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第三章『それぞれの道』
シグムス城の地下5・書庫
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ルルの魔法でスライムを退けたミレルたちは、その後も現れる魔物を撃退しつつ、奥へと進んでいく。
そして、たどり着いた先で、明らかに他とは様相の違う扉を発見する。しっかりと装飾が施された上に、シグムスの紋章までが刻まれている。おそらくここが書庫なのだろう。
「どうやらここが書庫のようですね。扉から不思議な魔力を感じます」
書庫にも城と同じような結界が施されているので、ミレルはそれを感じ取ったのだろう。ルルも同じ魔法使いなので、同様の反応を見せている。
「サーチ」
周囲の警戒をしつつも、ミレルは扉に向けてサーチを使う。
「目的地に着きましたが、まだその外側です。まだ安全地帯ではありませんし、だからといって中も安全とは限りません。油断はできませんよ」
さすがは戦闘民族。目的地について気の抜けてしまったセインやルルとは違っていたのだ。
ところが、サーチを使ってひと安心とはいかなかった。
「変ですね。いつもならサーチを使えば、安全の度合いが色となって表れるのですが……」
「どういう事なんだ?」
ミレルの言葉に、一気に警戒を高める二人。
「分かりません。今まで失敗らしい失敗なんてなかったのですが……」
ここまで落ち着いていたミレルが焦っている。これにはセインとルルも落ち着いていられなかった。だが、ここまで来て引き返すわけにはいかない。意を決したミレルがセインとルルに振り返る。
「申し訳ありません。どうやら何らかの魔力阻害が働いているようです。ですが、ここが目的地ですので、まず私が扉を開けて入りますので、二人は呼ぶまでしばらく待機していて下さい」
このミレルの言葉に、セインとルルはこくりと頷いた。
嫌な予感を抱く中、最大限に神経を研ぎ澄ましてミレルはゆっくりと扉を開いていく。扉を開けた先はやはり真っ黒で何も見えなかった。だが、次の瞬間だった。何かを感じ取ったミレルがとっさに動く。
「プロテクト!」
ミレルが防御壁を展開すると同時に、ごおっと音を立てて何かが迫ってきた。
「きゃっ!」
すると、ミレルの展開していた防御壁があっさりと壊され、ミレルは思わず吹き飛ばされてしまう。
「だ、大丈夫ですか?」
待機していたルルたちが駆け寄ってくる。
「ええ、ちょっと衝撃で飛ばされただけです」
立ち上がってスカートを叩くミレル。そして、改めて中へと振り返ってしっかりと見る。すると、そこ居たものに驚いて動きが固まってしまった。
「どうしたんですか、ミレルさん」
ルルが心配して声を掛ける。だが、同時にルルも同じように強大な力を感じて、信じられないという顔で力を感じた方向を見る。
次の瞬間、ぱぱっと明かりが点いて書庫の中が一気に明るくなった。
「な、なんだこいつは!?」
その姿をはっきりと見たセインが思わず叫んでしまう。しかし、それは仕方のない事だった。
ミレルたちの前に姿を見せたのは、巨大なドラゴンだった。しかも、全身が黄色く眩く光る鱗で覆われている、見た事もないドラゴンだったのだ。
だが、いろんな事でありえない存在だった。
まずはこのプサイラ砂漠にはイエロードラゴンは生息していないという事である。そして、ましてや結界に守られた書庫の中に居るなど、あり得るわけもなかったのだ。ミレルは驚きながらも状況の分析を試みているのである。その後ろでは、初めて見たドラゴンという存在に驚き固まるセインとルルが居た。
「うぬらに問う」
突如として、書庫の中に重苦しい声が響き渡る。最初は何事かと思ったのだが、よくよく冷静に考えれば目の前のドラゴンが喋ったとしか思えない。人語まで話すとは、ますますミレルには信じられなかった。
「ふっ、恐怖のあまり声も出せぬか」
目の前のドラゴンが喋る。
「いえ、驚きのあまりに声を出せませんでした」
「ふん、どちらとて同じ事。改めて問う」
「な、何でしょうか」
ドラゴンの言葉に、ミレルが反応する。
「なぜここに来た。その返答次第では、黒焦げになってもらう」
「黒焦げ?」
この言葉に反応して、ミレルは改めてドラゴンを見る。どうやら鱗自体が光っているのではなく、その周りに発生している雷のようなものが光っているようなのだ。
(雷属性のドラゴンだというのですか? 私の勘が告げていますが、まともにやり合って勝てる相手ではなさそうです……)
ミレルの頬にひと筋の汗が流れる。それは冷や汗だった。
だが、ここでむざむざ引き返すわけにもいかない。ミレルはここへ来た目的をドラゴンに告げる。
「私たちはシグムス王の命により、この書庫へと歴史書を取りに参ったのです。あなたに危害を加えるつもりはございません!」
「ほほお、ならば我の退治というわけではないのだな?」
ドラゴンがギロリと睨みつけてくる。
「はい。あなたの存在はここで初めて知った次第です。戦う事が目的ではありませんので、どうかここは通して頂けますでしょうか」
ミレルは震える体に鞭打ち、ドラゴンと交渉をする。
ところが、しっかりと戦う意思のない事を示したというのに、ドラゴンはどういうわけか首を傾げていた。
「そうか……。だが、我もあの方の命によりここを守るように仰せつかっておる」
そう言ったドラゴンは、再びミレルたちを睨み付けた。
「そういうわけだ。ここを探索したいというのであるなら、この我を打ち負かせて見せよ!」
ドラゴンの咆哮が、書庫の中に響き渡る。
どうやら戦うしかないようだ。ミレルは体を震わせる。だが、これは恐怖の震えではない、武者震いだった。
ここまでやって来たというのだ、このまま引き下がるわけにはいかない。
「……戦うしかないようですね」
にやりと怪しい笑みを浮かべたミレルが身構える。
「いきますよ、セインくん! ルルちゃん!」
「お、おうっ!」
「はい!」
もはややけくそだが、セインとルルの二人も戦闘態勢を取ったのだった。
そして、たどり着いた先で、明らかに他とは様相の違う扉を発見する。しっかりと装飾が施された上に、シグムスの紋章までが刻まれている。おそらくここが書庫なのだろう。
「どうやらここが書庫のようですね。扉から不思議な魔力を感じます」
書庫にも城と同じような結界が施されているので、ミレルはそれを感じ取ったのだろう。ルルも同じ魔法使いなので、同様の反応を見せている。
「サーチ」
周囲の警戒をしつつも、ミレルは扉に向けてサーチを使う。
「目的地に着きましたが、まだその外側です。まだ安全地帯ではありませんし、だからといって中も安全とは限りません。油断はできませんよ」
さすがは戦闘民族。目的地について気の抜けてしまったセインやルルとは違っていたのだ。
ところが、サーチを使ってひと安心とはいかなかった。
「変ですね。いつもならサーチを使えば、安全の度合いが色となって表れるのですが……」
「どういう事なんだ?」
ミレルの言葉に、一気に警戒を高める二人。
「分かりません。今まで失敗らしい失敗なんてなかったのですが……」
ここまで落ち着いていたミレルが焦っている。これにはセインとルルも落ち着いていられなかった。だが、ここまで来て引き返すわけにはいかない。意を決したミレルがセインとルルに振り返る。
「申し訳ありません。どうやら何らかの魔力阻害が働いているようです。ですが、ここが目的地ですので、まず私が扉を開けて入りますので、二人は呼ぶまでしばらく待機していて下さい」
このミレルの言葉に、セインとルルはこくりと頷いた。
嫌な予感を抱く中、最大限に神経を研ぎ澄ましてミレルはゆっくりと扉を開いていく。扉を開けた先はやはり真っ黒で何も見えなかった。だが、次の瞬間だった。何かを感じ取ったミレルがとっさに動く。
「プロテクト!」
ミレルが防御壁を展開すると同時に、ごおっと音を立てて何かが迫ってきた。
「きゃっ!」
すると、ミレルの展開していた防御壁があっさりと壊され、ミレルは思わず吹き飛ばされてしまう。
「だ、大丈夫ですか?」
待機していたルルたちが駆け寄ってくる。
「ええ、ちょっと衝撃で飛ばされただけです」
立ち上がってスカートを叩くミレル。そして、改めて中へと振り返ってしっかりと見る。すると、そこ居たものに驚いて動きが固まってしまった。
「どうしたんですか、ミレルさん」
ルルが心配して声を掛ける。だが、同時にルルも同じように強大な力を感じて、信じられないという顔で力を感じた方向を見る。
次の瞬間、ぱぱっと明かりが点いて書庫の中が一気に明るくなった。
「な、なんだこいつは!?」
その姿をはっきりと見たセインが思わず叫んでしまう。しかし、それは仕方のない事だった。
ミレルたちの前に姿を見せたのは、巨大なドラゴンだった。しかも、全身が黄色く眩く光る鱗で覆われている、見た事もないドラゴンだったのだ。
だが、いろんな事でありえない存在だった。
まずはこのプサイラ砂漠にはイエロードラゴンは生息していないという事である。そして、ましてや結界に守られた書庫の中に居るなど、あり得るわけもなかったのだ。ミレルは驚きながらも状況の分析を試みているのである。その後ろでは、初めて見たドラゴンという存在に驚き固まるセインとルルが居た。
「うぬらに問う」
突如として、書庫の中に重苦しい声が響き渡る。最初は何事かと思ったのだが、よくよく冷静に考えれば目の前のドラゴンが喋ったとしか思えない。人語まで話すとは、ますますミレルには信じられなかった。
「ふっ、恐怖のあまり声も出せぬか」
目の前のドラゴンが喋る。
「いえ、驚きのあまりに声を出せませんでした」
「ふん、どちらとて同じ事。改めて問う」
「な、何でしょうか」
ドラゴンの言葉に、ミレルが反応する。
「なぜここに来た。その返答次第では、黒焦げになってもらう」
「黒焦げ?」
この言葉に反応して、ミレルは改めてドラゴンを見る。どうやら鱗自体が光っているのではなく、その周りに発生している雷のようなものが光っているようなのだ。
(雷属性のドラゴンだというのですか? 私の勘が告げていますが、まともにやり合って勝てる相手ではなさそうです……)
ミレルの頬にひと筋の汗が流れる。それは冷や汗だった。
だが、ここでむざむざ引き返すわけにもいかない。ミレルはここへ来た目的をドラゴンに告げる。
「私たちはシグムス王の命により、この書庫へと歴史書を取りに参ったのです。あなたに危害を加えるつもりはございません!」
「ほほお、ならば我の退治というわけではないのだな?」
ドラゴンがギロリと睨みつけてくる。
「はい。あなたの存在はここで初めて知った次第です。戦う事が目的ではありませんので、どうかここは通して頂けますでしょうか」
ミレルは震える体に鞭打ち、ドラゴンと交渉をする。
ところが、しっかりと戦う意思のない事を示したというのに、ドラゴンはどういうわけか首を傾げていた。
「そうか……。だが、我もあの方の命によりここを守るように仰せつかっておる」
そう言ったドラゴンは、再びミレルたちを睨み付けた。
「そういうわけだ。ここを探索したいというのであるなら、この我を打ち負かせて見せよ!」
ドラゴンの咆哮が、書庫の中に響き渡る。
どうやら戦うしかないようだ。ミレルは体を震わせる。だが、これは恐怖の震えではない、武者震いだった。
ここまでやって来たというのだ、このまま引き下がるわけにはいかない。
「……戦うしかないようですね」
にやりと怪しい笑みを浮かべたミレルが身構える。
「いきますよ、セインくん! ルルちゃん!」
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「はい!」
もはややけくそだが、セインとルルの二人も戦闘態勢を取ったのだった。
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