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しおりを挟む「本当に何様なの!?まったく、あ~~気分悪い!!!」
《つばき様・・・》
自宅に帰ってくるなり、椿は頭に血が上りウルを相手に愚痴をこぼしていた。
この調子で愚痴を言いながら、手にはキンキンに冷えたビールをぐびぐび飲んでいる。心配そうに見るウルの事など気付いていない。
空になると、自然に湧き出るビールを美味しそうに飲む姿を見て、中々注意が出来ないウルだった。
ようやく、怒りが収まった頃。
トントントン
「つばきちゃ~~ん?いるの~~?」
エマがやって来た。いつも、夕食を誘いに来るのだがーー今日は、まだ早い時間だ。
不思議に思った椿は、飲みかけのビールをテーブルに置くと玄関を開ける。
「はーい、居ますよ~」
ガチャっと開けると、そこにはエマと見知らぬ小太りの男がいた。
「?」
「あぁ、良かった!居たのね!」
「何かあったんですか?」
「何かあったんですか?じゃないわよ!あなた!フェンリル に乗って帰って来たでしょ!!?町中で噂になってるのよ?!」
しまった。と思った、あの時は頭に血が上ってしまったから周りを気にせず町中を通ってしまったんだった。
あちゃーっとフェンリル を見ると《どうかしましたか?》と首を傾げられた。
あはは。と笑いながら誤魔化すが、目の前にいるフェンリル を見られているので無理だ。
「はぁー、困った子ね。まだ、獣魔の契約もしてないんでしょ?獣魔の立会い人を連れて来たから、今から契約しちゃいなさい。首輪をすれば、とりあえず。問題は解決よ」
「わぁ~ありがとうございます!エマさん、頼りになります!」
確か、ジャイロも獣魔は首輪をしないと~とか言ってたような?すっかり忘れてたよ。
「話は済みましたかね~?では早速行いますかね~私は獣魔の契約をする時の立会い人でアシュハードと申しますね~以後お見知り置きをね~」
「あっ、はい。椿です、こちらがウルと言います。」
「ほほ~う?ふむふむ。フェンリル ですね~とても珍しいですね~では簡単に説明しますね~・・・・」
話を聞くと。
言葉の契約を取り交わすと同じ紋章が右手の手の甲に浮き出るんだって!契約が完了すれば、アシュハードさんが用意した首輪をつける。伸縮自在だから体の大きいウルでも大丈夫。
っと、こんな感じで簡単に済みそうだ。
言葉は、アシュハードさんが用意してくれた紙を読み上げて、ウルがそれに合意すれば完了。
「ーーーーーここに誓いを立てる。」
《この命が尽きるまで、つばき様を御守り致します》
フォンっと、椿の手の甲に白い椿の花が浮かび上がる。同じくフェンリル にも。刺青みたいだなと思い、フェンリル のを見るが元々、毛色が白いフェンリル は白い花びらは目立たず、黄色い花弁で花だと分かるぐらいだ。
「白い椿……そういえば、私の名前も親が白い椿の花言葉から決めたって言われたな~子供の名前が椿だと、花が首から落ちるから縁起悪いっておじいちゃんに言われてたっけ。
普通は赤い椿なのに、お母さんは白い椿が良いとか…花言葉は、至上の愛らしさと後ゎぁ…忘れた。」
しみじみと名前の由来を思い出し、感傷に浸っている間にウルに首輪が付けられた。
「これで終わりですね~では支払いが10万円になりますね~」
「わぁ~~ウルカッコいい!首輪って、皮だと思ったら金属なんだね!はいはい、支払いが10万ですねーーーーえっ?10万??えっ?聞き間違いですか?」
「10万になりますね~通常は2万円ですがね~。今回は伝説級なものですからね~特別にしないとダメなんですね~」
えっ!?っと高い値段に驚くが、ウルの為ならしょうがないと。支払いをする。
お金はあるけど、高い支払いに胸が痛い。
アシュハードはお金を受け取るとホクホク顔で「また宜しくなのね~」と帰っていく。その姿を見送りながらトホホと項垂れる椿であった。
エマも、こればかりはしょうがないわね。と慰めてくれるが、嫌な事は続くんだなと思う椿だった。
◇◇◇◇◇◇
「首輪をしているから、影に入らなくてもいいよ~」
ウルに話すと《分かりました》と尻尾をパタパタしている。喜んでいるのが丸わかりだ。
エマがギルドに用事があると言うので、依頼完了を提出する為 椿も一緒に行く事にした。
もちろん、ウルも一緒だ。
ーーーーそれがいけなかった。
首輪をしているからと、軽い気持ちでウルを外に出したままギルドに行ってしまった。
勿論。物珍しいフェンリル は注目の的、歩くたびにフェンリル を見ようと人集りが出来てしまったのだ。
二進も三進も行かない。こうなるとギルドに着くのが遅くなる。
「ウル、ごめん。あの建物までジャンプして?」
《かしこまりました》
椿とエマを背中に乗せ、少し先にある建物へと飛び移る。ギルド付近まで移動すると「ごめんね」とウルに謝り、また影の中に戻って貰った。エマにも「その方がいいわね」と疲れ気味に言われてしまった。
ギルドのドアを開けると、普段ガヤガヤしている室内が静まりかえり不気味だった。
不思議に思っていると「どうしたのかしらね~?」とエマが口を開く。「さぁ?」と返事しながら、受付に足を運ぶ。
「依頼完了です。お願いします」
受付嬢に渡すと顔色を変えて「少々お待ちください」と席を立ってしまった。
エマと顔を見合わせると、エマが目を見開いて椿の後ろを凝視する。ん?と思い振り返ると椿は体を固まらせた。
「やっと会えたね。ずっと、探していたんだよ?依頼完了って事はレオの件かな?では、私が依頼を出してもいいだろうか?」
甘いマスクで、椿に微笑むシュバーツ王子。
どうやら、椿の災難はまだ続くようだ。
【花言葉 : 椿(赤い花)控えめな素晴らしさ、謙虚な美徳】
【花言葉 : 椿(白い花)至上の愛らしさ、完全なる美しさ】
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