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第四章 外交デビュー
22 海賊討伐依頼
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ショウはパシャム大使と王宮にエドアルド国王陛下との会談へ向かった。
「ショウ王子、即答はお止め下さいよ。それと、又、僕と言ってますよ。なめられるから私と言って下さい。あと、顔に考えを出さないようにして下さい。エドアルド国王陛下との会談にはマゼラン外務大臣も同席しますから、気を抜かないようにして下さい」
馬車から降りる時に釘をさされて、わかってますよと言い返したが、ほら、その顔! と注意され返される。ふてくされた顔をしていたショウはハッとして、にっこりと笑顔を作る。
「その笑顔なら、何でも誤魔化せますよ」
褒め言葉なのか貶されたのかと考えながら、ショウは出迎えに来たジェームスとベンジャミンと挨拶を交わす。
二人は外務省に勤務していますと、にこやかに話しながら、エドアルド国王陛下との会談会場へと案内する。パシャム大使は二人と親しそうに話しているショウ王子に少し驚いたが、パロマ大学で一緒だったからだと納得した。
会談にはエドアルド国王陛下とマゼラン外務大臣が出席して、この会談の重要性にショウとパシャム大使は気を引き締める。
「スチュワート皇太子殿下の御結婚おめでとうございます」
先ずは社交辞令の交換となって、エドアルド国王陛下も参列のお礼と、来年の成人式にはスチュワート皇太子を参列させると返事をした。
「ところで、わざわざショウ王子に王宮まで出向いて頂いたのは、是非とも東南諸島連合王国に協力して頂きたい事があったからなのです」
パシャム大使はやはり海賊の件だと、何でしょうと素知らぬ顔で聞きながらも、不利になることを押し付けるつもりかと、笑顔のまま内心で毒づく。
「もう、ご存知でしょうが、北西部の村を海賊が頻繁に襲撃して、困っているのです」
ショウはそれはお困りでしょうと相槌を打つ。
カザリア王国側は、パシャムの古狸が一緒なのに知らないわけが無いだろう! 可愛い顔をしているが、かなり鍛えられているなと、内心で突っ込む。
話すのはエドアルド国王に任せて、マゼラン外務大臣はショウ王子の性格や能力を見極めようとしていた。
「沿岸部を竜騎士隊にパトロールさせてますが、カザリア王国は南北に長いから、どうしても防ぎきれず難儀している。サラム王国に逃げ込むのを追跡しているので、ヘルツ国王陛下に何度も抗議しているが、海賊船などは自国には存在しないと突っぱねられて困っているのだ」
ショウはエドアルド国王陛下が何を言い出すのか、大体の予想がついて困る。サラム王国と戦争などしたくない。東南諸島連合王国には実害が無いのだ。
はっきり言ってサラム王国と交易できなくても、東南諸島には痛くも痒くも無い。ただ、人身売買だとか、海賊船の基地になっているのは見逃せないが、それも東南諸島の商船を襲って無い現状では、手を出す意味が無いとショウは判断するしか無い。
海賊討伐では、此方にも人的被害を受ける。カザリア王国の北西部の住人には気の毒だが、他国の国民の為に血を流させるわけにはいかないと、ショウは判断する。
マゼラン外務大臣はエドアルド国王陛下が海賊討伐を依頼する前から、ショウ王子が断るつもりだと気づく。
「東南諸島連合王国の海軍は海賊などものともしないだろうが、我が国の海軍は翻弄されている。厚かましい願いだが、海賊討伐を手伝って頂きたい」
ショウはやはりと思ったが驚いた振りをして、このような重大な事は私では判断できませんと即答を避けた。
「レイテに相談してみます」
エドアルド国王陛下も、こんな要請を東南諸島連合王国が易々と引き受けるとは考えてない。
「レイテに相談しても、返答は同じでしょう。ただし、その海賊船の大多数は東南諸島の船長が海賊行為を行っているのですよ。乗船している海賊達はローラン王国の難民や傭兵崩れですが、我が国がこれほど苦労させられているのは、東南諸島連合王国の海賊船の船長になのです。特に悪名高いバルバロッサを東南諸島や、アルジエ海から追い出したのは、そちらの海軍ではありませんか」
ショウは拙い展開だと思ったが、犯罪者を全員取り締まる事は不可能だと突っぱねる。
「海賊行為をした者は、我が国でも、カザリア王国でも死刑でしょう。その海賊船のバルバロッサが東南諸島連合王国の出身だとしても、海賊行為をした時点で我が国の国民ではなく重大な犯罪者です。カザリア王国で海賊行為をしたのですから、死刑にして下さっても何の問題はありません」
白々しく論旨をずらしたショウ王子に、エドアルド国王陛下も気を引き締めて、海賊討伐の報奨金や、貿易関税の引き下げなどを条件にあげる。パシャム大使も、自国の海軍がバルバロッサを取り逃がしたのをあげつらわれては、協力をしないわけにはいかないだろうと思ったが、しぶとく条件を付け加え始める。
こうなったらショウの出番は無くなり、パシャム大使とマゼラン外務大臣がお互いの国の利益を優先させた丁々発止の言い争いを、エドアルド国王陛下と横でお茶を飲みながら、聞いているだけになった。
ショウは、バルバロッサが何代か前の王族の子孫だとか噂を聞いたと思い出したが、その真偽はわからない。他国の海賊討伐なんかに協力する羽目になりそうだと、内心で愚痴る。
つくづくバルバロッサを取り逃がした海軍を恨むショウだったが、マゼラン外務大臣とパシャム大使の話し合いはどうにか決着が付いたようだ。
「それではレイテにこの件を報告して、返事をさせて頂きます」
今までの論議は何だったのかとショウは呆れてしまったが、それが普通なのかマゼラン外務大臣も良い返答をお待ちしていますと、にこやかに握手をする。
「まぁ、パシャム大使もお茶でも如何ですか」
会談前から用意されていたお茶が冷えてきていたので、新しいお茶を侍従に持って来させて、ふっとひと息付いた時にエドアルド国王陛下が縁談を持ちかける。
「とろこで、ショウ王子には許嫁が数人いらっしゃるとお聞きしましたが……」
ショウはヤバいと思って、失礼なのは承知で、エドアルド国王陛下の話の腰を折る。
「ええ、私には4人も許嫁がいるのですよ。その中のメリッサについて、是非、エドアルド国王陛下にお願いしたいことがあるのです」
若い王子に話を遮られて、エドアルドはムッとしたが、海賊討伐を引き受けて貰わなくてはいけないのだと、下手に出て尋ねる。
「メリッサ姫とは、舞踏会にエスコートしておられた方ですね。とても美しい姫君で、ショウ王子はお幸せですね」
「ありがとうございます。メリッサは、パロマ大学で学びたいと願っているのです。それと、彼女は竜騎士の素質がありますので、その騎竜訓練をウェスティンで受ける許可を頂きたいと考えています」
エドアルド国王陛下とマゼラン外務大臣は、メリッサが竜騎士の素質があると聞いて驚いた。エドアルドはこんな重大な事を知らせなかったのかと、駐東南諸島連合王国大使のユリアンを内心で罵る。
「それは異論ありませんが、パロマ大学は独立心が強いので、試験を受けて頂かなければなりません」
「ええ、勿論です。試験に通らなければ、聴講生のテストを受けさせます。ウェスティンでも特別な配慮は求めません。従姉妹のミミと妹のエリカも、秋からリューデンハイムに入学させようと思っているのですから」
ミミの件は聞いていたが、エリカ王女まで竜騎士の素質があるとは初耳だったエドアルドは、自国の大使館の諜報能力を疑いだす。
「それはアスラン王が羨ましいですね。王女と姪の姫君達が竜騎士の素質に恵まれているだなんて」
マゼラン外務大臣も、そんな好条件の王女をイルバニア王国がほっておくわけが無いと考える。
ミミは12歳だと聞いているが、エリカ王女は9歳だったか? 10歳だったか? ウィリアム王子が15歳、レオポルド王子が13歳だった筈だ。二人ともイルバニア王国に嫁がせるのか? いや、ローラン王国のナルシス王子は25歳だが独身だから可能性はあると、マゼラン外務大臣は憶測する。
才色兼備の上に竜騎士の許嫁の華々しさに、エドアルド国王陛下は庶子のシェリーには勝ち目が無さそうだと、一旦保留にする事にする。
何とかエドアルド国王陛下との会談を乗り切ったものの、大使館に帰るなりショウはパシャム大使に小言の嵐を受けた。
「シェリー姫を断りたいからと、話の腰を折ったりして! 本当に、恥ずかしく思いましたよ。それにメリッサ様を派手に褒め称えてシェリー姫を貶めるとは、非常に無礼でしょう」
ぽんぽこ狸に小言を延々聞かされたショウだったが、バルバロッサの件を調査できて無かったじゃないかと反論する。
「他国に出没する海賊討伐なんかさせたく無いのに、バルバロッサを持ち出されて不利になったじゃないか」
グッとパシャム大使は言葉に詰まったが、口喧嘩に負けるような大使では無い。
「バルバロッサがサラム王国に逃げ込んだのを知らなかったのは私の落ち度ですが、王族の問題ではありませんか? バルバロッサを海軍が取り逃がしたのも、王族の一員に矢を向けるのを躊躇ったからでは無いですか?」
「まさか、バルバロッサが王族の子孫だという噂を信じているのですか? もしかして、何か知っているのですか? パシャム大使、教えて下さい!」
パシャム大使はいずれは王太子になるショウ王子は、知っておく必要があると判断する。
「バルバロッサは、先先代の王子の子孫です。アスラン王の従兄弟の子、つまり貴方のハトコになります。風の魔力持ちだそうですよ」
ショウは落ちぶれたとはいえ王族が海賊をするとは信じられないが、パシャム大使が嘘をついているとは思えない。
「風の魔力持ちなら、真っ当に働いても食べていけるだろう? 何故、海賊などに……」
犯罪者になる理由などいっぱいあるでしょうと、パシャム大使はショックを受けたショウ王子を宥める。
「東南諸島連合王国は王子でも、他の国のようには安穏と暮らせません。ある意味で旧帝国三国は反対で、王子は公爵として領地を貰いますから、生活に困りませんが、ボンクラな子孫や貴族達に多大な迷惑を被っています。領地を管理も出来ず、ユングフラウで贅沢三昧して、借金まみれの貴族達はイルバニア王国の寄生虫です。ある意味で東南諸島の淘汰制度は健全なのですが、バルバロッサは例外中の例外です」
例外中の例外が風の魔力持ちで、悪名高い海賊になるだなんて頭を抱え込むショウだ。
「風の魔力を海賊行為でも活用したんだろうか? ああ、したに決まっているさ! カザリア王国の沿岸を竜騎士隊がパトロールしても、範囲がわかっていればその外で通り過ぎるのを待って、風の魔力で一気に沿岸へ向かうんだ」
自分の身内がカザリア王国の沿岸で海賊行為を行っているのを考えると、腸が煮えくり返る。
「ショウ王子、即答はお止め下さいよ。それと、又、僕と言ってますよ。なめられるから私と言って下さい。あと、顔に考えを出さないようにして下さい。エドアルド国王陛下との会談にはマゼラン外務大臣も同席しますから、気を抜かないようにして下さい」
馬車から降りる時に釘をさされて、わかってますよと言い返したが、ほら、その顔! と注意され返される。ふてくされた顔をしていたショウはハッとして、にっこりと笑顔を作る。
「その笑顔なら、何でも誤魔化せますよ」
褒め言葉なのか貶されたのかと考えながら、ショウは出迎えに来たジェームスとベンジャミンと挨拶を交わす。
二人は外務省に勤務していますと、にこやかに話しながら、エドアルド国王陛下との会談会場へと案内する。パシャム大使は二人と親しそうに話しているショウ王子に少し驚いたが、パロマ大学で一緒だったからだと納得した。
会談にはエドアルド国王陛下とマゼラン外務大臣が出席して、この会談の重要性にショウとパシャム大使は気を引き締める。
「スチュワート皇太子殿下の御結婚おめでとうございます」
先ずは社交辞令の交換となって、エドアルド国王陛下も参列のお礼と、来年の成人式にはスチュワート皇太子を参列させると返事をした。
「ところで、わざわざショウ王子に王宮まで出向いて頂いたのは、是非とも東南諸島連合王国に協力して頂きたい事があったからなのです」
パシャム大使はやはり海賊の件だと、何でしょうと素知らぬ顔で聞きながらも、不利になることを押し付けるつもりかと、笑顔のまま内心で毒づく。
「もう、ご存知でしょうが、北西部の村を海賊が頻繁に襲撃して、困っているのです」
ショウはそれはお困りでしょうと相槌を打つ。
カザリア王国側は、パシャムの古狸が一緒なのに知らないわけが無いだろう! 可愛い顔をしているが、かなり鍛えられているなと、内心で突っ込む。
話すのはエドアルド国王に任せて、マゼラン外務大臣はショウ王子の性格や能力を見極めようとしていた。
「沿岸部を竜騎士隊にパトロールさせてますが、カザリア王国は南北に長いから、どうしても防ぎきれず難儀している。サラム王国に逃げ込むのを追跡しているので、ヘルツ国王陛下に何度も抗議しているが、海賊船などは自国には存在しないと突っぱねられて困っているのだ」
ショウはエドアルド国王陛下が何を言い出すのか、大体の予想がついて困る。サラム王国と戦争などしたくない。東南諸島連合王国には実害が無いのだ。
はっきり言ってサラム王国と交易できなくても、東南諸島には痛くも痒くも無い。ただ、人身売買だとか、海賊船の基地になっているのは見逃せないが、それも東南諸島の商船を襲って無い現状では、手を出す意味が無いとショウは判断するしか無い。
海賊討伐では、此方にも人的被害を受ける。カザリア王国の北西部の住人には気の毒だが、他国の国民の為に血を流させるわけにはいかないと、ショウは判断する。
マゼラン外務大臣はエドアルド国王陛下が海賊討伐を依頼する前から、ショウ王子が断るつもりだと気づく。
「東南諸島連合王国の海軍は海賊などものともしないだろうが、我が国の海軍は翻弄されている。厚かましい願いだが、海賊討伐を手伝って頂きたい」
ショウはやはりと思ったが驚いた振りをして、このような重大な事は私では判断できませんと即答を避けた。
「レイテに相談してみます」
エドアルド国王陛下も、こんな要請を東南諸島連合王国が易々と引き受けるとは考えてない。
「レイテに相談しても、返答は同じでしょう。ただし、その海賊船の大多数は東南諸島の船長が海賊行為を行っているのですよ。乗船している海賊達はローラン王国の難民や傭兵崩れですが、我が国がこれほど苦労させられているのは、東南諸島連合王国の海賊船の船長になのです。特に悪名高いバルバロッサを東南諸島や、アルジエ海から追い出したのは、そちらの海軍ではありませんか」
ショウは拙い展開だと思ったが、犯罪者を全員取り締まる事は不可能だと突っぱねる。
「海賊行為をした者は、我が国でも、カザリア王国でも死刑でしょう。その海賊船のバルバロッサが東南諸島連合王国の出身だとしても、海賊行為をした時点で我が国の国民ではなく重大な犯罪者です。カザリア王国で海賊行為をしたのですから、死刑にして下さっても何の問題はありません」
白々しく論旨をずらしたショウ王子に、エドアルド国王陛下も気を引き締めて、海賊討伐の報奨金や、貿易関税の引き下げなどを条件にあげる。パシャム大使も、自国の海軍がバルバロッサを取り逃がしたのをあげつらわれては、協力をしないわけにはいかないだろうと思ったが、しぶとく条件を付け加え始める。
こうなったらショウの出番は無くなり、パシャム大使とマゼラン外務大臣がお互いの国の利益を優先させた丁々発止の言い争いを、エドアルド国王陛下と横でお茶を飲みながら、聞いているだけになった。
ショウは、バルバロッサが何代か前の王族の子孫だとか噂を聞いたと思い出したが、その真偽はわからない。他国の海賊討伐なんかに協力する羽目になりそうだと、内心で愚痴る。
つくづくバルバロッサを取り逃がした海軍を恨むショウだったが、マゼラン外務大臣とパシャム大使の話し合いはどうにか決着が付いたようだ。
「それではレイテにこの件を報告して、返事をさせて頂きます」
今までの論議は何だったのかとショウは呆れてしまったが、それが普通なのかマゼラン外務大臣も良い返答をお待ちしていますと、にこやかに握手をする。
「まぁ、パシャム大使もお茶でも如何ですか」
会談前から用意されていたお茶が冷えてきていたので、新しいお茶を侍従に持って来させて、ふっとひと息付いた時にエドアルド国王陛下が縁談を持ちかける。
「とろこで、ショウ王子には許嫁が数人いらっしゃるとお聞きしましたが……」
ショウはヤバいと思って、失礼なのは承知で、エドアルド国王陛下の話の腰を折る。
「ええ、私には4人も許嫁がいるのですよ。その中のメリッサについて、是非、エドアルド国王陛下にお願いしたいことがあるのです」
若い王子に話を遮られて、エドアルドはムッとしたが、海賊討伐を引き受けて貰わなくてはいけないのだと、下手に出て尋ねる。
「メリッサ姫とは、舞踏会にエスコートしておられた方ですね。とても美しい姫君で、ショウ王子はお幸せですね」
「ありがとうございます。メリッサは、パロマ大学で学びたいと願っているのです。それと、彼女は竜騎士の素質がありますので、その騎竜訓練をウェスティンで受ける許可を頂きたいと考えています」
エドアルド国王陛下とマゼラン外務大臣は、メリッサが竜騎士の素質があると聞いて驚いた。エドアルドはこんな重大な事を知らせなかったのかと、駐東南諸島連合王国大使のユリアンを内心で罵る。
「それは異論ありませんが、パロマ大学は独立心が強いので、試験を受けて頂かなければなりません」
「ええ、勿論です。試験に通らなければ、聴講生のテストを受けさせます。ウェスティンでも特別な配慮は求めません。従姉妹のミミと妹のエリカも、秋からリューデンハイムに入学させようと思っているのですから」
ミミの件は聞いていたが、エリカ王女まで竜騎士の素質があるとは初耳だったエドアルドは、自国の大使館の諜報能力を疑いだす。
「それはアスラン王が羨ましいですね。王女と姪の姫君達が竜騎士の素質に恵まれているだなんて」
マゼラン外務大臣も、そんな好条件の王女をイルバニア王国がほっておくわけが無いと考える。
ミミは12歳だと聞いているが、エリカ王女は9歳だったか? 10歳だったか? ウィリアム王子が15歳、レオポルド王子が13歳だった筈だ。二人ともイルバニア王国に嫁がせるのか? いや、ローラン王国のナルシス王子は25歳だが独身だから可能性はあると、マゼラン外務大臣は憶測する。
才色兼備の上に竜騎士の許嫁の華々しさに、エドアルド国王陛下は庶子のシェリーには勝ち目が無さそうだと、一旦保留にする事にする。
何とかエドアルド国王陛下との会談を乗り切ったものの、大使館に帰るなりショウはパシャム大使に小言の嵐を受けた。
「シェリー姫を断りたいからと、話の腰を折ったりして! 本当に、恥ずかしく思いましたよ。それにメリッサ様を派手に褒め称えてシェリー姫を貶めるとは、非常に無礼でしょう」
ぽんぽこ狸に小言を延々聞かされたショウだったが、バルバロッサの件を調査できて無かったじゃないかと反論する。
「他国に出没する海賊討伐なんかさせたく無いのに、バルバロッサを持ち出されて不利になったじゃないか」
グッとパシャム大使は言葉に詰まったが、口喧嘩に負けるような大使では無い。
「バルバロッサがサラム王国に逃げ込んだのを知らなかったのは私の落ち度ですが、王族の問題ではありませんか? バルバロッサを海軍が取り逃がしたのも、王族の一員に矢を向けるのを躊躇ったからでは無いですか?」
「まさか、バルバロッサが王族の子孫だという噂を信じているのですか? もしかして、何か知っているのですか? パシャム大使、教えて下さい!」
パシャム大使はいずれは王太子になるショウ王子は、知っておく必要があると判断する。
「バルバロッサは、先先代の王子の子孫です。アスラン王の従兄弟の子、つまり貴方のハトコになります。風の魔力持ちだそうですよ」
ショウは落ちぶれたとはいえ王族が海賊をするとは信じられないが、パシャム大使が嘘をついているとは思えない。
「風の魔力持ちなら、真っ当に働いても食べていけるだろう? 何故、海賊などに……」
犯罪者になる理由などいっぱいあるでしょうと、パシャム大使はショックを受けたショウ王子を宥める。
「東南諸島連合王国は王子でも、他の国のようには安穏と暮らせません。ある意味で旧帝国三国は反対で、王子は公爵として領地を貰いますから、生活に困りませんが、ボンクラな子孫や貴族達に多大な迷惑を被っています。領地を管理も出来ず、ユングフラウで贅沢三昧して、借金まみれの貴族達はイルバニア王国の寄生虫です。ある意味で東南諸島の淘汰制度は健全なのですが、バルバロッサは例外中の例外です」
例外中の例外が風の魔力持ちで、悪名高い海賊になるだなんて頭を抱え込むショウだ。
「風の魔力を海賊行為でも活用したんだろうか? ああ、したに決まっているさ! カザリア王国の沿岸を竜騎士隊がパトロールしても、範囲がわかっていればその外で通り過ぎるのを待って、風の魔力で一気に沿岸へ向かうんだ」
自分の身内がカザリア王国の沿岸で海賊行為を行っているのを考えると、腸が煮えくり返る。
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