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第五章『思いはひとつ!』
フォルの秘技
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ミレルとミーアの姉であるミントを無事に元に戻す事ができたルナルたち。
ミントが命令を掛けると、アイオロスが戦っていた魔物たちがおとなしくなった。
「驚きましたね。ミントの一言でおとなしくなりましたよ」
「おい、何なんだよ。急に静かになりやがったぞ?!」
魔物を一方的に殴り飛ばしていたアイオロスが驚いている。
「おい、どうなってるんだ。俺は戦いてえんだよ!」
「もう終わりました。ひとまずこっちにで話を聞きましょう」
「ああっ?!」
不満たっぷりなアイオロスの視線にも、ルナルはまったく動じない。さすがは魔王である。
結局ルナルの視線に勝てず、アイオロスはおとなしくなったのだった。
「それにしても、これだけの魔物をすべておとなしくさせるとは……」
「実は、私に無理について来ていただいた魔物たちなのです。なので、私の命令はちゃんと聞いて下さいます。この子たちは今回の事には反対しておりましたのでね」
ミントは近くの魔物を撫でている。撫でられた魔物は嬉しそうに目を細めている。ミントに懐いているからこそ、魔物たちはそばを離れなかったのだ。
「それはそうとして、どうしてフォル様がこちらに? 還らずの森から出られないのではなかったのですか?」
ミントの様子を見ていたルナルが本題に切り込んでいく。
ルナルからこの疑問をぶつけられたフォルは、一瞬驚いたような表情をしていたが、すぐさまにやりと不敵に笑った。
「それはのう、あそこに理由があるんじゃわい」
そう言いながら、フォルは魔物の一部を指差した。そこには植物系の魔物の姿があったのだ。
「この子たち、リビングツリーたちがどうかされたのでしょうか」
フォルの行動を見ていたミントが、一度植物系の魔物に目を向けてから、再びフォルを見る。
すると、リビングツリーと呼ばれた植物系の魔物たちが一目散に走って来て、フォルに対して跪いた。思ったより移動が速い。
「こやつらは、わしが紛れさせておいた眷属ぞ。万が一に備えて、わしが還らずの森以外で活動できるようにするためのな」
フォルの告白に、ルナルたちは驚きが隠せなかった。
「何を驚いておるのじゃ。わしはこれでも、世界樹の精霊ユグドラシルの分体ぞ? マスタードラゴンまでとはいかぬが、それなりに察知する能力は持っておるのじゃ。あの妹分とて、そういう力は持っておるんじゃからな」
「精霊というものを甘く見ていましたよ……」
フォルに説教じみた説明をされて、ルナルは跪いて頭を下げていた。謝罪をしているようだった。
「まあよい。信用できるお前さんたちだから、詳しく話をしようではないか」
というわけで、フォルによる森の外へ出てこられた理由の説明が始まった。
「こやつの体には、わしの魔力を凝縮した種というものが植え付けられておる。これによってこやつらが還らずの森の魔物だという証明になるのじゃよ」
説明を聞くルナルたち。
「それで、その魔力をたどれば、わしはこのようにその場に移動できるというわけじゃな。とはいえ、初めて使ったがゆえに心配だったのじゃがの」
そう言い切ってフォルは笑っていた。
説明を聞いて納得のしたルナルだったが、突然、別の心配をし始めていた。
「私たちはここでのんびりしていていいのでしょうか?」
そう、ディランの動向が気になり始めたのだ。だが、これにはミントとフォルが否定的だった。
「いえ、このままでよろしいかと思います。そもそも、ディランの狙いは私を捨て駒にして注意を引き、イプセルタに奇襲を仕掛ける作戦でございましたから」
「そういう事じゃ。わしも奴の作戦の事はそこな魔物を通じて知っておったからのう。じゃから、こうやってのんびり説明ができるというわけじゃよ」
この二人だけが実に冷静だった。
「それにじゃ、そこの猫人が慣れん魔法の連発で疲弊しておるのじゃから、休息は必要じゃろうて」
フォルがミレルを指し示している。その姿を見て、ルナルもようやく冷静に慣れたようだった。
「そうですね。ミントをつけるために無茶をさせましたからね。そうしましょうか」
ルナルがそう言うと、フォルが指示してリビングツリーの1体が根元を椅子に変化させる。そこへミレルを座らせてしばらく休む事にした。
「そこな五色龍、おぬしも人型になってくれぬか?」
「ああ? 俺に指図する気か?」
フォルの呼び掛けにアイオロスがキレかかっている。急な事もあってか、それがアイオロスの機嫌を損ねたようだった。
「ほう……、世界樹の精霊の分体である我に逆らうか。この若いドラゴンは世間を知らなすぎるな」
フォルは呆れながらアイオロスを見ている。それに対してアイオロスは今にも攻撃を仕掛けそうな雰囲気を漂わせていた。
「アイオロス殿、今は無駄な体力を使うべきではありません。ディランの企みを完全に潰すためにも、しっかりと休息を取りましょう」
「……ちっ、分かったよ」
ルナルが言うとようやくアイオロスはおとなしくなった。
(ディラン……。あなたの思う通りには、絶対させませんからね)
ミレルの回復を街ながら、ルナルは改めて心に誓うのだった。
ミントが命令を掛けると、アイオロスが戦っていた魔物たちがおとなしくなった。
「驚きましたね。ミントの一言でおとなしくなりましたよ」
「おい、何なんだよ。急に静かになりやがったぞ?!」
魔物を一方的に殴り飛ばしていたアイオロスが驚いている。
「おい、どうなってるんだ。俺は戦いてえんだよ!」
「もう終わりました。ひとまずこっちにで話を聞きましょう」
「ああっ?!」
不満たっぷりなアイオロスの視線にも、ルナルはまったく動じない。さすがは魔王である。
結局ルナルの視線に勝てず、アイオロスはおとなしくなったのだった。
「それにしても、これだけの魔物をすべておとなしくさせるとは……」
「実は、私に無理について来ていただいた魔物たちなのです。なので、私の命令はちゃんと聞いて下さいます。この子たちは今回の事には反対しておりましたのでね」
ミントは近くの魔物を撫でている。撫でられた魔物は嬉しそうに目を細めている。ミントに懐いているからこそ、魔物たちはそばを離れなかったのだ。
「それはそうとして、どうしてフォル様がこちらに? 還らずの森から出られないのではなかったのですか?」
ミントの様子を見ていたルナルが本題に切り込んでいく。
ルナルからこの疑問をぶつけられたフォルは、一瞬驚いたような表情をしていたが、すぐさまにやりと不敵に笑った。
「それはのう、あそこに理由があるんじゃわい」
そう言いながら、フォルは魔物の一部を指差した。そこには植物系の魔物の姿があったのだ。
「この子たち、リビングツリーたちがどうかされたのでしょうか」
フォルの行動を見ていたミントが、一度植物系の魔物に目を向けてから、再びフォルを見る。
すると、リビングツリーと呼ばれた植物系の魔物たちが一目散に走って来て、フォルに対して跪いた。思ったより移動が速い。
「こやつらは、わしが紛れさせておいた眷属ぞ。万が一に備えて、わしが還らずの森以外で活動できるようにするためのな」
フォルの告白に、ルナルたちは驚きが隠せなかった。
「何を驚いておるのじゃ。わしはこれでも、世界樹の精霊ユグドラシルの分体ぞ? マスタードラゴンまでとはいかぬが、それなりに察知する能力は持っておるのじゃ。あの妹分とて、そういう力は持っておるんじゃからな」
「精霊というものを甘く見ていましたよ……」
フォルに説教じみた説明をされて、ルナルは跪いて頭を下げていた。謝罪をしているようだった。
「まあよい。信用できるお前さんたちだから、詳しく話をしようではないか」
というわけで、フォルによる森の外へ出てこられた理由の説明が始まった。
「こやつの体には、わしの魔力を凝縮した種というものが植え付けられておる。これによってこやつらが還らずの森の魔物だという証明になるのじゃよ」
説明を聞くルナルたち。
「それで、その魔力をたどれば、わしはこのようにその場に移動できるというわけじゃな。とはいえ、初めて使ったがゆえに心配だったのじゃがの」
そう言い切ってフォルは笑っていた。
説明を聞いて納得のしたルナルだったが、突然、別の心配をし始めていた。
「私たちはここでのんびりしていていいのでしょうか?」
そう、ディランの動向が気になり始めたのだ。だが、これにはミントとフォルが否定的だった。
「いえ、このままでよろしいかと思います。そもそも、ディランの狙いは私を捨て駒にして注意を引き、イプセルタに奇襲を仕掛ける作戦でございましたから」
「そういう事じゃ。わしも奴の作戦の事はそこな魔物を通じて知っておったからのう。じゃから、こうやってのんびり説明ができるというわけじゃよ」
この二人だけが実に冷静だった。
「それにじゃ、そこの猫人が慣れん魔法の連発で疲弊しておるのじゃから、休息は必要じゃろうて」
フォルがミレルを指し示している。その姿を見て、ルナルもようやく冷静に慣れたようだった。
「そうですね。ミントをつけるために無茶をさせましたからね。そうしましょうか」
ルナルがそう言うと、フォルが指示してリビングツリーの1体が根元を椅子に変化させる。そこへミレルを座らせてしばらく休む事にした。
「そこな五色龍、おぬしも人型になってくれぬか?」
「ああ? 俺に指図する気か?」
フォルの呼び掛けにアイオロスがキレかかっている。急な事もあってか、それがアイオロスの機嫌を損ねたようだった。
「ほう……、世界樹の精霊の分体である我に逆らうか。この若いドラゴンは世間を知らなすぎるな」
フォルは呆れながらアイオロスを見ている。それに対してアイオロスは今にも攻撃を仕掛けそうな雰囲気を漂わせていた。
「アイオロス殿、今は無駄な体力を使うべきではありません。ディランの企みを完全に潰すためにも、しっかりと休息を取りましょう」
「……ちっ、分かったよ」
ルナルが言うとようやくアイオロスはおとなしくなった。
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