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第1章

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時は数時間前に遡る。
アランとイワン、マニーは策が決まり 真奈美のいる城へやってきた。


国王と王妃、リードリッヒが出掛ける所を見計らって侵入し、地図通りに1つの部屋へとやって来た。
その部屋は質素な作りとなっており、ベットに机。衣装ダンスがあるだけの部屋。
その部屋に数分待っていると、ドアが開き 部屋の主人ケイラが入ってきた。地図や情報を提供していたケイラだ。


「よく、お越しくださいました。アラン様、まなみ様は魔人の所へ連れていかれた様です。あの様子ではすでに始まっているかも知れません!こちらの服を羽織ってください。医師の振りをしていれば、誤魔化せますので。」
ケイラに促され、アランとイワンは医師の服を羽織る。
もう1人、マニーに服を渡す時にケイラは動きを止めた。


「・・・あなた様は?確か、イワン様の使い魔様でしたよね?アラン様にお聞きした外見と違うようですが・・?」
「お初にお目にかかります。イワン様の使い魔のマニーです。この姿は一次的な物。時間が経てば元に戻りますので、お気になさらず。今はまなみちゃんを助け出すのが先ですわ!」
「はっ!失礼しました。では、私の後について来て下さい」

ケイラは手際良く、アラン達の服を整え真奈美の所へ案内を始める。ケイラが驚いたのも無理はない。
マニーは人間の姿になっていたのだった。
緑の髪が背中まであり、緩いウェーブが風にふわふわ揺れており、少しつり目の情熱の赤い瞳は見ているものを惹きつける。
筋肉質だが女性らしい体つきで、女性のケイラでさえドキドキしてしまう。


(何か変かしら?イワン様もこの姿になってから、あまり見てくれない・・・念願の人型になれたのに、嬉しくないゎ)
マニーの元の姿では、城に入った時に目立ってしまう為マダム・イシュリーが特別に1日だけ人間になれる魔法薬をくれたのだ。
人間に憧れていたマニーは舞い上がり、楽しみにしていた。
だが、イワンは人間になったマニーと会話もせず、視線も合わせずに城まで来たのだった。美しいマニーに照れて直視出来ないだけなのに。2人はぎこちなく並んで歩いてきた。
アランはそんな2人を気にせず、真奈美の事で頭がいっぱいになっていた。



「この下です。2人の研究員が居ますが魔法は使えませんので、拘束すれば制圧出来ます」
「分かった。感謝する、ケイラ。後は私達が・・・「誰ですか?!ここから先は立ち入り禁止ですよ!!あなたは、新人の・・衛兵!曲者です!衛兵ーーー!!!」

たまたま、通りかかったメイド長に見つかり、衛兵を呼ばれてしまった。慌てたアランは咄嗟にメイド長を峰打ちし気絶させた。
衛兵を呼ばれてしまったが、来るまでに時間がまだある
急いで階段を降りドアを魔法で破壊した。

ドタァァアン!!

「!?何だ!お前たちは!?」
「ヴォエヴィアン」

流石に気付かれ、すかさずマニーが忘却魔法を2人に掛け、騒がれずに済んだ。

「まなみ!!どこだ!!・・・いた!まなみ!!!」
アランは必死に部屋を見渡し、ベットに横たわっている真奈美を見つけた。頭の装置を外そうと触れようとした時に結界で弾かれた。

「くそっ!!結界か、これで破れるか・・・バチィィッ。よし、
まなみ、、やっと迎えに来れた」
マダム・イシュリーの石に凄い力が入っていたんだと、感心し真奈美に視線を戻すと、最後に会った時よりも痩せているのが分かった。
自分が早く迎えにきていればっと悔い改め、腕に力が入る。
意識ない真奈美はアランの声が聞こえずにいた。

「アラン、引き上げだ。転移する、こっちへ早く!」
「!!今行く!まなみ、早く屋敷に帰ろうな?」

真奈美をしっかり抱き直し、イワンとマニーの所へ向かう。
ふと、隣を見るとガラス越しに男性がいた。
(これが・・魔人?褐色の肌に白銀の髪だが・・思ったより普通なんだな。)

魔人を通り過ぎ、転移へ。
「よし、揃ったな。まずはマダム・イシュリーの所へ。マニー急げ」
「はい。イワン様!ゲート!!」

フォンッ

真奈美奪還に成功したアラン達。

部屋の中には静寂が訪れていた。
静かに目を開けている魔人を除いて・・・

《ミ・・ナ・・・》










*****










「急げ!あの部屋だ!」「曲者はどこだ!?」「おい!人が倒れているぞ!」「・・・何だ、この部屋は?」

駆けつけた衛兵達が部屋へとやってきた。
破壊されたドアに気絶している2人。
筒状のガラスは壊されており、誰もいない。

異質な部屋の空気に衛兵達は息を飲む。


「まなみ!!無事か!!?」
「!リードリッヒ様!!こちらにはこの2名しかおりません!」

「何?!まなみと!・・・この中に男が居たはずだ・・・どこへ行った?・・・まさか、目覚め・・たのか?そんな馬鹿な・・・」
「主人!我が探して来る。しばらく離れるが良いか?」
「ぁあ・・かまわん。」「御意に」


胸騒ぎがして、早めに戻ったリードリッヒだが、一足遅った。

(魔人がまなみを?意思は無いはず、曲者は・・もしやアランか?、いや。アランは自ら了承してまなみを手放した筈。それなら、誰が?)
リードリッヒは考えこむ。
誰が手引きしたとしても、魔人が居なくなったのはまずい。
急いで探さなくては・・


「衛兵!ここはもう大丈夫だ。城内・城外で怪しい奴がいないか探せ!異国の者達の身辺調査もしろ!特に褐色の肌に白銀の男を見つけたら直ぐ私に報告しろ!!いいな?」
「「「はっ!!」」」


「ックソ!ダンッ」

バタバタと部屋から出て行く衛兵達。
リードリッヒは拳を壁に叩きつけ、自分が離れたことを悔やんだ。
アンデルダーンで真奈美に買った焼き菓子は無残にもリードリッヒの手から落ち、粉々になってしまった。
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