上 下
15 / 105
第1章 王都編

第15話  本の中身

しおりを挟む
寮に帰ったフェリクスはいつの間にか懐に入っていた本だけを観察していた。

鎧を倒すときに使用した刀は鎧を倒した時に形が崩れてなくなってしまった。その代わりとばかりに本の中には2ページだけ、奇妙なマークと1単語分の文字が書かれている場所があった。

ダンジョンで読んだ本と懐に入っていた本には同じ文字が使われており、その場で翻訳し、すべての内容を頭に叩き込んだフェリクスにはその文字が読めた。

「土の精霊・・あとは名称か?ノチス、もう一つは風の精霊、シルフ」

シルフとフェリクスが口ずさんだ瞬間、目の前に美しい半透明の女性が現れた。

「お呼びですか?」
「お前は誰なんだ?」
「私は四大精霊の1人シルフよ」
「そうか」

それだけ言うとフェリクスは考えるようにベットに転がった。

「ちょっと、他に何か、ないの?」
「別に何もないが?」
「もっと、驚きなさいよ」
「何を?」
「私が精霊だってことを」
「お前と同じ存在なら、もう見たことあるよ、俺を驚かせたいならその本でも読んで見てくれ」
「そんなの簡単よ、えっと・・・、何よ、これ、何処の文字でもないわ」
「それはすごい」

知識から何処の文字でも無いと断言できるとは、よほど自分の知識に自信がある人にしかできない。実際、フェリクスは遺跡から回収してきた本の内容が読めなかった、つまり、この本はその当時使われていた文字が読めても読めないことになる。つまり、この本は暗号化されている可能性が高い。

「さてと、俺はもう疲れからねるけど、いいかい」
「もういいわよ、ふん」
「ごめん、本当に疲れているんだ、これ上げるから、機嫌を直して」

フェリクスが取り出したのは商会で作ったクッキーだった。

「あ、それ食べて見たかったの、ホントにいいの?」
「別にいつでも作れるから構わないよ」

食べ物に釣られるシルフはちょろかった。

クッキーを渡したフェリクスは電池が切れたようでベットに倒れこんで、そのまま寝てしまった。

翌朝、フェリクスは太陽が昇っていない時間にむくりと起き上がった。

「起きたの?」
「そうだね、シルフは本に戻らなかったんだ」
「せっかく、現像できたのにもったいないじゃない、それより、貴方は疲れていたんじゃないの?こんな早くに起きるなんて、人は日が昇ってから起きるものでしょう」
「ただのいつもの日課だよ」

フェリクスは刀を取り出すと素振りを始めた。

「それの何がいいの?五月蠅いし、同じ事の繰り返しで退屈しない?」
「防音の魔法を張ってあるから、音に関しては大丈夫だよ、そして素振りといっても、別に同じ事の繰り返しとは限らないよ」
「同じ動作しかしてないじゃない、私にはそう見えるわよ」
「素振りと言っても、その一振り一振りを考えて振っているなら、それは違う一振りになっていくってとこかな」
「何を言っているのか、さっぱりだわ、結局は同じ素振りでしょ」
「これ以上は伝えようがないからな、後は自分で感じてくれ」

結局、シルフには伝わらなかったのか、フェリクスの素振りの様子を観察している。

1時間後、汗を流したフェリクスは風呂に入りに風呂場へ降りて行った。

朝食もすませ、登校が完了したフェリクスはシルフに声を掛けた。

「今日はこの部屋で好きにしていてくれ」
「わかった、好きにするわ」

何か、シルフの言い方にフェリクスは違和感を覚えたがあまり時間もないので、部屋を出た。

「人って何故、こんなにも群れるのかしら?」

聞き覚えがある声が聞こえたと思ったのか、振り返ったら、フェリクスの後ろにはシルフが佇んでいた。

「部屋に居てくれって言ったんだけど」
「大丈夫よ、私を見える人間なんて、そういないわよ」

確かに、精霊を見える人間はそういないだろう、しかし、フェリクスには学園で一人確実に見えるだろう人間に心当たりがあった。

「貴方、それ・・・」
「まず・」

透き通るような声にフェリクスが振り返るとプラチナブロンドの髪を靡かせたアリサ姫が居た。

「おはようございます、フェリクス君」
「おはようございます、アリサ姫」

アリサ姫からの視線に冷や汗が止まらないフェリクスだが、それ以上にアリサ姫からの雰囲気がただならぬものを感じ取った。

「今日の放課後、お時間はありますか、フェリクス君」
「ええ、勿論、大丈夫です、アリサ姫」

断れる雰囲気でもなく、フェリクスはアリサ姫の誘いを承諾した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

あ、出ていって差し上げましょうか?許可してくださるなら喜んで出ていきますわ!

リーゼロッタ
ファンタジー
生まれてすぐ、国からの命令で神殿へ取られ十二年間。 聖女として真面目に働いてきたけれど、ある日婚約者でありこの国の王子は爆弾発言をする。 「お前は本当の聖女ではなかった!笑わないお前など、聖女足り得ない!本来の聖女は、このマルセリナだ。」 裏方の聖女としてそこから三年間働いたけれど、また王子はこう言う。 「この度の大火、それから天変地異は、お前がマルセリナの祈りを邪魔したせいだ!出ていけ!二度と帰ってくるな!」 あ、そうですか?許可が降りましたわ!やった! 、、、ただし責任は取っていただきますわよ? ◆◇◆◇◆◇ 誤字・脱字等のご指摘・感想・お気に入り・しおり等をくださると、作者が喜びます。 100話以内で終わらせる予定ですが、分かりません。あくまで予定です。 更新は、夕方から夜、もしくは朝七時ごろが多いと思います。割と忙しいので。 また、更新は亀ではなくカタツムリレベルのトロさですので、ご承知おきください。 更新停止なども長期の期間に渡ってあることもありますが、お許しください。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

処理中です...