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第五章『思いはひとつ!』
それぞれの戦い
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ディランとルナルが睨み合う中、セインやルルはアンデッドを、アカーシャとソルトは魔族と対峙している。猫人メイド三姉妹とフォルはそのみんなを補佐するといった感じの陣形になっている。
「あなたたちの思い通りにはさせません。いきます、フレイムクラスター! アーンド、ファイアーボール!」
迫りくるアンデッドたちにルルが炎の魔法をお見舞いする。
「グギャアアッ!」
アンデッドたちが悲鳴を上げるが、あまり効いていないようだ。さすがにディランの力によって蘇っただけに、多少なりと魔法に耐性があるようである。
「おい、がきんちょ。あまり効いてないみたいだぞ」
「むむむ……」
セインが叫ぶと、ルルは悔しそうに唸っている。
「妹よ、精霊と契約したのであろう? 呼び出してみてはどうかな?」
「あっ、そうか!」
蔓を使ってアンデッドや魔族の動きを阻害しているフォルが、ルルにアドバイスを送る。それを聞いたルルは忘れていたのか、驚いたような表情をしていた。
そして、すぐに杖を構えて詠唱に入る。
「おいでませ、イフリート!」
その声と同時に、大きな火柱が上がる。そして、直後に炎をまとった屈強な男性が現れた。突如として現れた炎の塊に、イプセルタの兵士たちは思わず身構えてしまう。
「ふははははっ、この俺の力が必要になったか」
高笑いと同時にルルに視線を向けるイフリート。その視線にはイプセルタの兵士の様子はまったく入っていないようである。
「さて、この俺は何をすればいいのだ?」
ずいっとルルに顔を近付けるイフリート。見るからに暑苦しい。しかし、ルルはまったくそれには動じていなかった。
「あのアンデッドたちを焼き払って下さい」
「ううん? なんだ、この亡者どもを焼けばいいのか。その程度でこの俺を呼ぶとはな」
ルルから言われた事に、怪訝な表情を浮かべるイフリート。
「ただのアンデッドなら呼び出しませんでしたよ。私の炎の魔法が通じないんですから、しょうがなくです」
そのイフリートに対して、頬を膨らませて抗議をするルルである。ユグドラシルの精霊とはいえ、生まれて10年程度では年相応の子どもっぽさが出てしまうようだった。
それに対して、先輩格であるイフリートはにやりと笑みを浮かべていた。
「そうかそうか。あの樹の精霊とはいえ、生まれたてではうまく力が扱えぬか」
そして、大笑いをすると両手に炎をまとってアンデッドたちを見据えている。
「俺が精霊の力というものを見せてやろうではないか。さあ、哀れな亡者どもよ、俺の炎で灰燼と帰すがよいわ!」
イフリートは拳をがしりと付き合わせると、そのままアンデッドの群れへと突っ込んでいく。
「おらぁっ!!」
イフリートが拳を一振りするだけで、何十体ものアンデッドが燃え上がっていく。
「すげえ……。俺も負けてられないぜ!」
イフリートが豪快にアンデッドを吹き飛ばすものだから、刺激されたセインも動き出す。
「いくぜっ! 斬破!」
剣を振って衝撃波を飛ばす。普通ならなんて事のない衝撃波である。だが、セインの持っている剣は『破邪の剣』といって魔族やアンデッドに対して特効を持つ武器だ。
セインから放たれた衝撃波に触れたアンデッドたちは、脆くも崩れ去っていったのだ。
「すごい……。これがハンターたちの力なのか」
ただ見守る事しかできないイプセルタ兵である。
「お前たち、何をぼさっとしている。それでも誇りあるイプセルタの兵か! 彼らの援護をするのだ!」
将軍が奮い立たせる。
いくらハンターが参戦しているとはいっても、状況的には多勢に無勢。この状況に指をくわえて見ているだけというのは、大国の兵士としてのプライドが許さないのだ。
アンデッドはイフリートが引き受けてくれてはいるものの、魔族の方はアカーシャとソルトの二人だけである。どうしても抜けてくる魔族が出てくるのだ。
「食い止めろ! 城へ入れさせるな!」
将軍の号令で歩兵隊が魔族へと向かっていく。
「ふん、軽いな」
だが、軽く拳を振るわれただけで吹き飛んでしまう。
「それっ」
だが、吹き飛んだ兵士たちは、フォルがしっかりと植物を使って受け止めていた。
「やれやれ、ここは私に任せて、お前たちは暴れてきた方がいいのではないかな?」
兵士たちが簡単にやられた状況に、フォルは猫人のメイドたちに声を掛けていた。
「わっかりましたにゃーっ」
すると、暴れたくて仕方なかったミーアが真っ先に動き出す。
「あっ、こら、ミーア」
「仕方ありませんね。フォル様、よろしくお願い致します」
「うむ、任された」
ミレルがそれを追いかけ、フォルに頭を下げた上でミントも動き出した。
「はっ、魔法も使えねえ猫人ごときがしゃらくせえ!」
ミントたちを迎え撃つ魔族があざ笑っている。
次の瞬間、その魔族は炎に包まれていた。
「誰が、魔法が使えないですって?」
ミレルが鋭い目で睨んでいる。
「本当に、固定概念にとらわれていますと……、早死にいたしますよ」
炎の包まれた魔族に、ミントの暗器が突き刺さる。
「どーんっ!」
とどめのようにミーアが頭上から蹴りをお見舞いすると、魔族はあえなくその場に崩れ落ちてしまった。
「さて、たっぷりとお礼をしてあげねばなりませんね。ルナル様への裏切りと、私への仕打ちに対する……ね」
ミントの冷たい視線がディランへと向けられたのだった。
「あなたたちの思い通りにはさせません。いきます、フレイムクラスター! アーンド、ファイアーボール!」
迫りくるアンデッドたちにルルが炎の魔法をお見舞いする。
「グギャアアッ!」
アンデッドたちが悲鳴を上げるが、あまり効いていないようだ。さすがにディランの力によって蘇っただけに、多少なりと魔法に耐性があるようである。
「おい、がきんちょ。あまり効いてないみたいだぞ」
「むむむ……」
セインが叫ぶと、ルルは悔しそうに唸っている。
「妹よ、精霊と契約したのであろう? 呼び出してみてはどうかな?」
「あっ、そうか!」
蔓を使ってアンデッドや魔族の動きを阻害しているフォルが、ルルにアドバイスを送る。それを聞いたルルは忘れていたのか、驚いたような表情をしていた。
そして、すぐに杖を構えて詠唱に入る。
「おいでませ、イフリート!」
その声と同時に、大きな火柱が上がる。そして、直後に炎をまとった屈強な男性が現れた。突如として現れた炎の塊に、イプセルタの兵士たちは思わず身構えてしまう。
「ふははははっ、この俺の力が必要になったか」
高笑いと同時にルルに視線を向けるイフリート。その視線にはイプセルタの兵士の様子はまったく入っていないようである。
「さて、この俺は何をすればいいのだ?」
ずいっとルルに顔を近付けるイフリート。見るからに暑苦しい。しかし、ルルはまったくそれには動じていなかった。
「あのアンデッドたちを焼き払って下さい」
「ううん? なんだ、この亡者どもを焼けばいいのか。その程度でこの俺を呼ぶとはな」
ルルから言われた事に、怪訝な表情を浮かべるイフリート。
「ただのアンデッドなら呼び出しませんでしたよ。私の炎の魔法が通じないんですから、しょうがなくです」
そのイフリートに対して、頬を膨らませて抗議をするルルである。ユグドラシルの精霊とはいえ、生まれて10年程度では年相応の子どもっぽさが出てしまうようだった。
それに対して、先輩格であるイフリートはにやりと笑みを浮かべていた。
「そうかそうか。あの樹の精霊とはいえ、生まれたてではうまく力が扱えぬか」
そして、大笑いをすると両手に炎をまとってアンデッドたちを見据えている。
「俺が精霊の力というものを見せてやろうではないか。さあ、哀れな亡者どもよ、俺の炎で灰燼と帰すがよいわ!」
イフリートは拳をがしりと付き合わせると、そのままアンデッドの群れへと突っ込んでいく。
「おらぁっ!!」
イフリートが拳を一振りするだけで、何十体ものアンデッドが燃え上がっていく。
「すげえ……。俺も負けてられないぜ!」
イフリートが豪快にアンデッドを吹き飛ばすものだから、刺激されたセインも動き出す。
「いくぜっ! 斬破!」
剣を振って衝撃波を飛ばす。普通ならなんて事のない衝撃波である。だが、セインの持っている剣は『破邪の剣』といって魔族やアンデッドに対して特効を持つ武器だ。
セインから放たれた衝撃波に触れたアンデッドたちは、脆くも崩れ去っていったのだ。
「すごい……。これがハンターたちの力なのか」
ただ見守る事しかできないイプセルタ兵である。
「お前たち、何をぼさっとしている。それでも誇りあるイプセルタの兵か! 彼らの援護をするのだ!」
将軍が奮い立たせる。
いくらハンターが参戦しているとはいっても、状況的には多勢に無勢。この状況に指をくわえて見ているだけというのは、大国の兵士としてのプライドが許さないのだ。
アンデッドはイフリートが引き受けてくれてはいるものの、魔族の方はアカーシャとソルトの二人だけである。どうしても抜けてくる魔族が出てくるのだ。
「食い止めろ! 城へ入れさせるな!」
将軍の号令で歩兵隊が魔族へと向かっていく。
「ふん、軽いな」
だが、軽く拳を振るわれただけで吹き飛んでしまう。
「それっ」
だが、吹き飛んだ兵士たちは、フォルがしっかりと植物を使って受け止めていた。
「やれやれ、ここは私に任せて、お前たちは暴れてきた方がいいのではないかな?」
兵士たちが簡単にやられた状況に、フォルは猫人のメイドたちに声を掛けていた。
「わっかりましたにゃーっ」
すると、暴れたくて仕方なかったミーアが真っ先に動き出す。
「あっ、こら、ミーア」
「仕方ありませんね。フォル様、よろしくお願い致します」
「うむ、任された」
ミレルがそれを追いかけ、フォルに頭を下げた上でミントも動き出した。
「はっ、魔法も使えねえ猫人ごときがしゃらくせえ!」
ミントたちを迎え撃つ魔族があざ笑っている。
次の瞬間、その魔族は炎に包まれていた。
「誰が、魔法が使えないですって?」
ミレルが鋭い目で睨んでいる。
「本当に、固定概念にとらわれていますと……、早死にいたしますよ」
炎の包まれた魔族に、ミントの暗器が突き刺さる。
「どーんっ!」
とどめのようにミーアが頭上から蹴りをお見舞いすると、魔族はあえなくその場に崩れ落ちてしまった。
「さて、たっぷりとお礼をしてあげねばなりませんね。ルナル様への裏切りと、私への仕打ちに対する……ね」
ミントの冷たい視線がディランへと向けられたのだった。
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