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第三章
第90話 予想外は重なるもの
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突如として地面から襲い来る根っこの数々。間違いなく植物系の魔物である。
「これは、ライブツリーでしょうかしらね」
魔力をまとい、防御しながら後ろに飛ぶミルフィ。まだ11歳とはいえどそこは魔王の娘である。親譲りの戦闘センスが光る。
しばらくすると、雄たけびを上げながら樹木の化け物が姿を見せる。
ミルフィの推測通り、ライブツリーだった。
樹に擬態して他人を襲う、トラップ系の魔物だった。
「こういう情報は聞いてないのですけれどね。まあ、私の敵じゃないですね」
調整した魔力を元通りにするミルフィ。
すると、その魔力に驚いたライブツリーは逃げ出そうとする。
「そうは問屋が卸しませんよ。おとなしく私の手によって卸されちゃいなさい」
ガサガサと走って逃げようとするライブツリーだったが、次の瞬間、スパッと縦方向に切れ目が走っていた。
「ア……ガ……?」
木材のように崩れ落ちるライブツリー。けんかを売った相手が悪かった。
「これでエレベーター用の素材が手に入りましたね。これはかなり期待できそうです」
うっきうきのミルフィである。
それというのも、エレベーターは基本的に木の箱である。なので、木材が手に入ればそれだけ金銭的な節約になる。
それに加えて擬態系の魔物ということで魔力を有しているので、魔道具として使った時に親和性があるのだ。つまり、より少ない魔力で効果を得る事ができるというわけである。
うきうきでライブツリーを解体したミルフィは、風魔法で持ち上げると街へと戻っていった。
「時間に余裕がありますし、ストーンイーターリザードの狩りにも行ってみましょうかね。低ランクの冒険者用の魔物と仰っていましたし、今の私なら問題なく狩り場に行けますね」
スライムの討伐に時間がかかったので機嫌が少し悪くなっていたミルフィだが、思わぬ副産物に心を弾ませて街へと戻っていったのだった。
帰りは迷うことなく無事に帰れたミルフィは、冒険者組合に顔を出す。
「ただいま戻りました。査定をお願いします」
「ずいぶんと時間かかかってられましたね」
「ええ。どういうわけかスライムに出くわしませんでしてね。見つけるのに大変苦労しました」
「ええ……」
ミルフィが答えた内容に、なぜか困惑する受付の女性である。
それもそうだろう。スライムは道端の石ころのごとく、生息地に入ればかなりの高確率で遭遇できるありふれた魔物なのである。会えない事の方がむしろ素質というレベルなのである。
いろいろと疑わしいところはあるものの、差し出されたスライムの魔石を確認する受付である。
「確かに10個、受け取りました。どうされますか、引き取られるのでしたら、そちらの買取となって討伐報酬が減りますけれど」
「それで問題ないです。これでも商会が儲かってますし、欲しいのは魔石でしたからね」
「そ、そうですか……」
どことなく呆れながら報酬を差し出す受付の女性だった。
「ああ、そうです。これも見てもらっていいでしょうかね」
どんと風魔法で運んできた木材を差し出すミルフィ。それを見た受付の女性はぎょっとした表情で見ている。
「こ、これは……!」
通常カウンター越しで対応を行う受付が、外へ出てきて直に木材を見ている。この異例の対応に、周囲の冒険者たちも騒めいている。
「これはどこで手に入れましたか?」
冷静にミルフィに問い掛ける受付。
「スライムを倒していたら、突然襲われました。まあ、弱いので楽勝でしたけれど」
「……これ、ライブツリーですよね。スライムのいる森にいたのですか?」
確認してくるので、こくりと頷くミルフィ。思わず絶句してしまう受付の女性だった。
しばらくして数度首を横に振ったかと思うと、眉間にしわを寄せてぶつぶつと何か言い始めた。
「これが初心者の森に出たですって? もしかしたら何か異変が起きているの?」
この反応には思わず固まってしまうミルフィだった。
何かやってしまったのだろうか。
「緊急調査が必要のようね。誰か引き受けてくれるかしら」
受付の呼び掛けに冒険者数名が手を挙げていた。一体何があったのか、来たばかりのミルフィには分からなかった。
「ごめんなさい。ちょっと聴取を受けてもらうわ。これに襲われた状況を詳しく話してちょうだい」
「ええ、分かりました。でも、これが一体どうしたというのでしょうか」
「詳しい話は、聴取の際にします。とにかく奥へいらして下さい」
そういって冒険者組合の奥へと連れていかれてしまうミルフィだった。
結局、ライブツリーに出くわした詳しい状況を説明したのだが、いまいち信じてもらえないようだった。なにせまったく目撃情報がない話だったからだ。
結局、緊急調査でも何の問題も無しだったらしく、ミルフィがライブツリーに襲われた原因はまったく特定できなかった。
そして、ライブツリーを討伐したということで、ミルフィの冒険者ランクは2つも上がってしまったのであった。それにより、ストーンイーターリザードを狩れるランクを超えてしまい、ミルフィは呆然としてしまうのだった。
ストーンイーターリザードが狩れるランクは思いの外低かったのである。
「ええ……、お肉ぅ……」
その日、ミルフィがやけ食いからのふて寝をしたのは、言うまでもない結果だった。
「これは、ライブツリーでしょうかしらね」
魔力をまとい、防御しながら後ろに飛ぶミルフィ。まだ11歳とはいえどそこは魔王の娘である。親譲りの戦闘センスが光る。
しばらくすると、雄たけびを上げながら樹木の化け物が姿を見せる。
ミルフィの推測通り、ライブツリーだった。
樹に擬態して他人を襲う、トラップ系の魔物だった。
「こういう情報は聞いてないのですけれどね。まあ、私の敵じゃないですね」
調整した魔力を元通りにするミルフィ。
すると、その魔力に驚いたライブツリーは逃げ出そうとする。
「そうは問屋が卸しませんよ。おとなしく私の手によって卸されちゃいなさい」
ガサガサと走って逃げようとするライブツリーだったが、次の瞬間、スパッと縦方向に切れ目が走っていた。
「ア……ガ……?」
木材のように崩れ落ちるライブツリー。けんかを売った相手が悪かった。
「これでエレベーター用の素材が手に入りましたね。これはかなり期待できそうです」
うっきうきのミルフィである。
それというのも、エレベーターは基本的に木の箱である。なので、木材が手に入ればそれだけ金銭的な節約になる。
それに加えて擬態系の魔物ということで魔力を有しているので、魔道具として使った時に親和性があるのだ。つまり、より少ない魔力で効果を得る事ができるというわけである。
うきうきでライブツリーを解体したミルフィは、風魔法で持ち上げると街へと戻っていった。
「時間に余裕がありますし、ストーンイーターリザードの狩りにも行ってみましょうかね。低ランクの冒険者用の魔物と仰っていましたし、今の私なら問題なく狩り場に行けますね」
スライムの討伐に時間がかかったので機嫌が少し悪くなっていたミルフィだが、思わぬ副産物に心を弾ませて街へと戻っていったのだった。
帰りは迷うことなく無事に帰れたミルフィは、冒険者組合に顔を出す。
「ただいま戻りました。査定をお願いします」
「ずいぶんと時間かかかってられましたね」
「ええ。どういうわけかスライムに出くわしませんでしてね。見つけるのに大変苦労しました」
「ええ……」
ミルフィが答えた内容に、なぜか困惑する受付の女性である。
それもそうだろう。スライムは道端の石ころのごとく、生息地に入ればかなりの高確率で遭遇できるありふれた魔物なのである。会えない事の方がむしろ素質というレベルなのである。
いろいろと疑わしいところはあるものの、差し出されたスライムの魔石を確認する受付である。
「確かに10個、受け取りました。どうされますか、引き取られるのでしたら、そちらの買取となって討伐報酬が減りますけれど」
「それで問題ないです。これでも商会が儲かってますし、欲しいのは魔石でしたからね」
「そ、そうですか……」
どことなく呆れながら報酬を差し出す受付の女性だった。
「ああ、そうです。これも見てもらっていいでしょうかね」
どんと風魔法で運んできた木材を差し出すミルフィ。それを見た受付の女性はぎょっとした表情で見ている。
「こ、これは……!」
通常カウンター越しで対応を行う受付が、外へ出てきて直に木材を見ている。この異例の対応に、周囲の冒険者たちも騒めいている。
「これはどこで手に入れましたか?」
冷静にミルフィに問い掛ける受付。
「スライムを倒していたら、突然襲われました。まあ、弱いので楽勝でしたけれど」
「……これ、ライブツリーですよね。スライムのいる森にいたのですか?」
確認してくるので、こくりと頷くミルフィ。思わず絶句してしまう受付の女性だった。
しばらくして数度首を横に振ったかと思うと、眉間にしわを寄せてぶつぶつと何か言い始めた。
「これが初心者の森に出たですって? もしかしたら何か異変が起きているの?」
この反応には思わず固まってしまうミルフィだった。
何かやってしまったのだろうか。
「緊急調査が必要のようね。誰か引き受けてくれるかしら」
受付の呼び掛けに冒険者数名が手を挙げていた。一体何があったのか、来たばかりのミルフィには分からなかった。
「ごめんなさい。ちょっと聴取を受けてもらうわ。これに襲われた状況を詳しく話してちょうだい」
「ええ、分かりました。でも、これが一体どうしたというのでしょうか」
「詳しい話は、聴取の際にします。とにかく奥へいらして下さい」
そういって冒険者組合の奥へと連れていかれてしまうミルフィだった。
結局、ライブツリーに出くわした詳しい状況を説明したのだが、いまいち信じてもらえないようだった。なにせまったく目撃情報がない話だったからだ。
結局、緊急調査でも何の問題も無しだったらしく、ミルフィがライブツリーに襲われた原因はまったく特定できなかった。
そして、ライブツリーを討伐したということで、ミルフィの冒険者ランクは2つも上がってしまったのであった。それにより、ストーンイーターリザードを狩れるランクを超えてしまい、ミルフィは呆然としてしまうのだった。
ストーンイーターリザードが狩れるランクは思いの外低かったのである。
「ええ……、お肉ぅ……」
その日、ミルフィがやけ食いからのふて寝をしたのは、言うまでもない結果だった。
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