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小さな小屋に着くと、衛兵は椿とエマに座る様話す。
「いくつか、質問してもよろしいでしょうか?」
「はい、」
淡々と話す衛兵に素直に答える椿。

「最後の質問ですが、あなたは妖精・精霊と契約していますか?」

えっ?妖精?精霊?
契約なんてしてないけど、なんでそんな事を聞くんだろ?
「契約なんて、してませんけどーーー」
「契約していない?」
椿の問いに頭を捻る衛兵は、何やら考え込みながら椅子の周りをウロウロしている。


「ねぇ、何で足元がひび割れたのかな?」
「私が知る訳ないでしょ~?ーーーつばきちゃん、本当に契約してないの?前に妖精王とか話してなかった?」
「えっ?妖精王?」

エマに言われて、ふと妖精王と会った事があったっけ?と思い出すが、すっかり忘れていた椿は「う~ん?」と考え込む。
「ほら、初めてギルドで依頼を受けた時よ!」
「ーーーぁあ!そういえば、そんな事あったね~すっかり忘れてたよ。あはは」
「あははって、まったくお気楽なんだから。」
「だって~興味無いし~それに、少し話したっけ?かな?ぐらいの人なんて、忘れるでしょ~~」


〔我を呼んだか?〕
お気楽に話していた椿の後ろに、いつのまにか妖精王が立っていた。
ギョッとした椿は「うひぃ~~」変な声が出てしまった。
相変わらずの整った顔が椿の眼を見つめる。

〔愛しの伴侶、しばらくぶりだな。寂しかったか?〕
妖精王は優しく話しかけると椿を両手で包み込む。が、椿はそれを拒否しながらささっとエマの後ろに隠れる事にした。
その行動を不思議そうに見つめていると、〔何故離れるのだ?〕疑問だと言わんばかりの妖精王。

「無理です。気持ち悪いです。帰ってください。」

〔何を言っているのだ?今会ったばかりであろう?〕

「無理です。受け付けません。お引き取り願います」

〔愛しの我が伴侶。こちらへおいで?〕

「言葉が通じない?!そんな馬鹿な!妖精王って人の話を聞かないの?」

妖精王に対して、酷い対応の椿。笑いを堪えていたエマがブハッ!っと吹き出してしまい、ケラケラ笑いだした。
「つばきちゃん、あんたって最高だわ!妖精王に対して、凄いわね!普通では考えられないわ~~」
頭をポンポンしながら、まだ笑いを堪えている。
部屋の隅には、衛兵がピシリと姿勢良くしていた。どうやら、エマと衛兵の1人は、妖精王の姿がわかるようだ。



「失礼ながら、つばきさんはそちらにおります妖精王の伴侶でございましたか。では、結界がひび割れたのは【伴侶】に反応したんでしょう。」

「違いますから!会話を聞いてたでしょ?!」
「はい!伴侶と聞き存じました!いま、上に報告しますので、もうしばらくお待ち下さい。」

「だーかーらー!!違うって言ってるの!あっ!こら!報告するんじゃないーーーって、何で人の話を聞かないのよ。ーーん?結界なんてありました?」
「はい。門より街に行く間の通路に結界が施されております。」
「通路って、ガラス張りの道のことかな?それより!なんで、私の足元がひび割れしたんですか?」
「結界を施したのが、我が国のクリュス様であります。クリュス様や我が国に対し何か敵対心がある方や関わる方が反応する様になってます」

まさか、通路が結界とは知りもしない椿は目をまん丸にしながら話を聞いていた。しかも、ひび割れた原因が敵対心だとか、不穏しか感じない。何かの間違いであって欲しい。
問題に巻き込まれるのはもうお腹いっぱいです。

頭を抱えている椿に妖精王が会話に入ってきた。
〔それは、我の所為かもしれん〕
えっ?っと顔を妖精王に向けると、真顔で〔我はあ奴が嫌いだ〕言い放った。
その内容は、結界を作ったクリュスさんて人が嫌いだから、結界が反応したと言う。っと言うことは。
「全部あんたが原因かーーーーい!!!」
突っ込みをするも、キョトンとする妖精王に何を言ってもだめだった。
ガックリと項垂れる椿。

「あははっもう、笑いすぎてお腹痛いーー」

さくさくと報告する衛兵と原因となった妖精王に怒りを覚える椿。横ではお腹をかかえて笑っているエマ。
何故かピッタリ隣にいる妖精王に嫌気がさし、椿は無視する事にした。



〔ところで、愛しの伴侶や。何故こんな場所にいるのだ?ここは、寒いだけで何も無い所ではないか。おまけに煩い奴の土地だ。ここでは無く、我の所に来れば良いではないか?〕
「エマ~最初は何を見に行く?お腹空いたから、何か買って食べよう?」

〔ほう?腹が減ったのか。では、美味しい実がある場所へ行こうか?あれは甘くて美味しいから一口食べれば忘れなくなる味だ〕

「あっ!装飾品とかも見てみたいね~」
〔光り物か?我は好かんが愛しの伴侶が好きならば探してこようぞ〕

「早く、ここから出れないかな~?煩い人がいるからね。」
〔では我の所に行こうぞ。煩い奴が来たら面倒だ〕

見事に妖精王を無視し、エマに話しかける椿だが。話しかけられているエマは、どう答えて良いのやら曖昧な返事しか出来ずにいた。
すぐ、横で会話に入っているのか際どい妖精王に突っ込みなど出来るはずもなかった。


「あーあ、早く終わらないかな~隣の人がいい加減煩いし~」
〔そうだな、もう我と一緒に行こうではないか。直ぐに出られるぞ?〕

〔ブハッ!お前どんだけ嫌われているんだよ!いい加減諦めて帰れ!〕
気まずい雰囲気に終止符を打った声を見ると、先程までいなかった人が立っていた。
青い髪を1つに纏めてニヤニヤ笑いながら妖精王の肩をポンポンしていた。
そして、椿の事をじっくり観察している。

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