夏凛の大冒険

ヒカリと影

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あなたのおかげ

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タクと暮らし始めて3週間と2日。
「ねぇねぇ、時が来たらっていつ?いつなの?」
「またその話?ずっと言ってるよな」
「だって全然教えてくれないんだもん、ずっと気になってるもんあれからあの夢ばっかり見るし言ってくれなきゃ寂しいよ」
「っ…てかさ、そろそろ家に帰りたいなとか思わねーの?」
「話変えたな、思わないよ。逆に誰が帰りたいと思う?あんな冷血ジジイとババアのもとに」
「それは…(笑)第一、何も言えずに来ちゃったわけじゃん、その冷血なジジイとババアさんも探してるんじゃないか?」
「探すわけないね!!」
「そうか。でも家族は大切にしろよ」
「…うん。わかってるよ」
「それから、今日から一緒にベッド入らせて」
「え!何で?結構恥ずかしいんだけど…」
「お前、俺に風邪引いてほしいの?ソファで寝るのって寒いんだけど」
「…(もういいやっ)わかったよ。今までごめんね~」
「わかればよし。それで夏凛がまたあの夢見て泣いたら俺が側にいてあげるから」 
「なっ、なんだとーっ!?いてあげるって何、いてあげるって!!いるからにしないとベッドから追い出す」
「これ、俺のベッドなんだけど…?はいはい、夏凛ちゃんが泣いたら俺が側にいますからね」
「それでよし!」
そう言った後、不安を抱えていた自分に対して、タクがさりげない気遣いをしてくれていたことに気付いて、涙が出そうになった。子供っぽい自分にも嫌気が募る。それでもやっぱり、こんな子供っぽい自分の相手をしてくれて本当に嬉しいと思っている。
「タク、ありがとう、あなたのおかげで私の世界が変わったんだよ」
「……………………」
タクはもう寝てしまったのだろうか。返事がない。夏凛は、タクが聞いていなかったことにホッとしたと同時に、少し残念に思った。
そう思いながら、夏凛は眠りについた。またまた夏凛は、タクの耳がほんのりと赤く染まるのにも気付かなかったのである。
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