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第五章『思いはひとつ!』
苦しみの戦い
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「ディラン様!」
「どうした」
その頃、後方で移動中のディランの元に、斥侯の魔族が報告にやって来た。
「先発のミントの部隊が、交戦に入ったようでございます」
「ふむ、思ったよりも早かったな。誰と交戦しているのかは分かっているか?」
「はっ、ルナルと猫人どものようです。あと、緑色のドラゴンがおりました」
「……シッタが動いたか。予想はしていたが、早すぎるな……」
唇をかみしめるディランである。だが、すぐに顔を上げる。
「シッタが動いたのは予想外だが、我々は予定通り行軍を行う。ミントがルナルどもの気を引いている間にイプセルタに向かうぞ!」
「はっ!」
ディランの号令で、ディランの軍勢はイプセルタへ向けて行軍を再開させる。
イプセルタはシッタの真下にある軍事国家だ。人間と魔族が住む世界のはっきりとした境界となる場所であるがために、ここを潰せば人間たちに恐怖を与えられると見ている。そのためにディランはイプセルタを潰そうとしているのだ。マスタードラゴンのお膝元の国を潰したというのは、魔族にとっては最高の価値なのだ。
ディランの軍勢は、ミントの率いる魔物の群れを迂回するように進んでいった。
―――
「ぐあああっ!!」
ミントの咆哮が響き渡る。
完全に意識が魔眼石に飲み込まれ、戦う魔獣と化したミントの攻撃は実に容赦ないものだった。
拳は地面を砕き、爪を振るえば空気をも裂く。いつもは冷静沈着なミントの姿はそこにはなかった。着ているメイド服と長い髪の毛だけが、その魔獣がミントだという事を物語っていた。
「なんて恐ろしいのかしら。あの姉さんがこんなになるなんて……」
ミレルはかなり落ち着いていた。
「ミント姉ってば、こんなに強かったんだ」
ミーアもミーアで余裕がありそうな口を聞いている。さすがは戦闘民族猫人である。戦えれば、相手が身内でも問題ないといった感じである。
「胸に輝くあれが魔眼石ですね……」
ルナルもルナルですごく冷静に戦況を見ている。ミントの少し破れたメイド服から、赤黒い光る物体がちらちらと顔を覗かせていた。そう、その石こそがミントを魔獣へと変えた魔眼石である。
(確か魔眼石は体から切り離せば元に戻ったはずです。どうにかしてミントから魔眼石を取り除きませんと……)
ルナルはこれまでの魔眼石の事を思い出しながら、ミントの動きを観察している。
ゴブリックこそ救えなかったが、ペンタホーンは腹部に取りついた魔眼石を外す事で元に戻す事ができたのだ。ミントもおそらく同じ方法で元に戻せるはずである。
いろいろと考えながらルナルが様子を見ていると、ミントの方から何かが突如として飛んできた。
「これは!」
ルナルは間一髪避ける。後ろにあった木を見ると、ミントが持っている暗器が刺さっていた。魔獣と化しながらも、自分の攻撃スタイルは失っていなかったようだ。
ミントは元々道具の扱いに長けた猫人だ。そのために、暗器や魔道具といったいろいろなものを扱うだけではなく作る事もできた。ミントのメイド服には、そういう暗器や魔道具がいくつも隠されているのである。
冷静さを失いながらも、それを駆使できるとは厄介この上ない。
(思ったよりも厄介です。これはなんとしても早めに魔眼石を引き剥がして元に戻さないと……)
ミレルとミーアが気を引いている間に、ルナルはどうにか魔眼石を破壊しようと試みる。
周りの魔物たちはアイオロスが引き受けてくれているので、状況に余裕があるのは幸いだ。
とにかく問題なのは、ミントの魔眼石の位置が胸部という点だ。人型の胸部となると、ルナルの槍ではどうにも相性が悪いのだ。ルナルの額から汗が流れ落ちる。
「ルナル様」
不意にミレルがルナルのところにやって来る。ミントはミーア一人が相手にしているが、ミーアは実に楽しそうにミントと拳をぶつけ合っている。
「魔眼石を浮かせられればいいのですね?」
ルナルのところへやって来たミレルは、ルナルの考えを察したのか、手短に話している。
「ええ、できますか?」
「やれと言われてやるのが、私たちメイドっていうものですよ」
ミレルは笑顔を浮かべると、再びミントに向かっていく。
「姉さん、絶対元に戻してみせますからね!」
「その通りだにゃ!」
「うがああっ!」
ミレルとミーアの掛け声に、まるで来なさいと言わんばかりの咆哮がミントから発せられる。
「はああっ!!」
ミレルとミーアが一斉にミントに攻撃を仕掛ける。ところが、なんとミントがそれに抵抗を示さない。
「姉さん?!」
思わず目を疑うミレル。どうやらミントはこんな状態になりながらも、必死に魔眼石に抗っているようだ。
「ミーア!」
「はいにゃ!」
ミントが必死に作ってくれた隙を逃すわけにはいかない。ミレルとミーアはミントの胸部を目がけて拳を振り抜く。
気合いの乗った拳がミントの胸部に命中して、魔眼石が少し浮き上がった。
「今です!」
浮き上がって狙いやすくなった魔眼石に、ルナルの槍が鋭く突きつけられる。
これでミントを元に戻せると思ったルナルだったが、起きたのは意外な事態だった。
「ぐあああっ!!」
魔眼石が砕けるどころか、ミントが苦しみ出したのだ。これは一体どういう事なのだろうか。
「ミレル」
「承知しました」
ルナルが驚いてミレルに指示を出すと、ミレルはサーチの魔法をミントに使う。
「そ、そんなっ!」
その結果に、ミレルは青ざめながら驚いていた。一体どんな結果を見たというのだろうか。
「どうした」
その頃、後方で移動中のディランの元に、斥侯の魔族が報告にやって来た。
「先発のミントの部隊が、交戦に入ったようでございます」
「ふむ、思ったよりも早かったな。誰と交戦しているのかは分かっているか?」
「はっ、ルナルと猫人どものようです。あと、緑色のドラゴンがおりました」
「……シッタが動いたか。予想はしていたが、早すぎるな……」
唇をかみしめるディランである。だが、すぐに顔を上げる。
「シッタが動いたのは予想外だが、我々は予定通り行軍を行う。ミントがルナルどもの気を引いている間にイプセルタに向かうぞ!」
「はっ!」
ディランの号令で、ディランの軍勢はイプセルタへ向けて行軍を再開させる。
イプセルタはシッタの真下にある軍事国家だ。人間と魔族が住む世界のはっきりとした境界となる場所であるがために、ここを潰せば人間たちに恐怖を与えられると見ている。そのためにディランはイプセルタを潰そうとしているのだ。マスタードラゴンのお膝元の国を潰したというのは、魔族にとっては最高の価値なのだ。
ディランの軍勢は、ミントの率いる魔物の群れを迂回するように進んでいった。
―――
「ぐあああっ!!」
ミントの咆哮が響き渡る。
完全に意識が魔眼石に飲み込まれ、戦う魔獣と化したミントの攻撃は実に容赦ないものだった。
拳は地面を砕き、爪を振るえば空気をも裂く。いつもは冷静沈着なミントの姿はそこにはなかった。着ているメイド服と長い髪の毛だけが、その魔獣がミントだという事を物語っていた。
「なんて恐ろしいのかしら。あの姉さんがこんなになるなんて……」
ミレルはかなり落ち着いていた。
「ミント姉ってば、こんなに強かったんだ」
ミーアもミーアで余裕がありそうな口を聞いている。さすがは戦闘民族猫人である。戦えれば、相手が身内でも問題ないといった感じである。
「胸に輝くあれが魔眼石ですね……」
ルナルもルナルですごく冷静に戦況を見ている。ミントの少し破れたメイド服から、赤黒い光る物体がちらちらと顔を覗かせていた。そう、その石こそがミントを魔獣へと変えた魔眼石である。
(確か魔眼石は体から切り離せば元に戻ったはずです。どうにかしてミントから魔眼石を取り除きませんと……)
ルナルはこれまでの魔眼石の事を思い出しながら、ミントの動きを観察している。
ゴブリックこそ救えなかったが、ペンタホーンは腹部に取りついた魔眼石を外す事で元に戻す事ができたのだ。ミントもおそらく同じ方法で元に戻せるはずである。
いろいろと考えながらルナルが様子を見ていると、ミントの方から何かが突如として飛んできた。
「これは!」
ルナルは間一髪避ける。後ろにあった木を見ると、ミントが持っている暗器が刺さっていた。魔獣と化しながらも、自分の攻撃スタイルは失っていなかったようだ。
ミントは元々道具の扱いに長けた猫人だ。そのために、暗器や魔道具といったいろいろなものを扱うだけではなく作る事もできた。ミントのメイド服には、そういう暗器や魔道具がいくつも隠されているのである。
冷静さを失いながらも、それを駆使できるとは厄介この上ない。
(思ったよりも厄介です。これはなんとしても早めに魔眼石を引き剥がして元に戻さないと……)
ミレルとミーアが気を引いている間に、ルナルはどうにか魔眼石を破壊しようと試みる。
周りの魔物たちはアイオロスが引き受けてくれているので、状況に余裕があるのは幸いだ。
とにかく問題なのは、ミントの魔眼石の位置が胸部という点だ。人型の胸部となると、ルナルの槍ではどうにも相性が悪いのだ。ルナルの額から汗が流れ落ちる。
「ルナル様」
不意にミレルがルナルのところにやって来る。ミントはミーア一人が相手にしているが、ミーアは実に楽しそうにミントと拳をぶつけ合っている。
「魔眼石を浮かせられればいいのですね?」
ルナルのところへやって来たミレルは、ルナルの考えを察したのか、手短に話している。
「ええ、できますか?」
「やれと言われてやるのが、私たちメイドっていうものですよ」
ミレルは笑顔を浮かべると、再びミントに向かっていく。
「姉さん、絶対元に戻してみせますからね!」
「その通りだにゃ!」
「うがああっ!」
ミレルとミーアの掛け声に、まるで来なさいと言わんばかりの咆哮がミントから発せられる。
「はああっ!!」
ミレルとミーアが一斉にミントに攻撃を仕掛ける。ところが、なんとミントがそれに抵抗を示さない。
「姉さん?!」
思わず目を疑うミレル。どうやらミントはこんな状態になりながらも、必死に魔眼石に抗っているようだ。
「ミーア!」
「はいにゃ!」
ミントが必死に作ってくれた隙を逃すわけにはいかない。ミレルとミーアはミントの胸部を目がけて拳を振り抜く。
気合いの乗った拳がミントの胸部に命中して、魔眼石が少し浮き上がった。
「今です!」
浮き上がって狙いやすくなった魔眼石に、ルナルの槍が鋭く突きつけられる。
これでミントを元に戻せると思ったルナルだったが、起きたのは意外な事態だった。
「ぐあああっ!!」
魔眼石が砕けるどころか、ミントが苦しみ出したのだ。これは一体どういう事なのだろうか。
「ミレル」
「承知しました」
ルナルが驚いてミレルに指示を出すと、ミレルはサーチの魔法をミントに使う。
「そ、そんなっ!」
その結果に、ミレルは青ざめながら驚いていた。一体どんな結果を見たというのだろうか。
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