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第2章
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「ふはっ!そんな事があったのか、アランも災難だったな。しかし、綺麗な手形痕だーーっくっく」
鍛錬場で赤々とした紅葉が出来た経緯をアランから聞き、イワンはニヤニヤしながら意地悪くからかっていた。
「私がキチンと話さなかったからな。本人も気にしているからその辺にしてくれないか?」やれやれと言った様子でイワンから離れ、鍛錬生のサポートにまわる。残されたイワンはまだ、笑いが収まっていないようで、1人クスクスと笑っていた。
「ーーふふ、あれでも元気が出たかな?ここ最近のアランは沈み過ぎて負のオーラが凄かったからなーー・・」
『・・・そんなに、酷かったんですか?』
「ぅおぉぃ!??」
誰もいない筈の隣から女の声がして、驚いたイワンは飛び退き腰にある剣に手をやる。
「ーー誰だ?」
威嚇しながら、低い声で辺りを見回すがやはり、誰もいない。
鋭い眼光で声がした方を見つめる。
『あっ・・えっと、アランの使い魔の真奈美です。先日は助け出して頂きありがとうございます。お礼が遅くなりすみません』
「ーーまなみ?なぜ、使い魔の控え室にいない?それに姿眩ましをしてまでここにいるのは何故だ?」
『それはーーアランがリードリッヒ様や他の人に見つからない方が良いと言われ、私もアランから離れるのは・・・絶対に嫌。』
最後の口調が強くなっている事に真奈美は気付いていなかった。イワンは複雑そうな表情をしながら、「そうだったな、すまない」謝罪し、何事も無かった様に壁にもたれる。
ーー沈黙が続き、姿は見えない真奈美がイワンに質問をした。
『アランに聞きました。もし、見つかったら大変なのに協力をしてくれた。っと、マニーちゃんにも伝えて下さい。ありがとうございました。』
「いや、礼を言うならアランのメイドが色々と教えてくれたからだ。それが無ければ危険だった筈だ」
『メイド・・・それは、誰ですか?』
話を聞いて、アランから手引きしたメイドがいると、話を聞いていなかった真奈美は質問した。
「名前はーーアイラだったか?いや、ケイティだったか・・」
うーんと、首をひねりながら考えるイワンに真奈美はそのメイドの名前を口にする。
『ケイラ、もしかしてケイラではないですか?茶色い髪をしばっていて、少し背が高い・・・』
「あぁ!そうだ!ケイラって言ってたな。」
(ケイラ!あなたが手引きしてくれたのね!ありがとう!!)
『それで、ケイラはどこにいます?お礼を言いたいのですが、まだ王宮ですか?』
姿は見えないが声で、真奈美が喜んでいるのが分かったアランは申し訳なさそうに口を噤む。
視線も下げ、無言になったイワンに不審に思い、何かあったのかと嫌な予感が頭を過ぎる
『屋敷に戻っても姿が見えなかったので、王宮で働いてるんですか?』
真奈美の質問にしばし、無言だったイワンは真実を口にしたのだった。
「ケイラさんは、亡くなった。自害したのだ、多分ーー君を助け出す為に手引きしたのがバレて、アランに危害が及ぶと恐れたんだと思う。アランから聞いていないのか?」
『えっ・・・・ケイラがーー死んだ・・の?私のせい・・?』
頭の中が真っ白になり、イワンの心配する声が頭に入らない。
(ケイラ、ケイラ・・何故自害なんてしたの?あの優しい手に笑顔にもう会えないなんてーーーーそんなのダメ)
ピカァーーーパリンッッ
「うっぐ、眩しいーー」
ネックレスが砕け散り、姿を現した真奈美は光り輝き出した。
急に現れた人が光り出し辺りはどよめき出し、アランは急いで光の元へと走り出した。イワンは余りの眩しさに目をかかえ、座り込んでしまっていた、
「まなみ?!どうした!!ーーイワン、何があった?!」
イワンに駆け寄り、輝き出した真奈美に触れようとしたがバチィンと弾かれてしまった。
「何が起きたんだ!まなみーー!」
アランは目を凝らしているが眩しすぎて目を開けるのが必死だ。
(なんだ?まなみ、無事なのか?)
『・・・ケイ・・ラーーー』
シュンッッ
一瞬の出来事だった。
光り輝いていた真奈美はあっという間に姿を消したのだ。
残されたのは、呆然と立ち尽くすアランにイワン・鍛錬生。
映像を見ていた使い魔達が鍛錬場に押し寄せたが、そこにはいつもの風景。「ーー今、何かありましたよね?凄い光で映像が途切れましたの。イワン様?」心配そうに駆け寄りマニー。
他の使い魔達も同様に主人に寄り添っていた。
アランだけは誰もいない空を見上げていた。
鍛錬場で赤々とした紅葉が出来た経緯をアランから聞き、イワンはニヤニヤしながら意地悪くからかっていた。
「私がキチンと話さなかったからな。本人も気にしているからその辺にしてくれないか?」やれやれと言った様子でイワンから離れ、鍛錬生のサポートにまわる。残されたイワンはまだ、笑いが収まっていないようで、1人クスクスと笑っていた。
「ーーふふ、あれでも元気が出たかな?ここ最近のアランは沈み過ぎて負のオーラが凄かったからなーー・・」
『・・・そんなに、酷かったんですか?』
「ぅおぉぃ!??」
誰もいない筈の隣から女の声がして、驚いたイワンは飛び退き腰にある剣に手をやる。
「ーー誰だ?」
威嚇しながら、低い声で辺りを見回すがやはり、誰もいない。
鋭い眼光で声がした方を見つめる。
『あっ・・えっと、アランの使い魔の真奈美です。先日は助け出して頂きありがとうございます。お礼が遅くなりすみません』
「ーーまなみ?なぜ、使い魔の控え室にいない?それに姿眩ましをしてまでここにいるのは何故だ?」
『それはーーアランがリードリッヒ様や他の人に見つからない方が良いと言われ、私もアランから離れるのは・・・絶対に嫌。』
最後の口調が強くなっている事に真奈美は気付いていなかった。イワンは複雑そうな表情をしながら、「そうだったな、すまない」謝罪し、何事も無かった様に壁にもたれる。
ーー沈黙が続き、姿は見えない真奈美がイワンに質問をした。
『アランに聞きました。もし、見つかったら大変なのに協力をしてくれた。っと、マニーちゃんにも伝えて下さい。ありがとうございました。』
「いや、礼を言うならアランのメイドが色々と教えてくれたからだ。それが無ければ危険だった筈だ」
『メイド・・・それは、誰ですか?』
話を聞いて、アランから手引きしたメイドがいると、話を聞いていなかった真奈美は質問した。
「名前はーーアイラだったか?いや、ケイティだったか・・」
うーんと、首をひねりながら考えるイワンに真奈美はそのメイドの名前を口にする。
『ケイラ、もしかしてケイラではないですか?茶色い髪をしばっていて、少し背が高い・・・』
「あぁ!そうだ!ケイラって言ってたな。」
(ケイラ!あなたが手引きしてくれたのね!ありがとう!!)
『それで、ケイラはどこにいます?お礼を言いたいのですが、まだ王宮ですか?』
姿は見えないが声で、真奈美が喜んでいるのが分かったアランは申し訳なさそうに口を噤む。
視線も下げ、無言になったイワンに不審に思い、何かあったのかと嫌な予感が頭を過ぎる
『屋敷に戻っても姿が見えなかったので、王宮で働いてるんですか?』
真奈美の質問にしばし、無言だったイワンは真実を口にしたのだった。
「ケイラさんは、亡くなった。自害したのだ、多分ーー君を助け出す為に手引きしたのがバレて、アランに危害が及ぶと恐れたんだと思う。アランから聞いていないのか?」
『えっ・・・・ケイラがーー死んだ・・の?私のせい・・?』
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ピカァーーーパリンッッ
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ネックレスが砕け散り、姿を現した真奈美は光り輝き出した。
急に現れた人が光り出し辺りはどよめき出し、アランは急いで光の元へと走り出した。イワンは余りの眩しさに目をかかえ、座り込んでしまっていた、
「まなみ?!どうした!!ーーイワン、何があった?!」
イワンに駆け寄り、輝き出した真奈美に触れようとしたがバチィンと弾かれてしまった。
「何が起きたんだ!まなみーー!」
アランは目を凝らしているが眩しすぎて目を開けるのが必死だ。
(なんだ?まなみ、無事なのか?)
『・・・ケイ・・ラーーー』
シュンッッ
一瞬の出来事だった。
光り輝いていた真奈美はあっという間に姿を消したのだ。
残されたのは、呆然と立ち尽くすアランにイワン・鍛錬生。
映像を見ていた使い魔達が鍛錬場に押し寄せたが、そこにはいつもの風景。「ーー今、何かありましたよね?凄い光で映像が途切れましたの。イワン様?」心配そうに駆け寄りマニー。
他の使い魔達も同様に主人に寄り添っていた。
アランだけは誰もいない空を見上げていた。
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