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第三章
第81話 料理一直線ですから
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バーンとビュフェの部屋に姿を見せるミルフィ。一応ちゃんと手順を踏んだ上で姿を見せたのだが、実に偉そうに両手を腰に当てて立っている。
「お邪魔致しますわ」
微妙にらしくない語尾である。
ちなみにミルフィの後ろにはトンカとナンカも控えている。ただ、種族的にただでさえ小さいミルフィよりも背が低い。
「よく来てくれたね。こちらから呼びに行こうと思っていたところですよ」
ビュフェはにこやかにミルフィたちを出迎えていた。
「ところで一応確認しておきますが、何の用でしょうかね」
言葉遣いはちょっとあれではあるものの、表情は穏やかである。なので、ミルフィもあまりへそを曲げるような事もなく素直に答える。
「そちらが呼び出そうとしていた用件です。こちらですね」
ミルフィはそう告げた後、トンカとナンカの方へと視線を向ける。
その視線を受けた二人は、ごそごそと何かを取り出していた。
「それは?」
何やらミニチュアサイズの細長い箱が出てきたので、ビュフェは当然ながらその正体を知りたがる。
にやにやとしているミルフィ。どうやらすぐには教える気にはならないようだ。
「長くなりますので、とりあえず座ってもいいでしょうか」
ひとまずにこやかな状態を維持しつつ、ミルフィはビュフェにストレートに座りたいと要望を出す。
「ああ、そうだね。あなたは飲み物を持ってくるように伝えてちょうだい」
「畏まりました」
ビュフェはミルフィたちを案内してきた使用人に命じると、ミルフィたちを来客用のソファへと案内した。
席に着くと、ミルフィは二人が持っていた物体をテーブルの上に置く。
「こちら、エレベーターの模型でございます」
「これが……!」
ミルフィが端的に発した言葉に、驚くビュフェである。
その表情を確認したミルフィ。続けてエレベーターの説明に入る。
「現状は1階と2階という2か所の往復しかしていないのですが、箱の中の風魔法を調整すれば、複数階層への移動ができるようになると思います。とりあえず仕組みをお教えしましょう」
「いいのか?」
ミルフィの言葉に驚くビュフェ。それに対して自信たっぷりに笑うミルフィである。
「教えたところで簡単に再現できるとは思いませんからね。そのくらい高度な魔法を使用しているんです」
あまりにも力強い口ぶりに、ビュフェはかなり押されている感じである。相手はまだ12歳にもなっていない子どもだというのに、この言い知れぬ恐怖にも似た雰囲気はなんなのだろうか。ビュフェは心の中で首を捻るばかりである。
「おほん。とりあえず構造の説明を始めてよろしいでしょうか」
「あ、ああ。よろしく頼む」
すっかりミルフィにペースを握られているビュフェである。
「……という感じなんですよ」
「ふーむ。つまりは1本のロープで繋げたカゴを、風魔法を使って上げ下げするというわけなのか」
「端的に言うとそういうことですね。ちょっと仕組み的なところにまで言及したので、かなり説明が長くなってしまいましたね」
ミルフィは説明途中に運ばれてきた紅茶を飲みながらのどを潤している。
「1階と2階の間で料理を運ぶためだけに使っているので、魔法もかなり単純で荒いんですよね。ビュフェさんの宿のような複数階建ての宿で使うとなると、もっと細やかな魔法操作が必要になると思います」
ミルフィは話をしながらため息をついている。
どうやらミルフィでもそういう細やかな魔法は苦手なようである。まだ11歳なので、単純に経験不足といったところだろう。
「ふむ、現状は料理だけに使っているというわけか。将来的には人を運ぶということも視野に入ってくるのかな?」
ビュフェにこう言われて、ミルフィは思わず黙ってしまう。
「……考えてなかったということか?」
「人を入れて運ぶなんて、そんな怖い事できませんよ。万一魔法を失敗していたら、高いところから落っこちちゃうんですから。最低でも怪我しちゃいますって」
さすが心優しい魔王女ちゃんである。
「私はおいしいを広めるのが目的なんですから、運ぶ対象もお料理だけです」
人差し指を左右にぶんぶんと振りながら、ちょっと怒りながら得意げに言い切るミルフィである。相変わらずそこに歪みはないのだ。
ミルフィの態度についつい笑ってしまうビュフェ。その姿を見てミルフィはちょっと怒っているようだ。
「もう、何がおかしいんですか」
「いや、初めて会った時からとことんおいしい料理ひと筋というその姿勢に感心しただけですよ」
「そうですよ。私はおいしいひと筋なんです。あっ、宿の料理はおいしかったですよ。もう一つちょっと決め手は欲しいところですけれど」
「ほうほう。それはぜひとも聞いてみたいものですね」
「ええ、いいでしょう。ええとですね……」
料理の事となると、周りが見えなくなってくるミルフィである。
エレベーターの売り込みに来たはずが、どういうわけか料理談議にすり替わってしまっていた。
結局この二人の話し込みは、お昼を迎えて従業員が呼びに来るまで止まることはなかったのだった。
まったく、どんだけ料理命なのだろうか。
話に入り込めなかったトンカとナンカは、暇に耐え切れずに複数階建て用のエレベーターの模型作りをして時間を潰していたのだった。
「お邪魔致しますわ」
微妙にらしくない語尾である。
ちなみにミルフィの後ろにはトンカとナンカも控えている。ただ、種族的にただでさえ小さいミルフィよりも背が低い。
「よく来てくれたね。こちらから呼びに行こうと思っていたところですよ」
ビュフェはにこやかにミルフィたちを出迎えていた。
「ところで一応確認しておきますが、何の用でしょうかね」
言葉遣いはちょっとあれではあるものの、表情は穏やかである。なので、ミルフィもあまりへそを曲げるような事もなく素直に答える。
「そちらが呼び出そうとしていた用件です。こちらですね」
ミルフィはそう告げた後、トンカとナンカの方へと視線を向ける。
その視線を受けた二人は、ごそごそと何かを取り出していた。
「それは?」
何やらミニチュアサイズの細長い箱が出てきたので、ビュフェは当然ながらその正体を知りたがる。
にやにやとしているミルフィ。どうやらすぐには教える気にはならないようだ。
「長くなりますので、とりあえず座ってもいいでしょうか」
ひとまずにこやかな状態を維持しつつ、ミルフィはビュフェにストレートに座りたいと要望を出す。
「ああ、そうだね。あなたは飲み物を持ってくるように伝えてちょうだい」
「畏まりました」
ビュフェはミルフィたちを案内してきた使用人に命じると、ミルフィたちを来客用のソファへと案内した。
席に着くと、ミルフィは二人が持っていた物体をテーブルの上に置く。
「こちら、エレベーターの模型でございます」
「これが……!」
ミルフィが端的に発した言葉に、驚くビュフェである。
その表情を確認したミルフィ。続けてエレベーターの説明に入る。
「現状は1階と2階という2か所の往復しかしていないのですが、箱の中の風魔法を調整すれば、複数階層への移動ができるようになると思います。とりあえず仕組みをお教えしましょう」
「いいのか?」
ミルフィの言葉に驚くビュフェ。それに対して自信たっぷりに笑うミルフィである。
「教えたところで簡単に再現できるとは思いませんからね。そのくらい高度な魔法を使用しているんです」
あまりにも力強い口ぶりに、ビュフェはかなり押されている感じである。相手はまだ12歳にもなっていない子どもだというのに、この言い知れぬ恐怖にも似た雰囲気はなんなのだろうか。ビュフェは心の中で首を捻るばかりである。
「おほん。とりあえず構造の説明を始めてよろしいでしょうか」
「あ、ああ。よろしく頼む」
すっかりミルフィにペースを握られているビュフェである。
「……という感じなんですよ」
「ふーむ。つまりは1本のロープで繋げたカゴを、風魔法を使って上げ下げするというわけなのか」
「端的に言うとそういうことですね。ちょっと仕組み的なところにまで言及したので、かなり説明が長くなってしまいましたね」
ミルフィは説明途中に運ばれてきた紅茶を飲みながらのどを潤している。
「1階と2階の間で料理を運ぶためだけに使っているので、魔法もかなり単純で荒いんですよね。ビュフェさんの宿のような複数階建ての宿で使うとなると、もっと細やかな魔法操作が必要になると思います」
ミルフィは話をしながらため息をついている。
どうやらミルフィでもそういう細やかな魔法は苦手なようである。まだ11歳なので、単純に経験不足といったところだろう。
「ふむ、現状は料理だけに使っているというわけか。将来的には人を運ぶということも視野に入ってくるのかな?」
ビュフェにこう言われて、ミルフィは思わず黙ってしまう。
「……考えてなかったということか?」
「人を入れて運ぶなんて、そんな怖い事できませんよ。万一魔法を失敗していたら、高いところから落っこちちゃうんですから。最低でも怪我しちゃいますって」
さすが心優しい魔王女ちゃんである。
「私はおいしいを広めるのが目的なんですから、運ぶ対象もお料理だけです」
人差し指を左右にぶんぶんと振りながら、ちょっと怒りながら得意げに言い切るミルフィである。相変わらずそこに歪みはないのだ。
ミルフィの態度についつい笑ってしまうビュフェ。その姿を見てミルフィはちょっと怒っているようだ。
「もう、何がおかしいんですか」
「いや、初めて会った時からとことんおいしい料理ひと筋というその姿勢に感心しただけですよ」
「そうですよ。私はおいしいひと筋なんです。あっ、宿の料理はおいしかったですよ。もう一つちょっと決め手は欲しいところですけれど」
「ほうほう。それはぜひとも聞いてみたいものですね」
「ええ、いいでしょう。ええとですね……」
料理の事となると、周りが見えなくなってくるミルフィである。
エレベーターの売り込みに来たはずが、どういうわけか料理談議にすり替わってしまっていた。
結局この二人の話し込みは、お昼を迎えて従業員が呼びに来るまで止まることはなかったのだった。
まったく、どんだけ料理命なのだろうか。
話に入り込めなかったトンカとナンカは、暇に耐え切れずに複数階建て用のエレベーターの模型作りをして時間を潰していたのだった。
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