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第五章『思いはひとつ!』
衝撃的な告白
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「俺の真の姿というものを見せてやろう」
マスターがそう言うと、みるみるマスターの姿が変化していく。その姿には、場に居た誰もが驚かずにはいられなかった。
驚かなかったのは、それを知っているルナルとエウロパ、それとユグドラシルの精霊たるフォルの三人だけだった。
やがてそこには、巨大なドラゴンが姿を現したのだ。このドラゴンこそ、マスターの真の姿なのである。
「俺こそが霊峰シッタの主、マスタードラゴンである」
マスターの咆哮ひとつで、辺り一帯に突風が起きる。すると、奥で交戦しているアンデッドたちが、咆哮に乗った聖なる力によってさらさらと砂へと変わっていってしまった。
「ちっ、誰だ。俺様の活躍を邪魔するものは……」
そう言いながら視線を向けたイフリートは、思わず固まってしまっていた。
「ば、バカな。なぜマスタードラゴンがこんなところに!」
イフリートですら慌てる相手、それがマスタードラゴンなのである。
「イフリート、どうしたのですか?」
思わず気になってしまうルル。
「小娘よ、あれを見ろ」
「あれ?」
イフリートに言われて視線を向けるルル。そこに居た大きなドラゴンに思わず驚いてしまう。
「な、何なんですか!?」
「っだよ、うるさいな、がきんちょ」
残っているアンデッド相手に戦っていたセインが文句を言っている。
「セインさん、そんな事言ってる場合ですか。ドラゴンですよ、ドラゴン。しかもトールさんよりもさらにものすごく大きな奴です」
「ああ? っておい、マジででけぇ……」
顔を向けたセインは、マスタードラゴンの姿を見て黙り込んでしまった。
アンデッド以外の全員が、動きを止めてマスタードラゴンを見上げている。その動いているアンデッドたちは、もう一度放たれたマスタードラゴンの咆哮で土へと還っていった。
「まったく、俺が出払っている間に、好き勝手に暴れてくれたようだな。魔族というのは油断も隙もないようだな」
マスターが文句を言っているが、それに対してエウロパとルナルの二人は呆れてものが言えなかった。
「マスター様、ずっとシッタを留守にされて何を仰るのですか。ハンターの真似事などされるものですから、こちらは仕事を押し付けられて大変でしたのですが?
額に手を当てながら文句を言うエウロパ。それに対して、マスターはガハハとのんきに笑っていた。まったく、少しは反省してもらいたいものである。
「バカな。魔族の監視役だというマスタードラゴンが、なぜ現役の魔王であるルナルに肩入れをするというのだ」
そのやり取りに割り込むように、ディランが大声で叫ぶ。ディランにとっては、マスタードラゴンというのはそのようなイメージを持つものらしい。
ディランの叫びを聞くと、マスターはドラゴンの姿から人間の姿へと戻る。
そして、ディランへと嘲笑の笑みを浮かべる。
「俺がいつから魔族の敵だと認識していた? 俺が魔族に敵対するのは秩序を乱すからだ。だが、ルナルにはそういうところはないし、むしろ興味を引かれた。だから、こいつを引き取ってうちで面倒を見ていたんだよ」
「ば、バカな……」
マスターの発言に、思わず驚いて身を引いてしまうディラン。そのくらいに、マスタードラゴンに対する偏見を持っていたようだった。
「そのような戯言、信じられるものか!」
剣を握ってマスターへと斬りかかるディラン。
「ふん!」
だが、マスターが気合いを入れただけで、その剣はマスターを捉えど服すらも傷付けられなかった。
信じられないディランは剣を振るうが、どんなに頑張ってもマスターに傷ひとつ入れる事は叶わなかった。
「もうやめて、ディラン様!」
「マイア……」
やけになっているディランの動きが止まる。それは他でもない、ディランがよく知る人物からの悲痛な訴えだったからだ。
そう、ディランの元メイドであるマイアだ。彼女はどういうわけか、魔族となって今も生きているのである。
「マイア、お前は俺の専属メイドだっただろう。なぜ人間であるはずのお前が今も生きているんだ。この偽者め、たたっ斬ってくれる!」
もうやけくそ気味になっていたディランは、マイアの事を偽者だと言い切って彼女に襲い掛かる。だが、それはあえなく間に割り込んだエウロパとフォルによって防がれてしまった。
「やれやれ、自暴自棄の八つ当たりとは、実にいただけんな」
「まったくです。それと、この事に関しては私にも思い当たるところはございます。話を聞きたくば、剣を収めておとなしく投降する事をお勧めします」
「うるさい、黙れ!」
二人の忠告にも耳を貸さないディラン。これでもかと剣を振るい続けている。
「フォル様、お願いできますか?」
「分かった」
呆れたエウロパがフォルに頼むと、植物の蔦がディランを縛り上げてしまった。
「何をする。離せ!」
ディランが暴れるものの、蔦はまったくびくともしない。
「よせ。わしの力を込めた魔法の蔦じゃ。いくら力の発揮が不十分とはいえ、簡単にはちぎれぬぞ?」
フォルは睨みつけるようにしながらディランへ忠告するが、まったく聞く耳を持っていない。
「マイアさんの魔族化の件ですが、これには私の方が心当たりがあります。とにかく聞いてくれませんかね」
「……なんだと」
エウロパのこの言葉で、ようやく動きが止まるディラン。
一体エウロパは何を知っているというのだろうか。そして、その方法とは一体何なのだろうか。
マスターがそう言うと、みるみるマスターの姿が変化していく。その姿には、場に居た誰もが驚かずにはいられなかった。
驚かなかったのは、それを知っているルナルとエウロパ、それとユグドラシルの精霊たるフォルの三人だけだった。
やがてそこには、巨大なドラゴンが姿を現したのだ。このドラゴンこそ、マスターの真の姿なのである。
「俺こそが霊峰シッタの主、マスタードラゴンである」
マスターの咆哮ひとつで、辺り一帯に突風が起きる。すると、奥で交戦しているアンデッドたちが、咆哮に乗った聖なる力によってさらさらと砂へと変わっていってしまった。
「ちっ、誰だ。俺様の活躍を邪魔するものは……」
そう言いながら視線を向けたイフリートは、思わず固まってしまっていた。
「ば、バカな。なぜマスタードラゴンがこんなところに!」
イフリートですら慌てる相手、それがマスタードラゴンなのである。
「イフリート、どうしたのですか?」
思わず気になってしまうルル。
「小娘よ、あれを見ろ」
「あれ?」
イフリートに言われて視線を向けるルル。そこに居た大きなドラゴンに思わず驚いてしまう。
「な、何なんですか!?」
「っだよ、うるさいな、がきんちょ」
残っているアンデッド相手に戦っていたセインが文句を言っている。
「セインさん、そんな事言ってる場合ですか。ドラゴンですよ、ドラゴン。しかもトールさんよりもさらにものすごく大きな奴です」
「ああ? っておい、マジででけぇ……」
顔を向けたセインは、マスタードラゴンの姿を見て黙り込んでしまった。
アンデッド以外の全員が、動きを止めてマスタードラゴンを見上げている。その動いているアンデッドたちは、もう一度放たれたマスタードラゴンの咆哮で土へと還っていった。
「まったく、俺が出払っている間に、好き勝手に暴れてくれたようだな。魔族というのは油断も隙もないようだな」
マスターが文句を言っているが、それに対してエウロパとルナルの二人は呆れてものが言えなかった。
「マスター様、ずっとシッタを留守にされて何を仰るのですか。ハンターの真似事などされるものですから、こちらは仕事を押し付けられて大変でしたのですが?
額に手を当てながら文句を言うエウロパ。それに対して、マスターはガハハとのんきに笑っていた。まったく、少しは反省してもらいたいものである。
「バカな。魔族の監視役だというマスタードラゴンが、なぜ現役の魔王であるルナルに肩入れをするというのだ」
そのやり取りに割り込むように、ディランが大声で叫ぶ。ディランにとっては、マスタードラゴンというのはそのようなイメージを持つものらしい。
ディランの叫びを聞くと、マスターはドラゴンの姿から人間の姿へと戻る。
そして、ディランへと嘲笑の笑みを浮かべる。
「俺がいつから魔族の敵だと認識していた? 俺が魔族に敵対するのは秩序を乱すからだ。だが、ルナルにはそういうところはないし、むしろ興味を引かれた。だから、こいつを引き取ってうちで面倒を見ていたんだよ」
「ば、バカな……」
マスターの発言に、思わず驚いて身を引いてしまうディラン。そのくらいに、マスタードラゴンに対する偏見を持っていたようだった。
「そのような戯言、信じられるものか!」
剣を握ってマスターへと斬りかかるディラン。
「ふん!」
だが、マスターが気合いを入れただけで、その剣はマスターを捉えど服すらも傷付けられなかった。
信じられないディランは剣を振るうが、どんなに頑張ってもマスターに傷ひとつ入れる事は叶わなかった。
「もうやめて、ディラン様!」
「マイア……」
やけになっているディランの動きが止まる。それは他でもない、ディランがよく知る人物からの悲痛な訴えだったからだ。
そう、ディランの元メイドであるマイアだ。彼女はどういうわけか、魔族となって今も生きているのである。
「マイア、お前は俺の専属メイドだっただろう。なぜ人間であるはずのお前が今も生きているんだ。この偽者め、たたっ斬ってくれる!」
もうやけくそ気味になっていたディランは、マイアの事を偽者だと言い切って彼女に襲い掛かる。だが、それはあえなく間に割り込んだエウロパとフォルによって防がれてしまった。
「やれやれ、自暴自棄の八つ当たりとは、実にいただけんな」
「まったくです。それと、この事に関しては私にも思い当たるところはございます。話を聞きたくば、剣を収めておとなしく投降する事をお勧めします」
「うるさい、黙れ!」
二人の忠告にも耳を貸さないディラン。これでもかと剣を振るい続けている。
「フォル様、お願いできますか?」
「分かった」
呆れたエウロパがフォルに頼むと、植物の蔦がディランを縛り上げてしまった。
「何をする。離せ!」
ディランが暴れるものの、蔦はまったくびくともしない。
「よせ。わしの力を込めた魔法の蔦じゃ。いくら力の発揮が不十分とはいえ、簡単にはちぎれぬぞ?」
フォルは睨みつけるようにしながらディランへ忠告するが、まったく聞く耳を持っていない。
「マイアさんの魔族化の件ですが、これには私の方が心当たりがあります。とにかく聞いてくれませんかね」
「……なんだと」
エウロパのこの言葉で、ようやく動きが止まるディラン。
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