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国王からの呼び出し
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白ポーションの売れ行きは依然として好調だった。
需要と供給が伴っていないのが一番の原因だろう。
1日の販売数を増やせばいいのだろうが、別にお金に困っているわけではない。
白ポーション自体は善人のためだが、この店のそもそもの目的は、王家との顔を繋いだりセバスが情報収集しやすくするためのものだ。
店にやってくるのは中級以上の冒険者や、それなりに身分の高い貴族が多い。
彼らの会話から得た情報をセバスが精査し、重要な事案に関しては更に調査を行ったうえで私に報告してくれるのだ。
アンの方はといえば、狙撃による魔物狩りをお願いしている。
素材はセバスに渡して換金してもらい、魔石は加工して善人のレベリングに使用していた。
レベリングが進んでいるとはいえ、どうせならカンスト――99まで上げてしまいたい。
限界値まで上げておいた方が、後々こうしておけばよかったと後悔することもない。
魔石はいくらあっても困らないのだ。
店は王宮御用達に認定され、善人のレベリングも順調。
アシュタルテから聞いた邪神と化した女神の問題はあるものの、概ね私の思い描いたとおりに事が進んでいた。
そんなある日、セバスから連絡が入ったのだ。
「国王陛下が私に直接お話ししたいことがある、そう仰ったのね」
「お嬢様、いかがいたしましょうか?」
「もちろん、お受けするわ。ちょうどいいタイミングでもあるし」
登城したついでに、今月の売り上げと白ポーションを納めてしまいましょう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日。
王宮に着いた私とセバスを出迎えてくれたのは、侍従長だった。
そこで私は直感的に嫌な予感がした。
身分の高い貴族や、善人のような勇者ならまだ分かる。
しかし、だ。
王宮御用達に認定されたとはいえ、私は貴族でもなければ勇者でもない。
わざわざ侍従長に案内されるような立場ではないはずなのだ。
多少なりとも善人と関係のあることだといいのだけれど。
そんなことを考えながら、侍従長の後をついて行く。
今回通されたのは謁見の間ではなく、応接室のような場所だった。
「ご無沙汰しております、国王陛下」
「久しいな、エリー。よく来てくれた」
「陛下のお呼びとあらば、いつでも馳せ参じますわ」
ニコリと笑みを浮かべてそう答えると、国王は「そうかそうか」と言って何度も頷いた。
座るように目配せされたので、一礼してから席に着く。
「お話しの前に、今月の売り上げとポーションは案内してくださった侍従長にお渡ししております。どうぞお納めください」
「ありがたい。白ポーションの効果には皆が驚いておる。怪我だけでなく体力まで回復するから疲れ知らずだと、騎士たちからの評判もよい」
初めて会ったときに献上した白ポーションを近衛騎士団に渡したそうだ。
国王の周りを警護する騎士に使わせてみたところ、一昼夜休みなしでも疲れることはなかったという。
怪我が治っても、体力が回復しなければ満足に動くことはできない。
その点、私の白ポーションは怪我や体力の回復に加え、筋力の超回復も促すので、激しい戦闘や訓練の後に使用すれば、ステータスのアップにも繋がるだろう。
「そのように言っていただけると嬉しいですわ」
「実は、今回そなたに話したいことも白ポーションが関係しているのだ」
「白ポーションですか? いったいどのような内容なのでしょうか?」
「うむ……今この国には女神様が遣わした3人の勇者がいることは知っているな?」
「存じております」
そのうちの1人とは幼馴染だし、むしろ彼を追ってきたのですもの。
「その中の2人の勇者が、そなたの店が王宮御用達に認定されたことを聞きつけてな。白ポーションを融通してほしいと言ってきたのだ」
「3人ではなく、2人ですか?」
「そうだ。2人だ」
どの勇者が言い出したのかは何となく想像がつく。
おそらく鋼太郎と駿だろう。
善人の性格上、勇者という立場を利用して何かを要求することは絶対にしない。
「言ってきたのはコウタロウとシュンの2人だ。彼らが言うには、魔王を倒すには今よりもレベルを上げる必要がある。そのためにはもっと強い魔物を倒したいが、強い魔物を倒すには危険が伴う。だから白ポーションが欲しいのだが、中々買うことができなくて困っているとな」
善人とのレベル差が開いてきたから焦っているのね。
彼らの中で善人は、一番最後に召喚された、愚直で真面目な少年にしか見えなかっただろう。
レベルの上がり方も遅いし、魔王を倒すのは自分だと思っていたはずだ。
それがあっという間に追い抜かれてしまい、今ではレベル20以上の差をつけられてしまった。
なりふり構っていられなくなるのも無理はない。
「かしこまりました。では、ご入用の数をお申し付けくださいませ。すぐに準備いたしますわ。ただし、こちらについては王宮にお納めするわけではないということをお含みおきくださいますと幸いです」
「分かっておる。頼んだ数量分の代金はこちらで払おう」
「ありがとうございます」
他の勇者に白ポーションを渡したところで、私考案のレベリングよりも経験値を稼げるはずはないので問題ない。
それに、断って暴走でもされたら面倒だし。
仮にも勇者として召喚されたのだし、白ポーションを渡しておけば、しばらくレベル上げに没頭してくれるでしょう。
……そんなことを思っていた時期が私にもありました。
需要と供給が伴っていないのが一番の原因だろう。
1日の販売数を増やせばいいのだろうが、別にお金に困っているわけではない。
白ポーション自体は善人のためだが、この店のそもそもの目的は、王家との顔を繋いだりセバスが情報収集しやすくするためのものだ。
店にやってくるのは中級以上の冒険者や、それなりに身分の高い貴族が多い。
彼らの会話から得た情報をセバスが精査し、重要な事案に関しては更に調査を行ったうえで私に報告してくれるのだ。
アンの方はといえば、狙撃による魔物狩りをお願いしている。
素材はセバスに渡して換金してもらい、魔石は加工して善人のレベリングに使用していた。
レベリングが進んでいるとはいえ、どうせならカンスト――99まで上げてしまいたい。
限界値まで上げておいた方が、後々こうしておけばよかったと後悔することもない。
魔石はいくらあっても困らないのだ。
店は王宮御用達に認定され、善人のレベリングも順調。
アシュタルテから聞いた邪神と化した女神の問題はあるものの、概ね私の思い描いたとおりに事が進んでいた。
そんなある日、セバスから連絡が入ったのだ。
「国王陛下が私に直接お話ししたいことがある、そう仰ったのね」
「お嬢様、いかがいたしましょうか?」
「もちろん、お受けするわ。ちょうどいいタイミングでもあるし」
登城したついでに、今月の売り上げと白ポーションを納めてしまいましょう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日。
王宮に着いた私とセバスを出迎えてくれたのは、侍従長だった。
そこで私は直感的に嫌な予感がした。
身分の高い貴族や、善人のような勇者ならまだ分かる。
しかし、だ。
王宮御用達に認定されたとはいえ、私は貴族でもなければ勇者でもない。
わざわざ侍従長に案内されるような立場ではないはずなのだ。
多少なりとも善人と関係のあることだといいのだけれど。
そんなことを考えながら、侍従長の後をついて行く。
今回通されたのは謁見の間ではなく、応接室のような場所だった。
「ご無沙汰しております、国王陛下」
「久しいな、エリー。よく来てくれた」
「陛下のお呼びとあらば、いつでも馳せ参じますわ」
ニコリと笑みを浮かべてそう答えると、国王は「そうかそうか」と言って何度も頷いた。
座るように目配せされたので、一礼してから席に着く。
「お話しの前に、今月の売り上げとポーションは案内してくださった侍従長にお渡ししております。どうぞお納めください」
「ありがたい。白ポーションの効果には皆が驚いておる。怪我だけでなく体力まで回復するから疲れ知らずだと、騎士たちからの評判もよい」
初めて会ったときに献上した白ポーションを近衛騎士団に渡したそうだ。
国王の周りを警護する騎士に使わせてみたところ、一昼夜休みなしでも疲れることはなかったという。
怪我が治っても、体力が回復しなければ満足に動くことはできない。
その点、私の白ポーションは怪我や体力の回復に加え、筋力の超回復も促すので、激しい戦闘や訓練の後に使用すれば、ステータスのアップにも繋がるだろう。
「そのように言っていただけると嬉しいですわ」
「実は、今回そなたに話したいことも白ポーションが関係しているのだ」
「白ポーションですか? いったいどのような内容なのでしょうか?」
「うむ……今この国には女神様が遣わした3人の勇者がいることは知っているな?」
「存じております」
そのうちの1人とは幼馴染だし、むしろ彼を追ってきたのですもの。
「その中の2人の勇者が、そなたの店が王宮御用達に認定されたことを聞きつけてな。白ポーションを融通してほしいと言ってきたのだ」
「3人ではなく、2人ですか?」
「そうだ。2人だ」
どの勇者が言い出したのかは何となく想像がつく。
おそらく鋼太郎と駿だろう。
善人の性格上、勇者という立場を利用して何かを要求することは絶対にしない。
「言ってきたのはコウタロウとシュンの2人だ。彼らが言うには、魔王を倒すには今よりもレベルを上げる必要がある。そのためにはもっと強い魔物を倒したいが、強い魔物を倒すには危険が伴う。だから白ポーションが欲しいのだが、中々買うことができなくて困っているとな」
善人とのレベル差が開いてきたから焦っているのね。
彼らの中で善人は、一番最後に召喚された、愚直で真面目な少年にしか見えなかっただろう。
レベルの上がり方も遅いし、魔王を倒すのは自分だと思っていたはずだ。
それがあっという間に追い抜かれてしまい、今ではレベル20以上の差をつけられてしまった。
なりふり構っていられなくなるのも無理はない。
「かしこまりました。では、ご入用の数をお申し付けくださいませ。すぐに準備いたしますわ。ただし、こちらについては王宮にお納めするわけではないということをお含みおきくださいますと幸いです」
「分かっておる。頼んだ数量分の代金はこちらで払おう」
「ありがとうございます」
他の勇者に白ポーションを渡したところで、私考案のレベリングよりも経験値を稼げるはずはないので問題ない。
それに、断って暴走でもされたら面倒だし。
仮にも勇者として召喚されたのだし、白ポーションを渡しておけば、しばらくレベル上げに没頭してくれるでしょう。
……そんなことを思っていた時期が私にもありました。
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