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第1章

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(ん?いつの間に寝てしまったんだろ?・・・えっ?此処はどこ?)

目を覚ました真奈美は見慣れない景色に飛び起きた。
白を基調とした、洗礼された部屋。
真奈美が寝ていたベットは天蓋付きでレースがかかっており、一目で高級な部屋だと分かる。

『・・えっ、、?確か、馬車に乗ってて屋敷に着くまで起きてたはず・・?記憶が無いけど、寝てしまった?』
「起きたか?」
声のする方を見ると、見慣れた顔のリードリッヒが立っていた。

真奈美は一気に不信感を抱き、反射的にベットの端に寄る。

『・・・屋敷に帰してくれる筈では無かったんですか?ここは、、どういう事か説明して下さい』

「覚えてないのか?お前は馬車の中で寝てしまったんだ。屋敷に着いても起きないから、そのまま連れ帰ってきただけだ。ほら、約束は守っただろう?」
ニヤリと答えるリードリッヒに苛立ちを隠せず。声を荒げてしまう。

『そんなのは、屁理屈です!屋敷に着いたら誰か呼ぶとか方法はあった筈でしょ?!』
ベットから降り、扉に向かう。
ビキッン
何かに弾かれ、真奈美は尻餅を着いた。

『えっ?何?』

もう一度、扉に触れるとまた弾かれる。目には見えない何かが真奈美を外に出さない様にしていた。

「無駄だ。この部屋に結界を張っている。いくら、無色属性のお前でも簡単に出られないようになっている。」
『結界・・嘘、嘘!何でこんな事をするの?!家に返して!』

「無理だ。やっと手に入ったんだ。そう易々と返す訳がないだろう?諦めて私の物になれ。」
『絶っっ対に嫌!!』

「そうか、なら少しは冷静になるんだな。アランより私の方がお前を大事にする。今日は誕生祭だから、夜まで戻れないが良い子で待っていろ」
チュッと真奈美の手にキスを落とし、リードリッヒは部屋から出て行った。


呆然とする真奈美はまた、扉に触れる。
無情にも結界は真奈美を跳ね返す。

自然と涙が溢れ、真奈美はその場に崩れ落ちた。

『どうして、どうしてこうなったの?食事をしたのが行けなかった?そもそも1人で出歩かなければ良かった?』
真奈美は自分の浅はかな行動に後悔した。

トントン
「失礼します。お食事をお持ちしました。」
メイドが数名食事を持ち、入ってきた。

真奈美はメイドに近寄り、『あの!あの!私、間違えてここに来たみたいなんですけど、出してもらえますか!?』
真奈美の問いかけにメイド達は首を振り、

「リードリッヒ様より部屋から出すなと指示されております。」

『そんなぁ・・・』
一筋の希望が砕けちった。
メイドが、食事を置いて出て行っても真奈美はその場を動こうとはしなかった。
アランに逢えない不安が真奈美を襲い、金色な瞳からは止め処なく涙が溢れている。


外からは祝福を祝う声援が聞こえる。
真奈美は不安と恐怖で只々、震えるしか出来なかった。















*****










「食事を食べなかったのか?少しは口に入れないと倒れてしまうぞ」
誕生祭が終わり、部屋に戻って来たリードリッヒに真奈美はキッと睨みつける。

『・・・帰してくれないと食べません』
意地でも食べて見るものかと、真奈美は怒りを露わにした。


「ふっ、意地を張っても無駄だ。俺はお前を離しはしない。」
『私は絶対にアランさんの所に戻りまっっ!!!』

真奈美が言い終わる前にリードリッヒは真奈美の唇を自分の唇で塞いだ。突然のキスに真奈美は目を白黒させ、抵抗する。
だが、リードリッヒは離す気が無いのかドンドン濃厚なキスになっていく。

「っ!!」

突然の痛みにリードリッヒは唇を離した。
唇から血が垂れている。真奈美が噛んだのだ。

「・・・抵抗してもお前は私のもの。今日はベットを使っていいぞ、私はこちらで休む。」
真奈美は無言で睨みつけ、リードリッヒ様はソファーに向かい、横になってしまった。

奪われた唇をゴシゴシと何度もふく。
汚れた唇を綺麗にする為に。
涙は止まる事をしらず、ただただ流れ落ちている。


(アランさん、あなたに逢いたい・・・・・)
真奈美の悲痛な思いは静かな部屋に落ちていく。
ギュッとベットで丸くなり小さくなる真奈美。
スースーッと泣き疲れたのか、すぐに寝てしまった。



寝息が聞こえて来た為、真奈美が寝たか確認する為 リードリッヒ様はベットに近づく。
レースを開けると、長いピンクの髪を白いベットになびかせ、長い睫毛は涙で濡れていた。
そっとまぶたにキスを落とし、リードリッヒ様はベットに腰掛ける。
髪を触りながら、泣き疲れた真奈美を見つめていた。
「主人、気を落とすな。一緒に過ごすうちに主人の良さがわかってくるはずだ。」
「そうだな、まだ日はある。どうしても魔力が必要だ。何としてでも手に入れなくては、ロイ。私は間違っているのか?まなみを部屋に閉じ込めて、本当に私に振り向いてくれるのか?」

「焦らずとも、先ずはこの場所に慣れて貰わなくては、いくら無色属性でも何がきっかけで結界が破られるか分からない。主人よ、心配せずとも大丈夫だ。主人は優しい。我を救い出してくれた程に」
「ふっ、ロイ。その話はするな、そうだな。慣れてくれれば良いが、明日から城の中を案内でもするか」
「それが良い。では、主人よ。何かあれば呼んでくれ」

ロイはスッと暗闇に消えて行った。
「あいつめ、気を利かせて俺の空間ではなく 他に行ったな。まったく。こんな泣き顔を見たら手も出せないだろうに」

リードリッヒは愛おしむ様に真奈美の頭を撫でていた。

窓の外からは誕生祭の終わりを知らせるかの様に人々のざわめきが徐々に静かになっていく。
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