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 途中休みを入れて観光がてら行った領地で物を買う人が多い。今回行った領地はメイベル隊長の領地だった。お父様が侯爵と知って心の中で首を傾げた。

 小説のメイベルは性欲が強くて色んな女性とセックスをして手を出してはいけない人に手を出して実家を勘当されていたから。そもそも寄らなくてもいいじゃん。真っすぐ帰って布団に入って寝たい。

 仲がいい事は良いことだと思って一人で歩く。長閑で良いところだ。
 姉の子供にあげるベビー用品を見繕っているとき声をかけられた。

「お嬢さん、先程から息が荒々しい男に見られてますよ」
「ありがとうございます、殴りに行きます……ってメイベル隊長!」

 黒いフードを被った体腔のいい男なんて怖いに決まっている。メイベルは第一印象は物凄く悪い。

 話があると言われ近くの宿に連れて行かれた。話しかけてきたおじさんに名前を言って騎士団が来たらメイベル隊長と一緒にいることを伝えてもらうようお願いした。

 宿に入ると私は距離を取った。未婚の二人が一緒にいることも不味いが、すぐに逃げられるようにドアを少し開けている。

「朝起きたら淫魔ヘビに咬まれていて身体が熱いんだ」

 身をよじる姿を見て思わず生唾を飲み込んだ。この男エロい。涙目で睫毛が濡れ伏せた赤い瞳が実に欲情的だ。

 心の中で自分をビンタを冷静を取り戻す。この展開は私に起こるはずなのに。どうやら淫魔ヘビは噛む相手を間違ったのかもしれない。

「た、たくさんマスターベーションすれば治りますよ。私はこれで失礼します。」

 この流れ、このままセックスしちゃう。10年間もセックスお預けで我慢していたからどうしていいのか分かんない。黒いぴったりした服に鎧つけやがって。セックスしてくださいって言っているもんだ。

 本当は目の前で悶えているメイベルを犯したいよ。濃厚なキスだってしたい。
 でもこれじゃ好きな相手と出来ないメイベルが可哀想じゃないか。

「助けてくれ、頼む」
「ふぁ、ふぁぁ……♡」

 助けを求める男の声で腰が砕けて立てなくなった。おいおい、誰だよ。メイベルを推しの声なら最高だなって言ったやつは。わたしだ。低音ボイスは子宮を震わせる。立ちくらみを起こして跪いた。前世の私よ何故声に拘ったのだよ。

 意識しないようにしていた声を認知するとサキュバスが耳元で囁くチャームボイスのように魅了される。男サキュバスも出てくるが出番は少ない。

 少しだけ開いていたドアは倒れたときに背中で押されてギリギリ少しだけ開いている。ドアのぶに手をかけて逃げようとするが抱かれたくて足が動かない。

「もう我慢できない。逃げないからいいよな」

 メイベルがドアを押してガチャリと鍵を閉めた。最初に来たとき、ドアの鍵は魔力で閉まるようになっていて本人しか開けられないから2人いるときは二人の魔力を一緒に登録するようにと言われていた。

 上書きは出来ない。

 メイベルはしゃがむと頭を撫でられておでこにキスされた。思わず頬が緩む。初めて女の子扱いされた。メイベルの顔を見ることができない。学生の時、男子から絶対に重いと言われおんぶを拒否された私を簡単に抱っこしてベッドに向う。

 抱っこされながら下着に触れられている。さっきの声を聞いて下着は役目を終えてしまっている。ああなんということでしょうか。布はもう役目を終えている。思わず二回思ってしまった。濡れていることがバレてしまっている。それでも最後の砦となる一枚は手で抑えて脱がせることを許さない。ベッドに優しく降ろされて手で隠した。濡れたら透け透けで見えやすい素材の下着を気を抜いて履かなきゃよかった。

「みないで」

 こっちは10年分、いや前世含めるととんでもない熱意があるむっつりすけべなのだ。簡単におまんこを見せることはできない。

「見たいんだ」
「見てどうするの?」

 押し黙るメイベルを見て勝利を確信した。勝った。勝ってしまった、、、。メイベルはこういう時、面倒だと言って帰ってしまう性格だ。これでギリギリ処女を守られる。他の女で何発かやりにいくはずだ。淫魔ヘビは男に咬むと子種をばら撒きに行くと本に書かれていた。
 今やって子供ができたら異母兄弟になってしまう。それはヤダ。

「キスがしたい」

 今度はこっちが押し黙る番になってしまった。おまんこにキス?口淫、クンニの事ですね。それはこっちの世界では結構ディープなセックスで基本男性は挿入を繰り返すだけだ。指で弄ることもしない。セックスは子作りの認識だから快楽で楽しむ事は考えられない。

 はっ、もしかしてヤリマンだと勘違いしてる?そうか、そうだったのかぁ。見た目サバサバしてるから勘違いしちゃうよね~。

「私、処女なんですよ。18年間ずっとです!キスもしたことないです」

 面倒くさい処女っ娘にアピールでメイベルはやる気がなくなるはずだ。メイベルは首を傾げた。何だか可愛い。

「……それだけか」
「それだけって重要な事ですよ。あと」

 続きを言おうとして口籠ってしまった。犯そうとしていた相手が、モテないしあだ名はゴリラで腕力強いからとダンスに誘えば断られると知ったとき。勃起しているちんぽが即萎えてしまうから。一瞬の隙をついて逃げるどころか、早く逃げてくださいと案内するだろう。

 28歳のメイベルにとってトラウマ必須間違いなしだ。

「あと?」

 尋問されるような強気な声で言われて、意を決して言葉にした。ああ、今世では子供産めないかも。そうしたら辺境の地の孤児院でシスターとして雇ってもらおう。

「何を考えている?あと?」

 太ももを撫で回しているメイベルは言葉を聞いて後悔するだろう。嫌そうな顔をしてドン引きする姿が目に浮かぶ。

「モテないです」

 色々話そうとしたけれど言葉にできない。その変わりに涙が頬に伝った。

「本当に?今まで男に手を出されることも、キスされることも、交わることも何もなかったのか。こんなに可愛くてお人形さんと並べても間違えそうなのに」
「……っうん」

 可哀想なメイベル。ベッドに顔を伏せて後悔してるのだろう。見た目天使、腕力ゴリラ。淑女から一番遠い少女イリナだ。

 部屋に入って着衣の乱れ一切なし。これも新しい伝説の一つになるだろう。

 治癒師の服は膝丈の黒いワンピースで腰をベルトで結んでいる。階級の書かれたマントを羽織ってシワにならない素材になっている。ストッキングとガーターベルトとオーバーニーが選べるようになって、今日はオーバーニーを履いている。ブーツを履いたまま乗ってしまった。

 ベッドの上で顔を伏せているメイベルから、そっと離れてドアに近づく。そういえば魔力のせいでドアは開けることは出来ない。肩を揺すって声をかける。

「ごめんなさい。ドアを開けていただけますか?」

「あっ♡ あっ♡」

 メイベルの様子がおかしい。目の中が♡になっているみたいだ。おかしい。こんなの本に書かれてないデータに載ってない!

「イリナが可愛過ぎる。抱かないとおかしくなる。助けてくれ、、、」

 顔を赤く染めたメイベルは限界を迎えていた。手で抑えている膨らんだ股の部分から手を離させて見ると子種の入った袋はパンパンで熱を持っている。

 他の人を連れてくる余裕はない。

「していいの?今日のこと忘れてくれますか?私期待するほど可愛くないけれど。約束してくれないなら出来ないですよ」

「約束する」

 顔を伏せているメイベルの表情は見えない。
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