上 下
16 / 31

第16話 もし、能天気なクズ共を見つけたら

しおりを挟む
 この後の予定に悩んでいた時のことだ。

 遠くの方に見知った女が歩いていた、男を隣に連れて。

「ちょっと予定があるのを思い出した。悪いけど今日はここで解散ということで」

「そうなんですか? では引き止めるのは悪いですしわたし達は家にもどりましょうか、アーリさん」

「分かりました。では甲斗さん、お帰りの際はお気をつけて。私が言う事でもありませんが、近頃はまだ寒さも残っておりますのであまり遅くならない方がよろしいかと」

「ええ、ご忠告ありがとうございます。じゃあな。また今度どっかに遊びに行こうぜ、らいら」

「はい甲斗さま。ごきげんよう。……あ、でもその前に一つ」

 何かを思い出したような声を出すらいら。彼女は俺の袖を少し引っ張ってくる。
 何をして欲しいのか察した俺は顔を見合わせるように膝を曲げてしゃがみ込む。そんな俺の頬に、らいらは頬に口付けをして小さく笑う。
 そんならいらの頬は薄く赤くなっており、そんな彼女にドキっとしてしまった。

「それではわたし達はこれで。甲斗さま、今度はわたしの御屋敷にお出で下さい。二人っきりで過ごしてみたのです」

「まあお嬢様ったら、私はどうやらお邪魔虫みたいですね。では甲斗さん、今度こそ」

 二人は帰って行った。
 後ろ髪の引かれる思いだが、こればっかりは2人を巻き込むわけにもいかない。


 奴らに気づかれないように目立たないように近づいていく。
 会話が聞こえるぐらいに接近したら、念のために持っていたボイスレコーダーを起動する。

「私ぃ、そー君と出来てとっても嬉しいよ! だってやっと2人きりになれたんだから!」

「僕もだよ、芽亜里。ようやく君のことを独り占めできるんだからね」

「きゃあ、そー君ったらぁ! もう、そんなに私のこと好き?」

「もちろんさ。君は僕の全てなんだから、君が僕を好きでいてくれるならそのそれ以上に答えなくちゃ」

 無駄に聞こえのいい言葉を吐く男――木山。他の女にも同じことを言っているんだろうな。あの動画を見てなきゃ、その言葉ぐらいは信じられたかもしれないが。

 上辺の愛に酔わされた芽亜里はすっかり骨抜きになってやがる。
 元々、恋だ愛だと騒がしい女ではあった。それが俺に向いてる分には良かった。
 でも実際は、自分を好きだと言ってくれるなら誰でも良かったんだろう。いや、誰でもってことはないか。少なくとも顔が良くなくちゃ、どうせこの女は振り向かない。
 俺自身、見てくれがいいとまでは言わないが、それでも全く悪いとも思ってない。  
 あのクソ女にとっては、俺は最低ラインだったんじゃないか? 今思えばそんな感じがする。

 さっきまでの夢心地の気分とはうって変わって、また心の中がざわざわとし始めた。
 イラつく気持ちを抑え、奴らの有罪の証拠をかき集めるのに集中しなければ。

「でも、君とこうして楽しんでいると、殿島君に悪いね。いくら彼が君を放っておくような彼氏だからと言っても、素敵な君を独占出来るなんて少し嫉妬してしまうよ」

「うふふ、そぉんなことないよ? 今はそー君の彼女なんだよ? こー君の事も好きだけど、一番はそー君だから。彼とは幼馴染だから付き合っただけよ」

「君は男心を弄ぶのはうまいな。そういう女性は、輝けるものだよ。君のような女性が恋人で殿島君も幸せ者だ」

 ほざきやがって! 女を好き勝手にとっかえひっかえしてしている男が何を言うんだ!

 思ってもいないことをベラベラと。それに騙される芽亜里は馬鹿にも程がある。
 噂の事は教えたのに……。結局この様だ。
 ああ、ダメだ。これ以上聞いてると頭がおかしくなりそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悲しいことがあった。そんなときに3年間続いていた彼女を寝取られた。僕はもう何を信じたらいいのか分からなくなってしまいそうだ。

ねんごろ
恋愛
大学生の主人公の両親と兄弟が交通事故で亡くなった。電話で死を知らされても、主人公には実感がわかない。3日が過ぎ、やっと現実を受け入れ始める。家族の追悼や手続きに追われる中で、日常生活にも少しずつ戻っていく。大切な家族を失った主人公は、今までの大学生活を後悔し、人生の有限性と無常性を自覚するようになる。そんな折、久しぶりに連絡をとった恋人の部屋を心配して訪ねてみると、そこには予期せぬ光景が待っていた。家族の死に直面し、人生の意味を問い直す青年の姿が描かれる。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

学年一の美少女で自慢の幼馴染が親友に寝取られたので復讐します!+ 【番外編】

山形 さい
恋愛
優斗には学年一の美少女の自慢の幼馴染、玲がいた。 彼女とは保育園の頃に「大人になったら結婚しよ」と約束し付き合う優斗だったが。 ある日、親友の翔吾に幼馴染を寝取られている現場を目にする。 そこで、優斗は誓った。玲よりさらに可愛い女子と付き合って言おうと「お前とは結婚しない」と。

浮気した女は捨てられ地獄を味わう。浮気した女はいつ許してもらえますか?

バカやろう
恋愛
浮気した女は人生を棒に振り最後まで裏切った人から許される事だけを祈って生きていく……そんなお話。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

君と僕の一周年記念日に君がラブホテルで寝取らていた件について~ドロドロの日々~

ねんごろ
恋愛
一周年記念は地獄へと変わった。 僕はどうしていけばいいんだろう。 どうやってこの日々を生きていけばいいんだろう。

【完結】鏡の中の君へ ~彼女が死んだら他の男の子供を妊娠していた~

むれい南極
恋愛
恋人の加賀美朱里が交通事故で死亡した。通夜にて朱里の父親から、娘が妊娠していたと告げられる。その妊娠に覚えのなかった主人公の市原梓馬は、自分の恋人を妊娠させた男を探し始めた。

彼女の浮気相手からNTRビデオレターが送られてきたから全力で反撃しますが、今さら許してくれと言われてももう遅い

うぱー
恋愛
彼女の浮気相手からハメ撮りを送られてきたことにより、浮気されていた事実を知る。 浮気相手はサークルの女性にモテまくりの先輩だった。 裏切られていた悲しみと憎しみを糧に社会的制裁を徹底的に加えて復讐することを誓う。 ■一行あらすじ 浮気相手と彼女を地獄に落とすために頑張る話です(●´艸`)ィヒヒ

処理中です...