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第5話 決意を口にして強敵に立ち向かう様に胸打たれる視聴者達

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 金属音は徐々に徐々にと大きくなっていった。ボコボコした岩の通路を通っていくと奥から光が差してくる。
 焦らず落ち着いて、冷や汗を垂らしながらそっと近づいていくと――。

「――っ!?」

 そこには信じられないものが立っていた。

「……な、なんだこれ」

 俺の視界に飛び込んできたのは、大きな剣だった。
 柄の部分から刃先まで全てが真っ黒に染まっており、鍔には赤黒い宝石のような石が埋め込まれている。
 そして、俺の身長ほどもある全長。そして何より特徴的なのが、そんな大剣を軽々しく振るう全身真っ黒な鎧で覆われた大男。

 ……男だよな? あんな怪力で二メートル超えてるんだから男であってるよな?
 
 そう、大男がいた。
 そしてそんな大男が剣を振るっている相手、それは――同じく剣を振るっている俺と同じか少し小さいぐらいの少年。

 あれ? あいつなんか見たことあるぞ? ……あ!? 同じクラスの長谷山じゃねぇか!!

 そう、あいつは同じクラスで嫌味ったらしいほどにイケメンなイケメン顔の長谷山琉斗だ。
 うわー、まさかこんなところでクラスメイトに遭遇するとは思わなかった。

 あいつこんな所で何やってんだ?
 そうか! 品行方正が売りの真面目な学年一のモテ男の正体は、勉強もせずに放課後にダンジョンで剣を振るう危険人物だったのか!?

 もともとイケすかないやつだと思ってたが、まさかこんな危ない野郎だったとは。
 全く、まともな高校生は部活やってるか塾に通ってるか家で勉強してるかの時間帯だぞ。

 てか何? 剣? 一介の高校生風情が何でそんなもん振り回してんだ?
 ちょっとちょっと、どこで手に入れたか知らんが銃刀法違反じゃないか? そりゃモンスター相手には適用されないけども。確実にまともじゃないじゃん。
 怖っ、近寄らんとこ。

 俺はスマホのカメラを起動して、奴の危険行動の証拠を取る。

「はいチーズ。なんて言ったってこっからじゃ聞こえねえだろうが。へっへっへ、これで明日からのあいつの評判も変わるぜ。……あいて!?」

 何かが後頭部に直撃した。この金属みたいな硬さは? まさかと思ってそちらを見るとやっぱりドローンが頭にぶつかって来ていた。

<そんなアホな事して無いでこの状況で何ができるかをもっと考えろ。お前はどうしたいんだ? このまま割って入ってあのボス相手に戦うつもりか?>

<あん黒いの。多分やけど、最近発見されたS級モンスターの『ブラックナイト』や。下手なモンスターが束になっても全く歯が立たないぐらいヤバい相手やで。ドラゴンだって避けて通る程の相手や、ド素人のお前じゃ逆立ちしたって勝てへん>

<あの少年に加勢しようにも、恐らく君と彼では実力差があって足を引っ張るだけだ。個人的にはこのまま回れ右して家に帰るべきだ。そして今日のことは忘れて配信業からも足を洗うといい>

 いや洗うってなんだよ? 俺をチンピラみたいに言いやがって。
 とは言え、確かにこれは。ちょっとやばいかな~。命あってのもの種とも言うし、ここは引き下がるべきか?

 ……いや本当にそれでいいのか? 有名配信者も言っていた、初回でキメないと後追いに生き残る道は無い、と。

 俺はこの最下層まで視聴者の助けはあれど、実力でたどり着けた。
 だが、過去にそんな配信者は何人もいたはずだ。ちょっと目を引くだけで真新しさはない。

 ということは、ここでもし引き返ってしまったら……俺の配信業も注目されなくなって華麗なる人気配信者への道も未来永劫閉ざされることになるのでは?!

 ま、まずい。それだけは何としても阻止しなければ……!

 だけれども現実問題、あんなヤバい剣の打ち合いに入り込める隙は無いし。
 でも、有名になってモテたいし儲けたいし。

 引くか行くか? ……俺も男だ、道は一つだけと言い切ってやる!

「いや俺は行きますよ! ここでね、伝説的な活躍を見せて同接を毎回一千万人以上集めて、そしてゆくゆくは大金持ちになるんですぜ!」

 なんとかっこいい啖呵だろうか。これが自分の口から飛び出したと思うと、思わず武者震いすらしてしまうぜ!

<カッコイイ事言ったつもりかも知らないけども、勇気と蛮勇は違うよ?>

<いや、よく考えなくても別にかっこいい事は言ってないぞ。欲望をむき出しにしただけだぞ>

 何か言ってる気がするが気にしな~い。
 さぁ、いざ行かん!
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