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第三章 新航路発見
4 さらばユーカ号
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カリンにラビータが第一夫人として嫁いでから、夫人達の諍いは徐々におさまっていった。カリンの夫人のリリィは、ラビータが来てくれてホッとする。
「ラビータ様、私も第一夫人を目指しています。どうすれば、良い第一夫人になれるのでしょう」
第一夫人の仕事は傍目で見ているより大変だと、ラビータはリリィに忠告したが、一緒に暮らしていくうちに、成る程第一夫人を目指しているだけに、若いが賢いし気働きも出来ると感心した。
「貴女が本気で第一夫人を目指すなら、色々と教えてあげましょう。用意が整うまではカリン様に妻として、お仕えするのですよ」
リリィはラビータに家政の仕切り方や、カリンや他の夫人の持参金を管理して、増やすやり方を習った。
「未だ、若いのに熱心ねぇ。キャッシュとシディーは幼いのに、もう少しゆっくり勉強しても良いのではないかしら。もしかして、誰かの第一夫人を狙っているの?」
ラビータは子どもが幼いのにリリィが少し熱心過ぎると不審に思ったが、ショウの第一夫人を狙っていると聞いて得心した。
「ショウ王子! それなら頑張って、貰わないといけないわ。後、二年でララと結婚するし、きっと沢山の夫人が次々と嫁いでくるに決まってますもの。それに、ショウ王子は後継者になるでしょう。しっかりと第一夫人として後宮を管理して貰わなくてはいけないわ」
リリィとラビータはお互いに、自分の産んだ子ども達を託しても安心だと喜んで、二人で協力し合う事を約束した。
ショウは自分の第一夫人にリリィが立候補したのも知らず、レイテ港に帰って来たユーカ号を懐かしそうに眺めている。
竜のサンズでひとっ飛びして、ユーカ号の甲板に降り立ったショウを、カインズ船長は小動物が大きくなったと驚いた。
「久し振りだね、カインズ船長! ユーカ号も久し振りだなぁ~」
八歳で手に入れた新造船のユーカ号も、五年の年月で少し古びた感はあったが、甲板長インガスの指導のお陰で甲板は磨きたてられていたし、帆もキチンと繕ってある。
「カインズ船長……」
ショウはユーカ号を売って、中型船を買おうと言い出し難くて口ごもる。
「ショウ様、中型船、いや大型船を買いたいんだ!」
カインズ船長は、ユーカ号を愛してはいるが、小型船では儲けも少ないので中型船に買い替えたいと、自分の儲けで高額なミシンを輸入したりして資金を準備していた。
「僕も同じ事を言おうとしてたんだ。でも、ユーカ号を手放すのが辛くなって」
カインズ船長も資金にゆとりがあれば、ユーカ号を残して二隻にしたいところだが、そう現実は甘くは無い。
「先ずは、積み荷を売ってからにしやしょうぜ! オーイ、お前ら、サッサと荷降ろししないと、給金は出さないぞ……」
新しい船に乗り換えるのかと聞き耳を立てていた乗組員達を、インガス甲板長が怒鳴りつけて荷降ろしをさせだすと、カインズ船長とショウは船長室で帳簿のチェックを始める。
「頑張って資金を貯めてくれてはいるが、大型船は無理かもしれないな……」
小型船のユーカ号では、ボチボチとしか儲けは貯めていけなかった。
「大型船の古いのなら買えるかも」
カインズ船長は、ショウが新航路の発見の航海に出るなんて考えてもいなかった。
「風の魔力持ちのショウ様が乗船してくれたら、中古の大型船でも大丈夫だろう。留学は終わったんでしょ?」
ショウはカインズ船長に地球についてや、地球の大きさ、そしてゴルチェ大陸の西海岸の測量結果を説明した。
「最も東のペナン島から東に航行すれば、約二週間でゴルチェ大陸の西海岸に着く筈なんだ」
カインズ船長は地球の概念はどうにか理解したが、ペナン島から東に航海してゴルチェ大陸に着くとは信じられなかった。ショウは新しい地図を見せたが、空白の白い部分がもっと長かったらどうなるんだとカインズ船長は質問してきた。
「それを計算する為に、パロマ大学に留学したんだよ。地球の大きさを計算したり、ゴルチェ大陸の西海岸を測量したりして、この新しい地図を作ったんだ。ゴルチェ大陸の西海岸は未開な地域が多いけど、その分、町を建設したり、交易を始めたり出来れば儲けは莫大になるよ」
冒険心では心を動かせないと悟ったショウは、カインズ船長の商人魂に訴えかける。
「確かに、メーリングを何回往復したって、地元に商館を持っている大商人達にはかなわないからなぁ。ゴルチェ大陸の西海岸を開発して、そこに商館を置けば……だが、西海岸が開発されるまで、未開の土地じゃないか」
ショウはゴルチェ大陸の西海岸を測量した結果、この未開の土地で果たして交易がでるきるのだろうかと疑問を持った。それをカインズ船長が気づかないことを期待して話題にしなかったのだが、失敗した。
「東南諸島の商人達はたくましいですから、街を開発して一大貿易都市を作り上げますよ」
レッサ艦長はショウの心配を笑いとばしたが、貿易都市どころか貿易村から始めなければいけないのだった。ショウが言葉を濁すのに、カインズ船長はピピンときた。
「新航路は、直ぐには儲けにならないんだな」
「そうとは言えないよ。カザリア王国のレキシントン港へも、東航路の方が早いよ」
カインズ船長は新しい地図を見直して、北部に着けばカザリア王国に近いとは認めた。
「でも、この辺の海流とかの調査もして無いんだろ。南のグレイブ岬近くに着いたら、延々と北上しなくちゃいけないじゃないか」
カインズ船長を説得するのは、父上を説得するより厳しいと、ショウは溜め息をつく。
「新航路の発見だけで、浮かれてはいられないな」
「当たり前だ、こちらは船員達の給金を稼がないといけないんだぜ。軍艦みたいに、親方王国じゃ無いんだ」
新航路の発見と同時に、ゴルチェ大陸の西海岸に貿易拠点を作らなきゃいけないんだけど、荷が重すぎるとショウは頭を抱え込む。
「元々、サリーム兄上に新航路を教えてあげて、お金儲けさせてあげたかったんだ。でも、貿易拠点を作るとかは、ハッサン兄上が得意そうなんだよね~。商人魂が一番強いのは兄弟の中で、ハッサン兄上なんだ。前は目先の利益ばかり考えるから、苦手だったけど少し成長されたかなぁ?」
優等生のサリームが未開の地で、騙したり騙されたりしながら、貿易村を建設している姿はショウには想像できなかった。ハッサンなら、怠けている召使い達を怒鳴りつけて、逞しく貿易村を作り上げている姿が思い浮かぶ。
「ハッサン兄上なら、ラジック兄上もこき使って、貿易村どころか貿易町ぐらいは直ぐに作ってくれそうだけど……できたらサリーム兄上に、花を持たせてあげたいなぁ。ラシンドとは遠縁なのだから、手伝って貰えば……」
カインズ船長はショウの気の良さと言うか、野心の無さに呆れてしまう。
「ショウ様が、指揮すれば良いじゃないか。ラシンドには、母上が嫁いでいるんでしょ。義理の父親なんだから、手伝って貰えば良いのでは」
ショウはラシンドを大商人として尊敬していたが、何故かプライドが邪魔して援助を求めるのが嫌だった。
「一度、弟や妹に会って来なきゃ。でも、東航路の件は話すかどうかは、わからないな~。第一、大商人のラシンドはメーリングに商館を構えているから、未開のゴルチェ大陸西海岸にわざわざ商館を置く必要がないよ」
カインズ船長はハッサン王子に頼む前に、自分で出来るか検討すべきだとショウの背中を後押しする。
「それに、ユーカ号を買うときに、ラシンドに世話になったんだろ? ユーカ号を売る報告を、一応しておくのが筋だ。それに、次の船を買うのに付いて来て貰えば、顔がきくから安くして貰えるぞ」
ゴツい顔に似合わず気配りするカインズ船長に感心していたら、少し恥ずかしそうにラシンドの姪を嫁に貰う事になったと言い出した。
「本当なら、駆け出しの船長なんかに嫁ぐのは、もったいない女なんだ。可愛くてよ~」
カインズ船長が照れるのは、見ているショウまで恥ずかしくなってくるほどだ。
「カインズ船長は、何歳なの?」
確か、前の船を騙し取られた時に、二十歳ぐらいだった筈だと思ったが、二十五歳には見えない親父顔にショウは改めて聞く。
「俺は二十五歳だ! もうすぐ二十六歳になるから、そろそろ身を固めないとなぁ」
「二十六歳で結婚するのは遅いの?」
「あっ、ショウ様みたいな王子様と、俺達とは違うさ。庶民でも金持ちの息子は、十八歳位で結婚したりするが、普通は金を貯めてからしか出来ないから二十五歳位なら普通だぜ。若い時は何人も妻が欲しいとか夢を見たが、まぁ、一人を養うのが精一杯かな」
東南諸島は一夫多妻制だと思い込んでいたショウには、目から鱗だった。
「え~、一夫一妻で良いんだ! 良かったぁ~、僕もそんなに沢山の奥さんを養う自信が無かったし、カリン兄上の所みたいに揉めるのは嫌だったんだ。僕は第六王子だし、ララ一人で十分だよ」
カインズ船長は、王子は別じゃないのかと思ったが、ラシンドの所で説明してくれるだろうと急いで屋敷に向かう。
「ユーカ号を売るのかぁ」
初めて手に入れたユーカ号には、ショウもカインズ船長も思い入れがあり、手放すのは辛かったが、いつまでも小型船では商売にならない。ラシンドの屋敷に行く前に、港からユーカ号を眺めて二人は別れを告げた。
「ラビータ様、私も第一夫人を目指しています。どうすれば、良い第一夫人になれるのでしょう」
第一夫人の仕事は傍目で見ているより大変だと、ラビータはリリィに忠告したが、一緒に暮らしていくうちに、成る程第一夫人を目指しているだけに、若いが賢いし気働きも出来ると感心した。
「貴女が本気で第一夫人を目指すなら、色々と教えてあげましょう。用意が整うまではカリン様に妻として、お仕えするのですよ」
リリィはラビータに家政の仕切り方や、カリンや他の夫人の持参金を管理して、増やすやり方を習った。
「未だ、若いのに熱心ねぇ。キャッシュとシディーは幼いのに、もう少しゆっくり勉強しても良いのではないかしら。もしかして、誰かの第一夫人を狙っているの?」
ラビータは子どもが幼いのにリリィが少し熱心過ぎると不審に思ったが、ショウの第一夫人を狙っていると聞いて得心した。
「ショウ王子! それなら頑張って、貰わないといけないわ。後、二年でララと結婚するし、きっと沢山の夫人が次々と嫁いでくるに決まってますもの。それに、ショウ王子は後継者になるでしょう。しっかりと第一夫人として後宮を管理して貰わなくてはいけないわ」
リリィとラビータはお互いに、自分の産んだ子ども達を託しても安心だと喜んで、二人で協力し合う事を約束した。
ショウは自分の第一夫人にリリィが立候補したのも知らず、レイテ港に帰って来たユーカ号を懐かしそうに眺めている。
竜のサンズでひとっ飛びして、ユーカ号の甲板に降り立ったショウを、カインズ船長は小動物が大きくなったと驚いた。
「久し振りだね、カインズ船長! ユーカ号も久し振りだなぁ~」
八歳で手に入れた新造船のユーカ号も、五年の年月で少し古びた感はあったが、甲板長インガスの指導のお陰で甲板は磨きたてられていたし、帆もキチンと繕ってある。
「カインズ船長……」
ショウはユーカ号を売って、中型船を買おうと言い出し難くて口ごもる。
「ショウ様、中型船、いや大型船を買いたいんだ!」
カインズ船長は、ユーカ号を愛してはいるが、小型船では儲けも少ないので中型船に買い替えたいと、自分の儲けで高額なミシンを輸入したりして資金を準備していた。
「僕も同じ事を言おうとしてたんだ。でも、ユーカ号を手放すのが辛くなって」
カインズ船長も資金にゆとりがあれば、ユーカ号を残して二隻にしたいところだが、そう現実は甘くは無い。
「先ずは、積み荷を売ってからにしやしょうぜ! オーイ、お前ら、サッサと荷降ろししないと、給金は出さないぞ……」
新しい船に乗り換えるのかと聞き耳を立てていた乗組員達を、インガス甲板長が怒鳴りつけて荷降ろしをさせだすと、カインズ船長とショウは船長室で帳簿のチェックを始める。
「頑張って資金を貯めてくれてはいるが、大型船は無理かもしれないな……」
小型船のユーカ号では、ボチボチとしか儲けは貯めていけなかった。
「大型船の古いのなら買えるかも」
カインズ船長は、ショウが新航路の発見の航海に出るなんて考えてもいなかった。
「風の魔力持ちのショウ様が乗船してくれたら、中古の大型船でも大丈夫だろう。留学は終わったんでしょ?」
ショウはカインズ船長に地球についてや、地球の大きさ、そしてゴルチェ大陸の西海岸の測量結果を説明した。
「最も東のペナン島から東に航行すれば、約二週間でゴルチェ大陸の西海岸に着く筈なんだ」
カインズ船長は地球の概念はどうにか理解したが、ペナン島から東に航海してゴルチェ大陸に着くとは信じられなかった。ショウは新しい地図を見せたが、空白の白い部分がもっと長かったらどうなるんだとカインズ船長は質問してきた。
「それを計算する為に、パロマ大学に留学したんだよ。地球の大きさを計算したり、ゴルチェ大陸の西海岸を測量したりして、この新しい地図を作ったんだ。ゴルチェ大陸の西海岸は未開な地域が多いけど、その分、町を建設したり、交易を始めたり出来れば儲けは莫大になるよ」
冒険心では心を動かせないと悟ったショウは、カインズ船長の商人魂に訴えかける。
「確かに、メーリングを何回往復したって、地元に商館を持っている大商人達にはかなわないからなぁ。ゴルチェ大陸の西海岸を開発して、そこに商館を置けば……だが、西海岸が開発されるまで、未開の土地じゃないか」
ショウはゴルチェ大陸の西海岸を測量した結果、この未開の土地で果たして交易がでるきるのだろうかと疑問を持った。それをカインズ船長が気づかないことを期待して話題にしなかったのだが、失敗した。
「東南諸島の商人達はたくましいですから、街を開発して一大貿易都市を作り上げますよ」
レッサ艦長はショウの心配を笑いとばしたが、貿易都市どころか貿易村から始めなければいけないのだった。ショウが言葉を濁すのに、カインズ船長はピピンときた。
「新航路は、直ぐには儲けにならないんだな」
「そうとは言えないよ。カザリア王国のレキシントン港へも、東航路の方が早いよ」
カインズ船長は新しい地図を見直して、北部に着けばカザリア王国に近いとは認めた。
「でも、この辺の海流とかの調査もして無いんだろ。南のグレイブ岬近くに着いたら、延々と北上しなくちゃいけないじゃないか」
カインズ船長を説得するのは、父上を説得するより厳しいと、ショウは溜め息をつく。
「新航路の発見だけで、浮かれてはいられないな」
「当たり前だ、こちらは船員達の給金を稼がないといけないんだぜ。軍艦みたいに、親方王国じゃ無いんだ」
新航路の発見と同時に、ゴルチェ大陸の西海岸に貿易拠点を作らなきゃいけないんだけど、荷が重すぎるとショウは頭を抱え込む。
「元々、サリーム兄上に新航路を教えてあげて、お金儲けさせてあげたかったんだ。でも、貿易拠点を作るとかは、ハッサン兄上が得意そうなんだよね~。商人魂が一番強いのは兄弟の中で、ハッサン兄上なんだ。前は目先の利益ばかり考えるから、苦手だったけど少し成長されたかなぁ?」
優等生のサリームが未開の地で、騙したり騙されたりしながら、貿易村を建設している姿はショウには想像できなかった。ハッサンなら、怠けている召使い達を怒鳴りつけて、逞しく貿易村を作り上げている姿が思い浮かぶ。
「ハッサン兄上なら、ラジック兄上もこき使って、貿易村どころか貿易町ぐらいは直ぐに作ってくれそうだけど……できたらサリーム兄上に、花を持たせてあげたいなぁ。ラシンドとは遠縁なのだから、手伝って貰えば……」
カインズ船長はショウの気の良さと言うか、野心の無さに呆れてしまう。
「ショウ様が、指揮すれば良いじゃないか。ラシンドには、母上が嫁いでいるんでしょ。義理の父親なんだから、手伝って貰えば良いのでは」
ショウはラシンドを大商人として尊敬していたが、何故かプライドが邪魔して援助を求めるのが嫌だった。
「一度、弟や妹に会って来なきゃ。でも、東航路の件は話すかどうかは、わからないな~。第一、大商人のラシンドはメーリングに商館を構えているから、未開のゴルチェ大陸西海岸にわざわざ商館を置く必要がないよ」
カインズ船長はハッサン王子に頼む前に、自分で出来るか検討すべきだとショウの背中を後押しする。
「それに、ユーカ号を買うときに、ラシンドに世話になったんだろ? ユーカ号を売る報告を、一応しておくのが筋だ。それに、次の船を買うのに付いて来て貰えば、顔がきくから安くして貰えるぞ」
ゴツい顔に似合わず気配りするカインズ船長に感心していたら、少し恥ずかしそうにラシンドの姪を嫁に貰う事になったと言い出した。
「本当なら、駆け出しの船長なんかに嫁ぐのは、もったいない女なんだ。可愛くてよ~」
カインズ船長が照れるのは、見ているショウまで恥ずかしくなってくるほどだ。
「カインズ船長は、何歳なの?」
確か、前の船を騙し取られた時に、二十歳ぐらいだった筈だと思ったが、二十五歳には見えない親父顔にショウは改めて聞く。
「俺は二十五歳だ! もうすぐ二十六歳になるから、そろそろ身を固めないとなぁ」
「二十六歳で結婚するのは遅いの?」
「あっ、ショウ様みたいな王子様と、俺達とは違うさ。庶民でも金持ちの息子は、十八歳位で結婚したりするが、普通は金を貯めてからしか出来ないから二十五歳位なら普通だぜ。若い時は何人も妻が欲しいとか夢を見たが、まぁ、一人を養うのが精一杯かな」
東南諸島は一夫多妻制だと思い込んでいたショウには、目から鱗だった。
「え~、一夫一妻で良いんだ! 良かったぁ~、僕もそんなに沢山の奥さんを養う自信が無かったし、カリン兄上の所みたいに揉めるのは嫌だったんだ。僕は第六王子だし、ララ一人で十分だよ」
カインズ船長は、王子は別じゃないのかと思ったが、ラシンドの所で説明してくれるだろうと急いで屋敷に向かう。
「ユーカ号を売るのかぁ」
初めて手に入れたユーカ号には、ショウもカインズ船長も思い入れがあり、手放すのは辛かったが、いつまでも小型船では商売にならない。ラシンドの屋敷に行く前に、港からユーカ号を眺めて二人は別れを告げた。
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