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3.前世の知識が当てにならない時だってある
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伸びしろがある芸術家の作品は買うようにしている。芸術家の新人たちが製作に時間がかかり、手柄を名前の売れている芸術家に奪われる事は前の人生で問題視されていた。
お金があれば解決できる問題なら出来るだけ早く投資した方がいい。
「リーファ様、お美しいですわ」
女性で人物画を描く人は少なく、結婚を機に筆を折る人も多い。シャーリーは10歳からずっと私を描いている。私たちは同じ年で付き合いが18歳を迎えた。
出会ったのは彼女が道端で似顔絵を描いている時の事だった。伯爵家にいる時も自分の事を描いてもらった事はない。定期的に描いてもらう契約をしている。
ドレスを着ている普通の絵から全裸まで描いてもらっている。
何度目かの人生で小さな子供の裸が描けなくて悩んでいる芸術家がいた。貴族の子供を描きたいのに親が反対して描かせてくれないのだ。
指示されたポーズでずっと同じ姿勢でいたところ、身体が硬くなってしまった。用意されたのに、すっかり冷めた紅茶で喉を潤した。
お尻まで伸ばされた手入れのされている金髪の巻き毛、深い青みのある瞳を縁取る長く濃いの睫毛。くびれたウエストに豊満な胸。環境が変わると子供の頃と髪の毛の色も変わってしまった。ラシエルと同じ髪の毛の色。セシリアが良く私に「産まれた子供は貴方に似ない方がいい」と言っていたことを思い出す。
髪型も今回は変えている前髪を伸ばして、真ん中からフワッと分けている。大人っぽくてお気に入りの髪型だ。
前回と見た目が変わり、家庭教師に聞いたところ魔法を使うようになると色味が変わるのだとか。
身体を鍛えてなかったから、魔力の操作が上手く出来るようになったのかもしれない。
伯爵家の家族と顔立ちが変わり、私はとても安心していた。ラシエルは茶色の髪の毛の私も好きだと言ってくれていた。
シャーリーは貴族令嬢として久しぶりにガーデンパーティーに参加する。怖いから私も一緒に来て欲しいとお願いをされた。以前は頻繁に参加していたから慣れている。
用意してくれたドレスを着て会場に入ると懐かしさで思わず声が出そうになる。
前回は仲が良かった同じ伯爵令嬢のメル。メルの兄とラシエルは親友で、その縁で私たちは知り合った。仲が良かったが、今回は関わりたくなかった。
メルはセシリアに全て密告していた。
夫婦間の悩みも出て行く予定も全て。
気がついたときには行動パターンを知られていた。今回は何も話したくない。面白おかしく誰かに話されるなんて嫌すぎる。
今は投資家として有名な私と何度か関わりたかったが、繋がりが何処にもなくシャーリーに頼んだ。
勿論、シャーリーはどういう意味で連絡してきたのか知っていて教えてくれた。
また、私を利用して成りあがろうとしている。
私たちが会場入りするとざわざわ騒がしい。
受付をして中に入るとシャーリーの近くに付き添うだけ。シャーリーは絵の依頼をしたい人に話しかけられ、離れることになった。
1人になると話しかけられた。次の投資先は何処がいいのか。お金を貰っていないと話せない。と適当な事を伝えるとみんな離れていく。
利益を独り占めしている?前回あなたたちが私や公爵家にしたことは、記憶を思い出してから一度も忘れた事はありませんから。気が緩みそうになると、過去の出来事を思い出して気を引き締める。
「薔薇園が見頃ですよ」
「申し訳ございません。軽く靴擦れをして、暫く座っていたいのです」
「そうなのですね。お気を付けください」
中庭は襲われやすい場所だ。死角があり声も届きにくい。実際に私はセシリアの手引きで襲われそうになり、ラシエルに助けてもらったことがある。だから絶対に行きたくない。
隙があったと言い返されてどれだけ腹が立ったのだろうか。
人目のあるところから絶対に離れない。これが私の鉄則だ。
シャーリーは話が終わったらしく、一緒に帰ることになった。入口が騒がしく、私たちは少し待つことになった。
「いつもは呼んでも来ないのに珍しいな」
「公爵家の狂犬ラシエル・ザガード様だ」
聞き覚えのある言葉に疑問を抱く。ラシエルはタレ目で優しいゴールデンレトリバーみたいなタイプだ。人懐っこい性格で人誑しで憎めない顔をしている。夫婦の時に「もう一回だけ」の言葉と垂れ下がった眉で気を失うまで抱かれていた。
好奇心で入口を覗いた。ほんの少しだけでいいから姿を確認したかった。
ラシエル……私の優しい夫ラシエル……。
心臓が早鐘を打ち、初めて21歳の彼に出会えると思うと涙腺が緩む。前の世界で夫婦だった私たちは悲しい別れ方をしてしまった。
もしも彼が覚えていたら謝りたい。
彼に愛していたと伝えたかった。
はやる気持ち抑えきれずに人ごみを掻き分けて、どよめく中心に向かう。癖っ気の金髪で長い前髪を左右に分けて、両耳に装身具をつけて細身なのに筋肉質な身体をしていた。美しい青い瞳の青年――。
中心に居たのは筋肉質でガタイのいい身体、顔の彫りが深い世紀末系男子。ラシエルは何処にいるのだろう。きょろきょろ見渡しても何処にもいない。目の色は同じ色だけれど、肌が日に焼けて黒くなっている。
「ラシエル・ザガード卿だ。目を合わせるな。何を聞かれるか分からない」
えっ……あれがラシエル。文官で争い事を好まない公爵家の嫡男。周囲にいつも人が集まり、朗らかな声と表情で人を魅了してきた人懐っこい大型犬男子。今は凶暴な顔つきのドーベルマンのような将軍だ。
今まで出会ったラシエルの転生前の姿は共通している。優しい眼差しと話しかけやすい雰囲気の人だった。異性に対して酷い事はしない。
「ザガード卿、今夜はどのようなようで」
「招待されてきたのだが、来てはいけなかったかな」
ラシエルの前回の親友が声を掛けて来ても素っ気ない。あれ、いつもは楽しそうに会話していたはず。女性たちに話しかけられて鬱陶しい顔をしている。気分が悪いのか眉を顰めている。
「ねぇ、気分が悪いなら早く帰りましょう」
顔を上げると彼の隣にいたのはセシリアだった。お尻まで伸ばした長い髪の毛を靡かせているはずが、胸のあたりで切りそろえている。前髪も長かったのに、眉の所まで短くなっている。
この時期、とても私が好きだった髪型がありメルのパーティーに参加した時の格好によく似ていた。心臓の音が早くなり、階段から突き落とされた時の事を思い出す。
過去の出来事で現実に起こっていないのに。いつまで経ってもトラウマになっている。
「ああ、そうだな」
「支えてあげるわね。捕まって」
「いや、それは必要ない」
「ラシエルは恥ずかしいのね」
周囲が騒めく音に近くにいた令嬢たちが声を潜めていた。どうやら、まだ婚約者じゃないのに呼び捨てにしているなんてと話している。
「セシリア様とザガード卿はお似合いですね」
「あれで婚約していないなんて信じられないわ」
……え、婚約していないの?
もしかして過去に戻ったのはセシリアが何かしたからで、私に成り代わってラシエルと結婚するため?
でもラシエルは彼女のことを嫌がっている。
元々幼馴染の2人なら、とっくの昔に結婚して子供がいてもおかしくない。彼の性欲は物凄く強いのに。誰かに盗られまいと必死なはずだ。
今の状況だと敵役が足りない。私たちの周りには敵が多すぎた。
あれ、そうしたら今のラシエルと付き合ったら敵がいない穏やかな恋人になれるのかもしれない。
頭の中で【君子危うきに近寄らず】と過り頭を振った。
誰かを探しているのか周囲を見渡し、メルの兄と話をしていた。その隙を狙って私たちは会場を出て行くことにした。
何か落とした音が聞こえて振り返ると、セシリアの腕に着けられていたブレスレットが落ちた音だった。それは前のラシエルが私のためだけに誂えた魔道具に酷似していた。
偶然にしては出来過ぎている気がする。少しだけ考える時間が欲しい。そんなことを思っていたのに一番話しかけられたくない人に声を掛けられた。ラシエルが近くまで来たことに全く気がつかなかった。
「ブルーム伯爵家のリーファ様でしょうか?」
「……はい、お初お目にかかります。ブルーム伯爵家のリーファでございます」
挨拶をすると彼のまっすぐに私へと向けた視線に戸惑ってしまった。何度も出会った時の練習を繰り返していたのに、いざとなったら思った通りに行動できない。
関わりたくない。逃げ出したい。
「ザガード公爵家のラシエルだ」
強い口調に他人行儀な態度に、涙腺が緩みそうになり息を少し止めた。ここでは他人で当たり前なのに本人を前にすると泣きたくなる。あの頃の日々が全部過去の事だと自覚させられる。
あの頃の優しいラシエルがいるはずがない。それなのに期待するのはどうしてだろう。
頭の中を冷たい水がサーッと流れる感覚がする。いや、実際にかけられた?
グラスが落ちる音が響き意識を戻すと、給仕がコケて私の頭にワインを大量にぶっかけた後だった。今が夏場で良かった涼しくなって頭が文字通り冷えた。近くにいた口を抑えてセシリアが笑っていた。騒がしくなる会場で、一番冷静なのは私だろう。
ここまでして私のスキャンダルが欲しいのか。
前のセシリアも同じことがあった事を思い出した。
「ブルーム様。我が家の使用人が申し訳ございません。すぐにドレスをお貸しいたします」
「いいえ、それには及びません」
メルに声を掛けられて拒否すると、自分に魔法をかける。ワインが宙に集まっていく。ワインをコントロールして消してしまうと、会場から歓声が上がった。ここまで使いこなせる人間はいないだろう。ええ、毎日特訓していましたから。前のセシリアは何でもかけ放題だったから。
「失礼いたします」
シャーリーと一緒に会場から出て行った。
セシリアが回帰していたら、今日はあの行動をするはずだ。メルという手駒を失うが、ラシエルの好感度を上げることが出来る。
お金があれば解決できる問題なら出来るだけ早く投資した方がいい。
「リーファ様、お美しいですわ」
女性で人物画を描く人は少なく、結婚を機に筆を折る人も多い。シャーリーは10歳からずっと私を描いている。私たちは同じ年で付き合いが18歳を迎えた。
出会ったのは彼女が道端で似顔絵を描いている時の事だった。伯爵家にいる時も自分の事を描いてもらった事はない。定期的に描いてもらう契約をしている。
ドレスを着ている普通の絵から全裸まで描いてもらっている。
何度目かの人生で小さな子供の裸が描けなくて悩んでいる芸術家がいた。貴族の子供を描きたいのに親が反対して描かせてくれないのだ。
指示されたポーズでずっと同じ姿勢でいたところ、身体が硬くなってしまった。用意されたのに、すっかり冷めた紅茶で喉を潤した。
お尻まで伸ばされた手入れのされている金髪の巻き毛、深い青みのある瞳を縁取る長く濃いの睫毛。くびれたウエストに豊満な胸。環境が変わると子供の頃と髪の毛の色も変わってしまった。ラシエルと同じ髪の毛の色。セシリアが良く私に「産まれた子供は貴方に似ない方がいい」と言っていたことを思い出す。
髪型も今回は変えている前髪を伸ばして、真ん中からフワッと分けている。大人っぽくてお気に入りの髪型だ。
前回と見た目が変わり、家庭教師に聞いたところ魔法を使うようになると色味が変わるのだとか。
身体を鍛えてなかったから、魔力の操作が上手く出来るようになったのかもしれない。
伯爵家の家族と顔立ちが変わり、私はとても安心していた。ラシエルは茶色の髪の毛の私も好きだと言ってくれていた。
シャーリーは貴族令嬢として久しぶりにガーデンパーティーに参加する。怖いから私も一緒に来て欲しいとお願いをされた。以前は頻繁に参加していたから慣れている。
用意してくれたドレスを着て会場に入ると懐かしさで思わず声が出そうになる。
前回は仲が良かった同じ伯爵令嬢のメル。メルの兄とラシエルは親友で、その縁で私たちは知り合った。仲が良かったが、今回は関わりたくなかった。
メルはセシリアに全て密告していた。
夫婦間の悩みも出て行く予定も全て。
気がついたときには行動パターンを知られていた。今回は何も話したくない。面白おかしく誰かに話されるなんて嫌すぎる。
今は投資家として有名な私と何度か関わりたかったが、繋がりが何処にもなくシャーリーに頼んだ。
勿論、シャーリーはどういう意味で連絡してきたのか知っていて教えてくれた。
また、私を利用して成りあがろうとしている。
私たちが会場入りするとざわざわ騒がしい。
受付をして中に入るとシャーリーの近くに付き添うだけ。シャーリーは絵の依頼をしたい人に話しかけられ、離れることになった。
1人になると話しかけられた。次の投資先は何処がいいのか。お金を貰っていないと話せない。と適当な事を伝えるとみんな離れていく。
利益を独り占めしている?前回あなたたちが私や公爵家にしたことは、記憶を思い出してから一度も忘れた事はありませんから。気が緩みそうになると、過去の出来事を思い出して気を引き締める。
「薔薇園が見頃ですよ」
「申し訳ございません。軽く靴擦れをして、暫く座っていたいのです」
「そうなのですね。お気を付けください」
中庭は襲われやすい場所だ。死角があり声も届きにくい。実際に私はセシリアの手引きで襲われそうになり、ラシエルに助けてもらったことがある。だから絶対に行きたくない。
隙があったと言い返されてどれだけ腹が立ったのだろうか。
人目のあるところから絶対に離れない。これが私の鉄則だ。
シャーリーは話が終わったらしく、一緒に帰ることになった。入口が騒がしく、私たちは少し待つことになった。
「いつもは呼んでも来ないのに珍しいな」
「公爵家の狂犬ラシエル・ザガード様だ」
聞き覚えのある言葉に疑問を抱く。ラシエルはタレ目で優しいゴールデンレトリバーみたいなタイプだ。人懐っこい性格で人誑しで憎めない顔をしている。夫婦の時に「もう一回だけ」の言葉と垂れ下がった眉で気を失うまで抱かれていた。
好奇心で入口を覗いた。ほんの少しだけでいいから姿を確認したかった。
ラシエル……私の優しい夫ラシエル……。
心臓が早鐘を打ち、初めて21歳の彼に出会えると思うと涙腺が緩む。前の世界で夫婦だった私たちは悲しい別れ方をしてしまった。
もしも彼が覚えていたら謝りたい。
彼に愛していたと伝えたかった。
はやる気持ち抑えきれずに人ごみを掻き分けて、どよめく中心に向かう。癖っ気の金髪で長い前髪を左右に分けて、両耳に装身具をつけて細身なのに筋肉質な身体をしていた。美しい青い瞳の青年――。
中心に居たのは筋肉質でガタイのいい身体、顔の彫りが深い世紀末系男子。ラシエルは何処にいるのだろう。きょろきょろ見渡しても何処にもいない。目の色は同じ色だけれど、肌が日に焼けて黒くなっている。
「ラシエル・ザガード卿だ。目を合わせるな。何を聞かれるか分からない」
えっ……あれがラシエル。文官で争い事を好まない公爵家の嫡男。周囲にいつも人が集まり、朗らかな声と表情で人を魅了してきた人懐っこい大型犬男子。今は凶暴な顔つきのドーベルマンのような将軍だ。
今まで出会ったラシエルの転生前の姿は共通している。優しい眼差しと話しかけやすい雰囲気の人だった。異性に対して酷い事はしない。
「ザガード卿、今夜はどのようなようで」
「招待されてきたのだが、来てはいけなかったかな」
ラシエルの前回の親友が声を掛けて来ても素っ気ない。あれ、いつもは楽しそうに会話していたはず。女性たちに話しかけられて鬱陶しい顔をしている。気分が悪いのか眉を顰めている。
「ねぇ、気分が悪いなら早く帰りましょう」
顔を上げると彼の隣にいたのはセシリアだった。お尻まで伸ばした長い髪の毛を靡かせているはずが、胸のあたりで切りそろえている。前髪も長かったのに、眉の所まで短くなっている。
この時期、とても私が好きだった髪型がありメルのパーティーに参加した時の格好によく似ていた。心臓の音が早くなり、階段から突き落とされた時の事を思い出す。
過去の出来事で現実に起こっていないのに。いつまで経ってもトラウマになっている。
「ああ、そうだな」
「支えてあげるわね。捕まって」
「いや、それは必要ない」
「ラシエルは恥ずかしいのね」
周囲が騒めく音に近くにいた令嬢たちが声を潜めていた。どうやら、まだ婚約者じゃないのに呼び捨てにしているなんてと話している。
「セシリア様とザガード卿はお似合いですね」
「あれで婚約していないなんて信じられないわ」
……え、婚約していないの?
もしかして過去に戻ったのはセシリアが何かしたからで、私に成り代わってラシエルと結婚するため?
でもラシエルは彼女のことを嫌がっている。
元々幼馴染の2人なら、とっくの昔に結婚して子供がいてもおかしくない。彼の性欲は物凄く強いのに。誰かに盗られまいと必死なはずだ。
今の状況だと敵役が足りない。私たちの周りには敵が多すぎた。
あれ、そうしたら今のラシエルと付き合ったら敵がいない穏やかな恋人になれるのかもしれない。
頭の中で【君子危うきに近寄らず】と過り頭を振った。
誰かを探しているのか周囲を見渡し、メルの兄と話をしていた。その隙を狙って私たちは会場を出て行くことにした。
何か落とした音が聞こえて振り返ると、セシリアの腕に着けられていたブレスレットが落ちた音だった。それは前のラシエルが私のためだけに誂えた魔道具に酷似していた。
偶然にしては出来過ぎている気がする。少しだけ考える時間が欲しい。そんなことを思っていたのに一番話しかけられたくない人に声を掛けられた。ラシエルが近くまで来たことに全く気がつかなかった。
「ブルーム伯爵家のリーファ様でしょうか?」
「……はい、お初お目にかかります。ブルーム伯爵家のリーファでございます」
挨拶をすると彼のまっすぐに私へと向けた視線に戸惑ってしまった。何度も出会った時の練習を繰り返していたのに、いざとなったら思った通りに行動できない。
関わりたくない。逃げ出したい。
「ザガード公爵家のラシエルだ」
強い口調に他人行儀な態度に、涙腺が緩みそうになり息を少し止めた。ここでは他人で当たり前なのに本人を前にすると泣きたくなる。あの頃の日々が全部過去の事だと自覚させられる。
あの頃の優しいラシエルがいるはずがない。それなのに期待するのはどうしてだろう。
頭の中を冷たい水がサーッと流れる感覚がする。いや、実際にかけられた?
グラスが落ちる音が響き意識を戻すと、給仕がコケて私の頭にワインを大量にぶっかけた後だった。今が夏場で良かった涼しくなって頭が文字通り冷えた。近くにいた口を抑えてセシリアが笑っていた。騒がしくなる会場で、一番冷静なのは私だろう。
ここまでして私のスキャンダルが欲しいのか。
前のセシリアも同じことがあった事を思い出した。
「ブルーム様。我が家の使用人が申し訳ございません。すぐにドレスをお貸しいたします」
「いいえ、それには及びません」
メルに声を掛けられて拒否すると、自分に魔法をかける。ワインが宙に集まっていく。ワインをコントロールして消してしまうと、会場から歓声が上がった。ここまで使いこなせる人間はいないだろう。ええ、毎日特訓していましたから。前のセシリアは何でもかけ放題だったから。
「失礼いたします」
シャーリーと一緒に会場から出て行った。
セシリアが回帰していたら、今日はあの行動をするはずだ。メルという手駒を失うが、ラシエルの好感度を上げることが出来る。
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