上 下
12 / 16

第12話 友よ、再び

しおりを挟む
 今日でここに来て四日が経った。
 これまでに復讐したのは三人。それぞれ死体も処理した。
 そもそもこの街で誰が死んだなんて気にする人間もいやしないだろうが。

 今日で終わりにしてやる。

「次はいよいよお前だ――クアンっ!」

 俺を直接手に掛けたお前だけは最後に取っておいたぞ。

 ◇◇◇

『サーライル、君の助けが必要なんですよ。……私は一人の神に仕える者として無辜の民を悪鬼から守る役目があります。ですがそれは決してこの身一つでは為せないこと。この旅は、君と共に行くからこそ大きな意味がある。一緒に冒険をしませんか? よく知ってる君だからこそ、誰より頼りに出来るんです』

 村で一緒に育ったお前は、あの日俺にそう言った。


 お互いに親はおらず、孤児として一緒に育った俺とお前は血を分けたも同然の兄弟。

 そう思っていたの俺だけだったのか?


 孤児院の中でも生まれつき魔力の扱いが得意だったお前は、先生達のようになりたいって神に仕える戦士――モンクになった。

 対して、俺には得意ってもんがこれといってなかった。しいて言えば他人の仕事を率先して手助けして身に付いた筋肉と体力くらいだ。


 村の外じゃ化け物が人を襲うって聞かされて、それなのにモンクとなって救済の旅に出たいと言ったお前は誰より眩しかったさ。

 そんなお前に憧れて、俺に出来る範囲で旅の助けになるサポーターになって、人並みには粋がってみせた。

 女子と見間違えられる程に美しい見た目に育ったお前は、常に目立って、主に女性から声援を浴びていたな。

 それが羨ましくもあると同時に、誇らしくもあった。
 だってそうだ、俺達は兄弟も同然。

 身内の人間が認められて嬉しくないなんて事は無い。


 旅の途中、訪れた町で変わり種の美少女”ルロリア”と出会って、それで俺とルロリアは不思議と馬が合って旅の仲間にしたいって言った。

 ……俺は人を見る目が無かったぜ。
 その次に出会った”アモネ”にしても、”ラキナ”にしてもだ。

 もっと言えばクアン、一緒に育ったからってお前を信用し切っていた時点で俺の目は腐っていたも同然だったんだろうがな。


 それも今日で終わらせる。
 俺の悪縁――頭の中を埋め尽くす復讐心を全て、お前の血で洗い流す為にな!


 ◇◇◇

 街に来て奴らの動向を探ってる内に、クアンがここに来て毎日訪れる場所があるという事を知った。
 中心街から離れた場所、入り組んだ路地を掻い潜った先にある教会だ。

 といっても、とっくの昔に廃墟になってるらしいがな。

 本来一般人は立ち入り禁止だが、奴はモンクだ。つまり関係者として入ってもおかしい事はない。

 同じ理屈がアモネにも言えたが……来て初日にカジノに顔を出すような女だ。正直プリーストといってもそれほどの信仰心が本当にあったのか……、今となっては確かめようもないが。

 が、それはさておき。

 今は夕刻。
 元々人通りの少ないこの場所に、この時間帯だ。
 つまり今、ここら一体は俺と中に居るクアンしかいない。

 何が起こったって気づく人間は居ない。

 気合を入れ直し、ドアへと手を掛けた。



 中に入ると埃の被った椅子が並ぶ。
 それらの真ん中の通路の先、風化の目立つ彫像の前で膝をつく人間が居た。

 天窓の夕陽に照らされ、腰まである長い金の髪を輝かせながらその男――クアンは祈りを捧げていたようだ。

 これから自分の命を捧げる事になるとは……知りもしないだろうな。

「おや? どなたでしょう? 申し訳ありませんがこちらは現在、立ち入りを禁止しておりまして……」

 背後から迫る俺の気配に気づいたのか、奴は間違えて入った観光客にでも注意するかのような優しい声色で振り返り、そして俺の姿を視界に捉える。


「……ほう。これはこれは……っ。お久しぶりですね――サーライル」


 一瞬だけ、その切れ長の瞳を開いたかと思えば、しばらく会って無かった親友と再会したかのように――その美女の顔を笑みで満たし始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)

ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子 天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。 可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている 天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。 水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。 イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする 好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた 自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語

堕とされた悪役令息

SEKISUI
BL
 転生したら恋い焦がれたあの人がいるゲームの世界だった  王子ルートのシナリオを成立させてあの人を確実手に入れる  それまであの人との関係を楽しむ主人公  

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない

迷路を跳ぶ狐
BL
 自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。  恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。  しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

異世界転生して病んじゃったコの話

るて
BL
突然ですが、僕、異世界転生しちゃったみたいです。 これからどうしよう… あれ、僕嫌われてる…? あ、れ…? もう、わかんないや。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 異世界転生して、病んじゃったコの話 嫌われ→総愛され 性癖バンバン入れるので、ごちゃごちゃするかも…

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

イケメンに惚れられた俺の話

モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。 こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。 そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。 どんなやつかと思い、会ってみると……

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

処理中です...