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第15話 殺意/歓喜
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「お久しぶりだ? 随分とご挨拶じゃねえか、俺を殺しかけて言う事がそれか」
「確実に仕留めたと思いました。ですからあれが別れの挨拶でしたが……こうして会うと上手な再開の言葉も思いつきませんね。しかしながら、よく生きてここまで来たものです。お互いの幸運を祝して、そうですね……言葉は思いつきませんが、再開のハグなどはいかがでしょうか?」
「ふざける余裕はあるみたいだな……っ」
残念ですね、決してふざけてなどいないのですが……彼は気に入らなかったようで。
私はこの神の祝福に感謝し、是非その身を抱きしめたいところなのですが。
しかし、本当に彼がここに現れるとは思いませんでした。
内心の興奮を顔に出さないようにするだけで精一杯ですよ。
ああ、サーライル。しかし君は今まで私に見せた事のない憤怒の睨みを披露してくれる。
全く知らない彼の表情を見れて、私は嬉しい限り。
今、この瞬間において彼は私だけに意識を向ける。私だけを見て、私だけに生の感情をぶつけてくれる。
神に祈りを捧げて来た私に対するご褒美と言って過言ではありませんね。
今、彼の頭の中には私の事しかない。素晴らしい……!
ある事を確認する為、質問を投げかけました。
「目的は復讐でしょうか? 私は何番目の復讐相手なのです?」
「喜べよ、お前でこの復讐劇はフィナーレだ。お前だけはトリに回さないと気が済まなかった。――どうして俺を裏切った? なあ兄弟!!」
――っ!!
体をゾクゾクが駆け巡る感覚、思わず酔いしれてしまいそうで……。
いけませんね、顔が赤くなりそうです。
しかしそうですか、彼女達は全員死にましたか。
という事はやはり、私だけが彼の”特別”だった。そう考えて問題無いのでしょう。
「ふふ、兄弟……兄弟ですか。ですがサーライル、私はあなたを兄弟だなんて思った事は無いのですよ。申し訳ございません」
「っ! そうかよ、わかっていたが……随分と薄情な奴だったみたいだ。あの時まで、俺はお前はいい奴だと思ってた。いつからそんな風になってんだ……!」
「ふふふっ」
残念ながら、私は君が思うような良い子では無かったのですよ。元々、ね。
ただ喜びを分かち合う兄弟では満足が出来無かった。
手に入れたかったのですよ。君の感情も人生も。だから私の手で死へと追いやった。
その人生を私の色で閉じる為に……!
「私は変わったつもりはありません、ただ君の前では自分を良く見せたかっただけです。好きな人には着飾って見せたいものでしょう?」
「ああそうかよ。俺もお前の事が好きだった、自慢だったぜ。――今は反吐が出る思いだけどな」
わかってはいましたが、好きのニュアンスがお互い違うようで……そこは非常に残念です。
ああ、どうして……君はその感情をラキナ”など”に向けていたのでしょう。
……あんな女。
だからこれは、私からちょっとした意地悪です。
「そういえば、君は知りませんでしたね」
「……何がだ? せめてもの情けで遺言代わりに聞いてやる」
「そう怖い事を言わないでください。何、ちょっとした世間話ですよ。実の所君とラキナが付き合うように仕向けたのは私です」
「は?」
「ちょっとした遊びですよ。いつか冗談だと伝えるつもりでした。丁度それがあの時になったのは偶然ですが。ああ、それと……彼女と私は何度も床を共にしていました。でも安心してください、お互い体だけの付き合いでした。……あ、申し訳ありません。そういえば君は彼女とキスまでしかした事が無いのでしたか。――これはつまらない事を言ってしまいました」
「――クアンッッ!!!」
彼がそれまでにない程に感情を爆発させ、首に掛けたペンダントを握り込みました。
そしてその両手に黒い籠手のようなものを纏うと私に殴りかかってくる。
同じくあの宝物の白い籠手を纏った腕で、私はその一撃を受け止めました。
伝わってくる衝撃――興奮して仕方がない。
視線だけで人を殺害出来てしまいそうになりそうな程の睨み。
(美しい……っ)
彼の殺意の篭もった視線で、私の体を火照って来ました。
あの目と視線を交わせた瞬間こそ、私にとって最高の喜びです。
「確実に仕留めたと思いました。ですからあれが別れの挨拶でしたが……こうして会うと上手な再開の言葉も思いつきませんね。しかしながら、よく生きてここまで来たものです。お互いの幸運を祝して、そうですね……言葉は思いつきませんが、再開のハグなどはいかがでしょうか?」
「ふざける余裕はあるみたいだな……っ」
残念ですね、決してふざけてなどいないのですが……彼は気に入らなかったようで。
私はこの神の祝福に感謝し、是非その身を抱きしめたいところなのですが。
しかし、本当に彼がここに現れるとは思いませんでした。
内心の興奮を顔に出さないようにするだけで精一杯ですよ。
ああ、サーライル。しかし君は今まで私に見せた事のない憤怒の睨みを披露してくれる。
全く知らない彼の表情を見れて、私は嬉しい限り。
今、この瞬間において彼は私だけに意識を向ける。私だけを見て、私だけに生の感情をぶつけてくれる。
神に祈りを捧げて来た私に対するご褒美と言って過言ではありませんね。
今、彼の頭の中には私の事しかない。素晴らしい……!
ある事を確認する為、質問を投げかけました。
「目的は復讐でしょうか? 私は何番目の復讐相手なのです?」
「喜べよ、お前でこの復讐劇はフィナーレだ。お前だけはトリに回さないと気が済まなかった。――どうして俺を裏切った? なあ兄弟!!」
――っ!!
体をゾクゾクが駆け巡る感覚、思わず酔いしれてしまいそうで……。
いけませんね、顔が赤くなりそうです。
しかしそうですか、彼女達は全員死にましたか。
という事はやはり、私だけが彼の”特別”だった。そう考えて問題無いのでしょう。
「ふふ、兄弟……兄弟ですか。ですがサーライル、私はあなたを兄弟だなんて思った事は無いのですよ。申し訳ございません」
「っ! そうかよ、わかっていたが……随分と薄情な奴だったみたいだ。あの時まで、俺はお前はいい奴だと思ってた。いつからそんな風になってんだ……!」
「ふふふっ」
残念ながら、私は君が思うような良い子では無かったのですよ。元々、ね。
ただ喜びを分かち合う兄弟では満足が出来無かった。
手に入れたかったのですよ。君の感情も人生も。だから私の手で死へと追いやった。
その人生を私の色で閉じる為に……!
「私は変わったつもりはありません、ただ君の前では自分を良く見せたかっただけです。好きな人には着飾って見せたいものでしょう?」
「ああそうかよ。俺もお前の事が好きだった、自慢だったぜ。――今は反吐が出る思いだけどな」
わかってはいましたが、好きのニュアンスがお互い違うようで……そこは非常に残念です。
ああ、どうして……君はその感情をラキナ”など”に向けていたのでしょう。
……あんな女。
だからこれは、私からちょっとした意地悪です。
「そういえば、君は知りませんでしたね」
「……何がだ? せめてもの情けで遺言代わりに聞いてやる」
「そう怖い事を言わないでください。何、ちょっとした世間話ですよ。実の所君とラキナが付き合うように仕向けたのは私です」
「は?」
「ちょっとした遊びですよ。いつか冗談だと伝えるつもりでした。丁度それがあの時になったのは偶然ですが。ああ、それと……彼女と私は何度も床を共にしていました。でも安心してください、お互い体だけの付き合いでした。……あ、申し訳ありません。そういえば君は彼女とキスまでしかした事が無いのでしたか。――これはつまらない事を言ってしまいました」
「――クアンッッ!!!」
彼がそれまでにない程に感情を爆発させ、首に掛けたペンダントを握り込みました。
そしてその両手に黒い籠手のようなものを纏うと私に殴りかかってくる。
同じくあの宝物の白い籠手を纏った腕で、私はその一撃を受け止めました。
伝わってくる衝撃――興奮して仕方がない。
視線だけで人を殺害出来てしまいそうになりそうな程の睨み。
(美しい……っ)
彼の殺意の篭もった視線で、私の体を火照って来ました。
あの目と視線を交わせた瞬間こそ、私にとって最高の喜びです。
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