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序章
プロローグ1 〜ウガンジュの森に眠る壁画〜
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「もう少しだ。気を抜くんじゃないぞ!」
時は深夜。鬱蒼とした森で兵士たちに指示を出す男の姿があった。
彼の名は『テイジュン』。ヨナ王国で兵士長(一級サムレー)を勤めている男だ。
長らく続いていた雨が止み、ぬかるんだ土の道なき道を、テイジュン達は列をなして歩いていた。
ウガンジュの森は龍の神がいると信じられ、かつては祈祷が行われていた神聖なる聖域で、夜には地中の龍脈から溢れ出す青色のセジが噴水のように溢れ出し、木や草が光り輝く幻想的な美しい森である。
しかしその美しい森で、テイジュン達は神経を尖らせながら歩いていた。何故なら、今や凶悪な《霊獣》が多く住み着いており、森に入ったら最後、誰一人として森から帰ってきた者はないと言われているからだった。
《霊獣》とは、霊体として存在する凶悪なモノだ。
本来、死んでしまった獣や人の魂は浄化されて輪廻転生を繰り返していくが、嘆きや苦悶、未練を残して死んでしまった魂が《セジ石》へ宿ってしまうと、その魂が霊獣となり人を襲うのだ。霊獣の力は強く、この世を彷徨いながら人々を次々と襲っていく。武器や防具で身を固めた兵士ですら、この地へ赴くのは相当な覚悟がいるのである。
「――おい、本当に中に入って大丈夫なのか……。ここには一級サムレーでも手に負えない霊獣が住み着いてるんだろ」
「仕方ないだろ命令なんだから。とにかく早く任務を終わらせて帰りたい。まともな飯をもう10日間も食べていないんだぞ!早く帰って暖かい飯が食べたいな~」
森の奥深くにある洞窟の前に到着するなり、武装した兵士の一人が、若干弱気な表情でそう呟いた。
そんな弱気な兵士を尻目に、肝が据わっているのか、能天気なだけなのか、相当腹が空いているのだろう。自分の腹をしきりに撫でながらもう一人の兵士が素っ気なく答えている。
たわいもない話が聞こえていたテイジュンは、これからさらに危険な洞窟の奥へと向かうというのに、だるそうにしている兵士たちに内心ため息をついた。ここでは一つの油断で命を落としかねない場所だからである。
「無駄口を叩いている場合じゃないぞ。霊除けは行なっているが、すでに聖域の中にいるんだ気を引き締めろ」
「はっ!了解しました!」
頭痛の種である若い兵士から目線を外すと、テイジュンは本任務の護衛対象者である二人を見た。
一人は白い白衣でメガネをかけた灰色の髪の研究者らしき男だ。ちゃんと飯を食っているのか疑いたくなるほど痩せこけており、日頃から体を鍛えている兵士達のそばに立つと、さらに青白い肌が不気味に際立って見えた。
もう一人はまだ幼い少女であった。歳は5つぐらいだろうか。人見知りでもしているのか終始うつ向いており、顔は良く見えない。耳の下ぐらいまで伸びた髪のふもとには、皮紐を通した赤い《勾玉》が首元にかけられ、座り込んでいる白い衣の上で艶やかに光っているのがわずかに見えた。
《勾玉》とは霊術を扱う上で必要な物だ。高額な値で取引される貴重な石だが、幼い少女が扱えるものではない上に、装飾品としても高価すぎるため、テイジュンは少女が持っている事が不思議だった。
今回の任務は、この二人をウガンジュの森にある洞窟への護衛という事だが、テイジュンはこの任務に対し腑に落ちないことがあった。洞窟での目的は知らされず、親子には見えないこの依頼人達の名前さえ明かされていない。
だからこそ、こんな危険な場所へ連れて来られるのは、何かあるに違いないと内心いかがわしく思っていた。されど任務のため、何か胸騒ぎを覚えながらも、テイジュンは研究者の元へ近寄った。
「洞窟の中へ入る準備が整いました」
「ふぅ、ここまで来るのに苦労させられましたよ。もっと早く着くと思ったのですが、思ったより時間がかかりましたね」
研究者は水滴がついた古ぼけた丸眼鏡を拭き、ポケットに手を入れて《灯り玉》を1つ取り出すと、洞窟の暗闇の中へと投げる。すると洞窟の床にコンと当たった《灯り玉》はゆっくりと宙に浮かび上がり、薄っすらとオレンジ色の灯りが道を照らしていく。
テイジュンは兵士らに隊列を命じて、研究者と少女と共に洞窟の奥へと進んで行った。
――――研究者が持っている古い地図を頼りに1時間ほど歩いただろうか。
突如、大きな開かれた空間が現れた。天井は10mほどあり、奥は暗くて先が見えない広さだ。中に少し入ってみると明らかに地面や壁が洞窟のごつごつとした岩とは違っている。地面は大理石のように硬く、灰色の亀の甲羅の形をした石のようなものが全面に敷かれている。
なんだか洞窟の中とは思えないほど宇宙にいるような無機質な空間で、冷たい空気を感じるが、だけども力があふれてくる様な不思議な感覚にテイジュンはとらわれていた。
「兵士長!見てください。何か壁に描かれているようです!」
「よく見えないぞ」
「誰か灯りをもっとつけろ!」
ざわめきだす兵士の声に反応し研究者は壁へ近付くと、手に持っていた地図を大きく広げ、何やら独りでぶつぶつと呟きながら壁に向かって地図との位置を確認し始めた。
すると突然、慌てて皮で作られた黒い鞄から透明の瓶を取り出し、5個ほど大きめの灯り玉を手に出すと、勢いよく空中へとバラまいた。すると灯り玉は四方八方に広がっていき、浮遊したまま徐々にオレンジ色に明るく発光していく。
すると前面には、灯りに照らされた大きな壁画が現れた。
「何だこれは…」
「……兵士長――これは何でしょうか?」
「こんなもの見たことがないぞ!」
テイジュン達はつい後ずさりをしてしまう。
何故なら、壁画の全体図は、空間の半分ぐらいは覆うほどのとても巨大な壁画であったからだ。
大きな壁画には、種族同士が戦っている様子が描かれていた。長い髪を結び衣を纏った女性と、角が二本生えた人型の獣の様な生き物が向かい合って描かれている。
壁画の両端には大きな白い石柱が2本立っており、まるで神殿のようだ。
壁画の手前には、研究者の半分ほどの高さの石碑が建てられており、よく見てみると、4匹の獣が並び、その獣のまわりには12種類の虎や龍等の生き物が、円を描くように彫られていた。名前なのか、生き物の下側には象形文字で12体分刻まれている。
「おぉぉ感激ですよ、ここで間違いありませんね!急いで準備をしてください!うひゃひゃ」
光に照らされた壁画を目にした途端、研究者は興奮気味に輝いた表情を見せて声を上げた。
テイジュンは研究者の独特な笑い方を少し気にしながらも、四人の兵士に対して手で合図を送ると、兵士らは素早く荷物をほどいて正方形の黒い台と、青く透き通った丸い石を丁寧に取り出す。そしてそれぞれ四方の壁際に別れていくと、中央にいる研究者と少女、テイジュンを囲うようにして、台の設置を始める。
研究者はまだぶつぶつと何か呟いていたが、落ち着かないのかソワソワと少し体を揺らしていた。
「《霊法陣》の設置完了しました!」
最後の一人の兵士が青く透き通った丸い石を台の上に置くと――石自体が青白く光り出し、それぞれの設置した場所から場所へと、光が線を引くように1本ずつ繋がりはじめ、大きな正方形の光の壁が出来上がった。
そして研究者は軽い足取りで石碑の前に立つと、振り返って目を見開きながら少女を指さした。
「ここに来てください」
「!」
突如名指しされた少女は肩をびくっと動かした。何かに怯えているのか次第に肩を震わせ始め、両手を胸元でぎゅっと強く握りしめると、少女の目からは涙がぽろぽろとこぼれ出した。そして堰を切ったように、ずっと黙っていた少女が泣き出す。
兵士らは動揺していたが、研究者は全く気にも留めず、まるで子供のような笑顔で興奮を抑えきれない様子だ。
「うえーん!」
「何を泣いているのですか。早く来て下さい」
「いやだ、お母さーん!」
「仕方ないですね、私が連れて来てあげましょう」
テイジュンはたまらず口を挟んだ。
「おい、一体お前は何をしようとしているんだ?」
「邪魔はしないで下さい。これは命令ですよ」
「いやしかし、あの子は嫌がってるじゃないか!」
「あなたには関係ありません。私は依頼人ですよ。」
テイジュンは言葉に詰まった。この男に言いたいことは山ほどあるが、依頼人の命令は絶対で、これ以上口をはさむ事も手をだす事もできない。
研究者は少女の手を掴むと無理やり壁画の前に引っ張っていき、文字が書かれている箇所を指差した。
「さぁ、この壁に書かれている文字を読むのです」
「ううっ……」
「さぁ早くカムスディルを唱えてください!」
「ぐすん……。ぐすん……」
しばらく泣いていた少女は少しずつ泣きやみ始めると、震える手で胸元の勾玉を両手で包み込むように握りしめ、目を瞑る――すると徐々に勾玉が赤く光り出し、身体がうっすらと光を帯び始めて少女は口を開く。
『―――ζφεδɤζφεδɤζφεδɤζφεδɤζφεδɤ―――』
少女の足が少しずつ地面から離れていくと―――髪が揺れ何かに乗り移られたかの様に、ゆっくり両手を広げながら言葉を唱え続けている。するとオレンジ色に染まった壁画は段々と色濃くなり、冷たかった洞窟が熱気を帯び始めていった。
「いいですよ、それ! うひゃひゃひゃひゃー」
その姿に見惚れていた研究者は、小刻みに足を動かしながら満面の笑みで、奇声を混ぜたような笑い声を上げていた。
「くっ苦しい、力が入らない」
「はぁはぁ。兵士長、何かおかしいです、力が……」
「何だ!いったい何が起こっていると言うのだ!」
部下の声に気付いたテイジュンが辺りを見渡すと、結界の外にいた兵士達が苦しんでおり、次々と倒れこんでいった。
しかしテイジュン自身は倒れこむどころか苦しささえ感じない。
ふと研究者を見ると、不適な笑みを浮かべ、苦しむ兵士たちを見つめていた。
「貴様! 何をしたーー!」
「うひゃひゃ。この子では、まだセジの力が足りていません。なので、彼らには人柱になって頂いているんです」
テイジュンは研究者の胸ぐらを掴んだ。
「何を言っているんだ、すぐに止めさせろ!!」
「もう無駄ですよ」
「どういう事だ?」
「――ふぅ、凡人には分かるように説明をしなくてはいけないのですね。この壁画に書かれているのは封印を解く方法を記した術式なのです。そして先ほど唱えていたのが封印を解くための詠唱だったわけですが、その子の力だけでは足りなかったので結界の外から足りない分のセジを補充したのですよ。――つまり、封印を解く術式はすでに起動され、それを止める事は誰にも出来ないという事なのです!」
「くっそ! このイカれヤローが!」
「うひゃひゃ、これでまた一つ私は新しい知識を得るのです!」
テイジュンは掴んでいた胸ぐらごと突き飛ばすと、独特な笑い続けている研究者を尻目に、部下の元へ走った。もしかすると結界の中に入れれば助かるかもしれないと思ったからだ。
しかし部下の体を掴もうとテイジュンの手が結界から出た瞬間、何かに力を吸い取られるような感覚を覚えた。
「うぅ、何だこれは……。力が、抜ける……」
そのまま体に力が入らなくなり、テイジュンは結界の内側へと倒れ込んでしまった。必死に体を起こそうとするが指ひとつ動かせない。
やがて少女が唱え続けていた詠唱が終わったのか声が聞こえなくなり、緊迫した洞窟内に一瞬間が空いたあと――突然目が開けていられないほどの真っ白な光に包まれた。
ほとんどのセジの力を失っているテイジュンの意識が薄れる中、少女の声が聞こえた。
『――カムスディル!』
しばらく発光し続けた光は徐々に薄くなって完全に光が消えた。
(……うっ……何が起こったんだ……。)
「うひゃひゃ、ついにやりましたよ!これがガナシのマブイですか。これで私の研究がまた一歩大きく前進できます!うひゃひゃ」
研究者は何かを拾い上げながら嬉しそうに独り言を言っている。
(……他のみんなは大丈夫なのか……奴は何をしているん……だ……。)
そのままテイジュンは意識を失った。
――数時間後の朝方、身体中の冷たい感触と震えで、テイジュンは意識を取り戻した。
まぶたを微かに開けると、目の前は濁った灰色の地面があった。長らく横たわっていたのか、右の頬がこすれて少しズキズキと痛い。一度目をつむるが、地面の冷たい感触と痛みに、ゆっくりとまた目を開けた。
「うっ……寒い……」
うつ伏せのままの身体は全身が冷え切ってしまい、うまく力が入らない。
テイジュンはなんとか身体を起こして前を向くと、見つめた先は何も無かった。見渡す限りただただ大地が広がっている。まだ夢の中なのだろうか、とも思った。
まだぼんやりとする中、顔にぽつぽつと落ちてきた冷たい感触に気づいて上を向くと、雲で覆われた薄暗い空が見えて、落ちてきたのは雨なのだと気付いた。
「雨か。いつの間に降っていたん……雨だと!? どこなんだここは……洞窟の中にいたはずだぞ!?」
テイジュンはこの瞬間に完全に目を覚ました。
自身が座っている一帯、地面は亀の甲羅の形をしており、後を振り向くと石碑が見える。四角の結界が張られた内側だけがそのまま残っており、それ以外はまるで、切り取られたように土しか無かった。
いやまさか、そんなはずはない。きっと何かの間違いだ。テイジュンは遠くに見える山の方角やおおよその距離を確認しながら、ポケットから方位磁石を取り出して北を探した。辺りの景色、方位磁石の示す方角、何度見直しても頭の中に入っている地図が、紛れもなく一つの事実を示している。
テイジュンの今いる位置は、あの時自分が気を失って倒れた、かつて洞窟があった場所だった。
そして、洞窟を含め、ウガンジュの森一帯全てが消滅していた。
「嘘だ……。そんな訳がない。俺は洞窟の中にいたはずだ!信じられない。全て消えたと言うのか――
洞窟だけではなく――――――ウガンジュの森全てが!!」
途方にくれる中、ハッと気づく。
「あ……みんな……そうだ、みんなは無事なのか、おい!誰かいるかーー!」
雨風さえも吹き飛ばすかのようにテイジュンは何度も大きな声で叫ぶが、その声に返事をする者は一人としていなかった。
(奴が少女を連れて来た時に確認するべきだったんだ!!)
何てことをしてしまったんだろうか。サムレー達の命、ウガンジュの全ての生き物、これほどの命を犠牲にしてしまった罪悪感が胸の奥から込み上げてくる。
『兵士長!今度、剣の稽古つけてください!』
剣の腕を磨き、力無き者を霊獣達から守るとよく豪語していた者。名は、グテー・フドゥマギー。
『兵士長!明日予定している任務で相談があります!』
依頼者の要望に沿い、尚且つ迅速に確実に達成できるよう努める者。名は、タヌムン・ニゲー。
『兵士長!最近、新たな盗賊団が表れたようです。どうやら奴らの根城は……』
一般人の声に耳を傾け、常に脅威を逸早く察知していた者。名は、クマユン・ナンクル。
姿すら見えない部下達の声が、テイジュンの頭の中にだけ響いていく。
「何てことをしてしまったんだ!!」
兵士長として若い命を救うことができなかった事、自身の行動の愚かさ、関係のないものを巻き込んだ罪の意識が、混ざる心を抑えきれず、地面を何度も殴り続けた。
そしてテイジュンは空を仰ぎ、雨なのか涙なのか濡れた顔を手で覆った。
―――――すると、微かに音がした。気のせいだろうか、とも思ったが、何かが気になる。
音がした方へ近づくと、石碑の後に少女が隠れるように倒れていた。青白く生気のない顔をしている。テイジュンは慌てて少女の口元にそっと耳を近づけた。
「息は……している!」
雨に濡れた顔を手で拭き取ると、少女を抱えて立ち上がり、顔を見つめながらテイジュンは言った。
「必ず助けてやる――――」
時は深夜。鬱蒼とした森で兵士たちに指示を出す男の姿があった。
彼の名は『テイジュン』。ヨナ王国で兵士長(一級サムレー)を勤めている男だ。
長らく続いていた雨が止み、ぬかるんだ土の道なき道を、テイジュン達は列をなして歩いていた。
ウガンジュの森は龍の神がいると信じられ、かつては祈祷が行われていた神聖なる聖域で、夜には地中の龍脈から溢れ出す青色のセジが噴水のように溢れ出し、木や草が光り輝く幻想的な美しい森である。
しかしその美しい森で、テイジュン達は神経を尖らせながら歩いていた。何故なら、今や凶悪な《霊獣》が多く住み着いており、森に入ったら最後、誰一人として森から帰ってきた者はないと言われているからだった。
《霊獣》とは、霊体として存在する凶悪なモノだ。
本来、死んでしまった獣や人の魂は浄化されて輪廻転生を繰り返していくが、嘆きや苦悶、未練を残して死んでしまった魂が《セジ石》へ宿ってしまうと、その魂が霊獣となり人を襲うのだ。霊獣の力は強く、この世を彷徨いながら人々を次々と襲っていく。武器や防具で身を固めた兵士ですら、この地へ赴くのは相当な覚悟がいるのである。
「――おい、本当に中に入って大丈夫なのか……。ここには一級サムレーでも手に負えない霊獣が住み着いてるんだろ」
「仕方ないだろ命令なんだから。とにかく早く任務を終わらせて帰りたい。まともな飯をもう10日間も食べていないんだぞ!早く帰って暖かい飯が食べたいな~」
森の奥深くにある洞窟の前に到着するなり、武装した兵士の一人が、若干弱気な表情でそう呟いた。
そんな弱気な兵士を尻目に、肝が据わっているのか、能天気なだけなのか、相当腹が空いているのだろう。自分の腹をしきりに撫でながらもう一人の兵士が素っ気なく答えている。
たわいもない話が聞こえていたテイジュンは、これからさらに危険な洞窟の奥へと向かうというのに、だるそうにしている兵士たちに内心ため息をついた。ここでは一つの油断で命を落としかねない場所だからである。
「無駄口を叩いている場合じゃないぞ。霊除けは行なっているが、すでに聖域の中にいるんだ気を引き締めろ」
「はっ!了解しました!」
頭痛の種である若い兵士から目線を外すと、テイジュンは本任務の護衛対象者である二人を見た。
一人は白い白衣でメガネをかけた灰色の髪の研究者らしき男だ。ちゃんと飯を食っているのか疑いたくなるほど痩せこけており、日頃から体を鍛えている兵士達のそばに立つと、さらに青白い肌が不気味に際立って見えた。
もう一人はまだ幼い少女であった。歳は5つぐらいだろうか。人見知りでもしているのか終始うつ向いており、顔は良く見えない。耳の下ぐらいまで伸びた髪のふもとには、皮紐を通した赤い《勾玉》が首元にかけられ、座り込んでいる白い衣の上で艶やかに光っているのがわずかに見えた。
《勾玉》とは霊術を扱う上で必要な物だ。高額な値で取引される貴重な石だが、幼い少女が扱えるものではない上に、装飾品としても高価すぎるため、テイジュンは少女が持っている事が不思議だった。
今回の任務は、この二人をウガンジュの森にある洞窟への護衛という事だが、テイジュンはこの任務に対し腑に落ちないことがあった。洞窟での目的は知らされず、親子には見えないこの依頼人達の名前さえ明かされていない。
だからこそ、こんな危険な場所へ連れて来られるのは、何かあるに違いないと内心いかがわしく思っていた。されど任務のため、何か胸騒ぎを覚えながらも、テイジュンは研究者の元へ近寄った。
「洞窟の中へ入る準備が整いました」
「ふぅ、ここまで来るのに苦労させられましたよ。もっと早く着くと思ったのですが、思ったより時間がかかりましたね」
研究者は水滴がついた古ぼけた丸眼鏡を拭き、ポケットに手を入れて《灯り玉》を1つ取り出すと、洞窟の暗闇の中へと投げる。すると洞窟の床にコンと当たった《灯り玉》はゆっくりと宙に浮かび上がり、薄っすらとオレンジ色の灯りが道を照らしていく。
テイジュンは兵士らに隊列を命じて、研究者と少女と共に洞窟の奥へと進んで行った。
――――研究者が持っている古い地図を頼りに1時間ほど歩いただろうか。
突如、大きな開かれた空間が現れた。天井は10mほどあり、奥は暗くて先が見えない広さだ。中に少し入ってみると明らかに地面や壁が洞窟のごつごつとした岩とは違っている。地面は大理石のように硬く、灰色の亀の甲羅の形をした石のようなものが全面に敷かれている。
なんだか洞窟の中とは思えないほど宇宙にいるような無機質な空間で、冷たい空気を感じるが、だけども力があふれてくる様な不思議な感覚にテイジュンはとらわれていた。
「兵士長!見てください。何か壁に描かれているようです!」
「よく見えないぞ」
「誰か灯りをもっとつけろ!」
ざわめきだす兵士の声に反応し研究者は壁へ近付くと、手に持っていた地図を大きく広げ、何やら独りでぶつぶつと呟きながら壁に向かって地図との位置を確認し始めた。
すると突然、慌てて皮で作られた黒い鞄から透明の瓶を取り出し、5個ほど大きめの灯り玉を手に出すと、勢いよく空中へとバラまいた。すると灯り玉は四方八方に広がっていき、浮遊したまま徐々にオレンジ色に明るく発光していく。
すると前面には、灯りに照らされた大きな壁画が現れた。
「何だこれは…」
「……兵士長――これは何でしょうか?」
「こんなもの見たことがないぞ!」
テイジュン達はつい後ずさりをしてしまう。
何故なら、壁画の全体図は、空間の半分ぐらいは覆うほどのとても巨大な壁画であったからだ。
大きな壁画には、種族同士が戦っている様子が描かれていた。長い髪を結び衣を纏った女性と、角が二本生えた人型の獣の様な生き物が向かい合って描かれている。
壁画の両端には大きな白い石柱が2本立っており、まるで神殿のようだ。
壁画の手前には、研究者の半分ほどの高さの石碑が建てられており、よく見てみると、4匹の獣が並び、その獣のまわりには12種類の虎や龍等の生き物が、円を描くように彫られていた。名前なのか、生き物の下側には象形文字で12体分刻まれている。
「おぉぉ感激ですよ、ここで間違いありませんね!急いで準備をしてください!うひゃひゃ」
光に照らされた壁画を目にした途端、研究者は興奮気味に輝いた表情を見せて声を上げた。
テイジュンは研究者の独特な笑い方を少し気にしながらも、四人の兵士に対して手で合図を送ると、兵士らは素早く荷物をほどいて正方形の黒い台と、青く透き通った丸い石を丁寧に取り出す。そしてそれぞれ四方の壁際に別れていくと、中央にいる研究者と少女、テイジュンを囲うようにして、台の設置を始める。
研究者はまだぶつぶつと何か呟いていたが、落ち着かないのかソワソワと少し体を揺らしていた。
「《霊法陣》の設置完了しました!」
最後の一人の兵士が青く透き通った丸い石を台の上に置くと――石自体が青白く光り出し、それぞれの設置した場所から場所へと、光が線を引くように1本ずつ繋がりはじめ、大きな正方形の光の壁が出来上がった。
そして研究者は軽い足取りで石碑の前に立つと、振り返って目を見開きながら少女を指さした。
「ここに来てください」
「!」
突如名指しされた少女は肩をびくっと動かした。何かに怯えているのか次第に肩を震わせ始め、両手を胸元でぎゅっと強く握りしめると、少女の目からは涙がぽろぽろとこぼれ出した。そして堰を切ったように、ずっと黙っていた少女が泣き出す。
兵士らは動揺していたが、研究者は全く気にも留めず、まるで子供のような笑顔で興奮を抑えきれない様子だ。
「うえーん!」
「何を泣いているのですか。早く来て下さい」
「いやだ、お母さーん!」
「仕方ないですね、私が連れて来てあげましょう」
テイジュンはたまらず口を挟んだ。
「おい、一体お前は何をしようとしているんだ?」
「邪魔はしないで下さい。これは命令ですよ」
「いやしかし、あの子は嫌がってるじゃないか!」
「あなたには関係ありません。私は依頼人ですよ。」
テイジュンは言葉に詰まった。この男に言いたいことは山ほどあるが、依頼人の命令は絶対で、これ以上口をはさむ事も手をだす事もできない。
研究者は少女の手を掴むと無理やり壁画の前に引っ張っていき、文字が書かれている箇所を指差した。
「さぁ、この壁に書かれている文字を読むのです」
「ううっ……」
「さぁ早くカムスディルを唱えてください!」
「ぐすん……。ぐすん……」
しばらく泣いていた少女は少しずつ泣きやみ始めると、震える手で胸元の勾玉を両手で包み込むように握りしめ、目を瞑る――すると徐々に勾玉が赤く光り出し、身体がうっすらと光を帯び始めて少女は口を開く。
『―――ζφεδɤζφεδɤζφεδɤζφεδɤζφεδɤ―――』
少女の足が少しずつ地面から離れていくと―――髪が揺れ何かに乗り移られたかの様に、ゆっくり両手を広げながら言葉を唱え続けている。するとオレンジ色に染まった壁画は段々と色濃くなり、冷たかった洞窟が熱気を帯び始めていった。
「いいですよ、それ! うひゃひゃひゃひゃー」
その姿に見惚れていた研究者は、小刻みに足を動かしながら満面の笑みで、奇声を混ぜたような笑い声を上げていた。
「くっ苦しい、力が入らない」
「はぁはぁ。兵士長、何かおかしいです、力が……」
「何だ!いったい何が起こっていると言うのだ!」
部下の声に気付いたテイジュンが辺りを見渡すと、結界の外にいた兵士達が苦しんでおり、次々と倒れこんでいった。
しかしテイジュン自身は倒れこむどころか苦しささえ感じない。
ふと研究者を見ると、不適な笑みを浮かべ、苦しむ兵士たちを見つめていた。
「貴様! 何をしたーー!」
「うひゃひゃ。この子では、まだセジの力が足りていません。なので、彼らには人柱になって頂いているんです」
テイジュンは研究者の胸ぐらを掴んだ。
「何を言っているんだ、すぐに止めさせろ!!」
「もう無駄ですよ」
「どういう事だ?」
「――ふぅ、凡人には分かるように説明をしなくてはいけないのですね。この壁画に書かれているのは封印を解く方法を記した術式なのです。そして先ほど唱えていたのが封印を解くための詠唱だったわけですが、その子の力だけでは足りなかったので結界の外から足りない分のセジを補充したのですよ。――つまり、封印を解く術式はすでに起動され、それを止める事は誰にも出来ないという事なのです!」
「くっそ! このイカれヤローが!」
「うひゃひゃ、これでまた一つ私は新しい知識を得るのです!」
テイジュンは掴んでいた胸ぐらごと突き飛ばすと、独特な笑い続けている研究者を尻目に、部下の元へ走った。もしかすると結界の中に入れれば助かるかもしれないと思ったからだ。
しかし部下の体を掴もうとテイジュンの手が結界から出た瞬間、何かに力を吸い取られるような感覚を覚えた。
「うぅ、何だこれは……。力が、抜ける……」
そのまま体に力が入らなくなり、テイジュンは結界の内側へと倒れ込んでしまった。必死に体を起こそうとするが指ひとつ動かせない。
やがて少女が唱え続けていた詠唱が終わったのか声が聞こえなくなり、緊迫した洞窟内に一瞬間が空いたあと――突然目が開けていられないほどの真っ白な光に包まれた。
ほとんどのセジの力を失っているテイジュンの意識が薄れる中、少女の声が聞こえた。
『――カムスディル!』
しばらく発光し続けた光は徐々に薄くなって完全に光が消えた。
(……うっ……何が起こったんだ……。)
「うひゃひゃ、ついにやりましたよ!これがガナシのマブイですか。これで私の研究がまた一歩大きく前進できます!うひゃひゃ」
研究者は何かを拾い上げながら嬉しそうに独り言を言っている。
(……他のみんなは大丈夫なのか……奴は何をしているん……だ……。)
そのままテイジュンは意識を失った。
――数時間後の朝方、身体中の冷たい感触と震えで、テイジュンは意識を取り戻した。
まぶたを微かに開けると、目の前は濁った灰色の地面があった。長らく横たわっていたのか、右の頬がこすれて少しズキズキと痛い。一度目をつむるが、地面の冷たい感触と痛みに、ゆっくりとまた目を開けた。
「うっ……寒い……」
うつ伏せのままの身体は全身が冷え切ってしまい、うまく力が入らない。
テイジュンはなんとか身体を起こして前を向くと、見つめた先は何も無かった。見渡す限りただただ大地が広がっている。まだ夢の中なのだろうか、とも思った。
まだぼんやりとする中、顔にぽつぽつと落ちてきた冷たい感触に気づいて上を向くと、雲で覆われた薄暗い空が見えて、落ちてきたのは雨なのだと気付いた。
「雨か。いつの間に降っていたん……雨だと!? どこなんだここは……洞窟の中にいたはずだぞ!?」
テイジュンはこの瞬間に完全に目を覚ました。
自身が座っている一帯、地面は亀の甲羅の形をしており、後を振り向くと石碑が見える。四角の結界が張られた内側だけがそのまま残っており、それ以外はまるで、切り取られたように土しか無かった。
いやまさか、そんなはずはない。きっと何かの間違いだ。テイジュンは遠くに見える山の方角やおおよその距離を確認しながら、ポケットから方位磁石を取り出して北を探した。辺りの景色、方位磁石の示す方角、何度見直しても頭の中に入っている地図が、紛れもなく一つの事実を示している。
テイジュンの今いる位置は、あの時自分が気を失って倒れた、かつて洞窟があった場所だった。
そして、洞窟を含め、ウガンジュの森一帯全てが消滅していた。
「嘘だ……。そんな訳がない。俺は洞窟の中にいたはずだ!信じられない。全て消えたと言うのか――
洞窟だけではなく――――――ウガンジュの森全てが!!」
途方にくれる中、ハッと気づく。
「あ……みんな……そうだ、みんなは無事なのか、おい!誰かいるかーー!」
雨風さえも吹き飛ばすかのようにテイジュンは何度も大きな声で叫ぶが、その声に返事をする者は一人としていなかった。
(奴が少女を連れて来た時に確認するべきだったんだ!!)
何てことをしてしまったんだろうか。サムレー達の命、ウガンジュの全ての生き物、これほどの命を犠牲にしてしまった罪悪感が胸の奥から込み上げてくる。
『兵士長!今度、剣の稽古つけてください!』
剣の腕を磨き、力無き者を霊獣達から守るとよく豪語していた者。名は、グテー・フドゥマギー。
『兵士長!明日予定している任務で相談があります!』
依頼者の要望に沿い、尚且つ迅速に確実に達成できるよう努める者。名は、タヌムン・ニゲー。
『兵士長!最近、新たな盗賊団が表れたようです。どうやら奴らの根城は……』
一般人の声に耳を傾け、常に脅威を逸早く察知していた者。名は、クマユン・ナンクル。
姿すら見えない部下達の声が、テイジュンの頭の中にだけ響いていく。
「何てことをしてしまったんだ!!」
兵士長として若い命を救うことができなかった事、自身の行動の愚かさ、関係のないものを巻き込んだ罪の意識が、混ざる心を抑えきれず、地面を何度も殴り続けた。
そしてテイジュンは空を仰ぎ、雨なのか涙なのか濡れた顔を手で覆った。
―――――すると、微かに音がした。気のせいだろうか、とも思ったが、何かが気になる。
音がした方へ近づくと、石碑の後に少女が隠れるように倒れていた。青白く生気のない顔をしている。テイジュンは慌てて少女の口元にそっと耳を近づけた。
「息は……している!」
雨に濡れた顔を手で拭き取ると、少女を抱えて立ち上がり、顔を見つめながらテイジュンは言った。
「必ず助けてやる――――」
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