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第1章
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翌朝、試食品を鞄に詰めて隣の木に住むクロウの所へやって来ました。
改めて見ると迫力のある木。
(やっぱり凄いな・・・困った。どうやって呼ぼうかな?うーん。大声出しても聞こえるかな?)
幸いな事に、近くに人影は見当たらないので少しぐらい大声を出しても大丈夫そうだ。
「おはよーーー!!クローーウ!起きてるーーー??」
・・・・・・返事ないか。やっぱり聞こえないかな?
「おーーはーーよーーー!!」
・・・・・うーん、どうしようかな。1人で探しに行こうかな。
クルッと方向転換する。
「わっ!ビビった!!っっつ、何だ。居るなら返事してよ、もぅー心臓に悪いゎ~」
目の前には顔を赤くしたクロウが立っていた。
「すまん。あやねの気配がしたから降りたんだが、声を掛けようとしたら急に叫び出し、タイミングを失ってしまった。」
「あら!そうだったの、ごめんね!あっ、そうそう。聞きたい事があったんだけど。ジリーって知ってる?お父さんが容器を作るのに、頼んでたみたいなんだけど。分かるかな?」
「ジリー?・・・そいつに頼むのか?」
「知ってるの?!なら、紹介して~!アーク祭で商品を入れるのに、手持ちだと足らないんだよね。」
「・・・分かった。こっちだ」
クロウは渋々ながらも彩音を道案内した。
着いた先は大きめの建物。
だいたい、体育館の半分ぐらいかな?
空いてる扉から中が良く見えて、手作りであろう食器や袋。
工房の様な場所だと分かる。
「こんにちは~!誰か居ますか~~??」
中を覗きながら呼んでも返事がない。
(うーん、いないのかな?)
「こんにちは~~」
「はーーい、ちょっと待って下さいねーー」
部屋の奥から人の声が聞こえてきた。
言われた通り、入り口で待っていると奥から背の高い人影が見えた。
「お待たせしてすみません、今一区切りしまして。何か御用でしょうか?」
出てきたのは長身の男性。
くりくりの髪の毛はモスグリーン、琥珀の瞳でイケメンさんでした。
「はじめまして、彩音と申します。あの、食事を入れる容器などお作りになるんですか?」
「これは丁寧にありがとう御座います。私は“なんでも工房”のジリーと言います。名前の通り、うちは何でも作りますよ」
ニコリと笑う、イケメンの迫力。普通の女子ならクラリと惚れてしまいそうだ。だが、私は自称枯れ女。
イケメンの笑顔なんてどうって事ないゎ。
「では、このような物をお願いしたいんですけど」
そう言うと、簡単に書いた紙を見せて説明する。
ふむふむ。と考えているようだ。
「そうですね、これならヨークの葉がいいかな?今、中に入れる物ってありますか?」
「あっ、はい。これとかーー」
鞄から試作品を出すと、出来たてのクッキーの香りが漂ってきた。
「なるほど、この香りは美味しそうです。やはり、ヨークの葉がいいですね。ちょっと待っててください。」
そういうと奥に何やら探しに行ってしまった。
チラリとクロウを見ると、ブスっと不機嫌な様子が丸わかりだった。ジリーが嫌いなのかな?無理に頼んで悪いことしな、っと後で謝罪しようと思った彩音だった。
「あったあった、お待たせしました。これがヨークの葉で作った容れ物です。試しに入れてみますか?」
渡されたのは緑色をした四角い容器だった。葉を細く編み合わせたのか、硬さもあり見た目も悪くない品だった。
確かにこれなら、クッキーが型崩れするのを防げる。でも、箱はかさばるなーーー
「あの、これの袋状にって出来ますか?入り口をキュッて縛る感じなんですけどーーあっ、こんな感じです。」
見本にと持っていた巾着を見せるとジリーは目をキラキラさせながら受け取り、興味津々に見ていた。
「素晴らしい、この色・手触り。これは理にかなっています。これを作っても良いのですか?いえ、是非作らせて下さい!!」
グイグイと詰め寄り、ギュッと手を握られ彩音はたじろぎ、後ずさりしてしまう。
「えっと、急で申し訳ないんですが、明日100個必要で追加で200個ぐらい何ですが、頼めますか?小さくても大丈夫です。このクッキーが3枚程入れば良いのでーー」
「勿論です!!300はすぐ出来ますよ。明日お届けします!お住まいはどちらでしょうか?」
「場所は、大きな木のー」
「俺が取りに来る。彩音は、準備で忙しいからな」
彩音が言い終わる前にクロウが話に割って入ってきた。
不機嫌さを露わにし、彩音の前に立ちふさがる。
(仲が悪いなら、お願いするのは可哀想よね、)
「クロウ、大丈夫だよ。仕込みは出来てるしー「ダメだ。俺がくる。」
強く言われ、本人が大丈夫って言ってるならと承諾した。
そんな2人のやり取りをジリーは微笑ましく見ていた。
「分かりました。では、明日の夕刻にお願いします。」ぺこりと頭を下げるジリーに彩音は料金を聞くのを忘れており、慌てて値段交渉をする。
「あっ!料金はどのくらいでしょうか?安くして頂けると助かるのですが、」
「料金は、そうですね。アイディアを頂いたので今回は大サービス!手間賃だけで大丈夫ですよ。」
そういうと、とても安くしてくれた。私は助かるけど、利益にならないのでは?と心配になってしまった。
それが伝わったのか、ジリーはニコリとヨークの葉はどこにでもある雑草のような物だから、元手はかからないんだよ。秘密だけどね。っと教えてくれた。
それでもっと私が引かないでいたら、クッキーが欲しいと言われた。どうやら、この匂いにつられ食べたくなったようだ。
鞄から他にも試作品を出し、ジリーに渡すと とても喜んでいた。
クロウは相変わらず 不機嫌だったけどね。
これで、容れ物は大丈夫になったから、後はメインの下拵えをしないと。そう考えるながら帰路につく。
相変わらず、クロウがギュッと手を握ってくるのにも慣れたょ。
今日はずっと不機嫌だったなと思い、もうすぐランチだから一緒に食べようと誘ったらパァーッと笑顔になったのを見たとき、子供だなぁと思わず笑いそうになった。本人には言わないけどね。
改めて見ると迫力のある木。
(やっぱり凄いな・・・困った。どうやって呼ぼうかな?うーん。大声出しても聞こえるかな?)
幸いな事に、近くに人影は見当たらないので少しぐらい大声を出しても大丈夫そうだ。
「おはよーーー!!クローーウ!起きてるーーー??」
・・・・・・返事ないか。やっぱり聞こえないかな?
「おーーはーーよーーー!!」
・・・・・うーん、どうしようかな。1人で探しに行こうかな。
クルッと方向転換する。
「わっ!ビビった!!っっつ、何だ。居るなら返事してよ、もぅー心臓に悪いゎ~」
目の前には顔を赤くしたクロウが立っていた。
「すまん。あやねの気配がしたから降りたんだが、声を掛けようとしたら急に叫び出し、タイミングを失ってしまった。」
「あら!そうだったの、ごめんね!あっ、そうそう。聞きたい事があったんだけど。ジリーって知ってる?お父さんが容器を作るのに、頼んでたみたいなんだけど。分かるかな?」
「ジリー?・・・そいつに頼むのか?」
「知ってるの?!なら、紹介して~!アーク祭で商品を入れるのに、手持ちだと足らないんだよね。」
「・・・分かった。こっちだ」
クロウは渋々ながらも彩音を道案内した。
着いた先は大きめの建物。
だいたい、体育館の半分ぐらいかな?
空いてる扉から中が良く見えて、手作りであろう食器や袋。
工房の様な場所だと分かる。
「こんにちは~!誰か居ますか~~??」
中を覗きながら呼んでも返事がない。
(うーん、いないのかな?)
「こんにちは~~」
「はーーい、ちょっと待って下さいねーー」
部屋の奥から人の声が聞こえてきた。
言われた通り、入り口で待っていると奥から背の高い人影が見えた。
「お待たせしてすみません、今一区切りしまして。何か御用でしょうか?」
出てきたのは長身の男性。
くりくりの髪の毛はモスグリーン、琥珀の瞳でイケメンさんでした。
「はじめまして、彩音と申します。あの、食事を入れる容器などお作りになるんですか?」
「これは丁寧にありがとう御座います。私は“なんでも工房”のジリーと言います。名前の通り、うちは何でも作りますよ」
ニコリと笑う、イケメンの迫力。普通の女子ならクラリと惚れてしまいそうだ。だが、私は自称枯れ女。
イケメンの笑顔なんてどうって事ないゎ。
「では、このような物をお願いしたいんですけど」
そう言うと、簡単に書いた紙を見せて説明する。
ふむふむ。と考えているようだ。
「そうですね、これならヨークの葉がいいかな?今、中に入れる物ってありますか?」
「あっ、はい。これとかーー」
鞄から試作品を出すと、出来たてのクッキーの香りが漂ってきた。
「なるほど、この香りは美味しそうです。やはり、ヨークの葉がいいですね。ちょっと待っててください。」
そういうと奥に何やら探しに行ってしまった。
チラリとクロウを見ると、ブスっと不機嫌な様子が丸わかりだった。ジリーが嫌いなのかな?無理に頼んで悪いことしな、っと後で謝罪しようと思った彩音だった。
「あったあった、お待たせしました。これがヨークの葉で作った容れ物です。試しに入れてみますか?」
渡されたのは緑色をした四角い容器だった。葉を細く編み合わせたのか、硬さもあり見た目も悪くない品だった。
確かにこれなら、クッキーが型崩れするのを防げる。でも、箱はかさばるなーーー
「あの、これの袋状にって出来ますか?入り口をキュッて縛る感じなんですけどーーあっ、こんな感じです。」
見本にと持っていた巾着を見せるとジリーは目をキラキラさせながら受け取り、興味津々に見ていた。
「素晴らしい、この色・手触り。これは理にかなっています。これを作っても良いのですか?いえ、是非作らせて下さい!!」
グイグイと詰め寄り、ギュッと手を握られ彩音はたじろぎ、後ずさりしてしまう。
「えっと、急で申し訳ないんですが、明日100個必要で追加で200個ぐらい何ですが、頼めますか?小さくても大丈夫です。このクッキーが3枚程入れば良いのでーー」
「勿論です!!300はすぐ出来ますよ。明日お届けします!お住まいはどちらでしょうか?」
「場所は、大きな木のー」
「俺が取りに来る。彩音は、準備で忙しいからな」
彩音が言い終わる前にクロウが話に割って入ってきた。
不機嫌さを露わにし、彩音の前に立ちふさがる。
(仲が悪いなら、お願いするのは可哀想よね、)
「クロウ、大丈夫だよ。仕込みは出来てるしー「ダメだ。俺がくる。」
強く言われ、本人が大丈夫って言ってるならと承諾した。
そんな2人のやり取りをジリーは微笑ましく見ていた。
「分かりました。では、明日の夕刻にお願いします。」ぺこりと頭を下げるジリーに彩音は料金を聞くのを忘れており、慌てて値段交渉をする。
「あっ!料金はどのくらいでしょうか?安くして頂けると助かるのですが、」
「料金は、そうですね。アイディアを頂いたので今回は大サービス!手間賃だけで大丈夫ですよ。」
そういうと、とても安くしてくれた。私は助かるけど、利益にならないのでは?と心配になってしまった。
それが伝わったのか、ジリーはニコリとヨークの葉はどこにでもある雑草のような物だから、元手はかからないんだよ。秘密だけどね。っと教えてくれた。
それでもっと私が引かないでいたら、クッキーが欲しいと言われた。どうやら、この匂いにつられ食べたくなったようだ。
鞄から他にも試作品を出し、ジリーに渡すと とても喜んでいた。
クロウは相変わらず 不機嫌だったけどね。
これで、容れ物は大丈夫になったから、後はメインの下拵えをしないと。そう考えるながら帰路につく。
相変わらず、クロウがギュッと手を握ってくるのにも慣れたょ。
今日はずっと不機嫌だったなと思い、もうすぐランチだから一緒に食べようと誘ったらパァーッと笑顔になったのを見たとき、子供だなぁと思わず笑いそうになった。本人には言わないけどね。
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