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「まぁ、ふざけるのもこの辺にして。職業は、良しとするが。レベルが∞など聞いたことも無いーーー神の愛し子って、それに。獣魔って……今もいるのか?」
未だに暖かい目で見られ、いたたまれない。
獣魔って、ウルの事?

「ウルですか?はい、影に入ってますけど…ウル。出てこれる?」
《はい。つばき様》
スーーっと影の中から出てきたウルに3人は仰け反る。
部屋の中に現れたウルに椿は、抱きつき モフモフを堪能する。
「はぁー、この毛並み。癒される~」

「ちょっちょっちょっと、つばきちゃんーーー獣魔って、フェンリルなの?」
「へっ?フェンリル?ウルは狼でしょ?確かに大きいと思うけど」
エマの質問にキョトンとするも、ウルが《つばき様。私は狼ですが、フェンリルとも呼ばれています》と話してくれた。
フェンリルが何なのか分からないが、気にしていなかったらギルマスが教えてくれた。

「フェンリル。狼の頂点に立つ絶対的王者、その姿を見た者は数少なく、魔法も使えて戦いが困難と知られているがーーーすごいな」
「ウル凄い!魔法も使えるの??後で見せてね!」
《畏まりました》
「やったね!あっ、もう用事が済みました?では、失礼しますね」
身分証明書は明日取りにくればいいと思い、ウルを影の中に戻って貰って部屋を出ようとする。
「あぁ、分かったーーーっておい!どさくさに、紛れて帰ろうとするな!!まだ話は終わってないぞ!」
「ちっ」
ダメだったかと、舌打ちするもドアの前にギルマスが回り込んで通せんぼをしている。

「そうよ~つばきちゃん、今後の事もあるから話を聞かないと~」
エマに言われ、渋々元の席に戻る。
ーーこれも、少年が余計な事をしたからだ。
っとイライラしながらも、顔には出さず出されたお茶?を飲む。

「ブーーッ!!ゲホッゴホッ・・・マッッッズ!!」
口に含んだもの、余りの不味さに吹き出してしまった。
青汁に味噌を入れた様な味。色合いが濃い緑だから、緑茶にしては?と思っていたら、想像以上だった。

「ゲホッ、口直しーーーっと、ゴクゴク、プハァーっ生き返る」
少年が食文化か違うからと、創造で料理・飲み物を出せる様にしてくれたのだ。これも便利屋の能力の1つ。
ジョッキにキンキンに冷えたビールを創り出し、一気に飲み込む椿。その様子をガッツリ見ていた3人は、呆然と立ち尽くす。

「あっ、別に昼間から飲みたいから出したわけでは無いですからね?」と弁解するも、ビールではなく創り出した事に対して驚いているのを椿は、気付いていなかった。

「何その能力!今、何を出したの!?」
「俺にも飲ませてくれ!!エールだろ?」
「素晴らしいです!!!他にも出せるんですか!?」

っと、一気に捲したてる3人に圧倒されながらも、目を泳がせながら「言っている意味がワカラナイナー、出されたお茶を飲んだダケダヨ」っとカタコトになりながら誤魔化すも、後の祭り。

「ふざけるな!ずるい!俺も飲みたい!!」
「そーよ!ガッツリ見たんだ、嘘を言うんじゃねぇぞ!!」
「ギルマス、今は職務中です。ーーーエマさん、男に戻ってますよ」
「あらん♡私ったら、うふふ」
「嫌だ嫌だ!俺だって昼間から飲みたいっっっ」
ドスっ「ぁあん?職務中。同じ事を言わせるんですか?」
「ーーはい」

凄いものを見てしまった。エマさん、あんなに綺麗で女性にしか見えないのに、まさかのおカマさんだったとは・・・
レイルは、うん。怒らせない様にしよう、あんな厳ついギルマスを黙らせるとは、静かな人が怒ると怖いとはこの事だ。

「えっと、今のは偶然でふぅ」
舌を噛んでしまった。落ち着け~~落ち着け~私!!
「うふふ。ちょっと用を思い出したので、また明日お話しますね」とそそくさと部屋を出ようとするが、エマにガシッと腕を掴まれた。はい、捕まりましたよーー。逃げられませんよーーー。

「ちょいちょい待て待て!美味しいご飯屋があるんだ。そこで、話を聞こうじゃないか。ギルマス、身分証明書の方宜しくな」
男らしく、ギルマスに伝えると椿の腕を組みながら部屋を出る。

ーーーまさかの男だったのね、人は見かけによらないな……

連れて行かれた先は沢山の人で、賑わう食堂があった。
案内された席は入り口から離れた場所。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
ピンクの髪に金色の瞳の少女が注文を取りに来た。

(可愛い子だな~)そう思いながら、おススメを聞く。
爽やかに注文をしているエマ。どこから見ても、美人のお姉さんだ。信じられないな……

衝撃を隠せなく、ガン見してしまう。
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