大丈夫だよ。ミミとミーシャは、リリィに任せておく」
妊娠中の妻だけでなく、嫁いで来たばかりのファンナ妃とシルビア妃もいるのにと、リリィは眉を少し上げたが、エスメラルダ妃にはキャベツ畑の借りもある。それに、これからもキャベツを譲って貰わないといけないかもしれないのだ。
「仕方ないですわね。出来るだけ、早くお帰り下さいよ」
そう言いながらも、リュウ王子へのお土産を手早く用意してショウに持たせる。リリィに第一夫人になって貰って良かったと、感謝しながらショウは旅立った。
「リリィ様、ショウ王太子は何処に行かれたのですが?」
騎竜から、サンズが飛び立ったと報告を受けたバッカス外務大臣が、後宮の入り口にあるリリィの部屋に駆け込んだ。
「さぁ、レイテ大学では? 風で電気をつくるとか仰ってましたわ」
バッカス外務大臣は、大商人ラシンドの娘らしく胆が座ってるリリィには敵わないと、アスラン王とショウ王太子の不在中は、今まで以上に気を引き締めて勤めなくてはと王宮へ帰っていった。
……それにしても、アスラン王もショウ王太子もいらっしゃらない王宮は不毛だわ。目の保養になる文官なんて、そうそう居ないものねぇ……
やっと、ショウ王太子の不在に気づいた内務大臣と軍務大臣が慌ててリリィの部屋に向かうのを見つけたバッカス外務大臣は「今更騒いでも無駄だから、さっさと仕事をしましょう」と声をかけた。
「アスラン王も不在なのに、ショウ王太子まで出掛けられたら、王宮はどうなるのだ!」
怒りを表すドーソン軍務大臣に「それが大臣の仕事でしょ!」と肩を竦めて、王宮に帰る。
その後ろ姿を見ていたベスメル内務大臣は、なるほどアスラン王と同じ血を引いていると納得する。話し方や性癖ばかり注目していたが、能力は自分達より優れているのではと評価しなおしたのだ。
「もしかして、次代の宰相はバッカスかもしれませんな」
ドーソン軍務大臣は「冗談だろう!」と、ベスメル内務大臣の顔を覗き込み、真剣な表情に驚いた。
「まぁ、私達が口を出す事ではありませんよ。アスラン王か、ショウ王太子が任命されるのです」
「あのバッカス外務大臣をアスラン王が宰相にされるわけがない!」と強気の発言をしたドーソン軍務大臣だが、何を考えているのかよくわからないところのあるショウ王太子なら有り得るかもと身震いする。
「ショウ様は、もうレイテに着かれたころね。沢山の綺麗な妻達に囲まれていらっしゃるでしょう」
しかし、落ち込んでいても仕方ないとゼリアは、久しぶりにヘビ神様に挨拶をしにいこうとロスを肩にかけた。
『ショウが居なくて寂しいなら、他の男を後宮に囲えば良いのに』
自分と話せるショウは好きだが、ヘビが苦手なのが玉に傷だ。ロスは、ハネムーンの間、ショウには近づかないように気を使った。
『まぁ、ロスったら! ショウ様以外の男の人なんて、いらないわ! ヘビ神様に挨拶を済ませたら、バリバリ働くわよ。お母様のお手伝いをしなくてはいけないもの』
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『ショウ様の赤ちゃんがお腹にいるのね!』と喜ぶゼリアが、早く知らせなくてはと後宮に帰るのを満足そうに見送ったが、ヘビ神様はサバナ王国のルードに第二王女を渡したりはしないとシューシューと赤い舌を出した。
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「えっ、ゼリアが妊娠したんだ!」
良い花の香りがする書簡を読んで、ショウは喜んだ。体調に気をつけるようにと返事を書くと、それをピップスに至急届けて貰うように手配する。
「夏に産まれるんだよなぁ、会いに行きたいなぁ」
ミミとミーシャが出産をした後になら、少しレイテを留守にしても良いかな? と、スケジュール表とにらめっこしてにまにましていたが、ヘビ神様がサバナ王国の情勢を気にしていた件を思い出し、バッカス外務大臣に何か新しい情報は無いか聞きに行く。
「ああ、丁度良いところにお越し下さいました。此方から参ろうと思っていたのです」
にこやかに出迎えられて、うんざりする。
「ついにギルバート公子がジャリース公を蟄居させましたよ」
第二公子だったルパートを殺したジャリース公が第三公子を飛ばして後取りにしたギルバート公子に蟄居させられようが、殺されようが、ショウは興味を持てなかった。
「ギルバート公子が親よりはまともなことを祈るしかないな。そろそろ、マルタ公国にも落ちついて欲しいから、ダイナム大使にそう伝えといてくれ。それより、サバナ王国のユング王子の件だけど……」
にやっと笑うバッカス外務大臣の前から逃げ出したくなる。
「サバナ王国のユング王子は、マウイ王子の祖父を殺しただけでは気が済まなかったみたいですよ。マウイ王子を支持していた農耕民族の族長をまた殺してしまったみたい。流石にアンガス王が怒って、それ以上殺したら、お前を殺すと言ったそうですわ。もう、血の気が多い野蛮な王子なんて、最低だわ!」
最低だわ! なんて言ってるくせに、可笑しくて仕方がないと、笑いを堪えている。
「サバナ王国は我が国の貿易相手国だ。後継者が愚かだと、のちのち困るじゃないか」
……まぁ! 怒った顔がどんどんアスラン王に似てくるわ!……
ゾクゾクッと背中に悪寒が走ったショウは、怒って席を立とうとした。
「あっ、サラム王国のピョートル王は、クーデターを起こしたマークス・フォン・バーミンガム将軍に幽閉され、退位させられましたよ。でも、バーミンガム将軍は王位に就く気はないみたいですね。ピョートル王の従兄弟であるランス公子を王に就けて、執政官として支配するみたいです」
ランス王もさほど賢くは無いみたいだと肩を竦めるバッカス外務大臣に、ショウも溜め息しか出ない。
「バーミンガム将軍の手腕に期待するしかないな」
今度こそ席を立ったショウ王太子に、バッカス外務大臣は「スーラ王国の次の次の女王が無事にお産まれになりますように」と声を掛けた。何故知っているのか? とショウは驚きながら、後宮へと帰った。
「父上! いつになったら竜に乗せて下さるの?」
後宮に着いた途端、アイーシャとレイラがショウを見つけて抱き付いてくる。ショウは、暗いサバナ王国やサラム王国の状況を暫し忘れて、サンズに二人を乗せてやる。
「怖くないか?」
低空を飛ばしているが、幼い娘達が怖がったらすぐに降りられるようにサンズも気をつけている。
「全然! もっと早く飛ばして!」
無邪気な娘達とサンズで空を飛んでいると、ショウはお腹の底から笑える。
……エスメラルダが産んだリュウにも会いに行きたいな!……
同じ時期に産まれたユウトとユリアは、もうヨチヨチ歩き始めている。少し小さなバイオレットも、つかまり立ちしては、ストンと尻餅したり、可愛い盛りだ。
「父上がイズマル島に行かれるから、留守番ばかりだ。ええい! 産まれて一年も自分の息子に会わないだなんて、父上みたいじゃないか!」
本当にこのところのショウは忙しい。アスラン王が留守をしているから、王としての執務をほぼ全て遣らなくてはいけないし、去年の秋にはエリカの社交界デビューや、ウィリアム王子との婚約披露パーティなどもあった。
ミヤは、アスラン王が親として出席するべきだと説得を重ねたが、仕方なくショウにエリカの後見役を頼んだのだ。ゼリア王女との結婚式を控えていたショウは、その前に一ヶ月もユングフラウに滞在しなくてはいけなくなり、本当に仕事が溜まって忙しく、イズマル島に行く余裕が無かったのだ。
しかし、このままではリュウに会えない! と、ショウは強硬手段を取ることを決めた。
「ねぇ、リリィ! リュウに会ってきたいんだ」
それでも、アスランとは違って、ショウは第一夫人のリリィにだけは許可を取る。
「まぁ! でも、アスラン王がお留守なのに、ショウ王太子まで留守にされて良いのですか?」
前ならフラナガン相談役が、三人の大臣を監督してくれていたが、このところは王宮に出仕することも稀になっている。
「緊急の用件は無いから、今なら三人の大臣で大丈夫だよ。ミミとミーシャは、リリィに任せておく」
妊娠中の妻だけでなく、嫁いで来たばかりのファンナ妃とシルビア妃もいるのにと、リリィは眉を少し上げたが、エスメラルダ妃にはキャベツ畑の借りもある。それに、これからもキャベツを譲って貰わないといけないかもしれないのだ。
「仕方ないですわね。出来るだけ、早くお帰り下さいよ」
そう言いながらも、リュウ王子へのお土産を手早く用意してショウに持たせる。リリィに第一夫人になって貰って良かったと、感謝しながらショウは旅立った。
「リリィ様、ショウ王太子は何処に行かれたのですが?」
騎竜から、サンズが飛び立ったと報告を受けたバッカス外務大臣が、後宮の入り口にあるリリィの部屋に駆け込んだ。
「さぁ、レイテ大学では? 風で電気をつくるとか仰ってましたわ」
バッカス外務大臣は、大商人ラシンドの娘らしく胆が座ってるリリィには敵わないと、アスラン王とショウ王太子の不在中は、今まで以上に気を引き締めて勤めなくてはと王宮へ帰っていった。
……それにしても、アスラン王もショウ王太子もいらっしゃらない王宮は不毛だわ。目の保養になる文官なんて、そうそう居ないものねぇ……
やっと、ショウ王太子の不在に気づいた内務大臣と軍務大臣が慌ててリリィの部屋に向かうのを見つけたバッカス外務大臣は「今更騒いでも無駄だから、さっさと仕事をしましょう」と声をかけた。
「アスラン王も不在なのに、ショウ王太子まで出掛けられたら、王宮はどうなるのだ!」
怒りを表すドーソン軍務大臣に「それが大臣の仕事でしょ!」と肩を竦めて、王宮に帰る。
その後ろ姿を見ていたベスメル内務大臣は、なるほどアスラン王と同じ血を引いていると納得する。話し方や性癖ばかり注目していたが、能力は自分達より優れているのではと評価しなおしたのだ。
「もしかして、次代の宰相はバッカスかもしれませんな」
ドーソン軍務大臣は「冗談だろう!」と、ベスメル内務大臣の顔を覗き込み、真剣な表情に驚いた。
「まぁ、私達が口を出す事ではありませんよ。アスラン王か、ショウ王太子が任命されるのです」
「あのバッカス外務大臣をアスラン王が宰相にされるわけがない!」と強気の発言をしたドーソン軍務大臣だが、何を考えているのかよくわからないところのあるショウ王太子なら有り得るかもと身震いする。
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