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第17話 もし、未練が死んだなら
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俺が芽亜里の本当の姿に気づいてなかっただけで、本当は最初からあいつはクズ女だったんじゃないのか。あんなに楽しかった日々は全部嘘っぱちでしかなかったのか?
少なくとも今のあいつは男を手玉に取れると思ってる悪女を気取ってやがる。実際は男に騙されているだけにも気づかずに。俺はあんな女を好きになっていたのか。
この十年近くも、あの女の正体にも気づかずに愛していたのか。
胃がキリキリと痛む。ああ、イライラするな……!
俺は何もかもぶちまけそうになるのを必死に抑えて、奴らの不貞の証拠を集め続けた。ここで台無しにしてしまえば、協力してくれた裕や滝や先輩たちに申し訳が立たない。
そのまま奴らの後をつけていき、証拠をかき集め続けた。憎い相手のデートに着いて行くのはストレスがバカみたいに溜まるが仕方がない。
◇◇◇
気づけばすっかり日が傾き始めている。
今奴らと俺がいるのは木山の住むマンションの近くだ。
奴らはこのまま家に帰ってイチャイチャするつもりなんだろうな。
外資系で働く木山の両親だ、確実に毎日家にいるわけじゃないだろうから色々と都合がいいんだろうな。
「ねえ、そー君……」
芽亜里が甘えた声で木山に話しかける。
「どうしたんだい? 芽亜里」
「私ぃ、そー君と一緒にいたいなぁ」
「でも君の両親が許すかな? 大事な可愛い一人娘を男の元にやるだなんて」
「今日は友達の家に泊まるって言ってるから大丈夫だよ。明日は学校だけど、制服持ってきてるから」
あいつ、デートするにはカバンが大きいと思っていたがそういうことだったのか。
「君は頭がいいな、そういうことなら断るなんてできないよ。わかった、今日は朝まで一緒に過ごそうじゃないか」
「ほんと? やったぁ! そー君、だ~いっ好き!」
「でも一つだけ――君は殿島君という彼氏がいるのに、それでも僕と一緒にいたいんだね?」
奴の言葉にピンとくるものを感じて俺は、気を引き締めてボイスレコーダーを奴らに向けた。
「こー君の事は、勿論嫌いじゃない。けど……けどやっぱりそー君が一番好きなの! そー君がお願いするなら私、こー君とは別れる! また普通の幼馴染に戻ってみせるよ! 大丈夫っ、こー君だってきっと私の気持ちを分かってくれる。だって――こー君はいつも私の頼みを喜んで聞いてくれるもん! きっと大丈夫だよ!」
あの女、それが本音か!!
結局、あいつにとって俺は便利屋か何かでしか無かったって訳だ。
俺の中で最後に残っていたものがさらさらと音を立てて消え去っていく。そんな感覚に襲われた。
何の根拠も中身もない、大丈夫という言葉。薄っぺらが過ぎて思わず鼻で笑いそうになった。
芽亜里の言葉を聞いた木山は、大げさなぐらいに嬉しそうな顔をして芽亜里に抱きついた。
「ありがとう、芽亜里。君のその気持ちがとても嬉しい、僕も愛してるよ」
「うん、知ってる! だから、もっと愛して! 愛してるって言って! 愛してるって言ってぇ!!」
そうして二人、唇を重ねる。
人の少なくなった時間帯とはいえ、ギャアギャアと騒ぎやがって。
……だんだん馬鹿らしくなってきたな。どこかに残っていたあいつを好きだって気持ちが消え去ったからかもしれない。
でもそれでいい。――これで未練がなくなった。
ボイスレコーダーの電源を切ると、スマホのカメラを起動して奴らがマンションに入っていくのをしっかりと記録した。
これで準備は整った。……やっと始まる、俺の復讐劇が。
少なくとも今のあいつは男を手玉に取れると思ってる悪女を気取ってやがる。実際は男に騙されているだけにも気づかずに。俺はあんな女を好きになっていたのか。
この十年近くも、あの女の正体にも気づかずに愛していたのか。
胃がキリキリと痛む。ああ、イライラするな……!
俺は何もかもぶちまけそうになるのを必死に抑えて、奴らの不貞の証拠を集め続けた。ここで台無しにしてしまえば、協力してくれた裕や滝や先輩たちに申し訳が立たない。
そのまま奴らの後をつけていき、証拠をかき集め続けた。憎い相手のデートに着いて行くのはストレスがバカみたいに溜まるが仕方がない。
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今奴らと俺がいるのは木山の住むマンションの近くだ。
奴らはこのまま家に帰ってイチャイチャするつもりなんだろうな。
外資系で働く木山の両親だ、確実に毎日家にいるわけじゃないだろうから色々と都合がいいんだろうな。
「ねえ、そー君……」
芽亜里が甘えた声で木山に話しかける。
「どうしたんだい? 芽亜里」
「私ぃ、そー君と一緒にいたいなぁ」
「でも君の両親が許すかな? 大事な可愛い一人娘を男の元にやるだなんて」
「今日は友達の家に泊まるって言ってるから大丈夫だよ。明日は学校だけど、制服持ってきてるから」
あいつ、デートするにはカバンが大きいと思っていたがそういうことだったのか。
「君は頭がいいな、そういうことなら断るなんてできないよ。わかった、今日は朝まで一緒に過ごそうじゃないか」
「ほんと? やったぁ! そー君、だ~いっ好き!」
「でも一つだけ――君は殿島君という彼氏がいるのに、それでも僕と一緒にいたいんだね?」
奴の言葉にピンとくるものを感じて俺は、気を引き締めてボイスレコーダーを奴らに向けた。
「こー君の事は、勿論嫌いじゃない。けど……けどやっぱりそー君が一番好きなの! そー君がお願いするなら私、こー君とは別れる! また普通の幼馴染に戻ってみせるよ! 大丈夫っ、こー君だってきっと私の気持ちを分かってくれる。だって――こー君はいつも私の頼みを喜んで聞いてくれるもん! きっと大丈夫だよ!」
あの女、それが本音か!!
結局、あいつにとって俺は便利屋か何かでしか無かったって訳だ。
俺の中で最後に残っていたものがさらさらと音を立てて消え去っていく。そんな感覚に襲われた。
何の根拠も中身もない、大丈夫という言葉。薄っぺらが過ぎて思わず鼻で笑いそうになった。
芽亜里の言葉を聞いた木山は、大げさなぐらいに嬉しそうな顔をして芽亜里に抱きついた。
「ありがとう、芽亜里。君のその気持ちがとても嬉しい、僕も愛してるよ」
「うん、知ってる! だから、もっと愛して! 愛してるって言って! 愛してるって言ってぇ!!」
そうして二人、唇を重ねる。
人の少なくなった時間帯とはいえ、ギャアギャアと騒ぎやがって。
……だんだん馬鹿らしくなってきたな。どこかに残っていたあいつを好きだって気持ちが消え去ったからかもしれない。
でもそれでいい。――これで未練がなくなった。
ボイスレコーダーの電源を切ると、スマホのカメラを起動して奴らがマンションに入っていくのをしっかりと記録した。
これで準備は整った。……やっと始まる、俺の復讐劇が。
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