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第三章 白鳥
18 ジュリア頑張る!
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ジュリアはルーファス王子との結婚なんてあり得ないと決意して、お断りする決意をしたが、なかなか実行に移せなかった。なぜなら、ルーファス王子にプロポーズされてないのに、お断りするなんて上級恋愛テクニックを持っていなかったからだ。うだうだ悩んでいるジュリアは修行にも身が入らない。
「ジュリア、上の空だな」
「カリースト師、すみません」真っ赤になって謝るジュリアをカリーストは困ったものだと眺める。
「若い乙女なのだから思い悩むことも多かろう。今日はここまでにしておこう」
この調子ではカリースト師に闇の精霊を呼び出す許可は得られそうにない。肩を落としたジュリアは、サリンジャー師に指導を受けているルーファス王子とセドリックに自然と接して、遠回しに結婚をお断りしようと、中庭で待ち伏せしていた。
「お昼を一緒に食べましょうとサリンジャー師とルーファス王子とセドリック様を誘うでしょ。そして、ランチを食べ終わったら、ルーファス王子を奥の庭の花が見事だからと案内する。この時、サリンジャー師とセドリック様が他の用事にいってくれれば良いのだけど……」
異国に留学中のルーファス王子には常にセドリックが付き添っている。ジュリアは、メイドの時からハンサムなセドリックには密やかな憧れと畏敬を持っていた。ルーファス王子の方が明るくて接しやすいぐらいなのだ。
『サリンジャーとセドリックは私に任せて』
困っているジュリアにマリエールが助け舟を出す。
『任せてってどうするの?』
『ジュリアはルーファスと二人っきりになりたいんでしょ! 応援するわ』
恋話だと浮き浮きしているマリエールにジュリアは困惑する。
『違うのよ……でも、二人の方が断りやすいから頼むわ』
サリンジャー師の部屋から食堂へむかう回廊で待ち伏せしていたジュリアの姿を何人もの水晶宮に勤める精霊使い達は目撃し、何事だろうかと首を捻っていた。それを長老であるカリースト師に言いに行く精霊使いはいなかったが、精霊使いの長であるケインズに一言告げる者いた。
「カリースト師、何かジュリア嬢にサリンジャー師へ言付けでも託されたのですか?」
歳をとって食が細くなったカリーストは、食堂へは行かず、部屋にお茶を運んでもらってくつろいでいた。ケインズの質問に首を捻る。
「いえ、私は……そうですか? ジュリアがサリンジャーを待っていたのですか? まぁ、他の方に用事があったのかもしれませんね」
不思議に思う精霊使い達に、カリーストにくっついている精霊達が笑いかける。
『ジュリアはお年頃なのよ』
「えっ、それはジュリア嬢がサリンジャーと?」
精霊の浮ついた言葉に目を白黒させる精霊使いの長ケインズに、カリーストは「まだまだ修行が足りぬの」と笑った。カリーストはジュリアが恋には程遠いのを知っていたし、それを案じていた。自我が確立しないまま野心家のゲチスバーモンド伯爵に押し切られて政略結婚をしてしまいそうだと。
『ジュリアが恋愛できるようになるには、もう少し時間がかかるかな?』
カリーストの周りを精霊達が笑いさざめきながら飛び回る。
『ジュリアはお年頃! ジュリアはお年頃! 恋のシーズンよ』
カリーストとケンズは、はしゃぐ精霊達に驚き、あの内戦の頃との違いに笑った。
師匠と精霊使いの長が自分の恋愛にはしゃぐ精霊達の騒ぎ巻き込まれているなんて知らないジュリアは、やっと回廊に出てきたサリンジャー師とルーファス王子、セドリックにドキドキしながら声を掛けていた。
「サリンジャー師、ルーファス様、セドリック様、一緒に昼食はいかがですか?」
ルーファスはなるべくジュリアと一緒に過ごそうとしていたが、サリンジャー師の厳しい指導で昼食すらもなかなか同じ時間に食べられないのを日頃から不満だった。今日はジュリアから誘われて、にっこりと微笑む。
「ジュリア、もちろんだよ。嬉しいな、あまり水晶宮でも一緒に過ごせないから」
サリンジャーとしては精霊使いの修行を厳しくさせているのと巫女姫になるジュリアを異国に嫁がせたくないという国の総意に基づいて、ルーファス王子を遠ざけていたのだが、何とはなく後ろめたく感じる。
一緒に昼食を食べられると浮かれているルーファス王子にジュリアは食欲も沸かない。
「ジュリア、どうしたのだ?」
サリンジャーが不審に思い声をかける。ジュリアはこれ以上は耐えられないと、思い切ってルーファス王子を誘い出すことにした。
「ルーファス様、奥の庭に綺麗な花が咲いているのです。見に行きませんか?」
食事を諦めて、ジュリアはともかくお断りをしなきゃと勇気を振り絞った。そんなジュリアの決死の表情に、ルーファスは良くない話だと察したが、そこは二人きりになったらどうにかしようとのることにする。
「それは良いですね。ジュリアから誘って貰うのは初めてで嬉しいです」
「初めて……そうだったかしら?」
グサッと心にダメージを受けたジュリアがルーファス王子と席を立つのを、サリンジャーとセドリック二人して複雑な思いで見送った。
「ジュリア、変でしたね」
セドリックの言葉に、サリンジャーも同意する。
「ええ、彼女なりに頑張っているのでしょう」
「どうせ頑張るなら王太子妃として頑張って欲しいものですが……」
「それは……まぁ、本人の気持ちが大切ですから」
セドリックは、巫女姫をルーファス王子の妃にするという王命は果たせそうに無いと溜息をついた。それをサリンジャーは、ポンと肩を叩いて慰める。
「ジュリアは王太子妃にはならないでしょう。彼女はそんなのは望んでないはずです。セドリック、留学の本来の目的である精霊使いの修行に本腰を入れて下さい」
「そうですね。そろそろ帰国命令も届きそうなので、出来るだけ修行しておきたいです」
とは言うものの、ジュリアに振られたルーファス王子を慰めるのは自分しかいないのかとセドリックはうんざりする。
「ジュリア、上の空だな」
「カリースト師、すみません」真っ赤になって謝るジュリアをカリーストは困ったものだと眺める。
「若い乙女なのだから思い悩むことも多かろう。今日はここまでにしておこう」
この調子ではカリースト師に闇の精霊を呼び出す許可は得られそうにない。肩を落としたジュリアは、サリンジャー師に指導を受けているルーファス王子とセドリックに自然と接して、遠回しに結婚をお断りしようと、中庭で待ち伏せしていた。
「お昼を一緒に食べましょうとサリンジャー師とルーファス王子とセドリック様を誘うでしょ。そして、ランチを食べ終わったら、ルーファス王子を奥の庭の花が見事だからと案内する。この時、サリンジャー師とセドリック様が他の用事にいってくれれば良いのだけど……」
異国に留学中のルーファス王子には常にセドリックが付き添っている。ジュリアは、メイドの時からハンサムなセドリックには密やかな憧れと畏敬を持っていた。ルーファス王子の方が明るくて接しやすいぐらいなのだ。
『サリンジャーとセドリックは私に任せて』
困っているジュリアにマリエールが助け舟を出す。
『任せてってどうするの?』
『ジュリアはルーファスと二人っきりになりたいんでしょ! 応援するわ』
恋話だと浮き浮きしているマリエールにジュリアは困惑する。
『違うのよ……でも、二人の方が断りやすいから頼むわ』
サリンジャー師の部屋から食堂へむかう回廊で待ち伏せしていたジュリアの姿を何人もの水晶宮に勤める精霊使い達は目撃し、何事だろうかと首を捻っていた。それを長老であるカリースト師に言いに行く精霊使いはいなかったが、精霊使いの長であるケインズに一言告げる者いた。
「カリースト師、何かジュリア嬢にサリンジャー師へ言付けでも託されたのですか?」
歳をとって食が細くなったカリーストは、食堂へは行かず、部屋にお茶を運んでもらってくつろいでいた。ケインズの質問に首を捻る。
「いえ、私は……そうですか? ジュリアがサリンジャーを待っていたのですか? まぁ、他の方に用事があったのかもしれませんね」
不思議に思う精霊使い達に、カリーストにくっついている精霊達が笑いかける。
『ジュリアはお年頃なのよ』
「えっ、それはジュリア嬢がサリンジャーと?」
精霊の浮ついた言葉に目を白黒させる精霊使いの長ケインズに、カリーストは「まだまだ修行が足りぬの」と笑った。カリーストはジュリアが恋には程遠いのを知っていたし、それを案じていた。自我が確立しないまま野心家のゲチスバーモンド伯爵に押し切られて政略結婚をしてしまいそうだと。
『ジュリアが恋愛できるようになるには、もう少し時間がかかるかな?』
カリーストの周りを精霊達が笑いさざめきながら飛び回る。
『ジュリアはお年頃! ジュリアはお年頃! 恋のシーズンよ』
カリーストとケンズは、はしゃぐ精霊達に驚き、あの内戦の頃との違いに笑った。
師匠と精霊使いの長が自分の恋愛にはしゃぐ精霊達の騒ぎ巻き込まれているなんて知らないジュリアは、やっと回廊に出てきたサリンジャー師とルーファス王子、セドリックにドキドキしながら声を掛けていた。
「サリンジャー師、ルーファス様、セドリック様、一緒に昼食はいかがですか?」
ルーファスはなるべくジュリアと一緒に過ごそうとしていたが、サリンジャー師の厳しい指導で昼食すらもなかなか同じ時間に食べられないのを日頃から不満だった。今日はジュリアから誘われて、にっこりと微笑む。
「ジュリア、もちろんだよ。嬉しいな、あまり水晶宮でも一緒に過ごせないから」
サリンジャーとしては精霊使いの修行を厳しくさせているのと巫女姫になるジュリアを異国に嫁がせたくないという国の総意に基づいて、ルーファス王子を遠ざけていたのだが、何とはなく後ろめたく感じる。
一緒に昼食を食べられると浮かれているルーファス王子にジュリアは食欲も沸かない。
「ジュリア、どうしたのだ?」
サリンジャーが不審に思い声をかける。ジュリアはこれ以上は耐えられないと、思い切ってルーファス王子を誘い出すことにした。
「ルーファス様、奥の庭に綺麗な花が咲いているのです。見に行きませんか?」
食事を諦めて、ジュリアはともかくお断りをしなきゃと勇気を振り絞った。そんなジュリアの決死の表情に、ルーファスは良くない話だと察したが、そこは二人きりになったらどうにかしようとのることにする。
「それは良いですね。ジュリアから誘って貰うのは初めてで嬉しいです」
「初めて……そうだったかしら?」
グサッと心にダメージを受けたジュリアがルーファス王子と席を立つのを、サリンジャーとセドリック二人して複雑な思いで見送った。
「ジュリア、変でしたね」
セドリックの言葉に、サリンジャーも同意する。
「ええ、彼女なりに頑張っているのでしょう」
「どうせ頑張るなら王太子妃として頑張って欲しいものですが……」
「それは……まぁ、本人の気持ちが大切ですから」
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「ジュリアは王太子妃にはならないでしょう。彼女はそんなのは望んでないはずです。セドリック、留学の本来の目的である精霊使いの修行に本腰を入れて下さい」
「そうですね。そろそろ帰国命令も届きそうなので、出来るだけ修行しておきたいです」
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