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第二章
ぼっちは嫌だ!運命のクラス分け試験
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入学式自体は特段語るべきことはなく、淡々と進み、あっさりと終わった。
約二百名の俺たち新入生は、在校生、講師陣、来賓の方々、そしてアースガルズ王国・現国王の拍手で会場に入った。
以降は校長やら来賓のお偉いさんやらの長ったらしい話が始まる。
これは前世と一緒だ。
よくもまあ、おじさんたちは毎度毎度しっかり文章を考えてくるもんだ。
誰も聞いてないってのは絶対本人たちも理解しているだろうに。
あっ、生徒会長は可愛かったなぁ。
声もお姉様系でクールだった。
諸に俺の好みだ。
さて、問題はここから。この後にあるクラス分け試験をどう乗り切るかが、俺の今日一番の試練。
昨日、夜なべして様々なシミュレーションを行ったが、しっくりとくる作戦が一つも思い浮かばなかった。
いかんせん人数が多いこの学院の試験は午前の部と午後の部にわけられる。
俺たちはみんな揃って午前の部に振り分けられた。
早く帰れるしそっちの方がありがたいので好都合。
場所は移り、俺たちは試験会場へとやってきた。
試験官は魔法のレベルでクラスを決めるわけじゃなく、あくまで参考にするだけだ、とやたらその部分を強調して説明していた。
俺たち新入生が立っている場所から離れたところに設置されている的を狙って魔法を当てる。
当たんなくてもいいけど、やっぱり当てた方がいいよね。的な軽いノリの試験らしい。
試験開始前に担当する試験官が新入生の前に登壇する。
「諸君、入学式お疲れ様であった。さて、諸君には各々が一番得意な属性の基礎となる低級魔法をあの的へ撃ってもらう!悔いのないように力の限りを出したまえ!」
周りからは「はい!」、「やってやるぜ!」なんて活きのいい声が飛び交う。
「では、番号札一番の生徒。そうだ君だ!前へ出なさい!」
最初の生徒が試験官に呼ばれ、発射位置に立った。
合図と共に生徒は手を前に伸ばして魔法を唱える。
《水鉄砲》
水の弾丸が的目掛けて一直線に飛んでゆく。
そして見事に命中、生徒は満足気にドヤ顔をしてみせた。
試験官も頷き、彼の実力を認めたらしい。
だが、俺は首を傾げた。
「え・・・こんなもん?」
低級魔法という点を考慮したとしても、しょぼすぎる魔法に俺は瞬きをして思わず二度見する。そんな呆気にとられている俺にアテーネがこっそり耳打ちした。
「マルス様、仕方ないですよ。わたしたちが一緒に修行してたのはヘルメース先生とシャーレット王女ですよ?」
たしかに言われてみれば・・・
ヘルメース先生はもちろん、シャーレットも王家の血を引く生粋のお姫様。そもそもの比較対象が規格外の人物たちだからか、俺の目はすっかりと肥えてたみたいだ。
「次、マルス・エルバイス。出てきなさい」
順調に試験は進み、いよいよ俺の出番が回ってきた。
ちなみに他の三人は文句なしの合格。試験官は口をだらしなく開き、低級魔法にも関わらず威力も精度もずば抜けている彼女たちに唖然としていた。
そんな彼女たちの後に試験に挑む俺。
周りのヒソヒソとした話し声を俺の聴覚が捉える。
『あ、あれって四英傑の跡取りじゃない?』
『ほんとだ!・・・でもあの子ってエルバイス家の・・・』
とか。
『おお、四英傑の足でまといのご登場だぜ!』
『ふはっ!こりゃあ、見ものだな・・・いでっ!だ、誰だ?石を投げた奴は!?三個も当てやがって!!』
ん?最後の男子生徒は大丈夫か?なるべく早めに保健室で手当てしてもらうのを勧めるよ。
んー、まじでどうしよ。氷魔法使っちゃったらいろいろ騒がれて面倒だし。使わなくても、無能だ!とか言われまくるんだろうなぁ・・・これどっち選んでもどっこいどっこいだ。
今日はこんな感じの選択肢が多い気がする。
『かーえーれー!かーえーれー!!』
・・・おし、やったろうじゃねぇか!
別に隠す必要はない。その後の処理が面倒くさいだけだ。一躍時の人ってのになってみるのも悪くないか。
氷魔法を使うことを決意した俺。
いざ試験に臨もうとしたところで、あれだけ騒がしかった周りの生徒たちが、一転して静まっているのに気づく。
「みんな、どしたの」
俺がそう口にした途端。
遮るように周囲からの大歓声が沸き起こった。
『きゃー!ヘルメースさんよ!あたい大ファンなの!』
『わたしもわたしも!はぁ~あの甘いマスク・・・いつ見ても惚れ直しちゃう!』
『俺もあんな風になりてぇ!』
『後でサイン貰おっと!』
なんと試験会場にみんなの憧れヘルメース先生が登場したのだ。
女子の興奮っぷりが凄まじい。半分悲鳴じみた声を発する。
そういえば、式の最中に顔を見なかったけど先生は何をしてたんだろ?
ようやく念願のヘルメース先生に会えるって騒いでた女子生徒たち。しかし意中の人は一度たりとも姿を見せずに式が終了した為に泣いていたのを今、思い出した。入学式が終わった直後、体育館の隅で密かにヘルメース先生のファンクラブ会員の申請をしている女子生徒たちがいたのもたった今、思い出した。
みんなが見詰める中、その一挙手一投足に注目が集まるヘルメース先生は試験官に近づいていく。
「マルスくんの試験は免除してくれないかい?彼は四英傑の息子だ。試験なんて必要ないだろ?」
「で、ですが・・・彼だけを特別扱いするわけには」
「どうしてもかい?」
「ええ、わたしにも伝統あるアースガルズ魔法学院・試験官としての責務がありますから!」
「うーん、ここは小生の顔に免じて一つ頼めないかな?」
「いくらヘルメース先生といってもわたしは信念を曲げるつもりは」
「そうだ、お詫びに今度王宮の女性でも紹介しよう」
ヘルメース先生が何を言ったのか俺たちには聞こえなかったけど、試験官の目の色が変わった気がした。
「マルス・エルバイス!ヘルメース先生の推薦とわたしの独断で、君の試験を免除。合格とする!」
試験官の一声に試験会場には「ええぇぇぇぇー!!」とシャーレット、フレイ、アテーネを除いた、他の生徒たちの大絶許が響き渡ったのであった。
約二百名の俺たち新入生は、在校生、講師陣、来賓の方々、そしてアースガルズ王国・現国王の拍手で会場に入った。
以降は校長やら来賓のお偉いさんやらの長ったらしい話が始まる。
これは前世と一緒だ。
よくもまあ、おじさんたちは毎度毎度しっかり文章を考えてくるもんだ。
誰も聞いてないってのは絶対本人たちも理解しているだろうに。
あっ、生徒会長は可愛かったなぁ。
声もお姉様系でクールだった。
諸に俺の好みだ。
さて、問題はここから。この後にあるクラス分け試験をどう乗り切るかが、俺の今日一番の試練。
昨日、夜なべして様々なシミュレーションを行ったが、しっくりとくる作戦が一つも思い浮かばなかった。
いかんせん人数が多いこの学院の試験は午前の部と午後の部にわけられる。
俺たちはみんな揃って午前の部に振り分けられた。
早く帰れるしそっちの方がありがたいので好都合。
場所は移り、俺たちは試験会場へとやってきた。
試験官は魔法のレベルでクラスを決めるわけじゃなく、あくまで参考にするだけだ、とやたらその部分を強調して説明していた。
俺たち新入生が立っている場所から離れたところに設置されている的を狙って魔法を当てる。
当たんなくてもいいけど、やっぱり当てた方がいいよね。的な軽いノリの試験らしい。
試験開始前に担当する試験官が新入生の前に登壇する。
「諸君、入学式お疲れ様であった。さて、諸君には各々が一番得意な属性の基礎となる低級魔法をあの的へ撃ってもらう!悔いのないように力の限りを出したまえ!」
周りからは「はい!」、「やってやるぜ!」なんて活きのいい声が飛び交う。
「では、番号札一番の生徒。そうだ君だ!前へ出なさい!」
最初の生徒が試験官に呼ばれ、発射位置に立った。
合図と共に生徒は手を前に伸ばして魔法を唱える。
《水鉄砲》
水の弾丸が的目掛けて一直線に飛んでゆく。
そして見事に命中、生徒は満足気にドヤ顔をしてみせた。
試験官も頷き、彼の実力を認めたらしい。
だが、俺は首を傾げた。
「え・・・こんなもん?」
低級魔法という点を考慮したとしても、しょぼすぎる魔法に俺は瞬きをして思わず二度見する。そんな呆気にとられている俺にアテーネがこっそり耳打ちした。
「マルス様、仕方ないですよ。わたしたちが一緒に修行してたのはヘルメース先生とシャーレット王女ですよ?」
たしかに言われてみれば・・・
ヘルメース先生はもちろん、シャーレットも王家の血を引く生粋のお姫様。そもそもの比較対象が規格外の人物たちだからか、俺の目はすっかりと肥えてたみたいだ。
「次、マルス・エルバイス。出てきなさい」
順調に試験は進み、いよいよ俺の出番が回ってきた。
ちなみに他の三人は文句なしの合格。試験官は口をだらしなく開き、低級魔法にも関わらず威力も精度もずば抜けている彼女たちに唖然としていた。
そんな彼女たちの後に試験に挑む俺。
周りのヒソヒソとした話し声を俺の聴覚が捉える。
『あ、あれって四英傑の跡取りじゃない?』
『ほんとだ!・・・でもあの子ってエルバイス家の・・・』
とか。
『おお、四英傑の足でまといのご登場だぜ!』
『ふはっ!こりゃあ、見ものだな・・・いでっ!だ、誰だ?石を投げた奴は!?三個も当てやがって!!』
ん?最後の男子生徒は大丈夫か?なるべく早めに保健室で手当てしてもらうのを勧めるよ。
んー、まじでどうしよ。氷魔法使っちゃったらいろいろ騒がれて面倒だし。使わなくても、無能だ!とか言われまくるんだろうなぁ・・・これどっち選んでもどっこいどっこいだ。
今日はこんな感じの選択肢が多い気がする。
『かーえーれー!かーえーれー!!』
・・・おし、やったろうじゃねぇか!
別に隠す必要はない。その後の処理が面倒くさいだけだ。一躍時の人ってのになってみるのも悪くないか。
氷魔法を使うことを決意した俺。
いざ試験に臨もうとしたところで、あれだけ騒がしかった周りの生徒たちが、一転して静まっているのに気づく。
「みんな、どしたの」
俺がそう口にした途端。
遮るように周囲からの大歓声が沸き起こった。
『きゃー!ヘルメースさんよ!あたい大ファンなの!』
『わたしもわたしも!はぁ~あの甘いマスク・・・いつ見ても惚れ直しちゃう!』
『俺もあんな風になりてぇ!』
『後でサイン貰おっと!』
なんと試験会場にみんなの憧れヘルメース先生が登場したのだ。
女子の興奮っぷりが凄まじい。半分悲鳴じみた声を発する。
そういえば、式の最中に顔を見なかったけど先生は何をしてたんだろ?
ようやく念願のヘルメース先生に会えるって騒いでた女子生徒たち。しかし意中の人は一度たりとも姿を見せずに式が終了した為に泣いていたのを今、思い出した。入学式が終わった直後、体育館の隅で密かにヘルメース先生のファンクラブ会員の申請をしている女子生徒たちがいたのもたった今、思い出した。
みんなが見詰める中、その一挙手一投足に注目が集まるヘルメース先生は試験官に近づいていく。
「マルスくんの試験は免除してくれないかい?彼は四英傑の息子だ。試験なんて必要ないだろ?」
「で、ですが・・・彼だけを特別扱いするわけには」
「どうしてもかい?」
「ええ、わたしにも伝統あるアースガルズ魔法学院・試験官としての責務がありますから!」
「うーん、ここは小生の顔に免じて一つ頼めないかな?」
「いくらヘルメース先生といってもわたしは信念を曲げるつもりは」
「そうだ、お詫びに今度王宮の女性でも紹介しよう」
ヘルメース先生が何を言ったのか俺たちには聞こえなかったけど、試験官の目の色が変わった気がした。
「マルス・エルバイス!ヘルメース先生の推薦とわたしの独断で、君の試験を免除。合格とする!」
試験官の一声に試験会場には「ええぇぇぇぇー!!」とシャーレット、フレイ、アテーネを除いた、他の生徒たちの大絶許が響き渡ったのであった。
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