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第二章 白鳥になれるのか?
8 マリエールとサリンジャーとジョージ
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ジュリアはサリンジャー師とマーカス卿を見失ってしまったが、マリエールに案内して貰った。
『ここにサリンジャーはいるわ!』
褒めて! とくるくる舞うマリエールに、感謝の言葉を与えたものの、ジュリアは何時もは来ない緑蔭城の部所だし、男の人の部屋に入るのを躊躇う。
『何をしているの? サリンジャーを探していたのでしょ?』
自分が親切に教えてあげたのにと、マリエールが不審そうにジュリアの髪を引っ張る。
『マリエール! 髪の毛を引っ張らないで! ちょっと勇気を振り絞っているところなの……男の人の部屋に一人で来てはいけないのかも……』
今までのメイドの生活ではなく、伯爵令嬢として常に侍女を付き添わすようにとお祖母様に厳しく言われていたと思い出したジュリアは、やはりルーシーを連れてこなきゃいけないと踵をかえそうとした。
『ジュリア! 私を信じてくれないの?』
『そうじゃない! ええっと……』
精霊のマリエールに微妙な年頃の乙女の嗜みについて理解できるかしらと、ジュリアはあたふたと説明しかけた。
「ジュリア? 何をしているのだ?」
精霊使いが二人もいて、ドアの前でマリエールが騒いでいるのに気づかないわけがない。
「あのう……私も何かお手伝いをしたくて!」
ジュリアは勇気を振り絞って、サリンジャー師とジョージに手伝いたいと言ったものの、足手まといにしかならないのではと感じて真っ赤になって俯く。
サリンジャーはジュリアを内乱に近づけたくないので困った顔をした。しかし、ジョージは水晶宮の精霊使いを解放する良い計画が思い付かなかったので、何か役に立つのでは無いかと考えて、部屋に招き入れた。
「マーカス卿、ちょっとジュリアを部屋に入れるのはまずいのでは無いでしょうか?」
サリンジャーは貴族の令嬢と男が同室に付き添いも無く同席するのはマナー違反だと言い立てて、ジュリアを巻き込まないようにしようとする。
「ジュリア? 私達は君を襲ったりしないよ、信用してくれるよね」
パチンとウィンクしながら、椅子にエスコートするジョージに、ジュリアもクスクス笑って頷く。
『ジュリアに変な真似はさせないわ!』
勇ましい発言をするマリエールだが、精霊としても小さく、どうやって阻止するのかとジョージとサリンジャーは肩を竦めた。
『まぁ、マリエール! サリンジャー師もマーカス卿も変な真似なんかされないわ』
いきり立つマリエールに手を伸ばして、膝に座らせる。
サリンジャーとジョージは、ジュリアがまるで自分の子どものように精霊を扱うのと、マリエールが満足そうに頭を撫でて貰っているのを見て、こんなに親密になるものなのだと今までの常識がひっくり返った。
「こんな風に精霊を扱ったことがありますか?」
ジョージは水晶宮の精霊使い達は、精霊から名前を教えて貰ったりすると聞いていたので、サリンジャーにこのような事もあるのかと質問する。
「まさか! 私はこの前名前を教えて貰いましたが、ジュリアが精霊に名前を付けたり、こんな風に親密に過ごしているのに驚いているのです。
水晶宮のカリースト師匠でも、こんな風に膝にのせたりはしませんよ」
「まぁ、そうなんですか? マリエールを膝に乗せたりしてはいけないのね」
ジュリアは慌ててマリエールを退かせようとしたが、サリンジャーはそれを制した。
「ジュリア、貴女の遣り方でマリエールと絆を深めて構わないのですよ。
精霊に名前を付けるということが、非常に珍しいことなのですから。
でも、そのうちマリエールは大きくなって、膝には乗れなくなるでしょうけどね」
風の精霊であるシルフィードは、実体化させても透明感があるのだが、マリエールは精霊使いの目には本当の子どものように存在感がある。
「でも、少しも重みは感じませんよ」
『当たり前よ! 私は風の精霊なのよ! 土の精霊みたいに重くは無いわ』
ジュリアは緑蔭城には土の精霊の恵みがあるのにと、マリエールの悪口にヒヤヒヤする。風の精霊と土の精霊はどうもお互いに自分の有利性を言いつのる癖があるのだ。
『マリエール、悪口は言っては駄目よ』
サリンジャーとジョージは、子どもに言い聞かせているようなジュリアに呆れる。
「ジュリア、マリエールは精霊としては幼いですが、貴女よりはかなり年長ですよ。
赤ん坊の貴女を運んだのですから」
そう言えばそうなのねと、ジュリアはマリエールが何歳なのかしら? と疑問を持ったが、精霊は人間のように年は数えないみたいで、首を傾げるだけだった。
ジョージはサリンジャーがジュリアを水晶宮の精霊使いを解放する作戦に関わらせたく無いから、マリエールの話題を長引かせているのだと察した。
『ここにサリンジャーはいるわ!』
褒めて! とくるくる舞うマリエールに、感謝の言葉を与えたものの、ジュリアは何時もは来ない緑蔭城の部所だし、男の人の部屋に入るのを躊躇う。
『何をしているの? サリンジャーを探していたのでしょ?』
自分が親切に教えてあげたのにと、マリエールが不審そうにジュリアの髪を引っ張る。
『マリエール! 髪の毛を引っ張らないで! ちょっと勇気を振り絞っているところなの……男の人の部屋に一人で来てはいけないのかも……』
今までのメイドの生活ではなく、伯爵令嬢として常に侍女を付き添わすようにとお祖母様に厳しく言われていたと思い出したジュリアは、やはりルーシーを連れてこなきゃいけないと踵をかえそうとした。
『ジュリア! 私を信じてくれないの?』
『そうじゃない! ええっと……』
精霊のマリエールに微妙な年頃の乙女の嗜みについて理解できるかしらと、ジュリアはあたふたと説明しかけた。
「ジュリア? 何をしているのだ?」
精霊使いが二人もいて、ドアの前でマリエールが騒いでいるのに気づかないわけがない。
「あのう……私も何かお手伝いをしたくて!」
ジュリアは勇気を振り絞って、サリンジャー師とジョージに手伝いたいと言ったものの、足手まといにしかならないのではと感じて真っ赤になって俯く。
サリンジャーはジュリアを内乱に近づけたくないので困った顔をした。しかし、ジョージは水晶宮の精霊使いを解放する良い計画が思い付かなかったので、何か役に立つのでは無いかと考えて、部屋に招き入れた。
「マーカス卿、ちょっとジュリアを部屋に入れるのはまずいのでは無いでしょうか?」
サリンジャーは貴族の令嬢と男が同室に付き添いも無く同席するのはマナー違反だと言い立てて、ジュリアを巻き込まないようにしようとする。
「ジュリア? 私達は君を襲ったりしないよ、信用してくれるよね」
パチンとウィンクしながら、椅子にエスコートするジョージに、ジュリアもクスクス笑って頷く。
『ジュリアに変な真似はさせないわ!』
勇ましい発言をするマリエールだが、精霊としても小さく、どうやって阻止するのかとジョージとサリンジャーは肩を竦めた。
『まぁ、マリエール! サリンジャー師もマーカス卿も変な真似なんかされないわ』
いきり立つマリエールに手を伸ばして、膝に座らせる。
サリンジャーとジョージは、ジュリアがまるで自分の子どものように精霊を扱うのと、マリエールが満足そうに頭を撫でて貰っているのを見て、こんなに親密になるものなのだと今までの常識がひっくり返った。
「こんな風に精霊を扱ったことがありますか?」
ジョージは水晶宮の精霊使い達は、精霊から名前を教えて貰ったりすると聞いていたので、サリンジャーにこのような事もあるのかと質問する。
「まさか! 私はこの前名前を教えて貰いましたが、ジュリアが精霊に名前を付けたり、こんな風に親密に過ごしているのに驚いているのです。
水晶宮のカリースト師匠でも、こんな風に膝にのせたりはしませんよ」
「まぁ、そうなんですか? マリエールを膝に乗せたりしてはいけないのね」
ジュリアは慌ててマリエールを退かせようとしたが、サリンジャーはそれを制した。
「ジュリア、貴女の遣り方でマリエールと絆を深めて構わないのですよ。
精霊に名前を付けるということが、非常に珍しいことなのですから。
でも、そのうちマリエールは大きくなって、膝には乗れなくなるでしょうけどね」
風の精霊であるシルフィードは、実体化させても透明感があるのだが、マリエールは精霊使いの目には本当の子どものように存在感がある。
「でも、少しも重みは感じませんよ」
『当たり前よ! 私は風の精霊なのよ! 土の精霊みたいに重くは無いわ』
ジュリアは緑蔭城には土の精霊の恵みがあるのにと、マリエールの悪口にヒヤヒヤする。風の精霊と土の精霊はどうもお互いに自分の有利性を言いつのる癖があるのだ。
『マリエール、悪口は言っては駄目よ』
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「ジュリア、マリエールは精霊としては幼いですが、貴女よりはかなり年長ですよ。
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そう言えばそうなのねと、ジュリアはマリエールが何歳なのかしら? と疑問を持ったが、精霊は人間のように年は数えないみたいで、首を傾げるだけだった。
ジョージはサリンジャーがジュリアを水晶宮の精霊使いを解放する作戦に関わらせたく無いから、マリエールの話題を長引かせているのだと察した。
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