10 / 19
第ニ章 逆恨み
3 この部屋はヤバ過ぎる!
しおりを挟む
社長室はモダンなビルに相応しい高級感溢れるインテリアで統一されていたが、東三条は取り憑いた黒い影が活性化して、ぼんやりと応接セットの椅子に崩れ落ちるように座る。
「この部屋はヤバ過ぎる! あのう秘書さん? 何処か別の部屋はありませんか?」
社長がぼんやりしているので、秘書に尋ねるのだが、この横柄な態度の若者の言葉に従うべきか判断に悩む。
「東三条のおじ様、ここに居たら駄目みたいよ」
瑠美は政宗に取り憑いた伯母の霊を説得して貰った経験から、この方面については信頼していた。ぐったりしている東三条の腕を持って強引に立たせると、部屋の外へ連れ出す。
部屋から出るとぼんやりしていた東三条も、少し回復する。
「どうも……ぼんやりしていたようだ……」
「あの部屋には当分入らない方が良いですよ」
政宗の言葉に力無く頷く。秘書に会議室へと案内されたが、どうもこのビルは落ち着かない。
「ええっと、このビルから引っ越すってのはどうですか? こんな悪霊憑きのビルになんか居たら、東三条さんの寿命も尽きてしまいますよ。貴方はかなり強い生命力というか精神力を持っているみたいですが、このままじゃあね」
お茶を運んで来た秘書は、このインチキ霊媒師は何を言い出すのか! とムッとしたが、社長が騙されたりはしないだろうと、口を挟まない。
「無茶を言わないでくれたまえ。このビルは自社ビルなのだ。フロアーを系列会社にレンタルしているのに、悪霊憑きのビルだなんて言わないで下さい」
「ビルの評判なんか気にしている場合じゃないでしょう。命あっての物種ですよ」
ムッとした顔の東三条に政宗は説得するが、どうやら無駄みたいだと諦める。
「まぁ、私は言うだけは言いましたからね。後は御自分で判断して下さい」
それじゃあと席を立つ政宗に瑠美は呆れる。
「ちょっと、そんな無責任なぁ! 引き受けた仕事を簡単に投げ出さないでよ。除霊が出来なくても、原因を調査して取り除くとか、探偵らしい事をしなさいよ」
部屋を出て行こうとしていた政宗の足が止まった。
「そうだなぁ。原因を調査するのは、探偵の仕事に相応しい。困難に打ち勝つのも面白そうだ!」
その困難とは自分の事だろうか? と東三条は額にパラリと落ちた髪を撫で上げながら溜息をついた。
「さぁ、では調査を始めます。こんな風に黒い影に憑かれるようになったの何時からですか?」
「黒い影……体調を崩すようになったのは、半年前からだ。そうだ! このビルが完成し、会社を引っ越したのは1年前だから、君の悪霊憑きのビルと言うのは間違いだ」
これで莫大な損失は防げたと東三条は会議室の椅子の背もたれに身体を預ける。
「それは調査しないとわかりませんよ。貴方が頑丈で体調に不良に気づかなかっただけかもしれないし……ふぅむ、その影と話せたら、調査できるのですが……ここじゃあ、弱いし、社長室では強すぎて危険だし。中間地点が良いかな?」
政宗は東三条を連れて影が濃くなり、それでいて自分が危険ではない部屋を探す。
「まぁ、この部屋でいいなか? 個室だから、他の人もいないし。あっ、ちょっと出ていって!」
「社長?」東三条は、秘書に暫く部屋を借りると言い切った。
秘書は自分の部屋を占領されて、行き場を失い苛つくが、東三条はそれどころではない。社長室に近い秘書室でも体調が悪くなる。
「私は気分が優れないのだが……」
「そうだねぇ、ここは社長室に近過ぎるかも? でも、他の人が居ない方が良いでしょ?」
確かに社員の目の前で除霊、いや調査を受けたくないと東三条も考えて秘書の椅子に座る。
「この部屋はヤバ過ぎる! あのう秘書さん? 何処か別の部屋はありませんか?」
社長がぼんやりしているので、秘書に尋ねるのだが、この横柄な態度の若者の言葉に従うべきか判断に悩む。
「東三条のおじ様、ここに居たら駄目みたいよ」
瑠美は政宗に取り憑いた伯母の霊を説得して貰った経験から、この方面については信頼していた。ぐったりしている東三条の腕を持って強引に立たせると、部屋の外へ連れ出す。
部屋から出るとぼんやりしていた東三条も、少し回復する。
「どうも……ぼんやりしていたようだ……」
「あの部屋には当分入らない方が良いですよ」
政宗の言葉に力無く頷く。秘書に会議室へと案内されたが、どうもこのビルは落ち着かない。
「ええっと、このビルから引っ越すってのはどうですか? こんな悪霊憑きのビルになんか居たら、東三条さんの寿命も尽きてしまいますよ。貴方はかなり強い生命力というか精神力を持っているみたいですが、このままじゃあね」
お茶を運んで来た秘書は、このインチキ霊媒師は何を言い出すのか! とムッとしたが、社長が騙されたりはしないだろうと、口を挟まない。
「無茶を言わないでくれたまえ。このビルは自社ビルなのだ。フロアーを系列会社にレンタルしているのに、悪霊憑きのビルだなんて言わないで下さい」
「ビルの評判なんか気にしている場合じゃないでしょう。命あっての物種ですよ」
ムッとした顔の東三条に政宗は説得するが、どうやら無駄みたいだと諦める。
「まぁ、私は言うだけは言いましたからね。後は御自分で判断して下さい」
それじゃあと席を立つ政宗に瑠美は呆れる。
「ちょっと、そんな無責任なぁ! 引き受けた仕事を簡単に投げ出さないでよ。除霊が出来なくても、原因を調査して取り除くとか、探偵らしい事をしなさいよ」
部屋を出て行こうとしていた政宗の足が止まった。
「そうだなぁ。原因を調査するのは、探偵の仕事に相応しい。困難に打ち勝つのも面白そうだ!」
その困難とは自分の事だろうか? と東三条は額にパラリと落ちた髪を撫で上げながら溜息をついた。
「さぁ、では調査を始めます。こんな風に黒い影に憑かれるようになったの何時からですか?」
「黒い影……体調を崩すようになったのは、半年前からだ。そうだ! このビルが完成し、会社を引っ越したのは1年前だから、君の悪霊憑きのビルと言うのは間違いだ」
これで莫大な損失は防げたと東三条は会議室の椅子の背もたれに身体を預ける。
「それは調査しないとわかりませんよ。貴方が頑丈で体調に不良に気づかなかっただけかもしれないし……ふぅむ、その影と話せたら、調査できるのですが……ここじゃあ、弱いし、社長室では強すぎて危険だし。中間地点が良いかな?」
政宗は東三条を連れて影が濃くなり、それでいて自分が危険ではない部屋を探す。
「まぁ、この部屋でいいなか? 個室だから、他の人もいないし。あっ、ちょっと出ていって!」
「社長?」東三条は、秘書に暫く部屋を借りると言い切った。
秘書は自分の部屋を占領されて、行き場を失い苛つくが、東三条はそれどころではない。社長室に近い秘書室でも体調が悪くなる。
「私は気分が優れないのだが……」
「そうだねぇ、ここは社長室に近過ぎるかも? でも、他の人が居ない方が良いでしょ?」
確かに社員の目の前で除霊、いや調査を受けたくないと東三条も考えて秘書の椅子に座る。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
今日から、契約家族はじめます
浅名ゆうな
キャラ文芸
旧題:あの、連れ子4人って聞いてませんでしたけど。
大好きだった母が死に、天涯孤独になった有賀ひなこ。
悲しみに暮れていた時出会ったイケメン社長に口説かれ、なぜか契約結婚することに!
しかも男には子供が四人いた。
長男はひなこと同じ学校に通い、学校一のイケメンと騒がれる楓。長女は宝塚ばりに正統派王子様な譲葉など、ひとくせある者ばかり。
ひなこの新婚(?)生活は一体どうなる!?
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
後宮の記録女官は真実を記す
悠井すみれ
キャラ文芸
【第7回キャラ文大賞参加作品です。お楽しみいただけましたら投票お願いいたします。】
中華後宮を舞台にしたライトな謎解きものです。全16話。
「──嫌、でございます」
男装の女官・碧燿《へきよう》は、皇帝・藍熾《らんし》の命令を即座に断った。
彼女は後宮の記録を司る彤史《とうし》。何ものにも屈さず真実を記すのが務めだというのに、藍熾はこともあろうに彼女に妃の夜伽の記録を偽れと命じたのだ。職務に忠実に真実を求め、かつ権力者を嫌う碧燿。どこまでも傲慢に強引に我が意を通そうとする藍熾。相性最悪のふたりは反発し合うが──
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
下宿屋 東風荘 5
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*゜☆.。.:*゚☆
下宿屋を営む天狐の養子となった雪翔。
車椅子生活を送りながらも、みんなに助けられながらリハビリを続け、少しだけ掴まりながら歩けるようにまでなった。
そんな雪翔と新しい下宿屋で再開した幼馴染の航平。
彼にも何かの能力が?
そんな幼馴染に狐の養子になったことを気づかれ、一緒に狐の国に行くが、そこで思わぬハプニングが__
雪翔にのんびり学生生活は戻ってくるのか!?
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*☆.。.:*゚☆
イラストの無断使用は固くお断りさせて頂いております。
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる