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「ただいま」と「おかえり」
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圭人の失踪から、2年が経過した。
心に、ぽっかりと大きな穴が空いている。あれから俺は、抜け殻のように生活している。でも、ちゃんと生きてるよ。
ここまできちんと生活が成り立っているのは、言わずもがな翔琉と真木さんのおかげだ。
俺が授業をすっぽかせば丸1週間くらい部屋に来て、つきっきりで世話をしてくれる。その時は3人で、狭いベッドに寝た。色々とツテを探して、どうにかして見つけようとしてくれたり。
でも、圭人は見つからなかった。
神隠しか、誘拐か。それともーーー
そう考えながら、ぼうっと大学に向かっていた矢先。小さい影を見つけた。
......あれ?
...違和感を覚えた。なにか。見たことあるような気がして。その瞬間、急いで駆け寄っていた。
『ーーっぇ......?』
「んなっ......!?な、なんで...」
ーー圭人だった。なんで、どうして。
どれだけ探しても見つからなかった圭人が、一体なぜここに......
『けい、と......?』
「っ......ひ、ひろ...」
彼の声は震えていた。俺の声も、震えていたと思う。目尻が熱くなる。
だめだ、涙が溢れてきてしまう。
なんとか、こらえないと。
『っ......バカっ、どれだけ探したと思ってるんだよっ......!』
「......ごめん。」
『ごめんじゃ済まさないからなっ...!
なんで、言ってくれなかったんだっ...』
「...!」
ボロボロと、涙が溢れてきた。
耐えきれずに、車椅子に乗っている圭人を同じ目線で抱きしめた。
ぎゅうぎゅうに、苦しいのも関係なく、
抱きしめた。そして、一番言いたい言葉を、震える声で投げかけた。
『っ......おかえり。圭人。』
「ひ、ろ...ひろっ......!た、だいま...!」
彼の目からも、大粒の涙が止まらない。
圭人の手は震えていた。
頭から優しく抱きとめてやれば、少し収まった。
お互いにひとしきり泣きあったあと、圭人はまだ入院中とのことで病院に戻ってきた。ちなみに、なぜ車椅子だったかというとやはり交通事故に遭っていたらしい。これは後から聞いたことだが、圭人は身寄りがなく連絡に困ってしまったそうだ。
とりあえず、一件落着だ。
まぁ、諸々お説教とお仕置は別で考えるとして。
ーー2ヶ月後、圭人は晴れて退院となった。だが、足をやってしまっているので、リハビリは継続するようにとのこと。歩けなくなるという訳ではないようだ。
『...本当に、おかえり。無事で良かった。』
「......責めたりしないの?」
『責めるわけないさ。事情は分かったからな。...ただ、お説教とお仕置は受けてもらうからね?』
「ゑ......あ、はい。」
一瞬怪訝そうな顔をした圭人にニッコリとしてやれば、笑顔の圧とやらが伝わったのか大人しく頷いた。
......これ以降、圭人にも周りにも、しっかりと『ありがとう』や『ごめんね』を言うようにしている。いつか、後悔しないための自己満足だ。
今回圭人が事故に遭って、伝えたい時は伝えたい時に伝えよう。そう心に誓った。
~完~
心に、ぽっかりと大きな穴が空いている。あれから俺は、抜け殻のように生活している。でも、ちゃんと生きてるよ。
ここまできちんと生活が成り立っているのは、言わずもがな翔琉と真木さんのおかげだ。
俺が授業をすっぽかせば丸1週間くらい部屋に来て、つきっきりで世話をしてくれる。その時は3人で、狭いベッドに寝た。色々とツテを探して、どうにかして見つけようとしてくれたり。
でも、圭人は見つからなかった。
神隠しか、誘拐か。それともーーー
そう考えながら、ぼうっと大学に向かっていた矢先。小さい影を見つけた。
......あれ?
...違和感を覚えた。なにか。見たことあるような気がして。その瞬間、急いで駆け寄っていた。
『ーーっぇ......?』
「んなっ......!?な、なんで...」
ーー圭人だった。なんで、どうして。
どれだけ探しても見つからなかった圭人が、一体なぜここに......
『けい、と......?』
「っ......ひ、ひろ...」
彼の声は震えていた。俺の声も、震えていたと思う。目尻が熱くなる。
だめだ、涙が溢れてきてしまう。
なんとか、こらえないと。
『っ......バカっ、どれだけ探したと思ってるんだよっ......!』
「......ごめん。」
『ごめんじゃ済まさないからなっ...!
なんで、言ってくれなかったんだっ...』
「...!」
ボロボロと、涙が溢れてきた。
耐えきれずに、車椅子に乗っている圭人を同じ目線で抱きしめた。
ぎゅうぎゅうに、苦しいのも関係なく、
抱きしめた。そして、一番言いたい言葉を、震える声で投げかけた。
『っ......おかえり。圭人。』
「ひ、ろ...ひろっ......!た、だいま...!」
彼の目からも、大粒の涙が止まらない。
圭人の手は震えていた。
頭から優しく抱きとめてやれば、少し収まった。
お互いにひとしきり泣きあったあと、圭人はまだ入院中とのことで病院に戻ってきた。ちなみに、なぜ車椅子だったかというとやはり交通事故に遭っていたらしい。これは後から聞いたことだが、圭人は身寄りがなく連絡に困ってしまったそうだ。
とりあえず、一件落着だ。
まぁ、諸々お説教とお仕置は別で考えるとして。
ーー2ヶ月後、圭人は晴れて退院となった。だが、足をやってしまっているので、リハビリは継続するようにとのこと。歩けなくなるという訳ではないようだ。
『...本当に、おかえり。無事で良かった。』
「......責めたりしないの?」
『責めるわけないさ。事情は分かったからな。...ただ、お説教とお仕置は受けてもらうからね?』
「ゑ......あ、はい。」
一瞬怪訝そうな顔をした圭人にニッコリとしてやれば、笑顔の圧とやらが伝わったのか大人しく頷いた。
......これ以降、圭人にも周りにも、しっかりと『ありがとう』や『ごめんね』を言うようにしている。いつか、後悔しないための自己満足だ。
今回圭人が事故に遭って、伝えたい時は伝えたい時に伝えよう。そう心に誓った。
~完~
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