上 下
5 / 5

隣国へ

しおりを挟む
 結婚証明書にサインをした私達はすぐに出発する事になった。国王陛下の労いの言葉を頂き、近衛騎士の人たちが見送ってくれた。

 国王陛下、塩対応過ぎませんか。あまりにも短い労いの言葉は聞いても聞かなくてもという感じだった。国内の情勢が悪くなっているから仕方がないが、一応箱入りの貴族令嬢の見送りなのに盛大に見送ってくれないとは。馬鹿にしたような対応に馬車の中でアージェスが怒り、身震いをしていた。

 彼が落ち着くまで無言で窓から外を眺めていた。

「もうここに戻ってくることはないわ。せいせいしたわ。ありがとうアージェス」

 今までの事を思い出して無意識に涙が出てしまった。止めようとしているのに涙が溢れてしまう。

「ごめんなさい、折角のドレスが汚れて、ごめんなさい」

「気にしないでください。貴方に似合うドレスをいくらでも用意しています」

 抱きしめられるとアージェスの優しい匂いに包まれて安心した。ずっと誰かに抱きしめて貰いたかった。心が飢えていた。

 ミリアを可愛がる両親に迷惑をかけないようにするためにはどうすればいいのか考え、元のラウラになりきるために行動を制限していた。

 その姿はまるでマリオネットのようだったろう。きっと元のラウラが戻ってきて元の世界に私が戻れると思っていた。夢から醒めた私は時計を見ながら時間も大して経っていないことから

『夢だったんだ』

 と呟いて元の日本での生活に戻れると思っていた。憧れていた美人でお金持ちの娘なのに、ここにいる間に満たされた事はなかった。こんなことが続くなら、逃げ出そうと思った時にアージェスと過ごした日々があったから生きてこられた。

 沢山の思い出を思い出すと過去の出来事になっていた。シアター国や家族に全く未練もなければ愛情も感じない。
 これからはラウラ・クロルフェシアンとして第二の人生が始まる。
 
 愛されヒロインは私じゃない誰かだったのだろう。

 ♢♢♢

 隣国、海の国アクアリウスはゲームで国境ギリギリのところしか行けなかった。最近まで鎖国されていた国で魔物の侵略をきっかけに近隣諸国と交流を始めた。そんな事を教えてくれない家庭教師たちは何を考えていたのだろうか。ネットもスマホもないから情報規制されたら、人から聞くしかないのに。

 本当に知らない事ばかりで、沢山の事を教えてくれるアージェスに頭が下がる。アクアリウス国に入国すると人々が手を振っている。親しみやすい国民性のおかげなのかなと考えていると、馬車が停まり降りる事になった。
 馬車の中で私たちは名前を呼び捨てで呼び合う仲になった。敬称はいらないと釘を刺されてしまった。

「少し休みましょう」

「ありがとうございます。潮風が心地いいですね」

 目の前に広がる光景に目を細めた。
 海有り県出身のため、海を見ると自然にテンションが上がってしまう。魚料理が毎日食べられたら、とても嬉しい。シアター国では魚を食べる機会がなかった。家族が好きじゃなかったのもあるが、魚の鮮度が落ちるため臭うせいでもある。

 アージェスの屋敷に案内されるとすぐに食事を振舞ってくれた。

「英雄様、ご夫人、よろしければ召し上がってください」

 串に刺された魚を差し出され、手に取って食べると塩の塩梅が良くすぐに食べ終わってしまった。

「美味しい」

 外の空気と相まって魚が美味しく感じた。脂身のある鮭がこんなに美味しいなんて。お米が欲しくなる。使用人たちが次から次へと食事を持ってきてくれて食べることに専念した。

「よろしければ、もっと召し上がってください」

「はい」

 この後もフルーツやお土産用の魚をいただき、私たちは泊まることになった。突然決まったわけではなく、予定として宿泊することが決定していたのだ。ベッドルームは広くて、侯爵令嬢の私の部屋になかった湯殿もあり驚かされた。

「ここは別荘なのですか?」

「いえ、領地です。王都付近も管理しているのですが、今は領主たちが不正をしていることが多く、割り当てを変えている最中なのです。一族が古くから尽くしてきたと訴えられることもありましたが、領民たちに無理な税を強いる方もいました。ここが好きですか?」

「はい。海も近くて食べ物が美味しいですね。初めて魚を食べましたが、とても美味しいです。もうシアター国を忘れるくらい好きです。私もここで生まれ育っていれば、もっと早くアージェスと出会えていたのに」

 布団に突然隠れた彼がシーツを被った。何があったのかと思い、シーツをめくると顔を真っ赤にしたアージェスがベッドの隅で丸くなっていた。

「ダメです、触らないでください」

 太ももに手を挟んでいるアージェスが何かを隠していることがすぐに分かった。雄々しく屹立した自身のモノを隠していたのだ。恥ずかしそうにしている姿にいじらしさを感じた。普通に考えてここで白濁なんて吐露したら恥ずかしいに決まっている。

 どうすればいいのか。身体が敏感になっているアージェスが一瞬力が緩んだ隙を狙って服を脱がした。筋骨隆々で銀髪の英雄はベッドの上では弱くなるのかもしれない。ゲーム内で「細マッチョしかいないんだ」と文句をつけるくらい筋肉が大好きな私は興奮していた。

 身を綺麗にしてから舐めた方がいいと聞いたことがあるが。この顔を目の前にしてやめることが出来ない。

「そんな汚いところ舐めないで下さい。せめて綺麗にしてから、っ……――」

 先端を舐めるとアージェスは身体をのけぞらせて顔を手で隠した。舌で割れ目をなぞり喉奥まで咥えると口を窄めて気持ちのいい部分を探した。裏筋を刺激すると頭を剥がそうとされたが、溜まってきた先走りを呑み込むと力が抜けていった。

(もっと気持ちよくなってほしい。やったことがないけれど知識だけはある)

 歯を立てないように頭を動かすと動きに合わせて腰を揺すり始めた。もっと強い刺激が欲しいのかと思って、彼の双睾まで口に含めて舌で気持ち良くすると温かい液体が口内で広がった。

 強い男の精液は飲んだ方がいいと聞いたことがある。魔力の塊を体内に含めることで女性も力が増すのだ。ゴクリと精液を飲んでいくと目が潤んだアージェスと目が合った。
 彼は知らないだろう。双睾の後ろに黒子があって、物凄く性欲が強いことを。

 このまま精液を摂取していたら、彼と同じ魔法を使えるようになるのだろうか。ゲーマーの血が騒ぐ。
 ソワソワし始めたアージェスが私の下着に手をかけた。何か月も溜めたであろうドロドロの精子がまだ口に溜まっている。飲み込むと彼の手に私の手を重ねた。

「まだ、こっちで結婚証明書を書いてませんよ」

「……そんな」

「続きは王都に着いてからになりますね。さぁ、自慢の温泉に入りに行きましょう」

 初めての精液の味は美味しくなかったが、アージェスの泣き顔をみたら美味しく感じた。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

完結 チート悪女に転生したはずが絶倫XL騎士は私に夢中~自分が書いた小説に転生したのに独占されて溺愛に突入~

シェルビビ
恋愛
 男の人と付き合ったことがない私は自分の書いた18禁どすけべ小説の悪女イリナ・ペシャルティに転生した。8歳の頃に記憶を思い出して、小説世界に転生したチート悪女のはずが、ゴリラの神に愛されて前世と同じこいつおもしれえ女枠。私は誰よりも美人で可愛かったはずなのに皆から面白れぇ女扱いされている。  10年間のセックス自粛期間を終え18歳の時、初めて隊長メイベルに出会って何だかんだでセックスする。これからズッコンバッコンするはずが、メイベルにばっかり抱かれている。  一方メイベルは事情があるみたいだがイレナに夢中。  自分の小説世界なのにメイベルの婚約者のトリーチェは訳がありそうで。

婚約破棄したい悪役令嬢と呪われたヤンデレ王子

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「フレデリック殿下、私が十七歳になったときに殿下の運命の方が現れるので安心して下さい」と婚約者は嬉々として自分の婚約破棄を語る。 それを阻止すべくフレデリックは婚約者のレティシアに愛を囁き、退路を断っていく。 そしてレティシアが十七歳に、フレデリックは真実を語る。 ※王子目線です。 ※一途で健全?なヤンデレ ※ざまああり。 ※なろう、カクヨムにも掲載

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

〖完結〗ヒロインちゃんは逆ハー狙いのようですから、私は婚約破棄を希望します。〜私の婚約者は隠しルートの攻略対象者〜。

つゆり 花燈
恋愛
私はどうやら逆ハーエンドのある18禁乙女ゲームの世界に転生したらしい。 そして私の婚約者はゲームの悪役令息で、かつヒロインの逆ハーが成立したら開く、隠しルートの攻略対象者だった。そして現在、肉食系ヒロインちゃんは、ガツガツと攻略対象者を喰い散らかしている真っ最中。隠しルートが開くのはもはや時間の問題みたい。 ハッピーエンドの下品系エロなラブコメです。 ※タイトル変更しました。 ※肉食系ヒロインちゃんシリーズです。 ※悪役令息な婚約者が好きすぎて、接近するとすぐに息が止まるし、過度に触れ合うと心臓発作を起こしそうになる、めちゃくちゃピュアで駄目な主人公とその駄目さを溺愛する婚約者のお話。 ※小説家になろうのムーンライトノベルズさんで日間総合、各部部門のランキング1位を頂いたお話です。

完結 R18 聖女辞めるため娼婦にジョブチェンジしたい。氷の騎士団長は次期娼婦館のオーナーでした。

シェルビビ
恋愛
 アルシャ王国に聖女召喚された神崎穂乃花。この国に大聖女がいるのに何故聖女召喚したと聞いてみると後継者が異世界にいるということで召喚されたらしい。  召喚された次の日に瘴気に満たされた森が浄化された。聖騎士団が向かうと同じく異世界からやってきた少女、園田ありすが現れたのだった。  神官たちが鑑定すると2人とも聖女だったが、ありすの方が優秀でほのかは現地の聖女くらいの力しかない。聖女を辞めたいと言っても周りが聞いてくれず、娼婦館で治癒師として表向きは働き研修を受けることに。娼婦館で出会ったルイに惚れて、聖女なので処女を捨てられずにアナル処女を捧げる。  その正体は氷の騎士団長ゼエルだった。  召喚されて3年も経つと周りもありすを大聖女の後継者と言うようになっていた。でも辞めさせてくれない。  聖女なんてどうでもよくなり処女を娼婦館で捨てることにした。 ※相変わらず気が狂った内容になっています。 ※ブクマ300ありがとうございます! ※純愛バージョンも書こうと思います。今は修正をしています。

落ちこぼれ魔法少女が敵対する悪魔の溺愛エッチで処女喪失する話

あらら
恋愛
魔法使いと悪魔が対立する世界で、 落ちこぼれの魔法少女が敵側の王子様に絆されて甘々えっちする話。 露出表現、人前でのプレイあり

拗らせ処女だけれど、毎晩ベッドに現れる異世界の自称天才魔導士のおちんちんに処女を捧げる事にした。

シェルビビ
恋愛
 拗らせオタクの処女の寧々には秘密がある。毎晩決まった時間になるとベッドの上にちんちんがある事だ。彼氏いない歴年齢の寧々は、毎日おちんちんを射精させる事が日課になった。なんとこのおちんちんは異世界の魔導士の者でお話が出来るのだ。  持ち運び可能なちんちんは、舐めると勃起し話しかけるとぴくんと震える。大好きなちんちんに愛を囁き、今日もオナホでクタクタになるまで射精させる。  そんな生活を過ごした頃、ある日ちんこが悩みを相談してきた。ちんこは呪いにかかってしまい射精が二度と出来ないと告げられる。  何とか出来ないか聞いてみると、異世界の処女には不思議な力があるので紹介して欲しいと頼まれる。  そこで自分の処女を使って欲しいと申し出るとハッキリ断られてしまう。処女の押し付けをしているうちに、腹が立って先端だけ挿入すると異世界に飛ばされてしまう。  寧々は目の前にとんでもない美形と見慣れたちんこ。ベッドの上にあった野良ちんちんの持ち主は、異世界の魔導士コンラートはとんでもない性欲の持ち主。 「よくも毎日射精させてくれたな、許さんっ! 責任取って貰うからな」 「ひっ、ひいい」  絶対に逃げたい寧々ととんでもない絶倫童貞の戦いが始まった。  ※おちんちんと何度も言います。

18禁の乙女ゲームの悪役令嬢~恋愛フラグより抱かれるフラグが上ってどう言うことなの?

KUMA
恋愛
※最初王子とのHAPPY ENDの予定でしたが義兄弟達との快楽ENDに変更しました。※ ある日前世の記憶があるローズマリアはここが異世界ではない姉の中毒症とも言える2次元乙女ゲームの世界だと気付く。 しかも18禁のかなり高い確率で、エッチなフラグがたつと姉から嫌って程聞かされていた。 でもローズマリアは安心していた、攻略キャラクターは皆ヒロインのマリアンヌと肉体関係になると。 ローズマリアは婚約解消しようと…だが前世のローズマリアは天然タラシ(本人知らない) 攻略キャラは婚約者の王子 宰相の息子(執事に変装) 義兄(再婚)二人の騎士 実の弟(新ルートキャラ) 姉は乙女ゲーム(18禁)そしてローズマリアはBL(18禁)が好き過ぎる腐女子の処女男の子と恋愛よりBLのエッチを見るのが好きだから。 正直あんまり覚えていない、ローズマリアは婚約者意外の攻略キャラは知らずそこまで警戒しずに接した所新ルートを発掘!(婚約の顔はかろうじて) 悪役令嬢淫乱ルートになるとは知らない…

処理中です...